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古い映画感想ブログです。驚くほど忘れてしまうので備忘録として。

【映画】「レベッカ(1940)」 結局レベッカは謎の女のままだった。ヒッチコック渡米第一作。

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題名 レベッカ
監督 アルフレッド・ヒッチコック
制作 デヴィッド・O・セルズニック
脚本 ロバート・E・シャーウッド、ジョーン・ハリソン
原作 ダフニ・デュ・モーリエ 「レベッカ」
出演 ジョーン・フォンテイン、ローレンス・オリヴィエ、ジョージ・サンダース
上映時間 130分
制作年 1940年
制作会社 セルズニック・インターナショナル・ピクチャーズ
制作国 アメリカ
ジャンル スリラー、ミステリー、ラブロマンス、モノクロ
受賞 アカデミー賞最優秀作品賞・撮影賞(白黒部門)


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「ヒッチコックのアカデミー作品賞受賞作品を見るから一緒に見ようよ」

「どういう映画?」

「んとねえ、主人公は若い女性で、仕事が ”お金持ちのお友達” なんだよね。今では考えにくいけど、100年くらい前まではイギリスとかにはレディス・コンパニオンっていう仕事があったらしくって、お金持ちのお友達というか、まあ・・・付き人なのかもしれないんだけど、上流階級のおばさまがたは、パーティに出たり旅行に行ったり、買い物に行ったり、そういう出掛ける時に一人で行くわけにはいかないでしょう。だけど一緒に行ってくれる家族などがいない。そういう時に人を雇っていたらしいのね。

使用人とかではなく、お友達として一緒に行動してくれる人。それがレディス・コンパニオンていうわけ。一緒に行動する際に必要な費用は、ぜんぶ ”おばさま持ち” だったらしいよ。それに使用人ではないから、別にこき使われるとかでもなくてある程度は対等な感じで、この映画を観た感じでは・・・「立場の弱いお友達」って感じかなあ。ちょっとはパシリに使われることもある、みたいな。

とはいえ上流階級のおばさまと行動するわけだから誰でもいいっていうわけではなくて、教養とか立ち居振る舞いとかがきちんとしている比較的上流の家庭の御嬢さんでないと務まらない。で、そういう御嬢さんは、もし生活のために働かなくちゃいけなくても、まさかデパートの売り子になるっていうわけにもいかないから、そういう上流階級のおばさまの「付き人(お友達)」なら体裁がつくし、上流社会に出入りもできるし、というわけで、お互いがWinWinだったみたい。

そういうレディス・コンパニオンをしている女の子が主人公。名前は分からないんだけど。」


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「どうして名前は分からないの?」

「映画内で、誰からも名前で呼ばれないんだよね。なんでも、原作でも ”私” として登場して、やっぱり誰も名前で呼ばないんだって。面白いよね。

まあ、そんな彼女がね、ホッパーさんという上流階級のおばさま(たぶんアメリカ人)のコンパニオンとしてモナコにバカンスに来て、英国貴族のマキシム・ウィンターと出会って恋に落ちて、あっという間に結婚する運びになって、ホッパーさんには怒られるけど、でも嬉しくって英国へ渡っていくんだよね。愛と期待に胸を膨らませて。

ところが、着いたマキシムのお屋敷 ”マンダレー” は、それはもう大きなお屋敷で使用人もたくさんいて、とにかく超上流階級なわけ。彼女はそれほどの家柄じゃないからすごく気後れしちゃって、びくびくしちゃうんだよね。手袋落として自分で拾っちゃう、みたいな。食事も上流階級にありがちな、定番の長ーーーいテーブルのあっちとこっちに彼女とマキシムが座って給仕人に給仕してもらうし、彼女はとにかく落ち着かない。」

「分不相応の生活かあ。しんどいよね・・・毎日だし・・・身の丈に合った人生がいいなあ」

「その上、屋敷の中は事故で死んだという前妻レベッカの痕跡ばかりが今も残されてるわけ。映画の題名はこの前妻の名前なのね。食事の時のナフキンに「R」の文字、書斎の便箋にも「R」、封筒にも「R」、ベッドの枕にも「R」、ここにも「R」あそこにも「R」っていう感じで、彼女を逃がしてくれないの。彼女は常にレベッカの影に付きまとわれてしまうの」


