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古い映画感想ブログです。驚くほど忘れてしまうので備忘録として。

【映画】「アパートの鍵貸します(1960)」 ビリー・ワイルダー&ジャック・レモンの個性が光る


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題名 アパートの鍵貸します
監督 ビリー・ワイルダー
制作 ビリー・ワイルダー
脚本 ビリー・ワイルダー
出演 ジャック・レモン、シャーリー・マクレーン、フレッド・マクマレイ
音楽 アドルフ・ドイッチ
上映時間 126分
制作年 1960年
制作国 アメリカ
ジャンル コメディ、ラブ・ストーリー、モノクロ
受賞 アカデミー賞(作品賞、監督賞、脚本賞、美術賞、編集賞)
 
 
「僕はロビンソン・クルーソーだ。人の波間に漂っていたが、ある日砂浜に足跡を発見。君だ」  バクスターの台詞より
 
 
シャーリー・マクレーンがすごくかわいい、軽めのラブ・コメディの有名作。
 
そして超有名コメディアンで俳優のジャック・レモンが主役を演じている。彼をリスペクトしている日本の芸人や俳優は多いから、お笑いが好きならジャック・レモンは見ておいた方がいい。日本の笑いにいかに影響を与えてきたかが分かると思う。
 
コメディと言っても「ギャグに次ぐギャグ!」とか「ドタバタ」とか「あはは、ばかだねー(爆笑)」とか、そういうタイプのコメディではなくて、登場人物たちの設定と気の利いたセリフ、スマートな演出、そしてジャック・レモンの演技で笑わせる、洒落た感じ。
 

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この時代特有の広大なオフィス風景
巨大保険会社に勤める主人公のバクスターはうだつの上がらない平社員。けれども彼には出世の秘策があった。それは会社の上役たち4人の浮気のために自分のアパートを提供して取り入り、評価を上げてもらおうという作戦だ。でも部屋の片付けもしなくちゃならないし、酒やつまみも用意しなくちゃならないし、お隣さんにはまるで絶倫のように思われて、ホテル業も楽じゃない。おまけに毎晩のように入れ替わり立ち代わり部屋を使用する上司たちのせいで家には帰れないわ、鍵を持ち帰られて締め出されるわ、おかげで公園のベンチで夜を明かして風邪をひく羽目に。それでもバクスターはわがままな彼らの為に、仕事中もせっせとスケジューリングをする日をおくっていた。
 
ある日、部長に呼び出されたバクスターは「いよいよ辞令がきたか!」と喜び勇んで部長室へ向かう。すべてお見通しの部長から自分にもアパートを貸すよう命じられ、その見返りに係長に昇進、専用の個室も与えられる。ところが部長の浮気の相手は、ずっとバクスターが思いを寄せていた会社のエレベーター・ガール、フランだった。
 

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係長に昇進


ここから、部長との破局を感じたフランの自殺未遂、クビになった部長の秘書が奥さんにいろいろ暴露して復讐、奥さんに追い出された部長が手のひらを返してフランに最接近、バクスターはあっというまに部長補佐に昇進と急速に展開。

 
映画の半ばで、自殺未遂、復讐といったワードが出てきて、演出も急に転調して緊迫感が出てくるけど、それでも映画はできるだけ軽めに展開する。
 
脚本がよく出来ていて、全く真逆の演出でもいけそう。今回はコメディ・タッチで撮影されているけど、もしジャック・レモンではない俳優に演じさせればシリアスなサスペンスになったかもしれない。
 
 
要は、出世をもくろむ野心あふれた孤独な主人公が、上司たちに浮気場所を提供する形で自分のアパートを貸し出してゴマをする。身勝手な上司たち、部下を利用することしか考えていない腐った部長、恋に翻弄される若い娘、利用され簡単に捨てられる若い女たち、その中で上を目指す主人公。ところがその中の一人の女の子が自殺未遂をしてしまう。そういった出来事を通して主人公は最後、「人間らしく生きること」を選択する、という話でしょう。
 
重めの演出にするとサスペンスフルな印象になって・・・、うんいける。これはこれで見てみたい。
 
監督のビリー・ワイルダーはこの『アパートの鍵貸します』や『お熱いのがお好き(1959)』のようなコメディから、『サンセット大通り(1950)』のような超絶に怖い映画まで幅広く演出するお方だからどっちでも演出できたはず。でも今回は軽めにしました、と。
 
 
こういう風に、どう演出するかを監督がいろいろ選べる脚本っていうのは良い脚本だと思う(ま、ワイルダーが自分で書いてるんだけど)。
 
ちなみに『サンセット大通り(1950)』は、私が今まで見た映画の中でも「超怖い映画」としてかなり上位に入ってくる映画。ほんと怖いの。思い出すだけでも「怖かったなああ(しみじみ怖い)」と思う。だからおいそれと見たくない。見るには決心と言うか、心の準備がいる。それはどういう怖さかと言うと「人間が一番怖い」というやつ。おすすめです(いつか記事にすると思う)。

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部長補佐になったよ

そしてシャーリー・マクレーン。この頃の彼女は本当にかわいい。
 
1955年にヒッチコック監督の有名作『ハリーの災難(1955)』で主演を演じて映画デビュー。紅葉した森が舞台で景色がすごくきれいな、「死体がたらいまわしにされる」という皮肉の利いた作品で面白いのでこれもオススメ。
 
そしてマクレーンはスターになり、70年代も80年代もヒット作をとばし、最近だとイギリスの大ヒットドラマ『ダウントン・アビー(2010~)』で、主人公グランサム伯爵ロバート・クローリーの妻コーラの母親役をやっていた。アメリカの大金持ちで現代的な、ぶっとんだばあちゃんだった。
 
彼女は80年代に『アウト・オン・ア・リム』という本を出して世界的ベストセラーになった。私がリアルタイムで知るシャーリー・マクレーンはこの本の著者というイメージ。ニューエイジ系の本で、宗教的というか神秘的と言うか精神世界的な本らしく、ものすごく話題になっていたと思う。でも個人的にはなんか「あっち側に行っちゃった感」を感じてた(だから読んではいません)。
 
ま、途中でオカルトチックになった感があるけど、でも女優としてのマクレーンはほんとうに可愛い。美人とかではなくて、コケティッシュでチャーミング。好きです。
 

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しかしそれにしても社内の女に次々と手を出していた部長。男としても上司としても最低でしたな。
 
女を口説く手口はいつも同じで、妻との離婚をちらつかせ、みんな同じレストランに連れて行き、同じセリフで口説き、同じセリフで別れ話を切り出すという、自分のテンプレート通りに女をとっかえひっかえする男。そしてクリスマス・プレゼントに「これで好きなものを買いなさい」と100ドル札をフランに渡し、家族へのプレゼントを小脇に抱えて去っていく男。
 
自分の過去をフランにばらした元浮気相手の秘書をクビにしたら奥さんに色々暴露ばらされて、家を追い出された途端にフランと結婚すると言い出したり。フランをもてあそんでいたくせに、身勝手な男。
 
でも、チラッと映る新しい秘書がおばあちゃんくらいの年齢だったのは笑った。手近で手を付けるのは懲りたのかしら。こういう隅々まで気を配った、うまいキャスティングだった。

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全員集合的な





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