エムログ

古い映画感想ブログです。驚くほど忘れてしまうので備忘録として。

【映画】「モンキー・ビジネス(1952)」 マリリン・モンローが出てるというだけの不発弾

f:id:msan1971:20191016225911j:plain


題名 モンキー・ビジネス
監督 ハワード・ホークス
制作 ソル・C・シーゲル
出演 ケーリー・グラント、ジンジャー・ロジャース、チャールズ・コバーン、マリリン・モンロー
上映時間 97分
制作年 1952年
制作会社 20世紀フォックス
制作国 アメリカ
ジャンル コメディ、モノクロ



ぜんぜん笑えなかったんですけどー(笑) なんだろう、まったく面白くなくて、それどころか不快に思うほどだった。

しかも私たぶんものすごく昔に見たことがあると思うんだなあ。見たことがあると思うのにはっきりと思いだせない。全く記憶の彼方に行っちゃって、しかも戻ってこない程度の印象の薄さ。

設定は悪くないと思うんだよね・・・設定やあらすじ見れば「面白そう!」って思うんだけど、見てみたらぜんぜん笑えないという。

f:id:msan1971:20191016230644j:plain


主人公のケリー・グラントは天才学者の設定で、若返りを可能にする薬の開発にいそしんでいる。あっちの薬とこっちの薬を混ぜて・・・といろいろやってきたが上手くいかない。ところがある日、実験用のチンパンジーが適当に混ぜた薬が大当たり。偶然「若返りの薬」が完成してしまう。チンパンジーが奇跡的に調合した「若返り薬」がウォーター・サーバーに混じっているとは知らないケリーや妻のジンジャー・ロジャースがそれを飲んで、気分はすっかり大学生になってしまう・・・という話。

・・・面白そうじゃん。うん面白そう。

スクリューボール・コメディの雄ハワード・ホークスが監督を務め、さらに社長秘書の超絶グラマーなマリリン・モンローや、コメディ超得意の社長役チャールズ・コバーンが絡んでくると知れば・・・やっぱり面白そうじゃん。

なのになぜ。

f:id:msan1971:20191016230926j:plain



それは間違いなく、「大学生くらいの気分になり、うんぬん」という設定はいいけれど、その若返り方が納得がいかなかったからだと思う。


まずケリー・グラントの方は大学生だと言われれば大学生にも見えるけど、キャラが変わりすぎじゃない?  

「あれを混ぜればいいのかな? でもあれも試したしな・・・」って研究のことしか頭になくて、愛する(これは本当に愛している)妻とのデートの約束すらまるで頭から忘れちゃうような男なのよ。そのデートのためにタキシードを着こんで出かけようとしているのに、家の鍵をどこにしまったか忘れちゃってたり、奥さんに「家の電気を消して、外の電気をつけて、カギをしめてね」って言われても、家の電気を消して、外の電気をつけて、ドアをしめてカギをかけて、自分は家の中にいるような、そんな学者の鏡みたいな研究男なのよ。

なのに大学生くらいの気分になったとたん、奥さんに「髪を切って、スーツを新調して、安売りしてたから車を買ってね」と言われたとはいえ、(今の私たちから見れば大したことはないが)若者みたいにめちゃくちゃ短く髪を刈り、派手なチェック柄のスーツを仕立て、オープンカーを買うという行動に出る。そして社長秘書(マリリン・モンロー)をノリ良く誘ってドライブに行き、めちゃめちゃスピードを出して飛ばしたあげくに事故を起こし、修理が終わる時間まで「じゃあ!」って言って二人でスケート場でスケートを楽しみ、さらにプールで高飛び込みを披露するという挙動にでる。

もう別人じゃん。あんな真面目一徹の男が、若返っただけでそんなにめちゃくちゃフットワーク軽い、ノリのいい男の子になるもんかねえ。生真面目な若者になるだけなんじゃないかと思うんだがなあ。

f:id:msan1971:20191016230959j:plain

軽い


でもケリー・グラントはまだ大学生くらいには見えた。だけど妻のジンジャー・ロジャースはもっと納得がいかない。

新婚当時くらいの若妻といった年齢になったみたいだけど、まあ仮にそれが二十歳だったとする。実際二人で新婚旅行で泊まったホテルにもう一度泊まろうとするのだから、二十歳くらいってことでいいと思う。で、その時泊まった部屋と同じ部屋に泊まろうとするときの、ジンジャーの恥じらい方は新婚ってそういう感じなのかなと思うから、二十歳くらいでいいと思う(この時代は婚前交渉はなかったという前提ですから)。二十五でもいいけど。

でも!!! いやー、それ以外はぶっちゃけ小学生ですよ。やんちゃな小学生の女の子。

薬飲んだ直後に、実験用に飼っていたと思われる金魚を社長のズボンに「ぴょろっ」と入れて、社長が騒ぐをきゃっきゃっきゃっきゃと大喜び!・・・って、二十歳でする?

ホテルの部屋に入って夜になると泣き出して、「ママ~」って泣いて・・・まじで? 子供じゃん。

私も幼稚園くらいの時に親戚のおばさんちにお泊りすることになって、明るいうちはぜんぜん意気揚々としていたのが、いざ寝る時間帯になると「ママ~~~(号泣)」と猛烈に泣き出してママに迎えに来てもらったことがある。超覚えてる。そんな可愛いときもあった。幸いすぐ近所だったから迎えに来てもらったが、でも幼稚園ですよ。

だけどジンジャーは二十歳で小学生の挙動。うーーーん(腕組み)、納得がいかない。こんな二十歳がいたとしたらウザくて私は近寄らないぞ!

