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古い映画感想ブログです。驚くほど忘れてしまうので備忘録として。

【映画】「類猿人ターザン(1932)」絶対に見た方がいいジョニー・ワイズミュラー版、第一作。

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題名 類猿人ターザン
監督 W・S・ヴァン・ダイク
制作 アーヴィング・タルバーグ(クレジットなし)
脚本 シリル・ヒューム
原作 エドガー・ライス・バローズ「類猿人ターザン」1918年
出演 ジョニー・ワイズミュラー、モーリン・オサリヴァン、C・オーブリー・スミス、ニール・ハミルトン
音楽 ウィリアム・アクスト
上映時間 100分
制作年 1932年
制作会社 MGM
制作国 アメリカ
ジャンル 冒険、モノクロ


ええー、すごく面白かったよ。あんまり期待していなかったのは事実だけど、そのせいで面白く感じたというよりも、映画としてちゃんと面白かったし、驚きがあって良かった。一体どうやって撮影してるの?

まずなにが凄かったって、とにかく主演のターザン役ジョニー・ワイズミュラーが凄い。

まずとにかく美しいの。えらくハンサムで、高身長で、美しい筋肉美。文句ない美男子。髪の毛もびっしり生えていて、この毛髪量が萌える(私は髪の量が多い男性は好き。でもカッコいいハゲも好き)。そして全シーンがほぼ裸。ふんどし一丁。

その美しいほぼ全裸姿で、登場シーンでは「アーアアー」と叫びながらジャングルの密林の中をサーカスの空中ブランコの要領で次々と飛びまわり、木から木へと軽やかに飛び移っていく。いいよー、ターザン。

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そして映画半ばあたりにライオンと12分間もの格闘シーンがあるけど、これ本当に格闘してません? ライオンとプロレスですよ、レスリングですよ、がっぷり四つの相撲ですよ。迫力満点。これどうやって撮影したんだろう。ターザン、途中で腕、喰われてましたけど。


たぶんスタントなんだろうけど、それと感じさせない撮影テクニックも凄い。白黒映画で、映像も今みたいに鮮明じゃないことも手伝ってのことだろうけど、普通に見てると本人が全部やってるように見える。余程背丈や体格などが似ているスタントでないとこうはいかない。

あまりにも見事だったのでジョニー・ワイズミュラーってサーカス出身なのかしらと思ったくらい。たとえば、元々サーカス出で空中ブランコとか日頃からやっていて、猛獣などの扱いにも慣れていて、その慣れた猛獣を使って撮影しているのかな、スタジオから見ればそういう打ってつけの人材を発見したので映画化できたのかな、だとしたらラッキーだったな、と思ったけど全然違った。

ワイズミュラーは元々水泳選手で世界記録もたたき出していて、オリンピックで金メダルを5つも獲得している本物の水泳選手だったらしい。その後モデルに転身して、そしてターザン役に抜擢されたらしいから、サーカスとは全く縁が無さそう。

だから空中ブランコとライオンとの格闘シーンをもう一度、目を凝らしてよーく見てみると、うん、スタントなのかも。スタントなんだろうな。でも「明らかに別人」というスタントシーンの映画が多い中、「スタントマンかも」くらいにしか思わないんだからこの作品はよく出来てる。ちゃんと本人ぽく見えるもの。これは大したことだ。

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ほかにも見どころはたくさん。猛獣や野生動物がたくさん出てくるけど、ライオンやチンパンジー、象は本物。ワニとカバは途中で人形というか模型というか作り物になる瞬間があったと思うけど、それ以外は本物が出てくる。

その中でもターザンの仲間の象たちは大活躍。どのシーンでもターザンとの信頼関係が伝わってくる、いいシーンばかりだった。

特に一頭の象が穴に落ちて這い上がれなくなった時、その象のSOSを聞いたターザンと象たちが協力し合って穴から救い出すところなんかは、ターザンと一緒になって象たちも丸太をどかしたり、ロープを引っ張って落ちた象を穴から引き揚げたりして、対等に協力し合う関係なんだな、という感じで良かった。

その救出に向かう時にターザンが「ヘイ!タクシー」じゃないけど、「アーアアー!」と例の有名な雄たけびをあげると象が一頭、迎えに来てくれるんだよね。その象に飛び乗って救出に向かう! 仲良しな感じで楽しいシーン。

それにラスト近くで、ジェーンの父親とかが小人族に捕まって類人猿の餌食になりそうになった時もターザンと共に救いに来てくれて、小人族の攻撃で数頭は負傷しながらもジェーンたちを救出してくれるの。片足を負傷した象が村から逃げていくのが痛々しくて悲しい。

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それからターザンの友達風のチンパンジーのチータがかわいい。

途中、6分くらいにおよぶターザンとジェーンのイチャイチャシーンがあって、水に入ってやたらといちゃいちゃイチャイチャしてんのよ。とにかくまーイチャイチャしてるの。それをチンパンジーのチータがそばで見てたりしてるのも可愛い。

