題名 海底6万マイル
監督 スチュアート・ペイトン
原作 ジュール・ヴェルヌ「海底二万里」1870年
出演 アレン・ホルパー、マット・ムーア、ジェーン・ゲイル
上映時間 98分
制作年 1916年
制作国 アメリカ
ジャンル SF、海洋、冒険、モノクロ、サイレント
※題名(邦題)は誤りではありません。
ジュール・ヴェルヌの超有名作『海底2万マイル』の本格映像化第一弾。1916年制作なんて、そんな映画黎明期に海底や潜水艦が舞台のSF超大作に着手するなんて、昔の映画人はすごいなあ、志が高いなあ。
超たのしみー (^◇^)
超たのしみー (^◇^)
・・・って、か、か、かなりの脚色がなされていてストーリーを見失ったぞ。劇伴がドヴォルザークの「新世界より」で、この有名曲がずっーと延々流れてて気が散るし、ほかにも驚きがたくさん。
全く前情報を入れずに、ふつうの『海底2万マイル』のおはなしだと思って見始めたから、すぐにどういう話か分からなくなったよ。
原作やディズニー制作版の『海底2万マイル(1954)』のイメージで、それがただ単にサイレント映画になっているのだろうとしか思わなかったから、「だいじょうぶだいじょうぶ、ストーリーはめっちゃ知ってるからー。楽勝。」くらいに超軽く見てた。
ディズニー制作版の『海底2万マイル(1954)』は、原作にある異常に長くてつまらない海底ツアーのシーンを大幅にカットしてくれていて、プラス映像美もあいまって全く退屈しない素晴らしい出来だったし、原作よりもパワーアップした銛打ちネッドのキャラクターが最高にハッピーで、原作ファンも楽しめる名作だった。ラストシーンが原作とは違うけど、映画としてきれいに完結していて良質な脚色だったと思う。
と・こ・ろ・が。
変更点① コンセイユが消える
アロナックス教授はそのまま出てくるが、助手のコンセイユがあー (ToT) アロナックス教授の娘に変更されていた。コンスタンツ?とかなんとかいう名前だったかな(中間字幕で一回だけさらっと出てた)。
ふーん。まあいいけど、コンセイユわりと好きなんだけどなあ。そこ娘に変える必要ある? やっぱり男だらけの作品になるのを避けたのかしら。
そしてなんの活躍もしないという (-_-)/~~~ピシー!ピシー!
変更点② ネッドがモブキャラだった
銛打ちネッドもでてくるけど何の脚光も浴びず。アロナックス教授たちと一緒にリンカーン号に乗り込んで、ノーチラス号と遭遇して、見るからに鉄のかたまりであるノーチラス号に向かってヤリを投げるだけ。
そして、それだけ。あとは活躍の場なし。きゃー (>_<)
ネッドはノーチラス号に捕えられたことに反発して、なんとか脱走しようと動き回るところがいいのに全てカット。
ディズニー制作版だと巨大イカとかが出てきて、捕えられたネモ船長を救出するという最大の見せ場があったから、そのイメージを引きずってしまっている私は拍子抜け。
というよりどれがネッドか分からない。
というよりどれがネッドか分からない。
ネッド登場のシーンは、帽子をあみだにかぶった、いかしたポーズで登場してきたからさあ、活躍を期待しちゃったよ。
変更点③ 衝撃! なんとネモ船長はインドの皇子様だった!!!
登場してきたときに「え? (゜-゜)」と思った。
「これがネモ船長なの? (゜-゜)」って。「なんかイメージ随分変わったな」と。イメチェンかしら。
「これがネモ船長なの? (゜-゜)」って。「なんかイメージ随分変わったな」と。イメチェンかしら。
だってこれですもの。
それに人相が悪いから、パイプ吸って座ってるシーンなんてアヘンぽく見えてくるし、ノーチラス号の上に乗って海上の様子をうかがっているお姿なんて、盗賊の親玉とか、旭日旗を頭に巻いて海上で悪さをたくらんでいる右翼のおじいさんみたいな感じにも見えた。
本来ネモ船長は潜水艦を開発したり、島を改造して基地を作っていたり、国家に背を向けたアナーキストだったりして、マッドなんだけどインテリのイメージだよ。それがこのネモ船長からは残念ながら知性が全く感じられなかった・・・
うえええん(泣)このネモ船長やだー (>_<)
変更点④ あんただれー!
