エムログ

古い映画を中心に、本、仕事・・・etc. 驚くほど忘れてしまうので備忘録として。

【映画】「サムソンとデリラ(1949)」悪女が好きになる映画。聖書の映画化作品としても必見。

f:id:msan1971:20190829235705j:plain


題名 サムソンとデリラ
監督 セシル・B・デミル
制作 セシル・B・デミル
出演 ヘディ・ラマー、ヴィクター・マチュア、ジョージ・サンダース、アンジェラ・ランズベリー
音楽 ヴィクター・ヤング
上映時間 128分
制作年 1949年
制作会社 パラマウント映画
制作国 アメリカ
ジャンル 聖書、スペクタクル


サムソンとデリラといえば、旧約聖書に出てくる話の中でも「バベルの塔」とか「モーセの十戒」とか「ノアの方舟」ほどではないにしてもかなり有名な話で、キリスト教圏の映画や本などを見ていると台詞なんかで時々出てくるので、知っていて損はない聖書の逸話。

かなりそっけない聖書の記述を、設定などを若干脚色した結果、実に身近でわかりやすい娯楽スペクタクル作品に仕上がっている。楽しく教養がついて、かなりオススメ。


ダン族の怪力男サムソンは無敵なのだけど、その無敵の理由は髪の毛にあって、髪を切ると力がなくなってしまう。だから生まれてこの方髪の毛を切ったことがない。サムソンはダン族を支配するペリシテ人の女セマダルを妻に貰おうと口説いていたが、セマダルには婚約者がいる。そんなサムソンに熱烈に思いを寄せるのが、セマダルの妹デリラ。デリラはとにかくサムソンに首ったけで、なんとかして自分のものにしたくて仕方がない。

そんななか、サムソンは獅子を素手で殺すという荒業をやってのける。彼にしてみれば朝飯前なのだが、それを知ったペリシテ人の王は信じない。一緒にいたデリラが「ほんとよ」と助太刀するがやっぱり王は信じず、最強の部下と闘わせてサムソンの力を確認する。もちろんサムソンの圧勝。感心した王は「好きなものを褒美にとらす」と言い、サムソンはセマダルを妻にしたいと望む。デリラ、大ショック。自分なりに色々尽くしたのに、サムソンに見向きもされない。

f:id:msan1971:20190829235845j:plain


サムソンとセマダルの結婚式で、サムソンはペリシテ人たちに謎かけをする。謎を解けば高級なマントを全員にやるし(30人分)、解けなければ自分がもらう、と。それでペリシテ人たちはいろいろ考えるけど全然分からない。絶対にサムソンに負けたくないペリシテ人は、セマダルを使ってサムソンから答えを聞き出させようとする。セマダルに首ったけのサムソンはセマダルに答えを教えてしまう。セマダルはもちろん元婚約者に答えを教える。

ペリシテ人たちに答えを当てられてしまったサムソンは当然「セマダルが教えたんだな、俺を裏切ったんだな」と気が付く。しかし約束は約束。セマダルを口汚くののしった後、町へ出て金持ちを殺して30人分のマントを奪って戻ってくる。すると、なんとセマダルと元婚約者の間で結婚式が終わってしまっていた。

というのも、セマダルの裏切りにキレて出て行ったサムソンを見て「もうサムソンはセマダルをもらう気はなくなったんだろう、結婚式どうしよう」と思ったセマダルの父親に、デリラが「あそこに元婚約者がいるじゃない」と入れ知恵したから。「ナイスアイディア」と思った父親の手によって二人の結婚が執り行われてしまったのだった。サムソンはただ30人分のマントを奪いに行っただけだったのに。

父親は「気が変わったんだと思ったんだ。でもほら、妹のデリラもいるよ。デリラの方が美人だし、あんたに惚れてる」と言い訳してデリラを売り込む。デリラもその気満々なのに、サムソンはこっぴどく拒絶。そしてセマダルを探したら、セマダルは元婚約者といまからイチャイチャしようとしているところだった。それでサムソンとペリシテ人が大暴れになって、セマダルが死亡。さらに暴れたサムソンは怪力で圧勝の全員皆殺し。そして家に火をつけて燃やしてしまう。燃える家を見てデリラはサムソンに復讐を誓う。

f:id:msan1971:20190829235952j:plain

サムソンとセマダル

ところで、サムソンがペリシテ人らに投げかけた謎というのが、

「食らうものから食べ物が出て、強いものから甘い物が出た。それはなにか」 サムソンのなぞなぞ


というもの。??? 答えわかりますか? 答えは「獅子とはちみつ」。なんで。

サムソンの解説によると、死んだ獅子の体の中に蜂が巣を作ってはちみつができているのを見つけたことがあって、それを舐め舐め家に帰ったらしい。「食らうもの=強いもの=獅子」「食べ物=甘いもの=はちみつ」というわけ。

