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【映画】「バンデットQ(1981)」 意外にもキリスト教的価値観への皮肉が炸裂する

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題名 バンデットQ
監督 テリー・ギリアム
制作 テリー・ギリアム
制作総指揮 ジョージ・ハリスン、デニス・オブライエン
脚本 テリー・ギリアム、マイケル・ペイリン
出演 クレイグ・ワーノック、ショーン・コネリー、イアン・ホルム、ラルフ・リチャードソン、ジョン・クリーズ、デビッド・ワーナー、デヴィッド・ラパポート、キャサリン・ヘルモンド、マイケル・ペイリン、シェリー・デュヴァル
音楽 マイク・モラン
上映時間 116分
制作年 1981年
制作国 イギリス
ジャンル ファンタジー、タイムトラベル



先日『ビルとデッドの大冒険(1989)』を見直していて、「これを記事にするのなら、あれも記事にしなくては!」とパッと思ったのがテリー・ギリアム監督の今作『バンデットQ(1981)』。

共通点は「タイムトラベルもの」というところ。あちらは「おバカコメディ」、こちらは「ファンタジー」。

私にとっては、中学生くらいの時の「マイ・フェイバリット」な映画。年齢的に言って映画館ではなくTVでの放送を見たのだと思うけど、この映画大好きなんですよ。大人になっても見て、30代になっても見て、もちろんDVDで持ってるし、そして今回見ても、やっぱり好きだった。


****** あらすじ *******
主人公の少年ケヴィンは一人っ子。お父さんとお母さんは自分のことにばっかり夢中で、全然ケヴィンに関心を示さない。それでケヴィンは本ばかり読んで、歴史が好きな賢い子になっている。ある晩いつものようにお父さんもお母さんもTVばっかり見て相手にしてくれないし、早く寝なさいって言われちゃって仕方なくベッドの中へ。すると部屋にあるクローゼットの中から、白馬と騎士が飛び込んできてケヴィンを飛び越えてどこかへ走り去ってしまう。

びっくりしたケヴィンは翌日ポラロイドカメラや懐中電灯など準備万端整えて、クローゼットから騎士が出てくる写真を撮ろうと待ち構える。すると出てきたのは白馬の騎士ではなく、6人の小人たちだった。

創造主の「ボス」から「時間の地図」を拝借した6人の小人たちは「時空を超える盗賊団」を自称して、地図に書かれたタイムホールを使って荒稼ぎしようと目論んでいた。ケヴィンは小人たちに巻き込まれ、過去や神話の世界を行き来する時空を超えた冒険をすることになる。
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物語性がどうとか、テーマがどうとかいうよりも、世界観を楽しむのがテリー・ギリアム流。やはり独特な世界観は見ていて楽しい。自分に「中二病」疑いがあったり、「オカルト好き」と思ってるような大人にとっては親和性が高そう。


前半はファンタジーらしく「ワクワク」な感じで進んでいく。主人公たちがあちこちに現れるタイムトンネルを通って過去や神話の世界を行き来するという、なかなかのドラえもんぶり。

映画全編を通して出てくる最重要アイテムが ”時間の穴の地図” ともいうべき地図なんだけれど、この地図にはタイムホールが書かれていて、しかるべき時間にそこにいると時空を通れる穴が空中に出現する。現れるその瞬間にそこにいないといけない、割とビジーな感じ。

何を隠そうこのタイムホールは、創造主が天地創造をたった7日間の突貫工事でおこなったせいで、時空のあっちこっちに穴ができちゃって、そこから色んな時代に行けるようになっちゃった。神さまはその不備を直そうとしてるけど、小人たちはその穴を利用して一儲けしようという腹。

小人たちとケビンはこの地図にあるタイムホールを使って、ナポレオンの時代に行ったり(ここでもまたナポレオン! 人気あるなあ。分かりやすいのかな)、古代ミケーネでアガメムノン王に会ったり、タイタニックに乗ったり、神話時代に行っちゃったりしながら旅をして、最終的には神さま(創造主)に叱られる(笑)。


ここで余談だが、この地図が結構 ”角川映画” ぽいw

オープニング(タイトル)が地図のアップなんだけど、このまま『里見八犬伝』とか『魔界転生』とかが始まっても違和感がない気がする。もちろんこっちの「『バンデットQ』の方が先にできた映画だし、こういうデザインは定番だと思うから、真似したとかそういう話じゃあないけど、時代的に同時代だから「おや。角川映画かな」と思ったね。

一見したところ、この地図は広大すぎて、ぶっちゃけぜんぜん役に立たなさそう(笑) 簡単に言うと、たとえば東京の新宿都庁前の場所を太陽系の地図を見て探す、みたいな感じ。しかも1991年の何月何日何時何分何秒にそこにいなきゃレベルでスケジュールがタイトな様子。

