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古い映画感想ブログです。驚くほど忘れてしまうので備忘録として。

【映画】「透明人間(1933)」 ~グリフィン、いますっぽんぽんなんだなあ、と思うこと請け合い~

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題名 透明人間
監督 ジェイムズ・ホエール
原作 H・G・ウェルズ 「透明人間」 1897年
出演 クロード・レインズ、グロリア・スチュアート
上映時間 70分
制作年 1933年
制作会社 ユニバーサル・ピクチャーズ
制作国 アメリカ
ジャンル SF、モノクロ、30's


「血と肉と骨が消えてしまう薬品を作ったのだよ。それを1か月間毎日注射した。これで世界を征服する」 グリフィンの台詞より


ううん、ちょっと傲慢すぎて主人公に感情移入できなかった・・・。世界征服って言われてもなあ。そういえばポール・バーホーベン監督、ケビン・ベーコン版「インビジブル(2000)」でも欲望を抑えられなくなる系の、人間性悪説な感じだった。きっと原作もそういう感じなんでしょう。原作がウェルズだし。

ウェルズって、結構「邪悪な感じ」が漂う。「宇宙戦争」の火星人とか、「タイムマシン」のモーロックとか。明るく楽観的なジュール・ヴェルヌに対して、暗く悲観的なH・G・ウェルズ。面白いけど重くて考えさせられて、読み終わった後ちょっと凹む。今まで「好き」なような気がしていたけど、本当は「好きかと言われれば、面白いけど好きではない」のかもしれないなあ。

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今作は、H・G・ウェルズ原作の「透明人間」の映画化(未読)。人体を透明にする薬品の開発に成功した科学者が、自らに投与し透明になり、凶暴化して世界征服を企てようとする様が描かれる。

世界征服と言っても、今作でやっていることはだいぶチンケな犯罪ばかり。主人公のグリフィンは相当切羽詰まってるのか、出だしからイライラしっぱなし。ごく普通の人々に多大な迷惑をかけて不愉快にし、自分の思い通りにならないとみるやキレて殺してしまうという程度で悪の美学がない。志が低い。

傲慢、凶暴、暴君と化して、必要もない殺人を次々として高笑い。しまいには意味不明に列車を脱線させて崖から落とし、100人の命を奪っていた。

世界征服いわれてもなあ。言ってることとやってることの落差がありすぎてなあ。それにそれ、透明になった程度でできるかなあ。

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この のけぞりっぷり

一見して、スティーブンソンの「ジキル博士とハイド氏」を思い出した。ウェルズにとってのリスペクト版なのかな。

とはいえ「ジキル博士とハイド氏」の方は、自分でも善良だと思っていて、周りにも善良だと思われていた人物(ジキル)が、実は内面奥深くに享楽に溺れたいという本心が隠されていて、だけど体面を気にするジキルは実行できない。だから薬品を使ってもう一人の自分を生み出し、悪徳をそっちのハイドにお任せしようとする。ところがジキルはハイドをコントロールできなくなってしまう、という話だったと思う。空想科学の形を借りた文学だった。

だけどこっちの映画の方の「透明人間」は、主人公グリフィンの本来の人間性がまったく描かれていないから、本来は善良だったが透明になることで邪悪になってしまったのか、もともと邪悪だったのかがイマイチ分からない。

ヒロインのフローラがグリフィンを愛している様子や、グリフィンが透明化の研究を始めたきっかけが、フローラにふさわしい自分になるため大発明をモノにしたいという恋心だったことを告白しているあたりから、以前はそう悪いヤツではなかったのかもしれないと予想できるけど、映画では「人間とは何か」とかに踏み込む気は全然なくて、透明人間を映像的に表現する特撮部分に焦点を合わせた娯楽作として、わりと表面的な作品にとどまってしまっていた。

原作は未読なんだけどウェルズだから彼の他の小説から推測するに、スティーブンソンほど文学ではないとは思うけど、もう少し深く踏み込んだ作品になっていると予想する。映画「宇宙戦争(1953)」しかり、映画「タイムマシン(1960)」しかり、小説と比べると相当表面をなぞっただけの、ただの娯楽作にとどまっちゃってたしね。ウェルズは原作を読んだ方が面白い。

 

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でも想像するに、透明にって、なりたい?

割と「欲しい超能力」的に扱われることが多いけど、私は・・・やだなあって、この映画を観て思った。すっぽんぽんだからじゃあ、ないよ。

孤独感がハンパなさそう。透明だから誰にも気づいてもらえないの(泣)

現実、私も結構孤独だけど、「いる」もん。街を歩けば、すれ違う人がちゃんと私を認識してよけてくれるもん。電車で座っていたら、誰も私の上には座ってこないもん。だから私は「いる」んだと思う(なんだこれw そこまで孤独じゃないよww)。

だけど、グリフィンみたいに本気で「透明」になっちゃったら、マジで誰も気づいてくれないんだよ。信じられる? 電車で上に座られちゃうよ!

そうやって考えてくと、私もグリフィンほどじゃないにしても、気づいてもらいたくなって看板を倒したり、だれかを小突いたりしちゃうかもしれないなあ。そのうちにもっと悪いことして「ここにいまーーーす!」ってアピールしたく、なるかも。

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ちなみに主人公 ”透明人間” グリフィンを演じたのが、このブログでも記事にしたことがある「オペラの怪人(1943)」でパパ・ファントムを演じていたクロード・レインズだった。

今作では終始包帯ぐるぐるで顔が見えないし、脱げば「透明」という役柄だから、全然どこがクロード・レインズなのかさっぱり分からないw 最後、(私には理屈がわからなかったのだが)死ぬと透明化薬品モノカインの効果がなくなるらしくて姿を現すけど、その時も「う・・・ん、クロー・・・ド・レインズ・・・かな。うん、それ・・・っぽいな。うん」くらいの出方。

「誰でもいいじゃんw」って感じ。でも、それは後から振り返ってみてるから言えること。映画デビュー作品みたいだし、今作が話題になってヒットしたためにレインズも一躍有名になったらしい。

私はクロード・レインズは今作と「オペラの怪人」しか見ていないから、「レインズ、なんかいっつも顔隠してるなw」って思うけど、彼はオスカーに4度もノミネートされる一流俳優なので、私のチョイスの問題だった。

 

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そして(なんにもしてない)ヒロイン、フローラ役のグロリア・スチュアートは、あの「タイタニック(1997)」で101歳のローズをやった女優さんとの事。

65年後くらいだから・・・・こっちはこっちで、ローズ・・・かどうかは全然わかりませんでした。

じゃねー。

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