題名 ビルとテッドの大冒険
監督 スティーヴン・ヘレク
脚本 クリス・マシソン、エド・ソロモン
出演 キアヌ・リーヴス、アレックス・ウィンター、ジョージ・カーリン
音楽 デヴィッド・ニューマン
上映時間 91分
制作年 1989年
制作国 アメリカ
ジャンル コメディ、おバカ、タイムトラベル
おバカな高校生コンビが、ズレたことを名案のように思い付き、「やったね!」とか「いけてるー!」みたいに喜んで、ギターを鳴らす仕草をするときの「ウイイイイーン」とか「ヴィーーーン」みたいなギターの効果音が印象的かつ有名なおバカ映画。
とにかくおバカな高校生二人組が、明日の歴史のレポートをちゃんと出していい点を取らないと落第してアラスカ陸軍学校に入れられることになってしまうことになり「大ピンチ超やばい」と思っていたら、どうやら二人はおバカなのに未来ではビートルズみたいなスーパースターらしくって、二人がレポートをちゃんとやらないと未来が変わってしまうがために、レポートのお手伝いをすべく未来から助っ人がやってくる。二人は彼が乗ってきた ”電話ボックス型”タイムマシン を使って過去へ行き、歴史上の人物を集め始める、という、まるでドラえもんのようなお話。
ていうかドラえもんじゃん。
むかーしむかーし見たときは気づかなかったけど、考えてみたらまるっきりドラえもんだった。主人公二人がのび太で、未来からくる助っ人 ”ルーファス” がドラえもん。
ただ、のび太はジャイアンやスネ夫にいじめられているし、出木杉くんやしずかちゃんみたいな優等生もいるからか、キャラクターにめそめそした劣等感があるけれど、今作の主人公ビルとテッドには、そんなものは微塵もない。底抜けに明るい。
この映画の見所は、なんといっても「全くなんにも考えていなさそうな、頭の悪そうなキアヌ・リーヴス」に尽きる。うらやましいあほっぷり。すごくかわいい。
キアヌ当時24~5歳。高校生役。
24歳で高校生役をやった『理由なき反抗(1955)』のジェームズ・ディーンの昔から、高校生役は実年齢の俳優ではなく、だいたいこれくらいの年齢の役者がやる方が、実はリアリティがあって良いというのは定番。日本の高校生ドラマとかだと、実際に高校生の俳優さんが演じていることが多いけど、私は20代の俳優が演じるべきだと思う。
なぜなら演技というものは、冷静な観察力に支えられているべきだと思うから。
演じる俳優が高校生真っただ中では「高校生ってどんなだろ」「高校生っぽいってどんなだろ」という客観性を得られない。すると「実際に17歳だから高校生なのです」というだけになってしまって、そんなものは演技ではなーい。
例えばだいぶ前(2008年)に流行ったドラマで「ルーキーズ」という野球青春ドラマ(漫画のドラマ化)があった。
普段あまりドラマを見ない私だが、このドラマは良かった。面白かったし、何よりキャスティングが良かった。演じていた俳優は、一番若かった佐藤健が19歳くらいで、あとはみんな軒並み20代~20代後半。ライバル校のエースを演じた上地雄輔なんて(たぶん)29歳ですよ。
でも、なんの違和感もなく観た。もし最初は高校生に見えなくても、見ているうちに高校生に見えてくる。実際、オッサンみたいな高校生って、いっぱいいるしね! 電車とか乗ってると、いくらでもいる。だから18+10歳くらいの俳優が高校生を演じても、ちゃんとそのエッセンスみたいなものが表現できていれば、ちゃんと高校生に見えるのだ。
演じるって、そういうことだよね。演技なんだから!
ではわれらがキアヌはどうか。ちゃんと高校生に見えたのか。キアヌはちゃんと演技していたのか。
結論から言えば、高校生には見えた。それも役柄通りの「ちゃんとおバカな高校生」に見えた。しかし演技だったのかと問われれば、「分からない」。
だってキアヌは「素」説あるもんね。昔っからこの「ビルとテッドの大冒険」でのキアヌは「素なのではないか」と言われていた。
実際キアヌ・リーヴスというお方は、演技力はまあ・・・ない。絶対にない。そして当たり役が「スピード(1994)のジャック役」からの「マトリックス(1999)のネオ役」なので、彼は間違いなくアクション・スターなのである。
どちらもとても格好よかった。キアヌは黙っていれば格好いいのである。セリフが多くて喋りはじめると途端に大根ぶりが際立ってしまう。ジャック・・・喋ってました? ネオ・・・喋ってましたっけ? いやいや、もちろん喋ってはいるのだが、「喋るよりも行動!」という役柄で、キアヌはそういう役が格好いい。ちなみに『ハート・ブルー(1991)』のキアヌも格好良かった。
では今作でのテッド役はどうだったかというと、おバカコンビの役だから基本的に二人ともおバカで大したことを喋っていないのだが、時々交互に冴えてることを言っていた。
でも格好良くは全くなく、とてもかわいかった。
実は私は特別キアヌ・ファンでもなんでもないのだが、こういう「ちょっと間が抜けた母性本能をくすぐる系の男性」は老いも若きも割と好きなので、この映画のキアヌは「あーかわいい」と思って、実はキアヌ映画の中では一番好きなのだった。
最近・・・でもないか、ちょっと前で言うところのアシュトン・カッチャーの若い頃に似てる。『ゾルタン星人(2000)』ね。これ大好きな映画なんですよ。
・・・って20年はちょっとどころじゃなくて、だいぶ前かな。年取ってくると30歳以降の出来事は全部 ”最近” なんですよ、お若い方。あなたもそうなります。
作品自体は「演じるってどういうことか」的なことを語るような映画では、なーい(笑) 主人公のふたりがおバカなだけでなく、映画自体もかなりおバカで雑な作り。とにかく ”雑” 。
もう偉人の集め方がどんどん雑になっていくの(笑)
最初のナポレオンとかビリー・ザ・キッドあたりまではいいとして、続くソクラテスからもう ”雑” が始まって、フロイト、ベートーベン、ジャンヌ=ダルクなんて ”ほんとうに雑” で、そしてチンギス=ハンなんて原始人みたいな描き方されちゃって「おや。黄色人種蔑視なのかしら?」とチラッと思っちゃったし(まあ目くじら立てる映画じゃないからいいけども)、ラストのリンカーンへと雑が加速していく。
「雑ダナーw」って思った(笑)「オオラカだなー」と。
でも・・・なんでかしら。最後のビルとテッドのレポート発表のところ、ちょっと感動して、込み上げてくるものが(わずかに)あった。ほんとうに極わずかにだけど。微量。なんじゃこりゃ。
あぶないあぶない。
油断してたかな。
もしあなたが、映画を「優しいおおらかな気持ちで見ることも出来る人」で「超人的な格好いい完璧なキアヌの大ファン」とかだけでないキアヌ・ファンなら、この映画はかなりおすすめ。
追記:続編もあって、それがこの『ビルとテッドの地獄旅行(1991)』。その名の通り地獄に行って、死神とチェスみたいなゲームで戦う、やっぱりおバカな映画でした。こっちもおすすめ。
ついでにアシュトン・カッチャーのゾルタン星人のリンクを貼っておこう。これめちゃくちゃおバカで、好きなんです。アシュトンもかわいいし。
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