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【映画】「オペラ座の怪人(1962)」 仮面はいらない気がする ~ハーバート・ロム版~ 


おすすめ度 ★★★★

題名 オペラ座の怪人 
監督 テレンス・フィッシャー
原作 ガストン・ルルー「オペラ座の怪人」(1909年)
出演 ハーバート・ロム、マイケル・ガフ、ヘザー・シアーズ、エドワード・デ・スーザ
上映時間 84分
制作年 1962年
制作会社 ハマー・フィルム・プロダクション
制作国 イギリス
ジャンル 怪奇
 
 

映画の概要

なんなのー、いきなりー。スケキヨかと思ったー。こわーい。(´▽`*)

見終わった感想を一言で言えば、「12チャンネルの昼間に見るとしっくりくるな」という感じ。深夜放送とかではなく、12チャンの昼間。うん、ぴったり。


どうやらこの映画を制作したのは、ハマー・フィルム・プロダクションという怪奇ホラー専門のスタジオで、ドラキュラ物やフランケンシュタイン物を数多く制作するスタジオだったらしい。他にはミイラとかゾンビとか、かなり古典的なホラー映画が多かったよう。70年代に入ると、こういった古典的怪奇映画は流行らなくなり、会社は倒産してしまう。

そんなハマー・プロが、いわゆるホラーとはすこしテイストの違う怪奇ロマン「オペラ座の怪人」を映画化。原作とはかなり異なった作品になっている。


私はホラー映画は苦手なのでほとんど見たことがないのだが、でもこのテイストなら行ける。最初だけ「うわー」と思ったが、あとは全然大丈夫、怖くなかった。

しかし「オペラ座の怪人」シリーズはすごいと思う(シリーズなわけではないけれど)。どれを見ても、どう転んでも見どころしかないというのは奇跡的。
 
 

Di Pinket - screenshot catturato da me, Copyrighted, https://it.wikipedia.org/w/index.php?curid=5064109
 
 

原作との違い(簡単なあらすじつき)

基本的な「オペラ座の怪人」のストーリーを平たく言えば、オペラ座の地下に住む、仮面で顔を隠した男ファントムは、劇場に所属する新人歌手クリスティーンの才能と美貌にあこがれて、彼女を自分だけのものにしようとするという、言ってみれば「超極端なストーカー男の純愛と失恋の話」だ。

ガストン・ルルー原作の「オペラ座の怪人」は、その怪奇趣味や独特な偏愛ぶりなどから多くの映画人や舞台人に愛されて何度も映像化、舞台化されている。

その中には大幅に脚色された作品も多いけれど、今作もご多分に漏れず、原作とはかなり主題が変更されていた。



まず怪人は、名前がエリックではなくピートリー教授という名前で登場。しかもファントムとは全く呼ばれていなかった。


ピートリー教授は売れない音楽家で、10年かけて作曲した楽譜をダーシー卿に売り込みに行くが、ダーシー卿はその楽譜を盗み自分の名で印刷を開始する。楽譜が盗まれたことを知ったピートリーはダーシー卿に詰め寄るが手ひどく追い払われる。激高したピートリーは印刷所へ入り込み、楽譜を破り火で焼こうとするが、誤って硝酸を浴びて大やけどを負ってしまう。たまらずピートリーは川へ飛び込み、そのままオペラ座の地下へ流れ着き、助けてくれたせむし男と共に、ダーシー卿の名で上演される自分のオペラ「ジャンヌ・ダルクの悲劇」の上演を妨げはじめる。


というわけで、ピートリーはクリスティーンに恋をしたり、憧れるということはまるでない。

ただの個人的な復讐の鬼だった。

クリスティーンなぞ自分のオペラを成功させるための手段のひとつにすぎない、という感じ。
 
 
 
 

トレードマークの仮面の役割について

エリック(ファントム)といえば仮面。仮面といえば「オペラ座の怪人」てなくらいで、ファントムにとって仮面は顔の一部。

きっと私のメガネとおんなじでしょう! 私は寝る時とお風呂以外はメガネをつけていますから!


