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【映画】「ある日どこかで(1980)」 超ロマンティックなタイムトラベル・ラブ・ストーリーの傑作

 


おすすめ度 ★★★★

題名 ある日どこかで(Somewhere in Time)
監督 ヤノット・シュワルツ
脚本 リチャード・マシスン
原作 リチャード・マシスン 「ある日どこかで(Bid Time Return)」1976年
出演 クリストファー・リーヴ、ジェーン・シーモア、クリストファー・プラマー、テレサ・ライト
音楽 ジョン・バリー
上映時間 103分
制作年 1980年
制作国 アメリカ
ジャンル SF、タイムトラベル、ラブ・ストーリー
 
 
70年前の女優に恋をして、「こけの一念、岩をも通す」並みに ”気合で” タイムトラベルする男の話です。タイムトラベルと聞いて一般的に思い浮かべるのはドラえもん的なタイムマシンに乗って過去や未来に向かう方式だと思いますが、この映画は違います。完全に気合い(思い込み)だけで過去へ行くところがこの作品の肝です。

そういう極めてロマンチックなラブストーリーで、カルト的な根強い人気を誇るSF映画でもあるのですが、残念ながら公開当時は全くヒットせず、TV放送やDVD、衛生放送などからじわじわと火が付くという、カルト化の王道をいった映画でもあります。
 
昔は知る人ぞ知る映画でしたが、今や有名作となりました。

 

あらすじ

時は1972年。新進気鋭の劇作家のリチャードは、舞台の打ち上げで見知らぬ老婆と出会います。彼女は「帰ってきて」という謎の言葉と古い懐中時計をリチャードに手渡して去っていきました。
 
その後、売れっ子劇作家になったリチャードはスランプにおちいって、気分転換にグランドホテルを訪れます。そしてホテルの展示室に飾られた美しい女性の写真に一目で恋をしてしまいます。
 
熱に浮かされたように彼女のことが頭から離れないリチャードは、彼女が何者なのかを調べ始めます。子供のころからホテルで働いている老人アーサーや、町の図書館、果ては彼女の自宅まで訪ねていきます。
 
その結果、彼女はエリーゼ・マッケナという70年以上まえの人気女優で、1912年に引退し1972年に亡くなっていることを知ります。それだけでなく彼女は8年前、まだ自分が駆け出しだった頃の舞台の千秋楽に現れて、「帰ってきてね」の言葉と懐中時計を手渡していったあの老婆だったのです。
 
そして彼女が、リチャードにくれた懐中時計を生涯肌身離さず大事にしていたこと、リチャードの舞台を見たその晩に亡くなったこと、リチャードの大学時代の哲学教授が書いた本「時の流れを超えて」を愛読書としていたこと、リチャードと同じくラフマニノフの「パガニーニのラプソディー」を愛していたことなど、多くの点で自分と関連していました。さらには活発だった性格が1912年を境に一変してふさぎ込みがちになったことを知ります。性格が変わるほどの出来事とはなんだったのか。謎が深まります。
 
そこでリチャードは彼女と出会うために過去へいく方法を探り始めます。タイムトラベル研究者のフィニー教授のもとを訪ね、時を超える方法を教えてもらいます。その方法とは「自分に暗示をかけること」「あらゆる現代のものを身の回りから排除し、自分は過去にいるのだと100%信じること」でした。
 
リチャードは早速準備をして時間旅行に挑みます。しかし「過去へ行けるという確信」が持ちきれずに失敗してしまいます。
 
リチャードは、1912年のホテルの宿帳に自分のサインがあれば、間違いなく自分は1912年へ行きエリーゼに会っていることになると気づきます。そして1912年の宿帳を確認すると、はたしてリチャードのサインはありました。
 
今度は自信を持って時間旅行に挑みます。そして目が覚めると、そこは1912年のグランドホテルでした。
 
そしてリチャードとエリーズはもちろん出会い、エリーズの方もリチャードに一瞬で恋に落ちます。しかもエリーズは、まだ見ぬリチャードを待っていたのだと言うのです。さらには恋敵としてエリーズのマネージャーであるロビンソンも登場し、二人の関係を妨害しようと画策します。
 
その後の結末については、ぜひ映画をご覧になっていただきたいと思います。

 
 
 

スタッフと俳優

この極めてロマンティックな映画を撮影した監督は『ジョーズ2』のヤノット・シュワルツ。私は他の作品は見ていないので傾向が分からないのですが、これからも見ないないかもしれません笑。

