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古い映画感想ブログです。驚くほど忘れてしまうので備忘録として。

【映画】「ナック(1965)」のちに生まれるミュージック・ビデオに大きな影響を与えた青春映画

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題名 ナック
監督 リチャード・レスター
出演 マイケル・クロフォード、リタ・トゥシンハム、ドナル・ドネリー
音楽 ジョン・バリー
上映時間 85分
制作年 1965年
制作国 イギリス
ジャンル 青春、モノクロ


20代の頃に映画館でリバイバル上映を見に行った、個人的には思い入れのあるカルト映画の佳作。


とにかく女の子をモノにすることばかり考えている若者たちを、オフ・ビートな感覚で映画化した青春映画。ストーリーがどうとか、テーマがどうとかを語るタイプの映画ではなくて、感性とノリを楽しむ系の作風。ひと言で言うと「軽妙洒脱」という感じ。

監督は、この映画「ナック」を挟んでビートルズの「ビートルズがやってくるヤァ!ヤァ!ヤァ!(1964)」と「ヘルプ!4人はアイドル(1965)」を監督したリチャード・レスター。彼はこの「ナック」でカンヌ映画祭のパルム・ドールを受賞してる。

今見ると、パルム・ドールを受賞するような作品だとは思わないのだが、確かに今見てもオシャレで格好いいのは間違いないので、当時は相当斬新な内容と作風だったんだろうと思う。

実際、70年代後半に現れたミュージック・ビデオの制作に影響を与えたといわれているけど、ジャンプ・カットや巻き戻しを多用したり、ベッドを運ぶシーンではさっきまで道を押して運んでいたのが、いきなり車に乗せて運んでいたり、イカダにベッドを乗せて川を下っていたりと、映画として論理的な演出をするというよりも、非論理的でも構わないからとにかくお洒落なカッコいい映像を優先した感じ。

そのあたりがいかにもミュージック・ビデオっぽい。80年代に一大ブームとなったミュージック・ビデオの監督たちは、絶対にこの「ナック」は見てるだろうな。


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とはいえ一応ストーリーを。

主人公の学校教師コリンは毎日毎日イライラしっぱなし。その理由は部屋を貸している住民トーレンの存在だ。コリンは自宅の部屋を間貸しする大家さんでもあるのだが、オクテで女の子と縁がないコリンに対してトーレンは史上最高にモテるモテ男。毎日のようにとっかえひっかえ色々な女の子を部屋に連れ込んではいちゃいちゃしてる。コリンはそんなトーレンが気になって仕方がない。

イライラして「非道徳的だ!」と考えたコリンはトーレンを追い出そうとするが全然うまくいかない。逆に「俺よりは多少落ちるが、やっぱりモテ男の友人ローリーにも部屋を貸してくれ。そうして女の子を共有しようぜ」と持ちかけられ、一瞬心が動く始末。「ハレンチだ!」と怒りながらもコリンはモテる秘訣をトーレンに指南してもらおうと必死で秘訣を聞き出すが、「食事に気を付けることだ。モテる男は高たんぱくが必要だ」とかなんとか言われて軽くあしらわれる。

結局「ベッドが小さいのがよくない。僕には大きなベッドが必要だ!」という結論に達したコリンは、いつの間にか家に住み込み部屋中を真っ白に塗りまくっていたペインターのトムと一緒に大きなベッドを手に入れに行く。鉄くずやで気に入ったベッドを手に入れたコリンは、YWCAを捜してずーっとロンドン中をさまよっていた女の子リタと偶然知り合い、3人で一緒に家までベッドを運ぶ。

ワイワイと楽しくベッドを持って帰ってくるが、大きすぎて上の自分の部屋に入れられず四苦八苦。そんなことをしているとトーレンがリタを口説きはじめて、リタがちょっと気になっていたコリンは気が気じゃない。あっという間にリタは手練れのトーレンにバイクで連れ去られていき、コリンとトムが追いかけて追いつくと、なんとリタが気を失って倒れてる。で、男3人でワイワイと揉めていると、目を覚ましたリタが「犯された!」とかなんとか言い出して3人はドン引き。リタがロンドン中に「犯された」と言って歩くのを止めているうちに、コリンとリタの間に恋が芽生える。


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突然「犯された!」と言い出したリタにドン引きする3人が笑える。いいね。「このドン引きの感じ、映像化するとこうなるよね」って映像が言ってる。わかるわかる。


そしてあんなに「俺様的」自信にあふれていたトーレンが。

女をとっかえひっかえしてバイクに乗せてノーヘルで走り回り、女に手袋をはめさせたりしていたトーレンが。

彼にとって一大テーマである女の取り合いで、まさかのコリンに負けて一気に自信を喪失。あわれトーレン。がんばれー。


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「モッズめ」 
 老人の台詞より

この映画は若者4人が出ずっぱりの中、ロンドンの名もなき住民である年寄りたちが入れ代わり立ち代わりインサートしてきて、厳しく冷ややかな目で彼らを眺め、100%批判的なセリフで口々にののしっている。

若者たちは意味のないことばかり喋っていて、年寄りたちは一見すると内容のある愚痴ばかり。

大人と若者たちの会話はまったくかみ合ってなくて、世代間の断絶みたいなものがテンポよく示されてる。

とはいえオッサンたちも女の事ばかり考えてるんだけどね。

時代的には『さらば青春の光(1979)』で描かれていた若者たちと同時代だから、テーマは違えど共通する時代の匂いみたいなものも感じられて、併せて見ることをお勧めしたい。

同じ時代の青春を、ポップに軽めに描いた青春が今作、『さらば~』の方は重めで刺さる青春映画という感じ。


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映像的な話では、ミュージック・ビデオみたいなシーンはいたるところがそうなんだけど、例えば個人的にはあのドア沢山のシーン。たぶん今作ではかなり有名な、印象に残る場面なんじゃないかな。

向こう側には何もないドアが横にずらーッと並んでいて、リタ含む4人がドアを開けたり締めたりして、出たり入ったりをひたすら繰り返すだけのシーン。意味はないけどなんか面白い。その中のひとつのドアだけ、開けると中でおばさんが掃除機をかけてたりなんかしてw 


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ベッドを運ぶ一連の長いシーンも全体的に絵になるし、物語とは一見関係ないシーンがちょいちょい挿入されるのもオシャレだし、そもそもコリンの持ち物であるアパートも、古いけど洒落てて絵になる。ドアとか、窓とか、旭日旗みたいなデザインがいかしてる。

今作はオープニング・シーンも格好いいけど、切手風のエンド・クレジットもおしゃれ。映画全編を通してどこを切り取っても絵になる、洒落たカットが気持ちいい。

あとトリビア的な話だと、ストーリーとはあまり関係なさそうな、若くて美人の女の子が唐突に大挙して出てくるシーンは男性陣の(こうだったらユートピアだな)みたいな妄想シーンなんだけど、ここにまだ全く無名時代のジャクリーン・ビセットやジェーン・バーキン、シャーロット・ランプリングが出ているのも有名。端役というよりエキストラね。壁の花みたいな存在。

探してみてください。


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