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【映画】「オペラ座の怪人(1925)」~ロン・チェイニー版~


おすすめ度 ★★★★
 
題名 オペラ座の怪人(The Phantom of the Opera)
監督 ルパート・ジュリアン
原作 ガストン・ルルー 「オペラ座の怪人」1909年
出演 ロン・チェイニー、メアリー・フィルビン、ノーマン・ケリー
上映時間 107分
制作年 1925年
制作会社 ユニバーサル・ピクチャーズ
制作国 アメリカ
ジャンル 怪奇ロマン、ラブストーリー、サイレント、モノクロ、二色カラー法
 
 
 
おや? (゜-゜)

エリックの仮面ってこんなだったんだ。っていうか、いいの?エリック、これで。もうちょっと似合うのなかった?


オペラ座の怪人の「1925年版を見よう」なんていう人は、絶対にアンドリュー・ロイド・ウェーバー版のミュージカル(1986)か、その映画化版の『オペラ座の怪人(2004)』を見てると思うのですが、だとしたら絶対に「あれ?」ってなると思う。

「エリックどした? もうちょっといいのなかった?」ってなる。絶対。

とはいえオペラ座の怪人ファンならば、やはり抑えておきたい。ある意味でおすすめの作品です。
 
 

恐怖と笑いの関係

私の持論で、「恐怖と笑いは紙一重」というのがあるんだが、そう思ったきっかけは映画『エクソシスト(1973)』であった。
 
私は怖い映画が大嫌いなので絶対見ないのだが、さすがにこの超絶有名作、ホラー映画の金字塔である『エクソシスト』に関してはやはり見ていない。見ていないが、この映画はあまりにも有名なので、予告編とか「あの場面」とか、そういう断片的な映像っていうのは、やっぱり目に入っちゃうわけです。
 
で思う。「これはギャグなのかな?」って。
 
だってブリッジしながら階段を上る(か下るかどっちか ←見てない)んですよ!
 
 
超怖いメイクした女の子が、ブリッジをしながら階段を上る(か下る)の!!(強調の繰り返し)。
 
 
よく思いついたな、って思った。だって作り手目線で考えれば、とにかく「ものすごく怖がらせよう」と思っている映画なのに、「ブリッジしながら階段を上ったり下りたりするのどうすか」って言われたら、ちょっと、笑っちゃうと思うんですよ。「それは面白くなってしまうのでは?」って。
 
でも、実際に出来上がったらすごく怖い。メイクとかもあると思うけど、やはりストーリーとか前後の流れがあってからの「ブリッジ階段上り下り」だから怖いんだろう(見ていないので分からないが)。予告とかスポットだけでも十分怖いけど。
 
 
今回の1925年版オペラ座の怪人は、そのバージョン違い的なやつかな?。でもちょっと失敗した的な(チガウカナ?)。


By Universal Pictures - source, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=40770145
 
 

映画の概要

今作は、ガストン・ルルー原作「オペラ座の怪人」の二度目の映画化作品。たぶん私たちが今見られるものではこれが一番古いんじゃないかと思われる。1916年版というのがあるらしいが、私には見つけられない。

ルルーの『オペラ座の怪人』は、この後も何度も映画化されたり、舞台化されたりしていろいろな版があるので、見比べるのが楽しい。


今回、怪奇俳優ロン・チェイニーが演じたエリック(ファントム)は、「生まれつきドクロのような、鼻のない醜悪な容貌」という役どころ。しばらくは影や手くらいしか出てこないが、中盤以降にようやく姿を現す。
 
「ファントム! よっ!エリック! 待ってました! 満を持して登場!!」 ジャジャーン!!!ってなって、
「おやあ?(゜o゜)」ってなる。
 
これは一体。(*´Д`) おめめぱっちりじゃん。
 
 
で、クライマックスのひとつ、クリスティーヌがエリックの仮面を剥ぐシーンが「ぎゃー(笑)」って感じでこれまたやってくれる。かっぱでバーコード なんですよ! そこまでするなんて非情すぎる。
 
👇 だってこういう感じなんだもん。

By Universal Pictures - Composite of 2 frames screencapped., Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=37733240
 