(ー_ー)!! ソンナノワカルカー! ( `ー´)ノ サムソン個人的すぎ! これはペリシテ人が30人でウンウン唸って考えてもわかるはずもない。怒られても文句言えないかも。

f:id:msan1971:20190830000041j:plain

ペリシテ王とデリラ

その後、ペリシテ人はダン族をこっぴどく搾取し、デリラはペリシテ王の愛人になって王に貢がれる身分になり、サムソンはペリシテ人に奪われた財産を取り戻すかのように盗人になっていた。なんとしてでもサムソンを捕らえたいペリシテ王と、なんとしてでもサムソンを振り向かせたいデリラ。しかしペリシテ王の軍勢もサムソンの怪力の前にはなすすべがなく手づまりに。そこへデリラが「私がサムソンの力の秘密を聞き出して見せますわ」と名乗り出る。もし成功した暁には、サムソンに煮え湯を飲まされた豪族たち全員から銀貨1100枚ずつを報酬にいただく契約で。サムソンに関しては「捕まえても絶対に刃をあてず、流血もさせない」という約束で。

うまくサムソンと再会したデリラはサムソンを口説きにかかる。今度ばかりはサムソンもデリラの魅力に気づき、ようやく良い仲になれる。イチイチャしながらデリラはサムソンの秘密を聞き出そうとするが、3度サムソンは嘘をつく。しかし傲慢な態度の仲にも健気な一面をのぞかせるデリラに、サムソンはとうとう「秘密は髪の毛」と話して聞かせる。サムソンを自分だけのものにしたいデリラは、ダン族もペリシテも捨てて一緒にエジプトに逃げようと誘う。

と、そこへサムソンと同族の幼なじみでずっとサムソンを慕っているミリアムが現れる。故郷で母親や父親、ダン族の人々がペリシテ人に虐殺されているというのだ。故郷を救ってと頼むミリアム。しかしサムソンを絶対に他の女に手渡したくないデリラは、サムソンに一服盛って眠らせ、その隙に髪を短く刈ってしまう。そしてペリシテ王に使いを出し、サムソンを無力化したことを報告するのだった。

約束通りデリラは大金持ちになり、「絶対に刃をあてず、流血もさせない」という約束も守られる。しかしサムソンはデリラの知らないところで、一滴の血も流さない方法によって両目をつぶされていた。家畜のように過酷かつ屈辱的な労働につかされるサムソン。

f:id:msan1971:20190830000202j:plain


王に「サムソンの惨めな姿を見物に行こう」と誘われたデリラは、王と共にサムソンが臼引きをする姿を見に行く。サムソンはペリシテ人たちに侮辱的な扱いを受けながら粉を引いていた。自分に冷たい仕打ちをし続けたサムソンに自分の姿を見せつけようとしたデリラは、そこでサムソンの両目がつぶされていることに気がつく。

季節が変わり、デリラは後悔の念にさいなまれていた。苦しむデリラは、サムソンの神に「サムソンの目に光が戻るなら、自分の目を差し上げます」と祈る。牢獄にサムソンに会いに行ったデリラは、「あなたの杖となって一生をかけて償うわ」と懺悔する。しかし簡単には信じてもらえないデリラ。サムソンがデリラを投げ飛ばそうと抱えた瞬間、サムソンの鎖が切れる。時が経ち、髪が伸びて力が戻っていたのだ。さっそくペリシテ王に復讐してやろうとするサムソンだが、目が見えないことには変わりがない。デリラへの愛を認めたサムソンは、まもなくペリシテ人の祭りが始まり、そこでサムソンはペリシテの神、ダゴン神の神殿で見世物にされる予定であることを知る。そこでサムソンは神殿ごとペリシテ王を押しつぶそうと計画する。サムソンはデリラに「神殿には入るな」と警告する。

