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古い映画感想ブログです。驚くほど忘れてしまうので備忘録として。

【映画】「アリババと四十人の盗賊(1944)」 いいとこ出身のアリババの純愛・剣戟物語

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題名 アリババと四十人の盗賊
監督 アーサー・ルービン
出演 ジョン・ホール、マリア・モンテス、ターハン・ベイ、カート・カッチ
上映時間 85分
制作年 1944年
制作国 アメリカ
ジャンル 冒険、ファンタジー


「千夜一夜物語ネタ」シリーズ第三弾は「アリババと40人の盗賊」。例に漏れず、こちらもかなりの改変が行われていたので、これが本当のストーリーではない。

本来「アリババ」といえば、「昔のペルシャに貧乏で真面目なアリババという男がいて、盗賊たちが宝を隠している洞窟を偶然見つける。その洞窟は普段は岩の扉でふさがれていて入れないが、盗賊たちが「開けゴマ!」と言うと岩が動いて中に入れる。それを知ったアリババは中に入って財宝を盗む」という、うらやましいお話(だと思う)。

とまあ、このくらいしか知らなかったのだが、今回調べてみたら続きがあった。

「盗賊の財宝のおかげで大金持ちになれたアリババだったが、金持ちの兄にその秘密を知られてしまう。アリババから呪文を無理やり聞きだし洞窟へ向かう。ところが財宝に目がくらんでいるうちに開け方の呪文を忘れてしまい、閉じ込められているところを盗賊たちに見つかって殺されてしまう。兄が帰ってこないのでアリババが洞窟へ行くと、バラバラになった兄の死体を発見。兄の死体を袋につめて持って帰り、仕立て屋に元通り縫い合わせてもらって葬式をする。そして兄の遺産も引き継いだアリババはさらにお金持ちになる。死体が持ち出されたことに気が付いた盗賊たちは、この隠れ家を知る者が他にもいると気づく。そして仕立て屋の証言から足が付き、アリババ危うし。しかし賢い召使の女奴隷が機転を利かせて、盗賊たちが隠れていた壷の中に沸騰した油を注いで一網打尽にする。その後、あらためてアリババ殺害計画を立て直した盗賊だったが、またしても賢い女奴隷によって謀略を暴かれ、彼女に刺殺されてしまう。この功績が認められて女奴隷はアリババの息子の嫁に昇格し、盗賊の財宝は貧しい人々に配り、アリババは尊敬されて繁栄しましたとさ」

という話だったらしい。後半は記憶の彼方に行ってしまっていて「あ~そう・・・だったかもしんないなー(遠い目)」という感じだった。日本昔話なんかにもありそうな、兄弟の片割れが善良で、もうひとりは強欲パターン。それにしてもアリババの一人勝ち感がすごい。「善良だと得するよ」みたいな展開。たしかに賢い女奴隷を自分の愛人にしたりせずに、息子に与えているあたりは良心的か。

それにしても「死体をバラバラにしたり」「それを縫い合わせたり」「生きてる人が入っているのを分かってて煮えたぎった油を注いだり」となかなかエグイ。すげえなあ。

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とはいえ例によって本作は、このアリババ話とは全然関係がなく、まったく別のお話と化していた。

この映画でのアリババは相当ないいとこの息子で名前はアリ。モンゴル帝国のカーンに攻め込まれた際に殺されそうになり、川に逃れて九死に一生を得るが、その後盗賊に拾われて育てられることになる。その盗賊の頭が「なんとか=ババ」という名前で、気に入られたアリは息子同然の待遇を受けることになったので「アリ=ババ」となった、というわけ。

****** あらすじ ******
大昔のバグダッド。時のカリフ、ハッサンの幼い息子アリは、幼馴染でカシム大公の娘アマーラと「将来おおきくなったら結婚しようね」と血の誓いをしていた。ところが当時世界一勢力を誇っていたモンゴル帝国のフラグ・カンが攻め込んでくる。ハッサンはカシム大公の裏切りで殺害され、アリは川に逃れて一命を取り留める。アリの胸には父からもらったカリフの証しであるメダルがかかっている。