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落ち着かないなあ


「おまけに何が怖いってダンバース夫人っていう女の使用人がすごく怖いわけ。使用人のくせに彼女を見下したように見て、彼女を委縮させるの。表情がまったくなくて、氷のように冷たい目で、足音もなく、気が付いたらそばにいる、みたいな。そして屋敷のすべてを知り尽くして取り仕切ってるわけ。

このダンバース夫人は、どういうわけかレベッカのことを異常に慕っていて、何かにつけて今は亡きレベッカと、新しくやってきた彼女を比べてくるの。レベッカはものすごく美しくて高貴だったらしくて、ダンバース夫人は心底心酔していてちょっと気持ち悪いくらいなわけ。聞きもしないのにレベッカのことを「いかに素晴らしい女性だったか」色々と彼女に教えてくれるし、彼女も「マキシムが愛したレベッカってどんな女性だったのかしら」って気になるから、自分でも自分をレベッカと比べちゃって、自分の野暮ったさに嫌気がさしたり、レベッカみたいになろうとして背伸びしたりするの。」

「かわいそお・・・」

「ダンバース夫人は彼女を精神的に追い詰めて、彼女も追い詰められて自分を見失い始めて、それでダンバース夫人に自殺をそそのかされて、つい魔が刺しそうになって・・・でもハッと我に返って大丈夫だったんだけど。

そんなある日、すでに1年以上も前にお墓に入っているはずのレベッカの遺体が、なんと ”また” 発見されてしまう。事態は急展開。レベッカの死の謎が明らかになっていく!というお話」

「おもしろそう!」


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・・・・って、なんだこれ。見たことない人に説明してるみたいに書いてみたけど、茶番だったかしらww はははー。


まあいいや。

この映画は、導入から前半部分は甘いラブロマンス、中盤は心理スリラー、後半はミステリー、という具合に展開が大きく変わっていくけど、この分類、合ってるかなあ。ジャンル分けはほんと難しい。分類が合ってるかは分からないが、どんどん展開が変わっていくのは間違いない。くるくるジャンルが変わって、とても面白かった。

ヒッチコック自身は、映画制作時あまりにもセルズニックが口出ししてくるから「これは俺の映画じゃない。セルズニックの映画だ」とかなんとか言っていたらしいけど、いやいやとても面白かったですよ。ちゃんとヒッチコックしてた。

意外な展開、ユーモア、チャーム、ヒロインのジョーン・フォンテインも可愛くて好きだったし、ローレンス・オリヴィエも若くてハンサム。死角なしですなあ。


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ヒッチコック映画に欠かせないと言えるユーモア部分を担っていたのが、マキシムのお姉さん夫婦ww マキシムはお姉さんを「思ったことをすぐ口にする、口の悪い姉」的に説明していて、「君を傷つけるかも」と気にしていたけど、むしろずけずけ物を言っていたのは旦那の方。

お姉さんも確かに口差がない感じだったけど、でも悪い気はしなかったな。率直で、良い人、といった印象。ホントのことを言うけれど、愛情がある感じで、主人公の ”彼女” も嫌っている様子はなかったし、むしろ彼女の存在をありがたく思っていたんじゃないかな。

旦那も金持ちなはずなのに気取っていなくって、”彼女” がひらいた仮装パーティにも原始人みたいな格好して参加してきて、「こういうことが出来る人って心から尊敬する。ああうらやましい」と思って好きだった(私、できない性質なもんで・・・)。


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そしてレベッカのいとこ、ファベルが ”くそ” なんだけどいい味出してた。ずうずうしくて厚かましい男で、自分の欲望に忠実で隠そうともしない。マキシムの秘密を握ってゆすろうとするし、思惑通りに行かないことが分かった途端に手のひらを返して全く悪びれることもない。

でもどういうわけか、なにか憎めないところがヒッチコックらしい。


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くそ


そして陰の主役ともいえる ”レベッカ” の存在感。

死んでいるから当たり前とはいえ、回想シーンもないからレベッカは姿かたちがまるでなく、ただただ「R」の文字だけで登場すると言ってもいいのにこの存在感。ヒッチコックさすが、という演出だった。

ではレベッカは一体、どんな女だったのか。実はいいやつだったのか嫌な女だったのか。

そこが簡単には分からないところも○。最後までミステリアスだった。


・・・とはいえ、アカデミー最優秀作品賞にふさわしいかと言われれば、そこんとこはよく分からない。映画は面白かったけど、オスカーは別にこれじゃなくて良い気がする。

私はレベッカは、心底最低な女だったんだな、と思ったけど、みなさんはどう見ますか?



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いたるところに R の文字が



 

 




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