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【本】「類猿人ターザン」バロウズ原作「ターザン」第一作・詳しいあらすじと感想【絶版】



題名 類猿人ターザン 
作者 エドガー・ライス・バロウズ
出版社 ハヤカワSF文庫 
出版年 1918年
出版国 アメリカ
ジャンル 冒険


むかーしむかし、今は亡き父から貰った文庫本はあまりに古くてページが外れてしまったため再購入。そしたら今回もまたページが外れてしまった! 昭和46年発行の古い文庫本だから・・・仕方ない。

この日本にいまさら絶版古書を探してまでして「ターザンを読もう」なんていう奇特な方はあまりいないと思うが、先日ジョニー・ワイズミュラー版の映画の感想を記事にしたし、興味を持つ方はいるかもしれないので詳しめにあらすじを記すことにする。絶版本なのでなかなか読めないから、かなり詳しいレベルで(本当は忘れちゃうからだけど)。

ちなみに原作は映画版や一般のターザンのイメージとはまったく別の話といっていい。ストーリーも違うし、登場人物の設定や性格的なものもぜんぜん違う。

単純な男ではないし、頻繁に木から木へ飛び移るが「アーアアー」とは叫ばないし、「おれターザン、おまえジェーン」みたいなカタコトでは話さないし、ジェーンはアフリカには残らずアメリカに帰国する。
 
 
 

登場人物

ターザン・・・人間。主人公
カラ・・・類人猿。ターザンの育ての母
チュブラット・・・類人猿。ターザンの義父
カーチャク・・・類人猿。類人猿の群れのボス

ジョン・クレイトン卿・・・人間。ターザンの父
アリス・クレイトン・・・人間。ターザンの母
クレイトン・・・人間。ターザンの叔父
ポーター教授・・・人間。研究のことしか頭にない学者らしい学者
ジェーン・・・人間。ポーター教授の娘
エスメラルダ・・・人間。使用人の黒人女
フィランダー・・・人間。ポーター教授の助手

 

ターザンの特徴

両親は英国貴族グレイストーク卿の血筋である。

アフリカで生まれ、子供を失ったばかりの類人猿カラに育てられる。ターザンは他の類人猿の子供と比較して異常に成長が遅いにも関わらず、カラは見捨てることなくターザンに命がけの深い愛情を注いで育てていく。

10代のターザンは裸で暮らし、素手で猛獣と格闘し、勝てばゴリラのようにこぶしで胸を叩いて雄たけびをあげ、血のしたたる肉を生肉のまま喰らう、原始人並みというか類人猿そのものの習慣を持っている。

外見的特徴は、背が高く高貴な顔立ちでハンサム、筋肉が発達していて堂々とした立派な体格を持つ。度重なる猛獣との生死をかけた格闘で体中傷だらけで、中でも額にある傷は普段は白く目立たないが、怒ると赤く浮き出てくる。

大変に知的である。1歳の時に両親を失って猿に育てられるという特殊な環境にも関わらず、限られた絵本や書物だけで独力で文字の読み書きを習得。その他にも鍵の開け方、ナイフの使い方、投げ縄の習得など、教える者が皆無の環境で独力で身に着けていく。白人と接触後は、数週間でフランス語を話せるようになり、次いで英語も習得する天才的な語学センスを持つ。
 
 

あらすじ

類人猿時代
英国貴族のグレイストーク卿ジョン・クレイトンとその妻アリスは、赴任先である西アフリカに向かう途中、乗船する船の反乱が原因で未開の地にたった二人で取り残されてしまう。アリスは男の子を出産するが、猛獣に襲われた際のショックで精神が崩壊し(英国にいると思っている)、1年後にアリスは息をひきとる。さらに1年、ジョンの隙を突いて類人猿のボス、カーチャクの集団がジョンの家を襲いジョンは死亡、幼子は子供を死なせたばかりの女の類人猿カラに連れ去られてしまう。

幼子は類人猿達に「ターザン(類人猿の言葉で「白い皮膚」の意味)」と名付けられ、カラの強い愛情に守られながら成長していく。10歳頃になると周りの類人猿達と自分の見た目の違いに悩むが、その知能の高さは成長と共に際立ち始める。

