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古い映画感想ブログです。驚くほど忘れてしまうので備忘録として。

【映画】「ヤンキー・ドゥードゥル・ダンディ(1942)」 いい。音楽と、ジェームズ・キャグニーの芸達者ぶりが最高の見どころ

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題名 ヤンキー・ドゥードゥル・ダンディ
監督 マイケル・カーティス
脚本 ロバート・バックナー、エドモンド・ジョセフ
制作 ジャック・L・ワーナー、ハル・B・ウォリス
出演 ジェームズ・キャグニー、ジョーン・レスリー
音楽 ジョージ・M・コーハン、ハインツ・ロームヘルド、レイ・ハインドルフ
上映時間 126分
制作年 1942年
制作会社 ワーナー・ブラザース
制作国 アメリカ
ジャンル ミュージカル、伝記

受賞 アカデミー主演男優賞(ジェームズ・キャグニー)、アカデミーミュージカル映画音楽賞(レイ・ハインドーフ、ハインツ・ロームヘルド)ほか
 
 
「皆さん、母からお礼を、父からお礼を、妹からお礼を、そして私からも」 コーハンのカーテン・スピーチの有名な決まり文句


「ブロードウェイの父」と呼ばれる興行師で、歌って踊るエンターテナーであり、俳優であり、作曲家であり、プロデューサーでもあったジョージ・M・コーハンの伝記ミュージカル映画。

コーハンは、エンターテインメント産業が定着しはじめた1900年ごろのブロードウェイ興隆の立役者のひとりであり、最大の功労者でもあるらしい。それでルーズベルト大統領から勲章ももらっている。

アメリカン・スピリットや愛国心をテーマにした作品や楽曲が特徴で、家族を愛し、家族に愛され、妻を愛し、妻に愛され、そしてショービジネスを愛し、アメリカを愛する人物として終始描かれていた。

第一次世界大戦がはじまる1914年までの10年間ほどはコーハンの全盛期だったようで、名曲もたくさんモノにしているぽい。映画を観てみれば、そういえばどこかで聴いたことがあるような、ないような。

そして実際名曲ばかりだった。古き良きブロードウェイ・ミュージックの典型という感じ。「ブロードウェイの父」なんだから当たり前だけど、表題の『ヤンキー・ドゥードゥル・ダンディ』とか、代表曲らしい『オーバー・ゼア』とか、評価が高いだけあってどの曲もかなりいい。サントラ欲しいなあ。


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****** あらすじ ******
まだ州が38だった19世紀後半のアメリカ。1878年の独立記念日にひとりの男の子が生まれる。ジョージ・ワシントンにあやかってジョージと名付けられた少年は、役者一家の家族と共に全米中を回りながら舞台に出て少年時代をすごす。

家族4人の巡業 ”フォー・コーハンズ” の評判も上々、ニューヨークへ進出し、未来の伴侶となるメアリーとも出会う。ところが自分の才能に自信を持っていたジョージは興行主と衝突し、クビになってしまう。

ジョージはニューヨーク中を駆け回り自分の曲を売り込むがまったく上手くいかない。家族の生活も苦しくなっていた。

そんな中、自分と同じく売り込みに失敗しているサム・ハリスと出会って意気投合。舞台『ヤンキー・ドゥードゥル・ダンディ』が大ヒットとなり、ジョージは一躍スターダムに躍り出る。”フォー・コーハンズ” も再稼働し、メアリーと結婚もしたジョージは、公私ともに充実した日々を送る。

しかし妹が結婚と同時に舞台から引退し、シリアス路線の舞台は評価が得られない。第一次世界大戦がはじまり志願するが、40過ぎのジョージは徴兵されず、戦地への慰問に精力を注ぐ。そのうち母が死に、妹が死に、父も死ぬ。支えだった家族を失ったジョージは舞台に立つ意義を見失い、舞台から引退して農場暮らしをはじめる。

そんなある日、通りすがりの若者たちが誰一人自分のことを知らず、自分が作った舞台も曲もまるで知らないことを知ったジョージは、サムからの復帰の依頼に応えて再びショービジネスに返り咲く。ルーズベルト大統領役を演じたジョージは、まさにそのルーズベルト大統領から勲章を授かるのだった。
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正直、コーハン自身にはまるで興味を持たなかった。(*´з`)

なぜかと考えてみるに、たぶんこの作品でのコーハンの描き方が、なんだか良いところしか描いていないような気がしたからだと思う。コーハンの人生の、光が当たってる部分だけをざーっとなぞってみました、みたいな。

家族第一、両親と妹をこよなく愛し、妻を大切にし、友人も大事にして、ショービジネスを愛し、愛国的で献身的というね。

調べたところによるとコーハンは3回結婚していてメアリーは3人目の妻らしいし、2人目の奥さんとの離婚理由はコーハンの不貞だったらしい。子供も前妻に一人、メアリーとの間には4人いて、でも映画ではそのことには全く触れず・・・まあ、メアリーとの出会いのシーンは「コーハンもなかなか女慣れしてるな」と思わせる演出ではあったけど、そういう性生活というか女性関係なんかには触れられないし、子供に至っては子供の気配すら感じられない (; ・`д・´)

