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古い映画感想ブログです。驚くほど忘れてしまうので備忘録として。

【映画】「タイタニックの最期(1953)」 ~大人のドラマ仕立てのタイタニック~

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題名 タイタニックの最期
監督 ジーン・ネグレスコ
制作 チャールズ・ブラケット
脚本 チャールズ・ブラケット ほか
出演 クリフトン・ウェッブ、バーバラ・スタンウィック、ロバート・ワグナー、セルマ・リッター
上映時間 98分 
制作年 1953年
制作会社 20世紀フォックス
制作国 アメリカ
ジャンル 歴史、50's、モノクロ、パニック映画、アカデミー脚本賞


素晴らしかった。感動した。やはりどうしてもあの大ヒット作、ジェームズ・キャメロン版「タイタニック」と比較してしまうが、全く引けを取らない名作だと思った。特に主人公スタージェスの人物像がいい。頑固で傲慢な上流階級の男として登場するが、ラストに向けてグイグイ男を上げていく。上流階級に属する人間の「美学」「責任」を感じた。

私はキャメロン版「タイタニック」は嫌いじゃなくて、タイタニック号が主役として見れば名作だと思う。レオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットのラブ・ストーリー映画としては全然評価しない。あくまでもタイタニック号が主役として見る。

たぶんキャメロンにとってもラブ・ストーリー部分はどうでもよくて、大きくて広いタイタニック号を隅々まで見せるために二人を設定しただけだと思う。下層階級のレオと上流階級のケイトが出会い、恋に落ちて、あの広いタイタニック号を二人でやたらと走り回って、「はい、ここが一等客室です!こちらが三等客室でーす。全然違いますねー、行き来もできないんですねえ!」「ここがボイラー室で~す。労働者が炭だらけになって石炭をくべていまーす」「こちらが上流階級の方々用の食堂でーす」という感じに見えて、「ああ、二人はガイド役なんだなあ」と思った。

今作「タイタニックの最期」も、キャメロン版ほどあからさまではないが、そういった構成は基本的に同じ。というか、キャメロン版「タイタニック」が今作と同じ構成なのだけど。

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主人公スタージェスはヨーロッパの上流階級の男。妻はアメリカ人で娘と息子がいる。夫婦仲は冷めきっていて、妻は二人の子供を連れて生まれ故郷のアメリカへ渡ろうと、タイタニック号に乗船していた。スタージェスは三人を追ってタイタニック号に乗ろうとするがチケットがないため乗船できない。

そこでスペイン系の労働者から大金でチケットを強引に購入し、なんとか乗船することが出来る。家族と合流したスタージェスは妻と話し合うが、ヨーロッパで上流階級の生活を子供たちに送らせたいスタージェスに対して妻は子供達を生まれ故郷のアメリカで育てると言って譲らない。そんな夫婦喧嘩をよそに、娘のアネットはアメリカの大学生ギフと出会って猛烈なアプローチを受ける。

ということで、上流階級、労働者階級、若者の恋愛模様がそろって、タイタニック号の中をキャメロン版のようにあちこち見せてくれる。物語に沿ってタイタニック号のなかを見られるから自然で効果的。

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ただ、この新旧タイタニック映画を見て、個人的には旧版「タイタニックの最期」に軍配を上げたい。

なぜならキャメロン版はガキのラブ・ストーリー仕立てだけど、今作「タイタニックの最期」は夫婦のドラマが中心になっているから大人のドラマ仕立てなのですよ。

ヨーロッパの上流階級に属するスタージェスとヤンキー育ちの妻との身分違いの結婚の結末とか、階級社会に属するスタージェスとリベラルな妻の文化的な違いとか、そこからくる子育て方針の違いとか、はたまた子供達との意見の相違とか、悩みの内容も大人向け。子供の客を全然想定していない作りになっているところが好感が持てる。

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主人公スタージェスは上流階級の男で、避暑地から避暑地へヨーロッパ中を渡ってホテル暮らしをしている資産家で、そういう生活に自信と満足を感じている。逆にそういう生活に嫌気がさしている妻とは当然折り合いが悪くて、もうすっかり冷めきっているけど、絶対的に自信があるスタージェスは自分が歩み寄る気は全くない。

でも子供たちのこともあるから無理やりタイタニック号に乗り込んで、妻と話し合いをしようとする。でも決裂。おまけに息子ノーマンは自分の子じゃないと知らされるはめになって、ちょっとグレて賭け事ばかりしてノーマンを邪険に扱ったりする。

でもタイタニック号が氷山にぶつかって家族の生命の危機と悟ったとたんに、頼りがいのある責任感の強い男ぶりを発揮し始める。「女と子供を優先する。男の分の救命ボートはない」と船長から聞かされたスタージェスは、すぐに覚悟を決めて、家族やほかの女子供のためにテキパキと動き始める。

まず家族を安心させるようあえて落ち着いた素振りをみせて、「たいしたことじゃない。ただの宣伝のための予行練習だろう」と嘘をつくところが男前。そして家族3人の救助の段取りをつけると、すぐに3等客室に向かい、自分にチケットを譲ってくれた男の家族を救いに行く。

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なんていうのかなあ。最初にも書いたけど、上流階級に属する男の責任を感じたんだよね。支配階級っていうのかなあ、エリートの自覚、美学を感じた。

私は常日頃から、エリートは優秀だからエリートなんだし、優秀であるということは大勢の平凡な人間の上に立っているわけだけど、それは搾取するためではなく守るためだと思う。能力があるということは、そうでない人間を守る責任があるし、そういった美学を持ってほしいものだとつくづく思っているから、私にとってスタージェスはその鏡みたいな男だ。かっこよかった。チケットを譲ってくれた男の家族には最初から優しかったしね。

最後はそんな父親を慕う息子ノーマンと共に、沈没するタイタニックと運命を共にする。ハッピーエンドじゃないけど、良い映画だった。アカデミー脚本賞を取ったらしいけど、それも納得。

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キャメロン版でキャシー・ベイツがやっていたモリー・ブラウンに相当する成金女性もモード・ヤングという名前で出てくるし、ビリー・ゼインが演じたローズの婚約者みたいに卑劣な男もちゃんとでてくる。モードとずっと一緒にいた男ミーカーが、女の振りしていつのまにかボートに乗っていて、モードに見抜かれていた。まあ「命あっての物種」だしね、私には非難できません。

モブキャラたちもいい役割をしてる。映画の最後の方、老夫婦の婆さんの方が「私は年寄りだし、夫と離れられません」と言って救命ボートに乗り込むのを断ったその後ろにもう一組老夫婦がいて、そっちの婆さんが代わりにボートに乗っていた。後ろの爺さんの心境やいかに。

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