いきなり出てくるこの女。だれー(笑) 誰なのー。
「神秘の島」とやらにいるらしくて、ヒョウ柄のワイルドな衣装で登場して、やたらと体をくねらせて女アピールして、その島にやってきた誰だか分からない男と遭遇して洋服をもらったりなんかして、白いシャツにジーンズみたいなラフな格好になって、可愛がられはじめたと思ったら、他の男にいいようにされそうになったりして、訳わからん。何者なの。
この、ノーチラス号から神秘の島に舞台が移ったあたりで私は一気に脱落し、ストーリーを完全に見失ってしまいました。トホホ。
変更点⑤ ストーリーの大幅変更
つまり今作は大幅に脚色されていたのだった。どうやら3つのストーリーが交錯しているらしい。
100分近い映画だけど『海底2万マイル』のストーリーは全体の半分くらい。「おや?」となって「これはなんぞや?」となって、「あ、これはもしかしてネモ船長が出てくる別の小説『神秘の島』が混じってるのかな?」と思って、気球が出てきたから「やっぱりそうだ」となって、でも『神秘の島』は読んでないせいか、お話がよくわからなくなってしまった。おまけにサイレント映画で情報も少ないから余計に見失ってしまう結果に。
というわけで、あらすじを簡単に整理してみた。
****** あらすじ ******
大西洋では何隻もの船が何者かによって沈められ、巨大な海の怪物が暴れているという噂で人々は大混乱。そこでアメリカ政府は軍艦リンカーン号を調査派遣することを決め、著名なアロナックス教授に協力を依頼する。アロナックス教授は娘をともないリンカーン号へ乗り込む。同じく銛打ちネッドも同船していた。
ほどなくリンカーン号は巨大な物体と遭遇、銛打ちネッドは銛を打つがまったく歯が立たない。リンカーン号は沈められ、アロナックス教授やネッドらはその巨大な物体ノーチラス号に捕えられ、ネモ船長の捕虜となる。最初は抵抗するが、結局は降参する。
同じころ、神秘の島と呼ばれる島に男たちが流れ着き、男のひとりは島の「野生の娘」と出会う。彼は彼女に衣服を与えるなどして手なずけ、仲間の元へ連れて行く。
その頃ノーチラス号では、ネモ船長がアロナックス教授らに海底の神秘を見せたり、海底に誘って狩りをしたりと、海底ライフを自慢していた。
また、神秘の島にはデンバーという男が流れ着く。彼は過去に犯した罪の亡霊に取りつかれ、夜な夜な現れる女の幽霊におびえていた。
神秘の島では男たちが「野生の娘」に乱暴を働こうとする。そこを救った男と「野生の娘」はデンバーの船に逃げ込む。その頃ネモ船長はデンバーの船を発見。デンバーはネモ船長の宿敵だったため、船を魚雷で破壊する。船に乗っていた「野生の娘」はネモ船長らに救出される。
ノーチラス号でネモ船長と野生の娘が出会い、ネモが彼女を抱擁する。そしてネモの意外な過去が語られる。
ネモは本名をダーカー皇子といい、インドの皇子だった。当時国民からは王家に対する反乱の声が上がっており、不穏な情勢が続いていた。ある日、冒険家のデンバーが現れる。デンバーはダーカー皇子の最愛の妻に横恋慕し、彼女を手に入れるべく反乱の首謀者はダーカー皇子であると告発する。反乱の首謀者の濡れ衣を着せられたダーカー皇子は投獄される。国民の反乱が本格化し、騒ぎにまぎれて牢獄から抜け出したダーカー皇子が宮殿へ向かうと、デンバーに暴行されそうになった妻は自らをナイフで刺し、虫の息だった。妻から娘がデンバーに連れ去られたことを聞かされたダーカー皇子は、妻の亡骸を運びながらデンバーへの復讐を誓った。
語り終わるとネモは絶命し、乗組員たちはネモの亡骸を海底に葬り、船長を失ったノーチラス号もまた海底に沈む。
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というわけで、ネモ船長、インドの皇子様だったよ(報告)
ずいぶん思い切った脚色をしたもんだ。ネモ船長が登場するシーンとそれ以外のシーンがだいたい半々くらい。・・・この映画を『海底2万マイル』の映画化と言っていいのかしら。
『海底2万マイル』ぽいところは前半から神秘の島までと、海底自慢のシーン・・・くらいかなあ。後半はネモがダーカー皇子だったという告白シーンだから、超解釈って感じで『海底2万マイル』としてはカウントしづらい。
本作のエポックのひとつである海底撮影のシーンも、ただただノーチラス号の水晶板の窓から海底を眺めるツアーでこれが8分くらい。後半が潜水服を着込んでの海底での狩りのシーンでやっぱり同じくらいの時間が割かれていて、合わせれば15分くらいが海底シーン。長い。
技術的には当時としては驚きの海底撮影だったようで(海底と言っても浅瀬部分だったらしいが)、映画はその撮影方法を開発したスタッフの紹介から始まるほど。手法としてはまだ水中カメラはなかったため海中に入って撮影するのではなく、太陽光が届く浅瀬部分で、鏡を使って撮影する方法だったのだとか(よく分からないのだが)。
撮影方法だけでなくフィルムの問題もあると思うが、映像的にはかなり暗いし、砂が舞い上がってもやがかかっているような不透明な映像になってしまっていて、何が写っているのかわかりづらい。
とはいえ当時は話題になっただろうし、そのシーンに時間を割くのは当然。でも今見ると、不鮮明なうえに、ただ撮影しているだけの映像が延々と10分近く流れるのでちとキツい。
なにがなにやら
海中ではある
でも退屈さでは原作も負けていない。海底紹介の部分がほぼ半分を占めていて、私は生物学とか博物学とかにぜんぜん興味がないから読んでいて飽きる。かといって飛ばすのもなんだから頑張って律儀に読むと「ほとんど修行」みたいな作品だから、ある意味では原作に忠実なのかもしれん(つまらなさにおいて)。
でも退屈さでは原作も負けていない。海底紹介の部分がほぼ半分を占めていて、私は生物学とか博物学とかにぜんぜん興味がないから読んでいて飽きる。かといって飛ばすのもなんだから頑張って律儀に読むと「ほとんど修行」みたいな作品だから、ある意味では原作に忠実なのかもしれん(つまらなさにおいて)。
ネモ船長も原作だと、何やら暗い過去があって復讐を目論んでいるくらいの情報しかなくて、結局何者なのかよく分からないで終わるから、そこを突いた脚色っていうことなんだろう(とんでも脚色だったけど)。
というわけでオドロキの連続の『海底2万マイル』初映像化作品だった。
※ ちなみに見返してみて気がついたのだが、2倍速か3倍速で見るとテンポが良くてとても見易い。賑やかな劇伴も消えて分かりやすいです。
たくさんある題名の謎に関しては
【映画】「海底2万マイル(1954)」~ネモ艦長とスチームパンクなノーチラス号~ - エムログ
にああだこうだと書いているので、興味のある方はぜひ読んでください。
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