でも『スーパーガール(1984)』はそのうち見てしまうかもしれないです(後述しますがスーパーマン・シリーズは結構見ているので)。それとTVシリーズの『ヤング・スーパーマン』シリーズも手掛けているようで、やっぱりちょっと興味ありますね、、、見る機会があれば見てみたいものです。


流麗な音楽を担当しているのは、巨匠ジョン・バリーです。加えてラフマニノフの楽曲が使用されています。音楽もロマンチックでいいんですよ。私はサントラも持ってます。ジョン・バリーは説明するのが困難なほど多くの映画音楽を手掛けている大作曲家です。もうあれもこれもそれもジョン・バリーなんじゃないかと思うほど。あまりにも多いのでWikipediaのリンク貼っておきますから、興味のある方は確認してみてください。私が特に印象に残っていて好きなのは『さらばベルリンの灯(1966)』です。映画も好きな映画なのですが、見ていて「いい音楽だな」と身に染みました。来てほしい時に来てほしい音楽がくる感じ。


ja.wikipedia.org





配役は、主役のリチャード・コリア役に『スーパーマン(1978)」に出てスターになったばかりの頃のクリストファー・リーヴ。

彼は二枚目なんですけど、ルックスがちょっと個性的なので、好き嫌いが分かれるかもしれません。私はクラーク・ケントが好きなのでシリーズ全部を見ているのですが、クラーク・ケントのファンでクリストファー・リーヴのファンなわけではなくてですね、、、、つまりはそういうことです。

ところで彼は1995年に落馬事故にあって首から下が不随になり、車椅子生活になってしまいます。当時、映像を見て結構衝撃でした。彼は十分有名なのですが、どうしてもスーパーマンしか当たり役がなかったので、活躍していた80年代でもそれほど話題になる感じではなかったんですよね。スターとしては若干落ちる感じで、雑誌とかでグラビアを飾っている感じではなかったです。

でも彼はスーパーマン・シリーズと、この『ある日どこかで』を押さえていますからね、忘れられることはないでしょう。
 
👇 クリストファー・リーヴ

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By Jbfrankel - Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=5731258

 

エリーズ・マッケナ役は「007 死ぬのは奴らだ(1973)」でボンドガールを演じたジェーン・シーモアです。

彼女は(たぶん)この作品が最も当たり役だと思います。とにかく19世紀末のファッションが似合っていて、とても美しいです。また昔の女性が持つ感情を抑えた控えめなところが、美しさに拍車をかけていたと思います。

言い換えると抑圧された美しさ、なのかもしれませんが、私はギラギラして自分の主張を声高に叫ぶ女性は嫌いです。怖いし見苦しいし自分勝手な主張であることが多いと思います。きっと私も男尊女卑なのでしょう。

彼女の作品は他には一本も見ていませんが、プライベート写真などを見ると、残念ながらエリーズ・マッケナのような女性ではなさそう。
 




そしてエリーズのマネージャーであるロビンソン役には『サウンド・オブ・ミュージック(1965)』などの名優クリストファー・プラマーです。

彼はカナダ出身ですが、英国紳士風のたたずまいが魅力で、繊細な王子様系ではなく、内実が伴った大人の男の美しさがある俳優です。王子ではなく王の貫録。

プラマー出演作では『黙秘(1995)』が印象に残っています。あの時のプラマーが演じた役は、ネチネチとしつこく執拗に主人公を追っている、クセの強い刑事役でした。映画自体良く出来ていて、かなり重い映画ですが私のお気に入りの一本です。
 
👇 クリストファー・プラマー

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By Carl Van Vechten - Van Vechten Collection at Library of Congress, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=276599

 
 

解説

実は私は恋愛映画(ドラマ)がほんと嫌いで、「馬鹿みたい。くだらない」って思っちゃうタイプの女なのだけど、こういう ”一途” という言葉をはるかに超えた、常軌を逸した恋愛ものは好きなのでこれはハマりました。タイムトラベルものも好きですし。

 
今回この作品を選んだのは、前回あげた映画『赤い靴(1948)』のレルモントフとヴィッキーの関係を見ていたら、この『ある日どこかで』のロビンソンとエリーズを思い出したからです。

 



バレエ映画である『赤い靴』のレルモントフとヴィッキーの関係は、芸術に人生をかけ、高く高く深く深く、真の芸術に迫っていこうとするレルモントフと、そのレルモントフに見出された才能ある踊り子という関係で、せっかく育ててきたヴィッキーがいよいよこれから本格的にスターになるという大事な時に、ヴィッキーの恋人ジュリアンが彼女をさらっていってしまってレルモントフは激怒します。
 