ある日ずっと気になっていた、近くにある小屋に入る決意を固めたターザンは、ドアの仕組みを理解し、中にあった本に興味を示し、文字を理解しようと熱心に取り組みはじめる。さらにナイフを発見し、ゴリラと戦い殺すことでその威力を知る。

その後、部族の敵の武将を殺したお祝いのダムダム祭りで、ターザンは長年自分を執拗に憎んできた義父チュブラット(カラの夫)と対決。チュブラットをナイフで一突きにして殺害、勝者の雄叫びを上げる。そして自分がカラ達と同類ではなく、あの小屋にあった絵本に書かれている生き物と同類であると確信。仲間からの信頼も勝ち取り、18歳になる頃には言葉は話せないが本の内容は大体理解できるまでに到達する。

 
類人猿の王となり、人間と初遭遇
ターザンはとうとう自分以外の人類と初遭遇する。原住民ムボンガ族の使う毒矢の威力を知り、彼らの集落で文明的な生活に初めて接し興味を惹かれ、彼らの持つ毒矢を盗みに度々訪れるようになる。ムボンガ族が人肉を喰う習慣があることを知り、ターザンは嫌悪感を覚える。

その後、類人猿の王カーチャクを倒して王者となったターザンは、支配者に課せられた責任や役割の煩雑さにうんざりしはじめる。やがてターザンは群れを離れ、ひとりで生活しはじめる。

ある日小屋の近くで白人と遭遇。彼らは争いはじめ、銃でひとり射殺される。初めて見た銃に驚くと共に、白人たちの卑劣さに当惑し嫌悪する。小屋を荒らされたくないターザンは、初めて覚えた文字を使って彼らに警告をする。
 
「これは、多数の野獣と黒人を征服したターザンの家だ。ターザンの所有物を荒らしてはいけない。ターザンは見張っているぞ。猿人ターザン」
 
 
永遠の恋人ジェーン、親友ダルノー中尉との出会い
ターザンは青年クレイトン、ポーター教授、その娘ジェーンらの命を幾度となく救出する。

美しいジェーンに恋をしたターザンは、彼らに獲物を届けるなどして見守るようになる。一方、ポーター教授らが乗っていた船「アロー号」の水夫らは、教授が発見した大量の金貨を奪い、あとで取りに来るつもりで島に埋め、教授らを置き去りにして出帆してしまう。


その頃、ターザンが去ったあとの類人猿たちは、新しいボスのターコズに対して反乱を起こしていた。ジェーンは、群れを追われていきり立つターコズにさらいわれてしまうが、ターザンによって救出される。自分を救ったターザンに思わず駆け寄るジェーン。ターザンにキスをされて愛を感じるが、すぐに理性的になって拒絶する。ターザンはそれがどういうことなのか分からず、ジェーンを小脇に抱えて運び去る。

ジェーンは最初こそターザンにおびえるが、すぐにターザンの逞しい男性的魅力に強く惹かれ、ターザンの高貴な風貌もあって安心感を覚えるようになる。ジェーンはターザンが首にかけているロケット・ペンダントにあったグレイストーク卿の肖像や、ターザンが持っていたグレイストーク卿の写真、彼がふと見せる優雅な物腰などに謎めいた魅力を感じる。


一方、ポーター教授らを置き去りにしたアロー号は方角を見失って漂流していた。アロー号を発見したフランス海兵隊は水夫たちから事情を聞き出し、教授一行を救出するため上陸する。行方が分からなくなっていたジェーンを探すダルノー中尉がムボンガ族につかまり、ターザンに救出される。ターザンの献身的な看護のかいあってダルノー中尉の体力はやがて回復。ダルノー中尉はターザンに語学を教えるようになる。

フランス海兵隊やポーター教授らはダルノー中尉の救出に望みをかけて捜索していたがついに断念。ジェーンを含む一行はアメリカへ帰国の途についてしまう。

 
ターザン、アメリカへ向かう
ターザンは、ジェーンが去ってしまったことを知って落胆。ダルノー中尉と共にアメリカへ向かうことを決意する。二人はまずポーター教授の宝を持ち、ダルノー中尉はまだまだ野蛮な習慣の抜けないターザンに、紳士としての振る舞いを教えながらフランスへ向かう。