そんな感じでずーーーーっと続くから全然笑えなかった。

正気の奥様は母親のように旦那を見守る、愛があふれるすばらしい奥様で、こっちは好きだったのにー。

f:id:msan1971:20191016231048j:plain

乗り方! 乗り方!


ハワード・ヒューズ監督作は、このブログでは同じケリー・グラントを配した『ヒズ・ガール・フライデー(1940)』を見て記事にしていて、そっちは十分楽しかったのになんたることかしら。個人的にはケリー・グラントの「ぱっちりおめめ」が好みじゃないけど、でも軽やかで楽しめたのに。

記事にはしていないけど、ハワード・ヒューズ監督はこの『モンキー・ビジネス』のあとにマリリン・モンローで有名なあの『紳士は金髪がお好き(1953)』を撮っていて、たしか面白かったと記憶しているから年とって衰えたとかじゃないと思うのだがなー(見たのが昔過ぎて覚えてない)。

なんだか「面白くしよう面白くしよう」という気持ちだけが空回りしているような、そんな映画だった。

f:id:msan1971:20191016231131j:plain

ちょっとだけ出てくるこの運転手は良い顔してた


でもマリリン・モンローは見どころかも。大スターになる直前くらいの、25~26歳くらいのお姿が拝める。

この映画の後くらいで一躍世界的大スターに躍り出るけど、この映画がヒットして・・・ではないと思う(笑)


しかしこの映画のモンローは、とにかくどってことのない役どころで、映画内でも「あのカワイコちゃん?」とジンジャー・ロジャースに言われていたが、実際の英語のセリフは「ピンナップ・ガール?」だった。

あー。ねー。そういう役ですよ、確かに。

マリリン・モンローといえば「グラマーでエッチな、頭の弱い女の子」という役柄ばかりでキャスティングされて、「セックス・シンボルとしてだけ」としか見てもらえないことに嫌気がさした彼女は、演技でちゃんと認められたくてアクターズ・スタジオに通ったり、インテリ作家のアーサー・ミラーと結婚したりしてあがいたが、結局は上手くいかなかった。

実際、80年代にモンローの映画を見れば、彼女の声は必ず声優の向井真理子さんがやっていて、それはもう見事にモンローが嫌がっていた「グラマーでエッチな、頭の弱い女の子」という感じの声と発声なのだった(モンローのそっくりさんが出ていたCM「ホテル聚楽」の「じゅらくよ~」というあの有名なやつも向井さんがあてている」)。

なんていうか、”スケベ” な感じ(久しぶりに聞いた。死語かな)。


☟このナレーションが向井真理子さん。この声がそのままモンローの声です。


「マリリン・ザ・プレミアム・ブルーレイ・コレクション」8/3 発売!



☟有名なモンローのそっくりさんと、向井真理子さんの「じゅらくよ~」
80年代に死ぬほど見た。


1983 ホテル聚楽



これ! こういう先入観でモンローは悩んでいたのに(涙)罪だよ~(カナシイ)。

私が少し大人になって、日本語吹き替えではなく字幕でモンローの映画を初めて見た時の驚きと言ったら。ぜんぜん違うじゃん!本当のモンローの声は、ちょっとハスキーでかなり知的な声なのだった。思わずモンローが映画内で歌った歌ばかりを集めたCDまで購入してしまい、一時盛んに聞いていたもん(もちろん今でも持ってます)。

本人の声を知ってしまったら、その後は吹き替えのモンローの声が「ほんとうに馬鹿にしているな」と思えてきて、もう嫌なのだった。きらい。


もちろん向井真理子さんがどうという話ではない。80年頃に大流行りしたアニメ『Dr.スランプ アラレちゃん』で、みどり先生の声を当てていたのも向井さんだが、こちらはこれでいい。アニメだし、そういう設定なのだから。

だけどモンローは実際の人間だからさあ。生きてる人間で、アニメのキャラじゃないから。勝手にそういうパーソナリティを押し付けられてるって知ったら、そりゃあもう傷つくよ・・・

・・・とはいえモンローは役柄以外でも、自ら進んでセックス・シンボルとして振る舞っていたことも事実なのだが。男にエッチな目でも見られたいけど、ちゃんと中身も見てもらいたい、みたいな。人間ってフクザツ(フクザツ)。


モンローの死は謎に包まれていて自殺説や他殺説までいろいろあるが、結局は30歳過ぎてがくっと衰えた容姿を気にしての自殺だったと、個人的には思っている。セックス・シンボルとしてばかり見られるのが嫌で演技派になりたかったが、結局彼女自身も ”若さ” や ”セックス・シンボルであること” に縛られていて、それらを失う恐怖から死を選んだのだろう、と。

マリリン・モンローは個人的に十代の頃に大好きで、少ないこづかいをはたいて一万円もする大判の写真集を購入するなどしていた時代もあったので、やや熱くなってしまった。

脱線気味の記事になってしまったが、悲しくなってしまったので強引におしまいにする(この映画はコメディです)。


f:id:msan1971:20191016234227j:plain

かわいい