エムログ

古い映画感想ブログです。驚くほど忘れてしまうので備忘録として。

【映画】「地球の静止する日(1951)」~題名と違って、地球は止まらない~

f:id:msan1971:20190627204902j:plain


題名 地球の静止する日
監督 ロバート・ワイズ 
原作 ハリイ・ベイツ 「主人への告別」(1940年)
出演 マイケル・レニー、パトリシア・ニール、ビリー・グレイ
音楽 バーナード・ハーマン
上映時間 92分
制作年 1951年
制作会社 20世紀フォックス
制作国 アメリカ
ジャンル SF、50's、モノクロ 


題名をみて「ええー、突然地球を止めたら慣性の法則でみんな宇宙に吹っ飛んじゃうんじゃないの? いくら50年代のSFでもこれはひどい」と思ったけど、違ってた。地球は全然止まらなくて、機械が止まってた。

・・・全然違うじゃん。原題が「The Day the Earth Stood Still」だから誤訳というわけでもない。んー・・・なにか大掛かりなことが起こりそうな雰囲気は伝わるから・・・いいか。

とはいえ、かなり真面目なSFで、見ていて楽しい娯楽作というよりも、平和プロパガンダ映画みたいだった。ほんと真面目。

f:id:msan1971:20190627205114j:plain


宇宙人クラトゥと宇宙警察ロボットのゴートが、宇宙をはるばる地球まで説教師にやって来るという話。

クラトゥに言わせると、地球人が銃とか戦車とかで戦っている間は「まあいっか、好きにやらせてやろう」という感じで、地球にはさほどの関心もなく今まで放置してきたが、最近原爆を使用し始めたことから、近隣に迷惑がかかると良くないため、忠告しにやってきたとのこと。ロボットのゴートは、言ってみれば宇宙の平和と規律を守る「宇宙パトロール」のような存在で、逆らうと地球を破壊するほどの力を持っているらしい。

地球人だけで仲良くしているうちは好きにしてていいよ、でもこれ以上外に行くんなら言うこと聞かないと地球が爆発するよ、こっちの言う事を聞けば限定された自由を与えるよ、とも言っていた。

すごい。有無を言わさない圧力。平和を暴力で実現しようというやり方。すごーくいい人風に見せておいて、しっかり凄みも効かせるという一番怖いやつ。善良な監視社会。

f:id:msan1971:20190627205306j:plain


クラトゥの言っていることから想像すると惑星間連合みたいなのがあって、みんなそこに加入していて平和を維持してる。で、平和や正義をロボットにまかせて判断させている、ということだったと思うけど、なんか・・・もやっとするなあ。大丈夫かなあ、そのやり方で。

ちょっと70年代の竹宮惠子の漫画「地球へ・・・」を思い出した。コンピューターを「マザー」とか呼んで、完全に信頼しきっていたよね。でも最後は反旗をひるがえすの。

クラトゥの言う宇宙人コミュニティに加入しているような高度に発達した惑星の宇宙人たちは、みんなクラトゥみたいな人なんだろうか。

みながクラトゥみたいだとすると、節操があって常識があってモラルがあって、淡々と、粛々と・・・欲望がなさそう。なんかちゃんとしすぎていて、いまひとつ面白みに欠ける気が。

何のために生きてるんだろう。理想か? 高度な知性で知的好奇心だけで生きてるのか?

誰の言葉だったか忘れたが、「私は、天国の退屈さよりも地獄の多彩さを好む」というのを読んで、「私も!」と共感した者としては・・・ちょっと未来が心配。別に悪が栄えることを望んでいるわけじゃないけど、全員が善人の世界に生きたいとは、思わないんだよね・・・。天国というところに対して不信感がある。

ぜひ「多彩な天国」を望みます!

f:id:msan1971:20190627205424j:plain


ところで監督がロバート・ワイズだった。ロバート・ワイズと言えばすぐに「ウェスト・サイド・ストーリー」とか「サウンド・オブ・ミュージック」が頭に浮かぶ名監督だが、意外とこういうSF映画も監督している。

「アンドロメダ・・・」はともかく、「スタートレック」の映画化第一作目もロバート・ワイズだったとは気づかなかった。私、トレッキーとは言えないまでもスタートレック・ファンなのに、あんまり監督に注目してなかったから気付かなかった。かなり幅の広い職業監督タイプなんだなあ。


ちなみに2008年のキアヌ・リーヴス版は「地球”が”静止する日」で、オリジナルは「地球”の”静止する日」です。

キアヌ版も、テーマこそ「核」から「環境汚染」へと変わってるけど、かなりオリジナルを踏襲していて好感が持てた。「クラトゥはなぜ人間そっくりの風貌をしているのか」「銃で撃たれた傷がすぐに治る理由」「クラトゥの超人的な力」などの説明もなされて説得力が増していたし、もちろんエンターテインメント性は大幅にアップしていた。ちょっとCGが安っぽいのと、地球が静止するタイミングが違っていて私には意味不明だったけど。

そしてキアヌは「マトリックス」に引き続き、またもや「ヌルヌル」になっていた。よかったらぜひ見比べてみてください。