題名 さらば青春の光(Quadrophenia)
監督 フランク・ロッダム
出演 フィル・ダニエルズ、レズリー・アッシュ、トーヤ・ウィルコックス、フィリップ・デイヴィス、マーク・ウィンゲット、スティング、レイ・ウィンストン
音楽 ザ・フー
上映時間 117分
制作年 1979年
制作国 イギリス
ジャンル 青春、ロック
引用:「俺は同じなんて真っ平だね。だからモッズさ。大物になりたいんだ」主人公 ジミーのセリフ
原作は音楽
同じようにザ・フーのアルバムから作られた映画は他にも『トミー(1975)』があって、すごく有名だから一応見ているけど、抽象的で私にはあんまりよくわからなかった(いつかもう一度見直してみるけど)。
ビートルズもデビュー前のスチール写真や動画などを見ると、ジーンズに革ジャン、リーゼントのロックスタイルだったけど、結局デビューする時にはモッズ・ファッションになっていた。
イギリスっぽくないですか? 上流階級が存在するイギリスならではのファッション・ムーヴメントだと思う。労働者階級しかいないアメリカでは根付かなかったのも頷ける。
👇 モッズ
By Sergio Calleja (Life is a trip) - originally posted to Flickr as Mods, CC BY-SA 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=4235355
By Press Records - Billboard page 35, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=28571874
あらすじ
キャスティングがうまい
登場人物たちは、別段どうってことのない、目立たないごく普通の若者たちという感じ。大スターが出ているわけでもなく、みんなハンサムでもないし、たいした美人でもない。映画の中で ”見た目が良い”ということになっているピーターだって、別に全然格好良くない。
そんな中、ただひとりスティング演ずるエースだけは、さすがに格が違う感じで目立っていた。
学校とかにいたでしょう、仲間内ではカッコいいとか美人とかになっているけど、よく考えてみたら別にどうってことなかったという友達が。それがピーター。
でも都会とか出るとこ出れば、本当に格好いい光るヤツって、いるよねえ。ちょっと格が違うヤツ。それがエース。
そのあたりのキャスティングも、これは特別な物語ではなく、見ている観客が映画館を出た地続きの向こう側にこの物語がある、という感じですごくリアルなのだった。
これは私がいなかった青春。でも私にはジミーの気持ちが分かる。
映画の感想を言えば、大変傑作だと私は思った。わたし、このジミーが分かる。いい年をしていまだに中二病の私は、このジミーは私だと思った。
「若い頃ジミーみたいでさあ」とかじゃないよ。
私にはドラッグもバイクもパーティもケンカも無理。私は不良だったことが無いし、不良に対しての憧れはあったけど、その中にいたことはない。
とにかく「つるむ」ということが全くできない。たぶんしたことがない。不良グループだけでなく、デモとかしている人たちの映像を見ても、私は参加できないなと思う。
なぜなら「集団で考え込む」ことができないから。私は私が考えたいし、自分で判断したい。でも集団に属するとその集団の論理みたいなのに賛同しなくちゃいけなくなるでしょう?
それ私できない。だから私はいつもひとりで考えてる。たぶん孤独に強いんだろう。
だから映画を観ていて、私はジミーの、仲間との毎日みたいなのは理解できない。その中に私はいない。
だけど、ジミーの気持ちはよく分かる。
特にブライトンから帰ってきて、母親にガミガミと怒鳴られるくだりから、俄然この映画は「私が主人公」の映画になった。
そうなんだよ、親はさ、大人はさ、ずるいんだよ。そうやってさ、「ドラッグがどうの」「警察にやっかいになってどうの」「仕事がどうの」「仲間がどうの」「ご近所さまがどうの」って、そういう細かいひとつひとつのことだったら、そりゃあジミーが悪いもん。
それに関しては自分が悪いから、そのやってしまった「悪いこと」から逃げられないもん。
だけど、ジミーが言いたいのは、ジミーがイライラと怒っていて、不良行為をして叫んでいるのはそういうことじゃないの。あなたたちには絶対に分からないことだと思うけど、永遠に分からないことだと思うけど、でもいい機会だから言うよ!
ジミーは、あんたたちみたいになりたくないんだよ!
だけど、なっちゃいそうだからイライラしてんだよ!!
で、結局なっちゃうんだよおおおお!! くっそー!!!!
結局、自分だけがバカ見て取り残されそうな気配が濃厚なんだよねええ(本当にこの映画はよく出来ている)。
ジミーはそういうのが自分でも薄々分かるからさ、だからますます苛立つんだよ。
あああ、大人になるってなんだろうなあああ。
ガキはいいよ、ガキは
思ってたけど違ってた。
結婚もせず、子供もいない私は、ずっとずっと子供目線で生きる、永遠の中二病だからさああ。
だけどいいなあ若者は。こうやってグレたり拗ねたりして、同じような仲間もいて一緒にグレてくれて、それでも若いからまだ負け犬感もなくて「若さ故の過ち」とか言えて、結果的にはそれが ”青春” てことになって。
いい年した大人がジミーと同じような状況で、未来もなくてグレたい気分の時は一体どうすりゃいいですか。大人になると未来が少ないからかグレてもみすぼらしくって、負け犬感がハンパなくって、なんか・・・格好がつかないんですけど。
中年とか熟年は、どうしたら格好良くグレられますか?
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👇 日本のモッズ兄さんたちのムック本
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