祭り当日、デリラの姿も王と共にある。サムソンが登場し、慰み者にされるのをハラハラと見守るデリラは、自分も見世物の一環としてサムソンにムチをくれる役を引き受ける。サムソンはデリラに自分を神殿の柱のところにうまく案内するよう頼む。

うまく神殿の柱にたどり着いたサムソンとデリラ。神殿を崩して自分も死ぬ覚悟のサムソンは、デリラにここから立ち去るよう告げる。デリラは立ち去る振りをして立ち去らない。サムソンが怪力を振り絞り柱を倒すと、次々と柱が倒れ、巨大なダゴン神が倒れ、神殿は崩れ落ち、サムソンとデリラもその下敷きになる。

f:id:msan1971:20190830000307j:plain


聖書的には、デリラは「アダムとイブ」のイブのような、男を騙す悪女の代表。

確かに聖書だと、デリラは別にセマダルの妹でもないし、サムソンに首ったけという設定もない。セマダルに相当する女に名前は与えられていないし、その女に妹がいて姉の代わりにサムソンの嫁にしようと父親が申し出るくだりはあるけど、それがデリラであるわけではない。

サムソンの寵愛を受ける遊女として途中から出てきて、大金を積まれて秘密を聞き出し、サムソンを売る。彼を愛してるとかいう設定は無く、ただただ大金を積まれて三回秘密を聞き出そうとし、三回ともサムソンに嘘をつかれて、デリラはサムソンの不誠実をなじったりしている。

いったいどの口が・・・この口か! (-_-)/~~~ピシー!ピシー!

そして毎日毎日サムソンが愛を囁くたんびに「あなたは私にウソばっかり言っている。それなのに愛してるなんて言って信じられると思うの」と、毎日(笑)責められて、それで根負けしたサムソンが「実は髪の毛がさあ」と白状する、という状況。かわいそうなサムソン。


聖書的にはそれでデリラの出番は終了で、サムソンが怪力で神殿を壊して死んで、サムソンのくだりは終わり。デリラはただただサムソンから怪力の秘密を聞き出すためだけに出てくる。

聖書だから色々な版があるしし、本の大きさによっても全然違うので、「サムソンのくだりは何ページから何ページ」と書けないのだが、もの凄く短いエピソードです。

映画だと分かりづらいけど、サムソンはただ神に気に入られているとか、そんな軽いものではなく、ペリシテ人の支配から救う使命を神から与えられた男です。だから怪力が与えられている。預言者とまではいかないけど、でも今で言うユダヤ人を救うヒーローとして登場する。

だから最後の結末は、「自分以外の神なんて許さん!」という性格のエホバにとっては、ペリシテ人の神殿を打ち壊したのだからオッケーという結末なのだと思います。


聖書は面白いので興味があったらぜひ読んでみてもらいたい。信仰の人からすると「面白い」とか言っちゃいけないのかもしれないけど、私はユダヤ教に限らず「信仰 ”外” の人」なので、読み物として興味深く読んでる。

ちなみに電子書籍だと、聖書みたいな歴史大河で登場人物も多いし、何より聖書は章が「創世記 第十章」「レビ記 第三章」みたいな感じで、それだけでは何が書いてあるのか分かりづらい。そういう時に「サムソン」と打ち込んで検索して、そのページに飛べるので、電子書籍はすごく便利。聖書自体も安く買えてお勧めです。

と言って、唐突にkindle paperwhite のリンクを貼ってみる(笑) ついでに聖書のリンクも貼っておこう。うんうん。私が持っている電子書籍版の旧約聖書は 200円 でした。


  


とまあこのように、悪女と言われても仕方のないデリラだが、 私はこの映画のデリラは大好き。悪の華、でも一途という。もうサムソンが好きすぎて嫉妬深くなっちゃって、手に入れるためにはなんでもやっちゃう。どこまでも残酷、だけど美しくもある。

かなりデリラにとっては大幅な解釈&脚色が施されていて、こんな女なのに愛せる。ユダヤ人的にはどう思うのか知らないが。

しかしデリラ、自分の策略がはまったのはいいけど、やはり自分の想定外の出来事も起っちゃって、サムソンの両目がつぶされちゃう。思い通りにはいかないもんだ。それで超後悔して、健気にも彼女にとっては異教の神エホバにお祈りまでして、自分の独占欲の強さを反省したのかと思いきや、最後の最後、神殿でのまさにクライマックスで、王にサムソンの恩赦を求めに来たミリアムに向かって「あんたは彼を独占したいだけでしょ。あんたに渡すくらいなら殺す方がマシ」って言ってた(笑)

ぜんぜん懲りてねーw 「彼がそれで助かるなら私は身を引くわ」的な発想がゼロ。皆無w 

いいよー、デリラ! そうこなくっちゃ! ( `ー´)ノ 道徳的かつ小市民的な善良さはミリアムにお似合い! あんたには「デリラ道」を貫いてもらいたい!