難を逃れたアリが荒野をさまよっていると、盗賊たちが現れ岩で塞がれた洞窟内に消えて行くのを見る。盗賊のひとりが「開けゴマ!」と叫ぶと扉の岩が動くのを見たアリは、自分も真似て中に入るとそこには莫大な量の金銀財宝が積まれていた。空腹のアリが食べ物を勝手に食べて眠り込んでいると、しばらくして盗賊たちが戻ってくる。賢いアリを気に入った盗賊の親玉ババは、アリを息子として迎えることとし、アリは「アリババ」と呼ばれることになる。

時が経ち、立派に成長したアリ。宿敵フラグ・カンの婚約者が近くに滞在していると聞いたアリたちは、お宝を頂戴しようとキャラバンに近づく。そこで水浴びをしている美女と出会う。カンの許嫁であるとは知らずに彼女を口説いていたアリはモンゴル軍に捕らえられてしまう。美女はアリが幼い頃に結婚を誓ったアマーラだったが、いまはフラグ・カンの許嫁だった。それと知ったアリは、彼女を自分の元へ取り戻そうとする。
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胸元がセクシーな少年アリw


今作を見ていて一番テンションが上がったのが、(どうでもいいことだが)盗賊のアジトの洞窟の岩の扉が、観音開きに開いていたこと。「おや! (゜o゜)」と思ったね。

私の勝手なイメージでは、洞窟は大きな丸い岩かなにかで閉じられていて、「開けゴマ」と唱えるとその岩が「ごろごろ」と横に転がって開く的な感じだったので、観音開きは意表を突いたww

観音開きに開くもんかなあ。ああいう岩。すごいシステム。やはりあれかしら。扉を横にスライドさせるっていう発想って、日本人特有なのかしら。

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さらに映画冒頭、小学生くらいなのだと思うのだが、少年アリと少女アマーラが、お屋敷の噴水かなにかのところで腰を掛けて「永遠の愛の誓い」みたいなことをしているのだが、これがお互いの前腕内側をちょびっとナイフで切って、腕をくっつけて血を交わらせようという、なかなか気合の入った儀式だった。

ロマンチック・・・・なのかな。ちょっとよく分からない。(-_-;)

実際アマーラは、「病気になるかも、怖いわ」とか言ってちょっと腰が引けてた。「ヤンキーみたいな発想ね、ドスがきいてて引くわー」って感じかな。それに対してアリは「僕たちは永遠だ。お互いの血が体に流れてるんだよ」と言って説得するなど、かなり積極的。

その割には大人になったアリが、水辺で「美女はっけーん!」ってなって早速口説き倒していたけど、血の誓いはどこさいったの。たまたま同一人物だったけど、それはあくまでも偶然でしょお。

・・・まあ・・・偶然同一人物を引き当てたわけだから、やはり「運命のひと」ってことなのかしら (・へ・)ムー

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ところでアリの許嫁アマーラの父親カシムは、なにげに悪役みたいに描かれていたけど、実際はどうだろう。

当時のモンゴル帝国なんて、飛ぶ鳥を落とす勢いでありえないくらい領土を拡大し続けていたから、このままでは本当に根絶やしにされてしまうと判断したカシムは、「話し合って妥協点を見出しましょう」と、実に現実的な判断をして、カリフのハッサンに提案している。でもハッサンは「このチキン野郎。一億玉砕だ」みたいなことを言って、意地を張っている。

その結果、カシムは「そうは言われてもやっぱり賢くないよね」という感じで立ち回ったらハッサンは殺されるし、アリも殺されかけてしまう。そしてたぶんフラグ・カンに重用されて、相変わらず偉いポジションに居座って、まあ媚びたり大変だったと思うけど、娘がたまたま絶世の美女でもあったから、嫁がせれば地位は安泰、みたいな流れに。

だって実際フラグ・カンは「刃向うんなら毎日100人殺すぞ」とお触れをだしたりしてるんですよ。イザナギとイザナミの喧嘩かよ。

これは怖いし、民族の存亡を賭けて、少しでも一縷の活路を見出そうと思ったら、カシムの提案も大事なことだと思うのだがなあ。一億玉砕も歴史ドラマとしてはロマンチックな気もするけど、そんな選択を一国の主がしちゃあいけない。