それ無理じゃないかなー。でもファンタジーとしてはああいう地図のデザインの方が気分があがるから、これで全然オッケー。


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この地図を狙っているのは小人たちだけじゃなくて、なんと創造主に叱られて暗黒城に幽閉されている悪魔も狙っている。これがあれば創造主にひと泡吹かせられるらしい。

この悪魔とその手下たちがおバカですっとぼけていて楽しい。おバカはおバカなんだけど、手下が結構鋭くて、悪魔が「神は無能だ。43種類もオウムを作ったり、男に乳首を付けたりしている!」などと創造主を悪くいうと、手下の一人が「でも悪の創造は評価できるのでは?」と問いかけて消されたり、悪魔が「世界を作ったのは自分だ」とうそぶくと「では我々はなぜここから出られないのですか」と尋ねて消されたり、かなり鋭いことを頭悪そうに言うんだよね(笑)

このとにかく次々と消されていく手下が、まー全員しょぼくれたじいさんしかいないんだ(笑) もうとにかくじいさんなの。80代90代のイメージかな。よぼよぼすぐる。「実に長いこと閉じ込められてるんだろうな」と思う。

で、悪魔はちょっとでも気に入らないことがあるとすぐにじいさんたちを消してしまうのに(それも煙のように)、じいさんたちはみんなどういうわけか楽しそう♡ 「悪をおこなうぞ。わくわく。一生ついていきまーす!」っていう感じでうっきうき。無邪気な子供みたいでかわいい。

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しかし彼らを見て思ったね。「いちいちもっともなことを言う部下っているよねー」って。メンドクサイのいるでしょう。

「正しいこと言うんじゃないよ、もっともなことを言うんじゃあないよ」と思う時、あるよー。先輩も上司も完璧じゃあないんだよ。一生懸命無い知恵絞って頑張ってるだけの凡人なのよ、私たちは。だからこそキミたちも「改善」とか「発展」とかいうものが出来てですね、「改善した!」とか「上司無能!」とか言えるのよ。それが若者の特権なのよ。成長してる感じを得られるのは、その先輩や上司の凡人さのおかげなのよー。

そして同じことが繰り返されるのよ。君たちが先輩になるとまたもっともなことばかりを言うさらに若い部下が入ってくるのよ。そういう部下をどう活用していくか考えて乗りこなしたり、場合によっては聞き流したりしつつ部署を運営していくのが日本の会社のマネージメントというやつでですね・・・ぶつぶつ。わかってね。若者たちよ。

そんなことを、この悪魔の立場を見ていて頭がよぎったのであります。



そしてこの悪魔と創造主が繰り広げる「悪vs善の構図」が、特に白人社会にとってはかなり辛口というか、皮肉たっぷり。キリスト教やユダヤ教に対しての皮肉がさく裂してて、白人社会批判、宗教批判みたいになっていき、「おっと攻めるねw」「結構攻めてくなあww」となって面白い。

「善も、悪あっての物種」って感じかな。悪をちまちまと育てて、徐々に大きくしていって、すごく大きくなったところでババーン!と登場して懲らしめて、「神ここにありき!」って見せつけて・・・

神は悪の芽が小さいうちには絶対に摘まないのね。ババーンと登場できないから。『オーメン(1979)』でもそうだった。こーの、マッチポンプ野郎! さてはお前が悪だな。

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つづいては俳優陣のことを。

なんと言っても俳優陣がみんな魅力的。メインキャラから脇役まで、なかなか味わい深くて見ていて飽きないし、「ニヤニヤ」と楽しくなってくる。


まず第一に、小人たちの活躍と魅力がすごい(主役のケビンくんはどうでもいい)。

過去に紹介した、小人がたくさん出てくる『フリークス(1932)』はこちらを突き刺してくる重いテーマを扱った作品だったけど、この『バンデットQ』の小人たちは天真爛漫に生き生きとして、画面中を縦横無尽に走り回っていて爽快。かわいい。

ここでの小人たちは、創造主がこの世界を創るときのお手伝いをしていた存在で、「ピンクの木」だったかな? そういうのを作っては創造主に却下されて「ボスは横暴だ!」みたいに怒ってた。

一種の天使みたいな位置付けなのかなあ。それともノアの方舟造りを手伝った巨人族みたいなやつの、小人版なのかな。

いずれにしても、天地創造の協力者であることは間違いない。

この小人たちのリーダー格ランドールが格好いいなと思うんだよね。頭の回転が速くてリーダーシップがあって、ちょっとワルな感じで。デヴィッド・ラパポートというらしいが、私の好きなウディ・ハレルソンにちょっと似ている気がする。似てないですかね。


