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古い映画感想ブログです。驚くほど忘れてしまうので備忘録として。

【映画】「アラビアン・ナイト(1942)」 シェヘラザード、踊り子になる

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題名 アラビアン・ナイト
監督 ジョン・ローリンズ
出演 ジョン・ホール、マリア・モンテス、サブー
上映時間 86分
制作年 1942年
制作国 アメリカ
ジャンル アクション、冒険、ファンタジー


これはほぼ「剣戟映画」と言ってよいと思う。千夜一夜物語では「全くない」ところは、前回紹介した『船乗りシンドバッドの冒険(1947)』とおんなじ。


本来のシェヘラザードといえば、次々と処女を妻にしては即斬殺する(やることはやって)という「女性不振もここに極まれり」な王様に嫁ぐ羽目になってしまう、良いとこのお嬢さんで、殺される日を先延ばしにするために物語を次々と王様に語り聞かせて、ついにはそれが「千夜一夜」に及びとうとう王様を改心させるという、とても賢い女性の代表。「作家の神様」みたいに言われることもある。

・・・でもこの映画でのシェヘラザードは、「踊り子で美人」というだけで特に賢い感じでもない。それどころか傲慢で強欲という、むしろ悪女に近いお人柄だった (・へ・)

ちなみにアラジンやシンドバッドもちょい役で登場。でも全然ヒーローぽくなくて、サーカスの団員でおじさん、という悲しい設定に (>_<)

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姫さまたちがおっきな本でお勉強中


****** あらすじ ******
遠い昔のおはなし。アラブでは上流階級の娘たちが老先生のもとで教養のお勉強中。千夜一夜物語の中のひとつをみなで音読し始める・・・・

アラブの王様ハルン・アル・ラシッドにはカマールという兄がいて王位を争ってきたが、カマールは冷酷な性格で、しかも母親が奴隷であったがために王位を継承できなかった。

カマールはサーカスにいる踊り子で絶世の美女シェヘラザードを手に入れたがっていたが、シェヘラザードに「王妃になれるのなら嫁ぎましょう」と言われ、ハルンに反逆して失敗、磔刑にあう。反逆の動機が「美女を手に入れること」であると知ったハルンは「女のためにそこまでするか」と思う。温厚なハルンは「殺すまでは必要ない」と考え、カマールを許そうとする。しかしそこへカマールの部下たちが大勢押し寄せ、カマールを奪う。深手を負ったハルンはサーカスの一員であるアリに救われ、美女シェヘラザードと出会う。シェヘラザードの美しさにハルンも「さもありなん」とカマールの気持ちを納得する。ハルンは身分を偽りサーカスと行動を共にすることなる。

王位についたカマールはまず手始めにシェヘラザードを妻に迎えようとする。しかしカマールを亡き者にして自分が王位につこうと企んでいた重臣ナダルは、シェヘラザードを国から追い出すよう部下に指示。するとその部下はついでに金を稼ごうと、サーカスの一行ごとシェヘラザード奴隷として売ってしまう。奴隷市が開かれ、いよいよシェヘラザードが売りに出されると、彼女を落札したのはそれと知った重臣ナダルだった。ハルンはシェヘラザードが連れ去られる直前にナダルから彼女を奪還する。

しかし結局シェヘラザードはカマールの部下に捕えられ、砂漠の中にあるカマールのテントに連れてこられる。シェヘラザードは、自分が実はカマールではなくハルンを愛してしまったことを重臣ナダルに見抜かれ、ハルンを助ける交換条件でカマール毒殺をナダルに依頼される。

さっそく二人の婚約の儀が始まる。踊り子であるシェヘラザードが踊りながらカマールのワインに毒を仕込む。そこへハルンが登場。ハルンとカマールの決闘が始まる。ハルン危うし。とそこへナダルが投げたナイフがカマールに命中しカマールは死亡。次はハルンをと襲い掛かるナダルだったが、軍隊を率いて登場したアリたちによってナダルは殺される。そしてハルンとシェヘラザードは結ばれるのでした。

「めでたしめでたし」となって、本が閉じられる。
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ハルン・アル・ラシッド