・・・・と思いながら見ていたら、後半アリが戻ってきてからのカシムは自分の地位安泰しか考えていないクズ野郎だったw

娘アマーラをアリに取られて人質と化し、アリからフラグ・カンあてに「婚約者を返してほしくば、そこにいるカシムと引き換えだ!」と、人質交換を持ちかけられるとカシムはすぐに腰が引けて、ぐずぐずと言い訳して断りたくて仕方ない。

娘よりも自分。最初は「もしや深い考えのあるイイヤツなのでは」と思ったのに、娘の命よりも自分の命が大事だなんて。がっかりだよ、カシム。

おまけに娘アマーラがアリに心が動いたのを知ったら、自分で自分を拷問にかけて、まるでフラグに拷問されているかのように装って、娘の同情を引こうとまでしてた。自作自演のセルフ拷問(部下に手伝わせてたけど)。そこまでやるほどゲスとはね。ほとほとあきれた。


そうじゃなくて、幼いアリが生きて戻ってきて、「は! こいつは本物だ!」と気づいた時にアリに寝返ればよかったのに。

「国家人民の未来を考え、滅ぼされるよりは従属の方が良いと判断したがためにお父上のご意向に反する結果となってしまいましたが、私はいつもカリフの味方です。あれからずっとフラグ・カンに反旗を翻すチャンスを狙っていました。あなたが戻られたのであれば、あなたがカリフです。私は腹心のふりをしてフラグを欺き、フラグに最も近い地位にいます。お役にたてることでしょう。アマーラも今でもあなたを慕っています。」

みたいなことをうまーく言って、アリに寝返るのかな?と思ったが、ちっともそうはならなかった。カリフの力と人民の忠誠心をあなどりましたな。

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映画も終盤、フラグを倒して国を取り戻し、アマーラを自らの手にするためにアリと仲間の盗賊たちが立ち上がる。アリが商人のふりをして40個の壷に40人の盗賊を隠し、フラグへの貢物の「香油」と偽ってフラグに献上しようと計画する。

このあたりは「千夜一夜物語」のくだりを知っている観客が、「おお、いつものアリババの話のようだ」と思うようになっている。だから「誰が手引きをして壷に煮えたぎった油を注ぐのかな。カシムかな。カシムの間者っぽい女奴隷かしら。」とかいろいろ思う。

で、全然違うというオチ。

その後アリとフラグのチャンチャンバラバラのチャンバラ劇が繰り広げられて、剣戟映画らしくなり、最後はもちろんハッピーエンドとなる。予定調和だけど、こういう映画はそれでいい。

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ところで俳優陣だけど、前回取り上げた『アラビアン・ナイト(1942)』と同じ、当時の二枚目スター、ジョン・ホールと、やはり当時のスター、マリア・モンテスが出ている。

今作は『アラビアン・ナイト』から2年後の作品なのに、ジョン・ホールは今作の方が若く見えた。『アラビアン・ナイト』の方では薄着になると割ともっさりと肉がついていて「ちょっと太ってるな」という印象だったし、ややニヤケてたけど、今回の『アリババ』は体も顔つきも引き締まった印象。シャープになってたと思った。


ヒロインのマリア・モンテスは、『アラビアン・ナイト』のにくたらしい悪女から一転、奥ゆかしい女性を演じていた。だから今作のモンテスの方が可愛らしい印象だけど、言い換えれば「まるで面白くない役」だったと言ってもいい。

『アラビアン・ナイト』では気が強くて傲慢、「私は美人なのよ。こんなところにいる女じゃないわ。女王になる器なのよ」みたいなことを言っていた。でも今回はそういう憎らしいところは影を潜めて、実におとなしい、言い換えれば「何もしていなかった」。

あんなクズな父親に対しても刃向うほどでもないし、「愛しのアリ」の危機にも特にこれと言った活躍もしない。心配そうな顔をしているだけ。「ああ、いいとこのお嬢様なのだなあ」という役どころ。

モンテス的にはやりがいのない役だったかもしれない。でも個人的には『アラビアン・ナイト』よりは楽しめた作品だった。


ここ三作品、千夜一夜物語に触発されて制作された映画を観てきたけど、この三作を比較してみれば

『船乗りシンドバッドの冒険』>>>『アリババと四十人の盗賊』>『アラビアン・ナイト』という結論だった。


ではまた。


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