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【映画】「殺したいほど愛されて(1984)」~スタージェス監督へのリスペクトが感じられる、甲乙つけがたい良作~

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題名 殺したいほど愛されて
監督 ハワード・ジーフ
脚本 ヴァレリー・カーティン、バリー・レヴィンソン、 ロバート・クレイン
原案 プレストン・スタージェス 
出演 ダドリー・ムーア、ナスターシャ・キンスキー、アーマンド・アサンテ、リチャード・リバティーニ
上映時間 97分
制作年 1984年
制作国 アメリカ
ジャンル コメディ、リメイク、オーケストラ、80's


プレストン・スタージェス監督の『殺人幻想曲(1948)』のリメイク。リメイク作品を見ると「オリジナルの方が良かった」と思うことも多いけど、今作はスタージェス監督へのリスペクトが感じられる、甲乙つけがたい良作。

スタージェス監督のオリジナルをリアルタイムで観た人はみんなだいぶ死んじゃっただろうし、リアルタイムでなくてもオリジナルを先に見ている人がどのくらいいるか甚だ疑問ではあるけれど、オリジナルが好きな人でも十分楽しめると思う。どっちを見ても、OKな作品。

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物語は「若く美しい妻を持った名指揮者が妻の浮気を疑って殺害しようと完全犯罪を思いつくが、あまりにも都合よく計画しすぎていて、いざ実行するとまるで上手くいかずグズグズになるが、それでもなんとか貫徹しようとする」というコメディで、オリジナルとまったく一緒。

登場人物の設定をオリジナルと比較すると、
主人公の有名指揮者は、アルフレッドからクロードへと名前が変わるくらいで、ほかは大きな変更なし。あ、ハンサムじゃなくなってるかな。
若く美しい妻は、専業主婦的だったダフネから、職を持ったイタリア人女優のダニエラへ変更、
浮気相手として疑われるのは秘書のトニーから、ハンサムかつ女好きな人気ヴァイオリニスト、マックスへ変更、
探偵を雇ってダニエラ浮気疑惑騒動のきっかけをつくる勘違い野郎は、妻ダフネの妹の夫から、使用人のジュゼッペとマネージャー夫婦に変更、
というところ。

オリジナルと比べると、それぞれのキャラクターがリメイクの方が立っていたと思う。

特に妻役は、オリジナルのダフネは良妻賢母的な、わりと優等生っぽい妻だったけど、リメイクのダニエラは若い女優で、結構きゃっきゃきゃっきゃとしている現代っ子、っていう感じ。ダフネは大人、ダニエラは子供っぽい。ちゃんと旦那さんを愛していて、浮気なんかしていないのはどっちも一緒。

浮気相手と疑われるオリジナルのトニーは、特に特徴もない、ただの若いハンサムな若者だったけど、リメイクのマックスはハンサムで女たらしで才能もあるヴァイオリニストだから、いかにもダニエラに手を出しそうな設定になってる。結局はぜんぜん違う女に手を出していたんだけど。

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やはり面白いのは、自分のコンサート中に完全犯罪を夢想しながらオケを振っていて、頭の中では計画がものすごくうまくいって嬉しくなっちゃって、大笑いしながら指揮してる、っていうところ。めちゃくちゃ楽しそうw

オリジナルでは3曲あって、主人公はそれぞれ曲ごとに違う計画を立てていたけれど、リメイクでは1曲に絞られていた。

そのオケを振りながら妄想する計画とは、
① ハロウィン・パーティと称してダニエラとマックスをレストランに誘う
② ボイス・レコーダーを準備する
③ レストランでダニエラを笑わせて、彼女の叫び声を録音
④ 3人でハロウィンのマスクをかぶってクロードの自宅へ向かう(マックスはブタのマスク)
⑤ マンションの守衛に挨拶して、ブタのマスクがマックスであると思わせる
⑥ 睡眠薬をマックスに飲ませて眠らせる
⑦ ダニエラにロビーに向かうよう指示
⑧ ブタのマスクをかぶり、録音したダニエラの叫び声を再生しながらエレベーター・ホールで彼女を殺害
⑨ その様子をモニターで見た守衛が警察へ通報
⑩ 部屋に戻ってブタのマスクをマックスにかぶせ、マックスを抱えてエレベーター・ホールへ行き、自分が襲われているかのように見せかける
⑪ そこへ警察が踏み込みマックスは現行犯逮捕。裁判で絞首刑が確定。やったね!

で、頭の中では超絶上手くいくから、クロード指揮棒を振りながら高笑い(笑)

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ところがオケの演奏が終わって、早速実行しようとマックスを食事に誘うと、もういきなり断られて狼狽w なんとか来てくれることになるけど、ボイスレコーダーは引出しにないし、やっと見つけても使い方は分からないし、老眼でどれが録音ボタンかよく見えないし、レストランに行ってもなかなか欲しい言葉を言わせられないし・・・

という具合に、ぜーんぜん上手くいかないんだよね(笑) いや無理でしょw 計画からして無理っぽかったよw

この、グズグズになっていく様と、それでもなんとかか貫徹しようとあがくクロードの姿が面白い。


最初はリメイクの方が面白かったように思っていたが、こうしてみるとやっぱり「スタージェス監督の設定がすべてなんだなあ」と思った。設定だけでもう面白いもん。

 

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クロード役のダドリー・ムーアは、もともとミュージシャンでクラシックの勉強をずっとしていた人だから、指揮棒を振る様は実に絵になってる。オリジナルのレックス・ハリソンは棒だったけどw のだめカンタービレの玉木宏かと思ったもんw

マックス役のアーマンド・アサンテも、もともとヴァイオリンが弾けるから、その演奏シーンはしっかりしてる。音自体はあきらかに吹き替えだけど、子供の頃からしっかり弾いてるんだろうな、と思うほど様になっていて違和感ゼロ。

2人がダニエラをめぐってヴァイオリン演奏で対決するシーンがあるけど、ふたりとも本物だから迫力あった。ほんとうに決闘シーンみたいな演出だったし。使用している曲がチャルダッシュだったんだけど、実際にちゃんと弾けているように思った(音は吹き替えだけど)。

でも、コメディとして考えれば別に演奏シーンのリアリティなんか作品の出来を決める大きな要素ではないけれど、このあたりはオリジナルよりもリメイクの方が説得力があったかな。

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リメイク版は脇役も強化されていた。特にクロードの使用人役のジュゼッペが良かった。イタリア系なのかな(適当)、英語ができない役なんだけど、その英語が出来ないところが面白い。

クロードが、ダニエラの浮気疑いを、自分の友達の話としてジュゼッペに相談するシーンが気に入った。キッチンで野菜を切りながら「それでも愛していれば許さなければ」と言って、茄子(?)を女性に見立てて優しく許して茄子にキスをしていたら、急に怒りがこみ上げてきちゃったみたいでナイフで茄子をメッタ切りに ( ゚Д゚)ヒャー  

それもよほど腹が立ったと見えて、何語か分からない言語でまくしたてるから余計面白かったね。

オリジナルは「俳優がコメディをやっている」っていう感じだったけど、こっちのリメイクは「コメディアンが俳優をやっている」っていう感じで、俳優陣の動きとか、間とか、ややリメイクに分があったかなー。

とはいえ甲乙つけがたい、リメイク作品としては超優秀な作品でした。

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追記:ナスターシャ・キンスキーにはまったく触れなかったのは、彼女の個性に合ってなかったような気がして。別に悪くはないけど、彼女の魅力が出ている作品はほかにあるように思った。なので今回はスルー。

じゃねー。