これはおとぎ話だから、一人の女をふたりの男が奪い合う+野心満々の腹心が陰謀をたくらむという、いたって分かりやすいお話ぶり。


まず「一人目の男」ハルン・アル・ラシッド。実在のカリフで、全盛期のアッバース朝第5カリフとして君臨したお方で「偉大なカリフ」と現在でも言われているらしい(在位は786年~809年)。

映画では兄のカマールの母親が奴隷出身だったことになっているが、実際はハルンの方の母親が奴隷出身だったみたい。兄はハーディーと言って、先にカリフの座を継承したけど、ハルンの母親によって毒殺されたという噂(ありがちw)。東ローマ帝国と何度も闘って勝っていてアッバース朝の全盛期をつくったけど、後半はすでに没落の気配が漂い始めていたらしい。


でも映画はそういう歴史ものではないから「お名前だけ拝借」っていう感じ。そして「恋愛冒険活劇」となる。まあ「恋愛=冒険」と言ってもいいんだと思うから相性がいい。その上、庶民ではなく王様たちが女を奪い合うわけだから、殺されそうになるわ、奴隷にされそうになるわ、高額で落札されそうになるわ、馬で追いかけられるわ、オアシスで踊るわ、現代庶民にはあり得ない出来事満載で、ますますスケールが大きくなっていく。


ハルン役は当時の二枚目スター、ジョン・ホール。

お髭・・・あった方がずっと男前よ。あるあるとは言え、剃ると途端に軽い印象にw 個人的に髭は好きなんだけど、剃った後の青々しさといい、にやけた口元が露わになって・・・髭の貫録っていうのかしら、あったほうが良かったとおもた。

それに意外ともっさりとして体重が重そうでもあった。

でも人間味もあって温厚そう。やや甘さが目立つが、人民に愛されるいいカリフになるのかも(後述するが妻のシェヘラザードがキャラ変できればね)。

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うーん 髭は欲しい


そして「ふたりめの男」、兄のカマーーーール。大きな体格で野心家の顔。傲慢そう。

でも、やや甘さの目立ったハルン(髭もないしw)に対してカマールの方が威厳があって、冷酷かもしれないけど愛し愛される良き妻をめとることができて、本人のキャラ変が成功すれば名君になれたかも。

ま、カリフの座に就いたばかりで早速部下に命じた指示が「惚れた女を探して連れてくること」だし、しかもそのシェヘラザードは結構傲慢な悪女だから「女を見る目もない」という2点でダメか (^_^;)

でも母親が奴隷で、弟は優秀&人民に慕われる人格者で男前っていう境遇、なんか可哀想。かわいそうだなああ (・_・)

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兄カマール


「三番目の男」はカリフの地位を狙う野心家ナダル。

個人的にはこの人がいっちゃん好き。どこが好きかというと「いかにも冷静そうなクール&ドライな目つき」が好き。シェヘラザードの美しさになんか目もくれません。


しかしカリフというのは、現カリフを殺せばなれるものなのかしら。

私はイスラム社会やイスラム教には全く明るくないのだが、「カリフ」というのはイスラム教のキリストとも言える預言者ムハンマドの後継者という意味で、神の代理人なのでしょう? それなりに人格とかも必要な気がするし、カリスマ性とかも必要な気がするが。

カリフとして選ばれるための条件には、「心身両面で健全であること」「公正であること」「賢明であること」とかいくつかあって、ナダルはちょっと・・・ま、こういうのはどんどん形骸化していくし、そもそもの神であるエホバも遊牧民の神だけあって、わりと荒ぶる神だから、こういう野心家も好きそうだけど・・・。

要は強い意志を持って、異教徒を追い払って、自分たちの信仰や領土を守れれば、もうそれで合格なのかもしれない。イスラム教徒にとってだけ「公正」であれば、他の宗教の人たちにとって公正である必要は、まったくない、と。するとナダルは冷酷そうだから「頼もしい」ってことになってありなのかも。

そう考えると温厚そうなハランが一番適任じゃないっていう感じもしてくる。

ま、いずれにしても見た目はこの人が一番格好いいと思った。この見た目でツンデレだったりしたら尚よろしいかと(笑) (^_^.)

