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【映画】「殺人幻想曲(1948)」~プレストン・スタージェス監督のドタバタ・コメディ~

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この作品をリメイクした『殺したいほど愛されて(1983)』をかなり前に見てもの凄く面白かったので、そのオリジナルの方を見てみた。


主人公は妻の浮気を疑い殺害しようと完全犯罪をもくろむのだが、あまりにも自分に都合よく考えすぎていて全然うまくいかず、グズグズになっていくというコメディ。


主人公のアルフレッドは世界的に有名な指揮者。若くて美しい妻ダフネをもらってラブラブ絶好調。ところが自分が出張しているあいだに、自分の秘書であるトニーと浮気しているのではないかと疑い、彼女の殺害計画を練る。

練るのだが、その計画を練るシチュエーションが面白い。自分のオーケストラの演奏中に指揮棒を振りつつ殺害計画を妄想するのだ。

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一曲目、ロッシーニの『セミラーミデ』を指揮しながら考える殺害計画とは、

1)まずは自分の声で「助けて!助けて! トニー、やめて!」などと叫んだ声を33 1/3回転でレコードに吹き込み、それを78回転にして甲高い女性の声に変える。
2)そしてダフネをカミソリで殺害。録音したレコード盤を他のレコードに混ぜてプレーヤーにセットし、部屋のドアを開けると電話の受話器が外れるように準備して部屋を出る。
3)トニーを呼び出し、犯行に使ったカミソリにうまくトニーの指紋をつけて犯行現場に残し、レコードをセットし、トニーを残して自分は外出する。
4)ダフネを待つように言いつけられたトニーが大人しく部屋でダフネを待っていると、隣の部屋から女性のカン高い叫び声が聞こえてくる。そこでトニーがダフネの部屋に踏み込むと、照明が倒れて転倒。電話の受話器が外れ、自動的に交換手に繋がる。
5)ダフネが殺されているのを見たトニーは取り乱し、その様子を交換手が聞いている。そこにアルフレッドはうまく居合わせてアリバイを確保する。
6)トニーは捕まり、復讐は大成功。やったね。

指揮棒を振りながらいろいろ妄想していたら、それがあまりにも(頭の中では)上手くいっちゃって「完璧だ!」と嬉しくなって、指揮しながら笑っちゃってるのww そしてそれがどういう訳か曲に見事にはまって、いつもに増して盛り上がる名演奏になってしまって大喝采。

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二曲目のワーグナーの『タンホイザー』では、別バージョンを妄想。

こちらでは妻の浮気を「若者は若者同士がふさわしい」などと言って二人の関係を許し、さらに10万ドルの小切手を切るという、寛大な大人の男バージョン。

「かっこいい俺」的に妄想しながらやたらと指揮棒を振っていたら、バカに「感無量」みたいなドラマチックな演奏になって、こちらも大喝采。ダフネも感激して惚れ直してるくらい。


ラストの三曲目はチャイコフスキーの「フランチェスカ・ダ・リミニ」。

こちらでは、彼女をめぐってトニーとロシアン・ルーレットで対決するという修羅場バージョン。

だけどこれは失敗して自分が死んでしまうという結果になるが、やっぱりめちゃくちゃ感情移入して指揮棒を振っていたら、やっぱり大喝采の大成功。


全然違うこと考えてるのに、ことごとく名演奏になっちゃうw 

私はクラシックの知識が全くないのだけど、もしかすると曲の主題と関係があるのかな。曲のテーマに妄想の方が引きずられて影響を受けている感じなのかも。

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で、大喝采なのにもかかわらずアンコールもせずに「さあやるぞ」とさっさと帰宅して実行にうつそうとする。ダフネが帰ってくる前に準備しなきゃいけないもんね。

と、こ、ろ、が、最初の手袋選びで早速つまづく。録音機材もどこにしまったか分からないし、ようやく見つけたと思ったら一度も使ったことがないらしくて使い方が分からない。トリセツ見ながら挑むが、トリセツが分かりにくい(あるある)。もうバタバタのグズグズ。

それでも「初志貫徹!」というか、妄想通りに実行しようとし続けるが、妄想は妄想。あまりにもご都合主義すぎて何一つうまくいかない。

カミソリは見つからないし、小切手を書こうにもインクが出ないし、ロシアン・ルーレットも銃の弾が見つからないし。

部屋中めちゃくちゃで、このままダフネを殺しても「物取りの犯行」ってことで捜査が進みそうなレベル(笑)

いい奥さんなんだけどねw 妄想内ではアルフレッドに、ものすごく嬉しそうに笑いながらめちゃくちゃに切り付けられてましたけどw(映らないからグロくは全くない)。

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この顔である


主演のレックス・ハリソンがやたらと軽いw この頃40歳くらいなのかな? 今の感覚だと50歳くらいの感じだと思うんだけど、わたしゃ軽い男があんまり好きじゃないし、軽い熟年なんてますますヤダから、「かるっ!」と思いながら笑って見てましたけどね。

言い換えれば「若々しい」ってことなのかもしれないけど。

自宅のクローゼットとかバスルームの扉を、本棚模様にしているような、そんな男(本物の本棚もありそうだけど)。

それに痩せすぎだよー。おじいちゃんみたい。もう少し肉がついて、貫禄が欲しいなあ。

ま、それも「若々しい」ってことかもしれないけど。

レックス・ハリソンと言えば『マイ・フェア・レディ(1964)』のヒギンズ教授が有名だけど、この名作を私はあまり好きではないので、レックス・ハリソンとは相性が良くないのかもしれない。二枚目スターなんだろうけど、よーく見るとハンサムなのか分からない顔してたし。


でもそんなことはどうでもいい。一番関心を持ったのは、使用される録音機材。

確かリメイクはソニー製のボイス・レコーダーだったと思うけど、こちらの録音機材がポータブル(と言ってもデカいけど)のレコード・プレーヤーで、レコード盤に音声を録音出来るの。私は「スイッチが一杯な機械」が大好きなので、俄然注目してしまった。

再生するプレーヤーも、5枚くらいのレコードを連続で再生出来てすごいハイテクなの。戦後まもなくですよ。あんなのもうあったんだー。ていうか、レコード・プレイヤーであんなのあったんだー。凄いなあ。

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結局けっこう面白かったんだけど、ちょっとスタージェス監督の演出が過剰に感じたよ。財布のファスナーを開ける時とか、サンドイッチをつつく時とか、動きに合わせて「ギーッ」とか「ビョーン」とか、一々効果音が鳴るのがウザい。

それに前半の火事の騒動、全体的にドリフのコントっぽかったよ。演出が安っぽい。それに後半の犯行実行シーンでは、音楽が行動に合わせてついてくるというか、ギャグの部分を音楽が強調して「ここですよ」みたいになっていて、監督ちょっとやりすぎ。

私はリメイクの方を「すごく面白いコメディだった」と思っているんだけど、どうだろう。今度みなおしてみます。じゃねー。

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目つむっちゃってるものー


題名 殺人幻想曲
監督 プレストン・スタージェス
脚本 プレストン・スタージェス
出演 レックス・ハリソン、リンダ・ダーネル
上映時間 105分
制作年 1948年
制作会社 20世紀フォックス
制作国 アメリカ
ジャンル コメディ、40's、モノクロ


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