ではなぜファントムが仮面をつけているのかというと、本来の(原作などの)ファントムは生まれつき、あるいは途中でひどく醜い男になってしまって、そのことに強いコンプレックスを持っているという設定。

そして醜い自分が、若く美しく才能のあるクリスティーンに恋をしてしまって、その報われない愛にもがき苦しむ。

彼女の前に恋愛対象として登場するためには、醜い顔をどうしても隠す必要があった。


けれど、今作のピートリーはそういったことは全くない。ロマンスの要素はピートリーには全く背負わされていない。

自分の楽譜を盗まれた復讐と、自分のオペラを自分の作品として成功させることだけを考えているというキャラクター。

 
・・・ってことは、仮面いらなくない? (; ・`д・´)


だって本来のファントムは、母親にも愛されないほど醜く生まれて、クリスティーンに恋をしても、普通の人間の男として彼女の前に登場できないから、だからどうしても仮面が必要だった。

ファントムといえば、音楽的才能にあふれ、美しい声を持ち、情熱的な愛と頼りがいもある、本来なら二枚目な男だ。

だけど顔を合わせた途端、全力で拒否されてしまう男でもある。原作だと「ママにもキスされたことがない」って言ってるんだよー。 かわいそうなファントム (ああ涙)


でも今回のピートリーは、中年で、というか熟年と言ってもいい歳で、顔の傷だって自分の不注意でヤケドしただけだし、なんと言ってもクリスティーンに恋してないんだし、「ずっと地下から出ないだろう」って自分でも言ってたし、別に顔を隠す必然性はなさそうよお。

映画前半なんてほとんど登場せず、なぜか、せむし男の方が活躍してる感じだったし。

私には仮面をつけている必然性が感じられなかったなあ。
 
 

 
 

かなりスパルタなクリスティーンとの関係

ところで、ピートリーは結構エキセントリックで、終盤いよいよクリスティーンの歌のレッスン開始となると、上手く歌えないクリスティーンを手の甲で往復ビンタするわ、気絶させるわ、水をかけて起こすわ(しかも汚染水)、なかなかのスパルタ。


自分の楽曲が世間に認められるかどうかがクリスティーンにかかっているとはいえ、あまりにもやりすぎ。

でも最後はクリスティーンの将来に期待するような発言や行動があって、多少はクリスティーンに対する愛情も感じられるのだった。わずかにだけど。
 
 

B級ならではの演出が光る(定番との違い)

他にも定番との違いはいくつもあって、ピートリーの仮面をクリスティーンが剥ぐのかな? 剥ぎそうだな、と思いきや、剥いでいたのはダーシー卿だったり。え?みたいな。


シャンデリアも落ちることは落ちるんだけど、あんまりゴージャスじゃないシャンデリアで、シャンデリアというより大きな鉄のロウソク台(燭台)といった武骨なやつだったり、

落とすのもピートリーが落としたわけではなくて、せむし男が天井から落ちそうになって捕まった結果落ちただけ。


そんな中、「おや!」とテンションが上がったのは、その落ちるシャンデリアの真下にいたのがクリスティーンで、クリスティーン危うし!!となったピートリーが、いきなり的に仮面を「ガバア!」と剥いで火傷だらけの顔をさらし、たぶん5番ボックスなのだろう席から舞台めがけて空中を飛んでクリスティーンを守りに行っていた! 

こ、これは!!


ワロタ。なぜそこで仮面をとる(笑) そしてヒゲ!ヒゲ!


仮面「ガバア!」からの、傷だらけの顔が「ババアアアン」とアップ!からのジャーーーンプ! みたいな演出が昔の大映ドラマみたいだった。おもしろかったなー。



ま、要するに終始B級感が否めない作品で、そこがすごく面白い。


でも最も「ああB級だなあ」と思わされたのはクリスティーン役の女優さんですかねえ。彼女が最も12チャンネルの昼間感があった。なんかあんまりロマンチックなお顔立ちじゃなかったし・・・。

あと、せむし男が2人も殺してるんだけど、なんで殺したのかが全然分からなかった。ピートリーは、「やつは時々手が付けられなくなる」って言ってたけど、それだけで片づけるのはどうかと思うのだが・・・。「やつは口がきけないから永遠に謎のままだろう」って・・・おい。

とはいえ見甲斐のある、面白展開だった。見る価値は間違いなくある。


なにはともあれ「オペラ座の怪人」シリーズも、当ブログで取り上げるのはこの3作品で一旦終了(だってあとは手に入りにくいから)。

みなさんも見比べてみてはいかがでしょうか。
 
 
 

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