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ナダル


ああそうそう、問題のヒロイン、シェヘラザードとそれを演じたマリア・モンテス。

これがかなりのお転婆で、「私はこんなところにいる女じゃないわ」って、「王妃になるべくして生まれた女なのよ」って言って、サーカスで踊り子をしているというw 果てしない欲望と現実の落差。

登場冒頭、サーカスで自分の出番が差し迫っているのに全然出る気がなくて、客は「シェヘラザードを出せえええ」と騒いでいて、それを団長が必死でフォローして繋いでいるというのに、それでも全然出る気がない。催促に来た団長と言い合いして、何か物を投げようとしていたりしてた。気が強いなあ。猛女だなあ。

でも男性陣は美人だったら何でもいいらしくって、王座に最も近い男ふたりを虜にして散々振り回しまくるという・・・まじか。こんな女を王妃にしたら、猛烈に尻に惹かれて散財されて、もしかすると政治にも口を挟みかねない女だぞ。ていうか絶対に口挟むぞ。

でも美人だからしょうがないかwww


・・・でも私にはこのシェヘラザードを演じたマリア・モンテスが美人な気が全くしなかった。鼻息ばかりが荒くてガツガツギラギラして品が無くて庶民的で、「二流の美人」のように思うのだがなあ。前回紹介した『船乗りシンドバッドの冒険(1947)』のモーリン・オハラなら納得だったのに・・・(制作会社が違うっぽいけど)。

まあスターと言ってもグレードがいろいろあって、モーリン・オハラ>>>>>>>マリア・モンテスだから仕方ないかな(モーリン・オハラはかなり有名スターだから)。

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これがシェヘラザードかあ ('_')


あと個人的見どころは「砂漠」。砂漠の景色が好きなので、砂漠が舞台だとテンションがあがる(行ったことはない)。

ドラクエのスライムみたいなのが乗っかっているイスラム様式の廟がある。広大なさらさらの砂漠の中を行くと、向こうにイスラム建築の街が見える、サラサラの砂漠の中にプールを作ってしまうゴージャスさ、砂漠の中を駆けるたくさんの馬やラクダなど、どれをとっても美しい。

プールに関しては、なあにあれは容器(かなり大きい)を持って行って砂に埋めて、水を張ってるの? いったいどこからあれだけの水を運んでくるのかしら。バケツでせっせと運んでも、いったい何人がかりでどのくらいかかるのかしら。ほんとうに贅沢だと思う。

こういう、昔にしか出来ないであろう王様の「贅沢の極み」みたいなのを見るのは好き。城とか宮殿とか、教会とか大聖堂とか。これらを建てるために、あるいは維持するために、何千人、何万人の人の血と汗と涙と命が散って・・・とかいう側面はもちろんあるだろうけど、それでもこの手の建築や芸術が好き。

「こういった贅の限りを尽くす、みたいなことはおそらくもう出来ないのだなあ」と思うと、「人間の飽くなき欲望が美に昇華した」という感じで貴重極まりない。大事にしたいものですね。

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砂漠の中にプール


話は変わるけど、私ここ2年ほど仕事がつまらなくって辞めたい(涙)。ほんとうに「つまらない仕事に回されちゃったなあ」と持ってる。

何の脈略もないと思うでしょう。

でもこの映画の中にこんなセリフがあった。

「25年間 行ったり来たりで、行きか帰りか分からなくなった。」
川沿いに住む男の台詞


奴隷にされかかったサーカス団一行がカマールの追手から逃れるために川を渡ろうとするけど、渡し船を出している男が休んでるから川を渡れないっていうわけ。その川を25年間小舟で行ったり来たりして運賃を稼いでいた男が調子悪くて休んでて、その病を「混乱病だ」って言うの。

このシーンを見てこのセリフを聞いた時、「うーん」と思った。

25年間、毎日毎日、週休2日制とかそんなぬるいこともなく、ただひたすら川のこちら岸からあちら岸まで、あちら岸からこちら岸まで、延々と行ったり来たりするだけの仕事。

毎日毎日、生きている限り永遠に続く「行ったり来たり」。

くうー。きつい。(ノД`)・゜・。

「そういう時代だったから、この時代ならみんな同じようなもん」と言うのはたやすいが、これは相当キツイ。

そういう仕事が永遠の毎日なら・・・今の方がいっかあ ('_')

そんなこともチラッと思ったのだった。


というわけで今回はこのくらい。次回はこの流れで「アリババ」をレビューする予定(制作陣や俳優が同じらしい)。

じゃねー。


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