このロビンソンとエリーズもそれと似た関係です。レルモントフほど芸術の高みに挑む二人ではありませんが、ロビンソンは16歳で場末の劇場に出演していたエリーズの才能を見出し、二人三脚で育て上げ、エリーズの女優としての成功のために献身しています。そこへ突然リチャードが現れて、あっという間にエリーズの心をかっさらわれてしまって嫉妬する、という設定です。

私はレルモントフとロビンソンの肩を持ちたいですね。
 
『赤い靴』の方は題材も「バレエ」ですし、映画も見るからに「芸術作品」という印象の一方、『ある日どこかで』はあくまでも娯楽作として、設定も含めて、けっして難しくならないように作られているなと思いました。『赤い靴』もぜひ見てほしい映画です。
 
 
 

原作について

この作品はもともと1976年にリチャード・マシスンが出版した『ある日どこかで』が原作です。私は原作も読んでいるのですが、基本的なプロットはほぼ同じなので、どちらを先に鑑賞してもがっかりするということはないのではないかと思います。
 
いくつか変更された設定の中で、最も大きく変更されているのが主人公リチャードの設定です。映画では心身ともにいたって健康な青年として登場しますが、原作では脳腫瘍におかされ寿命が残り少ないという設定です。オチを言う訳にはいきませんが、原作の方がSF度が低い、現実的である、ということになるのだと理解しています。

そのため、物語の結論は同じなのですが、鑑賞後の印象や後味がだいぶ違います。私は映画を観たあと、原作を読んでいるのですが、嫌じゃなかったですね・・・ むしろ色々と考えさせられました。





マシスンは『奇跡の輝き』という小説も書いていて、こちらは地獄に落ちた妻を救うため、天国にいる旦那が地獄まで出かけて行って妻を救おう奮闘する物語です(『奇跡の輝き』も1998年にロビン・ウィリアムズ主演で映画化されています)。

私はどちらも映画を観ているし、どちらも原作をも読んでいるのですが、『奇跡の輝き』の方は天国とか地獄が舞台なので、あまりにも宗教色、キリスト教色が強くてついていけませんでした。正直「マシスンやりすぎ」と思いました笑

でも『ある日どこかで』はそこまでいかないので、安心です。
 
 

モデルのモード・アダムズについて

原作自体もおすすめなのですが、実は小説の「あとがき」がとても充実していて、原作の制作秘話や映画の撮影秘話、訳者がいかにこの作品に入れ込んでいるかなどが丁寧に語られています。
 
中でもエリーズ・マッケナにはモデルとなった女優がいること、モデルになった女優モード・アダムズの略歴などが詳細に語られています。
 
 
要約すると、マシスンは偶然目にした19世紀後半の舞台女優モード・アダムズの写真に目を奪われ、彼女のことを調べ始めます。
 
モード・アダムズは前世紀後半から活躍した舞台女優で、世界中で再演が繰り返されている有名な舞台『ピーター・パン』でピーター・パン役を演じた最初の女優でした。劇作家のジェームス・バリーはアダムズが演じることを前提に『ピーター・パン』を書いたことなどからも、彼女が当時のスター女優だったことがわかります。そして喜劇を中心に出演していたアダムズが、突然悲劇的な作品ばかりに出るようになり、引退してしまったことを知ります。

どうやらアダムズは暗くふさぎ込むようになったようなのですが、その理由は分かりません。マシスンはそれを恋愛によるものと考えて、この小説を書いたそうです。ほとんどエリーズそのままですよね。ロビンソンにあたるマネージャーも実際にちゃんといます。
 
残念なことにアダムズは舞台女優であって映画には出演していないため、動くアダムズを見ることはできません。でも小説のあとがきには彼女の写真も載っていますし、ネット検索すると彼女の写真を何種類も見ることができます(Maude Adams Peter Pan で画像検索するとたくさん出てきます)。

Maude Adams - Google 検索

 
👇 中でも私が最も気に入っているアダムズの写真はこれ 

 
 
アダムズ、かなり可愛いですよね。100年もたつと美の基準も変わりますし、今の感覚で見ると「よくわからん」となることも多いですが、アダムズは今でも通じるかわいらしさなんじゃないかなと思います。
 
個人的には『ある日どこかで』の映画ももちろん良いのですが、現実のアダムズの人生の方に、より強い興味を惹かれる結果になったのでした。

 

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ある日どこかで (字幕版)

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