エムログ

古い映画を中心に、本、仕事・・・etc. 驚くほど忘れてしまうので備忘録として。

【映画】「百万弗の人魚(1952)」~エスター・ウィリアムズ シリーズ完結~

f:id:msan1971:20190620021939j:plain


題名 百万弗の人魚 
監督 マーヴィン・ルロイ
出演 エスター・ウィリアムズ、ヴィクター・マチュア、ウォルター・ビジョン
上映時間 115分
制作年 1952年
制作会社 MGM
制作国 アメリカ
ジャンル ミュージカル、伝記


「いよっ! エスター!千両役者!」とか書きたいなー (*'▽') くらいの軽い気持ちで見たら思いがけず面白かった。エスター・ウィリアムズものとして「世紀の女王」「水着の女王」に続いての鑑賞だったし、題名からして前2作同様のお気楽MGMミュージカルで、「エスターがすごく泳いでくれるといいな」くらいにしか思ってなかった。

途中で「おや?これは今までとちょっと違うのでは」と思って、思わず膝を正しちゃいました。なんか・・・すいませんでした・・・。不真面目に見始めちゃって。先入観を裏切られる良さだった。

「アメリカ的良心見本市」みたいに登場人物が全員が善人で、父親から裁判官、ヒポドローム・シアターのオーナー、バレリーナのパブロワ、蒸気機関車の車掌に至るまで、やたらと「いい人」ばかりが出てくる。でもそこはまあ「ハリウッド映画らしいな」「安心の品質」「JISマークついてます」みたいなもんと思います。


今作は「世紀の女王」「水着の女王」とはそもそもコンセプトから違っていて「実話の映画化」だったんですね。1910年代ごろ、アネット・ケラーマンという女優がいたそうで、彼女の伝記映画でした。エスターにぴったりの題材。


映画によれば、アネット・ケラーマンは19世紀末のオーストラリア生まれで、父親は音楽家だったらしい。子供の頃は小児麻痺かなにかで足が悪くて下肢装具を着用していたが、泳ぎが得意なことが発覚し、父親の愛情あふれる理解と惜しみない協力を得て、水を得た魚のように泳げるようになる。

その後はまず水泳選手として名を馳せて、父親の失業とともにロンドンへ渡り、船の中で興行師サリバンと出会う。サリバンに「10km泳いだら有名になる」と言われ、アネットは「40km泳ぐ」と言い、テムズ川を完泳して時の人となる。

気をよくしたサリバンとアネットは「チャンス到来」とNYへ渡って、当時最大の劇場だったヒポドロームに売り込むが失敗。前回同様、遠泳での話題集めを試みるが、アネットが着ていた水着の露出が大きかったことが騒ぎとなって逮捕され、裁判ざたとなる。しかしアネットは双方の意見の妥協点を見出して、より露出が小さく、しかも水の抵抗も少ないタイトな水着を提案して勝訴。

以降はサリバンと共にカーニバルの出し物として水泳ショーをおこない、人気を博す。その結果、一度は断られたヒポドロームから出演オファーが届き、水中ショーを披露。アネットは一躍大スターに躍り出て、映画デビューも果たし、サリバンと結ばれる、という話。

f:id:msan1971:20190620022349j:plain


いくつか触れたい点があるけど、まずは「エスターはどのくらい泳いでいるか」。

泳いでます。それもかなり。

もうサーカス並みのアクロバティック・シンクロナイズド・スイミングといいますか、すべり台を立ったまま滑り込んでくるわ、空中ブランコから飛び込むわ、吊り輪に捕まって天井に吊り下げられてそのまま落ちたりしてる。

アート的な演出も盛りだくさんで、水中バレエとか、ヴィーナスの誕生的に貝殻におさまるわ、バースデーケーキに差してあるみたいなバチバチ火花と一緒に水中に消えていくわ、もう見どころだらけ。きれい。

しかも当然「笑顔で水中から現れ、笑顔で水中に消えていき、笑顔で水中で泳ぐ」という、カメラ目線&笑顔のオンパレード。

エスター、あんたすげえよ。たいしたもんだ。ますますファンになった。

これで決してバカっぽくないのがいいんです。彼女はバレエの素養とかもあって、動きが美しいことがバカっぽくならない理由のひとつに挙げられると思う。所作がとても美しい。訓練された美しさ。知的にすら見えるもの。


でも映画は過去の映像も使われていた。なんで? 全然関係ないのに不思議。カットされたシーンとかじゃ全然なくて、思いっきり「世紀の女王」の映像が挿入されている。そういうことするんだね、いいんだけど。

f:id:msan1971:20190620022850j:plain


次は「ヒポドローム・シアター」でしょう。

1905年から1939年までNYにあって、5300席もある巨大な劇場だったらしい。今作で大活躍の「水槽」は、高さ4.3 m、直径18 m、3万リットルが入る透明なガラス製の水槽があったというから驚き。