この高慢ちきな自己中ぶりが、かわいくすら見えるんだから。

・・・まあ、「美人」だからかもしれないけど。これがブスだったらたぶん無理。いわゆる「醜女の深情け」ってやつになって目も当てられないこと必死。美醜を言うのはよくないのかもしれないが、でも事実だし、美しい方がドラマになるんだから仕方ない。潔く美しいものは尊いと認めましょう。

f:id:msan1971:20190830001900j:plain


このデリラをやった女優ヘディ・ラマー、すごい美人でしょう。ビビアン・リーが髪型を真似したらしいが、髪型だけでなく雰囲気もよく似ている。


しかしなにより、このヘディ・ラマーの人生が実に興味深い。

まず、もともと女優志望だったがスクリプターとして映画界に入り、ほどなく映画会社の目にとまって端役デビュー。そしてチェコ映画『春の調べ(1933)』に出演して、映画史上初のフル・ヌードを披露してセンセーションを巻き起こした。兵器製造業者の男性と結婚するが、嫉妬深い夫は彼女のヌードを見られないよう『春の調べ』のプリントを買い占めようとし、さらに自宅のシュヴァルツェナウ城に幽閉して強引に映画界を引退させた(城に住んでたのね)。その後、嫉妬深い夫とナチスドイツの影響下から逃げ出そうと、メイドの姿に変装してパリに逃亡。パリでは映画プロデューサーのルイス・B・メイヤーにスカウトされてハリウッドに渡り、再度女優デビューした、とのこと。

これだけではない。これだけなら、まあ時代柄もあるし、大変な美人なのでままあることかと思う。白眉なのはここから。なんと彼女は発明家になるのだ。それも「主婦の発明」とか、よく聞けば大したことないようなレベルのものではない。理系の本格的なやつ。

「交通信号機の改良版」とか「水に入れると炭酸になる錠剤」なんかも作っているらしいが、第二次世界大戦中、魚雷の無線誘導システムが敵国の通信妨害を受けて機能せず、目標を攻撃できない事態が発生していることを知ったヘディ・ラマーは、作曲家のジョージ・アンタイルの協力のもと、魚雷に送る電波の周波数を頻繁に変えて妨害されにくくする「周波数ホッピングシステム」というものを発明したらしい。

最初の夫が兵器製造業者で、その時に無線の知識を学んでいたんだとか。

そして特許も取ったが、残念ながら実装困難だったことと、なによりも当時の海軍は軍人でもなんでもない外部からの発明を受け入れる土壌がなく、このときは実装されなかった。しかしこの改良版が1962年のキューバ危機の時に実装されたらしい。その後、この発明で賞をもらったり、全米発明家殿堂入りを果たしたり、彼女のルーツであるドイツ語圏では彼女の誕生日が「発明の日」として定められているんだとか。

すごくない?(笑) こんなに美人で、発明家なの。

しかし女優として陰りが出てきて1958年に引退したあと、1966年に万引きでつかまり、1991年にはまた万引きで逮捕されている。現役時代に稼いだ30億円にも上るギャラを使い果たし、サンドイッチを買うお金もなかったらしい。その時万引きした商品は、下剤と目薬だったんだとか。この時77歳。

晩年は容姿が衰えるのを恐れて美容整形をしたが、結果はあまりかんばしくなかったらしい。享年85歳。かなしい 。


ちなみにサムソン役のヴィクター・マチュア。彼は以前取り上げたエスター・ウィリアムズ主演の『百万弗の人魚(1952)』にて、エスターの相手役のサリバン役を務めていたお方であった。ほんとだー。何年も変わらないのに、だいぶ印象が違うから全然分からなかったよ。

関連記事として一応リンクを貼っておく。とはいえ開いてもヴィクター・マチュアの写真は・・・すごく遠目のが一枚あるだけ。この記事はエスター・ウィリアムズにフィーチャーしてるから。ご了承ください。

それじゃまたね。


【関連記事】 

www.mlog1971.com