ターザンが持っていたジョンの日記の記述から、ターザンがジョンの息子なのではないかと考えるダルノー中尉は、日記についていた幼子の指紋をターザンの指紋と照合することをフランスの警察に依頼する。


一方アメリカでは、大金持ちキャンラーとジェーンの結婚話が進んでいた。しかしジェーンはウィスコンシンの田舎に引っ込んで慎ましく生活する計画をすすめていたが、最終的にキャンラーに屈し、結婚を承諾してしまう。

その頃近くでは山火事が起きていた。ジェーンが火の手に囲まれるなかターザンが登場。森の中からジェーンを救い上げ、二人は再会する。ターザンはジェーンに求婚するが、ジェーンは思う。「彼はこの文明社会でうまくやっていけるだろうか。田舎者の彼を愛し続けられるかしら。そのうちアフリカでの生活が恋しくなって帰りたくなるのではないかしら」と。


ターザンがポーター教授にアフリカから彼の宝物を持ち帰ったこと、宝物を24万ドルに変えたことを話し、小切手を手渡す。ジェーンはキャンラーと結婚する理由がなくなり、クレイトンが改めてジェーンに求婚する。今のターザンからは自分がアフリカで感じたあの魔法の魅力、自分を魅了した野生のすさまじい迫力はなくなっていると感じていたジェーンは「ターザンを愛したと思ったのは、あの時の一時的な幻覚にすぎないのではないかしら」と思い、「いい人」クレイトンの求婚を受ける。


その晩、ジェーンは改めてターザンの求婚を受け、今度はクレイトンの求婚を受けてしまったことを後悔する。そこへターザンあての電報が届く。差出人はフランスからで、例の指紋が照合され、「ターザンがグレイストーク卿であることを証明する」というものだった。しかし自分がグレイストーク卿の正式な後継者であることが明らかになると、称号も財産も、何もかもすべてをクレイトンから奪うことになり、彼と彼の求婚を受けたジェーンの人生が大きく変わってしまう。「なぜジャングルに住んでいたのか」とクレイトンに問われたターザンは、こう答えるのだった。
 
「ぼくはあそこで生まれたのです。母は類人猿でしたから、もちろんぼくが生まれたころのことを詳しく話せるわけがありません。ですからぼくの父がどんな人だったのか、全然わからないのです」
 
 

感想

心に残るのは、まずは類人猿カラの献身的な母性愛。
自分の子を亡くし、その矢先に手に入れた人間の子を我が子として立派に育て上げた。それも類人猿の子と比べれば格段に成長が遅い人間の子を、「この子、障害でもあるのかしら」と思いながらも決して見捨てず、危機があれば矢のように飛んで行って守り抜いた。そのカラの愛情にターザンも十分に応え、自分が類人猿ではなく人間の子であると気づいてからも変わらぬ愛と感謝の心を持ち続ける。感動的。


次にターザンがダルノー中尉から「お金」の概念を教わり、「では僕も働くよ」と言うところ。
働かないで、ターザン。そんなセリフ言わないで。アフリカの大地で、類人猿の、引いてはアフリカの猛獣の王にまで上り詰めた誇り高きターザンがやることじゃない。働くなんて・・・(>_<)クツジョクテキ。


さらにジェーンの二転三転する心の動きを「優柔不断」と言うなかれ。彼女はかなり理性的で分析的。だからこそ揺れ動くのだ。感情が高まってターザンに恋や愛を感じても、それはこんな異常事態だからハラハラしてドキドキしてるだけなんじゃないかしら、と自分の心を分析して、冷静を保とうとする。でも心は惹かれている。だから揺れる。アメリカに戻ってからも、ターザンの求婚を受け、「この野生の男は上流階級の生活に溶け込めるかしら」と考えるのは当然。そして「いつかは嫌気がさしてジャングルに帰ってしまうのではないか」と考えるのも当然のこと。そういったジェーンの心の機微がきちんと描かれ説明されている。いつかは決断してね、ジェーン。


そしてラストのターザンの台詞が泣ける。優しすぎた。



☟本は絶版。ご購入は古本となります。

 
 

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