映画セットのヒポドロームは伊達ではなさそう。すごいんですよ。劇場がスペクタクル。

劇場は最終的に経営に失敗して閉鎖されたよう。残念だけど、大恐慌もあったから無理もないか。

f:id:msan1971:20190620022603j:plain


次に、やはり「水着の話」。

当時は男性水着がワンピースで上下がつながってて、上は肩が出るランニングスタイル、下は膝上半ズボン。

女性は「どこが水着なのだろう。溺れるのでは」というような、なんていうんだろう・・・「服」?。 ←おまえ語彙! (; ・`д・´)。

エスターが着ている水着なんて、エスターはグラマーだからそりゃあ男性陣は食いつくだろうけど、別に大したことないっちゃ大したことない。そこが時代というやつで、当時としては敬虔なピューリタンたちにとっては許しがたいことだったのだろう。

そこへ女性解放運動の一環としてアネットにスポットが当たり、彼女も使命に応えていく、みたいな図式かな。

f:id:msan1971:20190620022629j:plain


女性パイオニアたちというのは、さぞかし苦労が多かっただろうと予想される。闘うべき相手は「男尊女卑」的な思想だから、つい男性相手に闘えばよいのかと思いきや、当然同性の抵抗もねばっこくある。

なにかのスポーツに初めて女性が参加した時(マラソン・・・だったと思うけど・・・)、沿道から罵声がとびかって、それが「女は家で洗濯してな!」というもので、しかもそれを言っているのは専業主婦層だった、という話を読んだことがある。

ありそうな話だ。「私の生き方を否定するような選択は許さない!」というわけか。

そしてこの映画の父やサリバンのように進歩的というか公平な男性も多いだろうから、そう単純に「男vs女」の図式には、ならないよね。

ま、この映画では、アネットの裁判沙汰はサリバンが「これをやればそうなるだろう」と見越して計画した、アネット売り出し作戦だったというオチがついて、アネットちょっと怒ったりしてたけど、私はこのくだり好きです。「サリバン! すごい! 頭いい! 頼もしい!」って思った。

f:id:msan1971:20190620022912j:plain


ところでアネット・ケラーマンって、ちゃんと美人なのね。エスター・ウィリアムズだから相当美化してるかと思いきや、アネットちゃんと美人。日本版Wikipediaだと写真が一枚しか載ってなくて、しかもあんまりよくない。英語版の方を見てみると4枚写真がついていて、下の方の2枚は、うんきれい。知的な感じで私は好きな顔。やっぱりほんとうにスターだったんでしょう。

映画が残っていないのが惜しまれる。Wikipediaにはおそらく代表作なのだろう「神の娘」だけ記事があって、それによると、

『ウィリアム・フォックスが100万米ドル(当時の日本円では220万円)の巨費を投じ、ジャマイカのキングストンに巨大なセットを建てて撮影した、180分の巨篇である。
日本では、1918年(大正7年)に公開されたが、当時、京都・新京極の帝国館が掲出したポスターの記述によれば、「全長壱萬呎」(1万フィート)、「出演俳優 21,218人」、「矮人国の童人 12,000人」、「人魚の数 200余」、「鰐魚 80余頭」、「消費フィルム尺数 22万3,000呎」とし、「本映畫の出現は正にキネマ史上に於ける一大奇蹟たり」と謳われている。
スチル写真は残されているが、プリントは現存していない』
(Wikipedia 『神の娘』より引用)

 
とのこと。見たい。一大スペクタルじゃないですか。しかもサイレントで180分。ちなみにアネットはスター初のフルヌードを披露しているそう(写真は検索できますけどね)。


実際のアネットの情報はとても乏しかったので、映画はどこまでが事実で、どこからが脚色なのかは分からなかったが、彼女が水泳ショーで大スターになったことは事実だし、映画も10本以上撮影されているらしいが、フィルムは残っていなさそう。サリバンと結婚したのも事実っぽいが、怪我のことやヒポドロームのオーナーと結婚した?のかは分からない。彼女はシンクロナイズド・スイミングを普及に貢献するなどのショー・ビジネスだけでなく、健康や美容、フィットネスの普及にも努めたらしいから、ユージン・サンドウの女性版みたいな感じなのかな。

サリバンに関しては全く情報がないが、映画では「名犬リンチンチン」のマネージャー的な役回りになっていたけど本当かなあ。ちょっと信じられない。リンチンチン検索もしてみたけど、サリバン探しは挫折しました。


これで一応、エスター・ウィリアムズ3部作は完結です。
ありがとうございました。


 




【関連記事】エスター・ウィリアムズ主演作 

www.mlog1971.com

www.mlog1971.com

www.mlog1971.com