白人たちに仲間の類人猿が殺されて「なんだよー、ふざけんな」顔のターザンと共に、類人猿をゆすったり叩いたりしてその死を悲しむ姿も愛おしい。チンパンジーって人間に似ているからか、やっぱり可愛い。

最後、小人族に捕まって船で連れ去られるジェーンが、川岸にいるチータに「チータ!ターザンに知らせて!」って叫ぶ。そこでチータは急いでターザンに知らせに行って、それでターザンはジェーンらを救出に向かう。

そしてチータは類人猿に足を持たれてブンブン振り回されて、地面に叩きつけられて放り投げられるんだけど、その姿を見た時は「はああー!チーター!」とおもた。でもだいじょぶ。映画だからね! いよいよピーンチとなるとむくっと起き上がり、腕を怪我したのかな?左手を守りながら逃げ去っていく。「生きてたー! あーよかったー」と思った。いやあれは死ぬでしょ。がんがん頭を打ち付けられてたもの。でも映画だからね、これでいいよ!

チンパンジーなのにチータ。かあいい。


その中で、ターザンの仲間である類人猿だけは着ぐるみだったと思う(さすがにね)。でもすごくよく出来ていて、着ぐるみ自体もよく出来ていたように思うけど、動きがすごく猿っぽいというか、オランウータンとかみたいなヒト科の類人猿ぽい動きをしていてリアリティがあった。

途中で類人猿たちがジェーンを投げてキャッチボールするといふ暴挙が繰り広げられてたけどw まあ吹き替えなんだろうけど、女優さんて、大変って思ったね(笑)。

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ジェーンがああ捕まっちゃったのおお


総じてとても楽しめる映画だった。とはいえ原作とはまるで別物(原作も第一作目は一応読んでる)。


ストーリーも違うし、登場人物のキャラ変も凄いし、はっきり言ってエドガー・ライス・バロウズ原作のターザンとはかなりかけ離れていて全くの別物。


原作だとまずターザンは貴族の血がながれてるんだけど、そういった素性部分はバッサリカット。完全スルーで全く出てこない。ワイズミュラー版の映画ターザンはシリーズ化されていて12作品に上るらしいから、どこかで「実は貴族だった!」とエピソード・ゼロ的にでてくるのかしら。

原作ではターザンは「アーアアー」とは言わないし、特殊な出生と生い立ちにも関わらず、人間らしい知恵と知性を独力で獲得する高い知能を持ち、第一巻の終わりの方ではダルノー中尉の助けもあって英語とフランス語がペラペラになっているというかなりのインテリなのだけど、そういう一面はまったくなくって、映画では最後まで「おれターザン、お前ジェーン」式のカタコトを発するくらいで、知性とは無縁に終わっていく。


他の登場人物も、ジェーンの父親は「世間知らずで研究の事しか頭にない学者」から「象牙で一攫千金をもくろむ貿易商」へ変更。
「ターザンの恋敵で実はいとこ」のクレイトン青年は出てこない。ホルトさんがその代わりなのかもしれないけど、そこまで大きな存在にはなっていなかった。

ジェーンは元々それほど個性が強くはないが、やや思慮深さや細やかな感情面がなくなってたかな。映画版はいたって健康的で単純明快な活発なお嬢さんという感じ。原作のジェーンの方がフクザツな心理を持っているように思う。


ストーリー的にも全体的に全然違うが、特に大きなポイントは、原作ではアメリカに帰ったジェーンを追ってターザンがアメリカへ向かうんだけど、映画は二人でアフリカで暮らしましたとさ、的な終わり方になってた。ぜんぜん違う。

これだと続編のストーリーも相当違うものになるだろうことは必死。

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というわけで、原作にあるターザンの血と汗と涙と苦悩と絶え間ない努力、自分を育ててくれた類人猿の集団内での葛藤や、「みにくいアヒルの子」的なというか「スイミー」みたいなというか「黒い羊」的なというか、自分だけがみんなと違う疎外感に苛まれていたり、そういったコンプレックスからくる「自分は偉大な人間の子なのだ、お前たちとは違うのだ」という自負心、そして夢に見た白人に対する失望が描かれるなどかなり複雑で深い作品なのだが、映画でのターザンと類人猿との関係はまるでユートピアのようで葛藤など全くない「みんな仲良く幸せな大自然」という感じで、最後ジェーンが「ここに残りたい!」と思ったのも当然だし、「なるほど、こういう展開であれば、のちにディズニーが映画化しようと思うのもうなづけるなあ」と思った。

でも原作は原作で、映画は映画でそれぞれ楽しめて、私は「両方あり」だと思った。小説版も二作目以降も数冊は読みたいと思っているし、映画も続編が楽しみ(鑑賞次第、記事にするつもり)。

ジョニー・ワイズミュラー版ターザン、相当オススメです。


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☟ 原作は絶版。古本で。