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★ウディ・ハレルソンさんの画像はこちらから 👇

www.google.com



それから、それから、神話時代の鬼夫婦も可愛い。特に嫁が可愛いの(演じているのはキャサリン・ヘルモンド)。

旦那の鬼が、すごく年取っちゃったからか「背中もいたいし咳が出てタンもからむし、昔みたいに吠えたり出来なくなっちゃったよー」と嘆くと、まるでお母さんみたいに優しく励ましたり、叱咤したりしてかいがいしく世話してる。そのまなざしが母性たっぷり、愛情たっぷり。萌える。かわいい。

私は凸凹な「大きな男と小さな女の組み合わせ」自体が萌えるので、この夫婦は萌えポイントだった。

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まだある! マイケル・ペイリン、シェリー・デュヴァルが演じる、コメディリリーフ的に登場するバカ・カップルも楽しい。

最初はロビンフッドの時代で登場して、身ぐるみはがされたりして散々なんだけど、男も男前じゃないし、女も女前じゃないのw なのにお互いに夢中で熱愛の渦中にいるんだよね。女の方は白目むいて、笑わせにくる(笑)

コメディリリーフだからストーリーとはぜんぜん関わってこないんだけど、ケビン達が次に行ったタイタニック号にもこの二人が乗ってるの。ここでも「お互いにうっとり」。そして白目をむく。ベスト・カップル。

この二か所だけじゃなくて、もっと出て来ればもっといいのに。そこは残念。


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そして悪魔。

悪魔と手下のことは上の方で書いてしまったが、この悪魔を演じているのが『オーメン(1976)』でフォトグラファー役(ジャーナリストかな?)を演じていたデビッド・ワーナーなのだった。

『オーメン』ではサタンに殺される役で、今回は悪魔(サタン)役。


前作は真面目に真面目、というシリアスな役だけど、今回はおバカを真面目に演じるというとぼけた役で、いい味出してた。好きよ、そういうの。

悪魔に関してはすでに色々書いてしまったが、今作を見ていてつくづく思った。

「やっぱりオーメンの主人公のダミアンくんは一体何してたんだろう」「ダミアンくんは何がしたかったんだあああ!」って。

だってこの『バンデットQ』に出てくる悪魔は、神と対決して神に取って代わろうとしてるんですよ!(おバカだけど) 

神に勝つためには、地図の入手だけでなく、最新の科学や技術が必要だと、けなげにもコンピューターを勉強したりしてるんですよ。コンピューターの知識があると、神になれるんだって。悪魔なのにこまごまと実用的。実際家。ほんと笑う。

で、コンピューターを勉強してコンピューターに囲まれたりしてる割には、ケビンや小人たちの様子をうかがう時は「水面に映して」という、やってることはまるで占い師なんだけどね。どうした、最新科学は。

ケビンと小人たちが悪魔城に入ったときに出てくる、いきなりの「最新キッチンの宣伝」も落差があって笑ったし、この映画は「悪魔というスケールの大きさ」に対して、「コンピューターと家電」みたいな普通な感じが同居していて面白い。

応援するね。


・・・ってちゃかしてるけど、この世はコンピューターによるシミュレーションかもしれないんだけど。今や私も神になれるかもしれないんだよね。以下参照のこと。

👉 シミュレーション仮説 - Wikipedia


👉 インテリジェント・デザイン - Wikipedia




・・・といった感じで書いていたら、また「ほんとダミアンくんはなんだ!」という気になってきたぞ。 黙示録とか言ってるんだから神と対決して、現代にハルマゲドンを起こしてほしかったのに! それを社長て。数人殺しただけで大したことしてなかった。ほんと「思い出しがっかり」しちゃったよ。


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話が脱線してしまったので元に戻して真面目に語るが、少年少女が主人公のファンタジー映画で「よかったな。傑作だったな」と思う作品の共通点は、まず主人公の少年少女の設定が「孤独である」っていうこと。有名どころでは『ネバーエンディング・ストーリー(1984)』もそう、『パンズラビリンス(2006)』もそう。

孤独な少年少女は現実がとてもつらいから、自ら物語の中に入っていく。たいていは片親だったり、両親ともいなかったり、友人にいじめられていたり、友達がいなかったり、そういう風に「分かりやすく孤独」。

だからこそ少年少女は物語の中に逃避していく。


「自分もそうだったなあ」と分かる人、いるんじゃないかなあ。

私も想像の世界では、自分はいつもみんなに一目置かれる存在だった。子供なのに大人に一目置かれる子供になりたかった。

本音を言えば、今だってみんなに一目置かれたい。


ケビンくんの幸せはどこにあるのか分からないけど、ケビンくんの物語のラストは・・・これはハッピーエンドなのかな(笑)

なかなかブラックな終わり方で、個人的には〇。いいよ、この終わり方。ハッピーエンドだと、私は思う(思っていいよね)。


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