 
こうなってくると、才能と金はあるけどめちゃくちゃ不細工な50歳のひきこもりドルヲタの童貞男が、若い美人アイドルに身分違いの恋をしちゃって、でも女の子にとって自分が魅力的な王子様じゃないことは自分でも分かってるから、どうやってお近づきになればいいか分かんなくって、権力をかさに「俺がスターにしてやる!」って枕を強要して、そしたらお似合いの恋人が出てきちゃって、完全ストーカー化していくという、なんか超ありそうな現実的な話に見える。
 
うーん、意訳したら全然19世紀の怪奇ロマンじゃなくなった(笑)。


とはいえこの映画はいたってシリアスな、悲哀に満ちた、よくできた怪奇映画だと思う。DVDについている解説で、淀川長治も「こわいこわい」って言ってた。途中で切れてましたけど。


ごく前半の裏方たちのシーンなどは多少コミカルに見せようとしているシーンもあるけど、作ってる人達はエリックで笑わせようとは、たぶん思っていないと思う。

原作で描かれるエリックの運命のドラマを、相当忠実に映画化しようとしていると思う。エリックのラストなんか、かなり悲惨で・・・

平凡かつ善良な市民が一番怖いという結末。
 
 

ロイド=ウェーバー版との比較

ロイド=ウェーバー版(2011年ラミン版)もこの1925年版も、どちらもそう大きくは原作をはみ出ていないけど、大分アプローチが違う。

 
1986年からブロードウェイで延々上演されているロイド=ウェーバー版(ラミン版)と比較すると、
 
ロイド=ウェーバー版(ラミン版)は、
① エリックは生来醜い設定だが、俳優は若いし実際は男前で、しかも美声(音楽はハズレのないウェーバー作曲)
② ラウルは貴族のボンボンっていう感じで、王子様的にロマンティックかもしれないが、実利的ではない(恋は得意だが、財産を使い果たしそう)
③ 誰に感情移入するかというと、エリック(ファントム)に感情移入できるように作られている
という感じで、
 
今作1925年版は、
① エリックは生来醜くい設定は同じだが、実際ほんとうに醜い。サイレント映画だから歌わない。 
② ラウルはちゃんとした大人の貴族で、ちゃんと社会人している感じで頼りがいがありそう。
③ 誰に感情移入するかというと、クリスティーヌ(およびラウルのカップル)に感情移入できるように作られている。エリック、無理―、みたいな。

ということで、ロイド=ウェーバー版はかなりロマンティックに脚色されていると思う。

 とはいえ、今作も演出的に抑えるべきところはきちんと押さえているので、ロイド=ウェーバー版のファンも比較して楽しめると思う。
 
シャンデリアもちゃんと落ちるし、吊り橋もある。鏡の間もある。地下には湖もあってゴンドラで行くし、仮面をはぎ取るシーンも、仮面舞踏会で赤マントのドクロ・ファントムも出てくる。屋上でラウルとクリスティーヌが愛を語らうところをエリックが覗いて嫉妬しているところもちゃんとあります(大ショックなエリックが見られます)。仮面舞踏会のシーンでは二色法カラーが使用されているので、モノクロ映画なのにいきなりカラーになって、ちゃんと赤マントなのが分かる。


👇 このように。

By File is a scan from a 35mm print., Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=17303864

 



蛇足だけど、個人的にはロイド=ウェーバーは自分をエリックに投影したのだと思ってる。

 

モテない可哀想なエリックがロイド=ウェーバー自身で、可憐な歌姫クリスティーヌ・ダーエがロイド=ウェーバーの妻であるサラ・ブライトマンで、彼が彼の歌姫ブライトマンへ贈ったラブレターが、ミュージカル『オペラ座の怪人』なんだと思う。

だからこそロイド=ウェーバーとしては、ぜひともエリックに感情移入してもらわなくてはいけない。だってエリックは彼自身なんだから。というわけで、ラウルはちょっと頭空っぽみたいにされてしまったと。


でも今作はロイド=ウェーバー版じゃないので、そういう風にはなっていない。ラウルはしっかりしているし、どちらかというとエリックの方が馬鹿みたい。

なのでロイド=ウェーバー版のファンの方は、このロン・チェイニー版を見る時はそのへんを留意して見てみてください。


 
以上、「オペラ座の怪人」1943年版につづきます(近日予定)。
 
 


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