本当は子供が4人もいるのに影も形も描かれないって、むしろ闇を感じたよ・・・(笑) 完全スルーなんだもん、映画に描けないとてつもない闇があるのではないかと勘繰ったよ  (*´з`)タブンナイケド

伝記映画じゃないし、ミュージカルだから単純にしたのかもしんないし、それでいいのかもしれないけど、実在の人物だからもう少しリアルな人物像で見たかったとも思う。


ちなみにコーハンは本当は7/3に生まれなのに、独立記念日の7/4に生まれたと言い張っていたらしい(一家で)。いかにも芸能一家らしいよね。


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あと、歌パートに字幕がまるっきり出ないのが残念だったなああ。何を歌ってるのかさっぱり分からん。 (;´Д`)ジマククレ- 

事前情報で「すごく愛国的な映画」「コーハンは愛国の人」と聞いていたし、実際映画を見ると星条旗とかもたくさん出てくるし、後半に行けば行くほど「愛国的」な感じになっていく。

セリフでも何度も「愛国的」というキーワードが出てくるし、どうやらコーハンには「低俗で愛国的すぎる」という評もあったらしく、ハリスが熱心に出演依頼をしたスター女優に「私は上品なミュージカルに出たいの」なんて言われてたところを見ると、「さぞかし愛国的で売っていたのだろうなあ」と思う。

思うけど、それが絵面とセリフで分かるだけというのがいかにも残念。私にできることと言ったらせいぜい想像力を働かせて、たくさん出てくる舞台の、衣装とかセットとか題名とかからストーリーや主題を推し量るしかない。

歌詞にも字幕をつけていてくれたらなあ。そうしたらどんなストーリーの舞台なのかが分かるのに・・・そうすればどれくらい愛国的な作品なのかも分かるのに・・・

私の予想では、辟易するほど愛国的だったんじゃないかと思うんだよね。うんざりするほど ”愛国的” を押し出していたんじゃないかと。勝手な予想だけど、鼻につくほど愛国的で、もし同時代に私が生きていてアメリカ人だったら嫌いなんじゃないかしら。

そこが分からないのがなー、だいぶ残念だった (英語を勉強する気はまるでない)。


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コーハンには興味を持てなかったし、歌パートに字幕がないのが残念だったけど、でも「そんなことどうでもいいか」とも思えるこの映画の魅力は、なんと言ってもジェームズ・キャグニーの大活躍にあった!

映画前半は少年時代が描かれるから「ふうん、まあ、うん、はいはい、いい家族だねえ」って感じだけど、キャグニーが出てきてからが俄然面白くなる。それはもう一気に加速して面白くなっていく!っていう感じ。

キャグニーがガンガン歌って、キビキビ踊って、くるくるとよく動く表情とユーモアがあれば、それだけでこの映画は見る価値がある。


ジェームズ・キャグニーといえばギャング役で有名な名優だが、この映画ではそういうイメージとは全然違う、コメディタッチの演技から哀愁まで幅広く表現していて、アカデミー主演男優賞を取ったのもむべなるかな、といった感じ。

キャグニー自身も、自分が出た映画の中でこの『ヤンキー・ドゥードゥル・ダンディ』が一番好きだと語っていたようで、お気に入りのシーンはラストもラストの、大統領から勲章をもらって帰る時、タップを踏みながらホワイトハウスの大階段を下りるシーンなんだとか。歴代大統領の肖像画がかけられた大階段を、気持ちも軽やかにタップを踏みながら下りてくるんだよね。

わかる。私も「いいシーンだな」と思ったもん(何様w)。


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静止画にするとつまらなく見える⤵


他にもキャグニーの魅力あふれるシーンはたくさんある。


まず私が一番「いいな、好きだな」と思ったのは、キャグニーのダンス。

どう表現したらいいんだろう。膝をまっすぐに伸ばして、肘もあんまり曲げないでまっすぐにしていて、腰はちょっと前かがみなんだけど硬い感じ。

パキパキ、キビキビして、直線的なダンス。

この映画はもともと、コーハン役にはフレッド・アステア(!)をキャスティングしたかったらしいんだけど、キャグニーが「自分も歌って踊れる」と口説いて役をモノにしたんだとか。


これは・・・キャグニーで正解だったのでは。

キャグニーのダンスを見ると、アステアとはまるで真逆のように思える。アステアだったら、もっと優雅で柔らかいダンスになって、持ち味もソフトだから、もしアステアが演じていたら作品の主題すら変わってしまいそう。


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そしてキャグニー登場シーンの「おじいちゃん役」(笑) 

立派なひげの老け役で登場するんだけど、楽屋でひげの手入れをしている一連のシーンがものすごく可愛いの (*´▽`*)

手のひらとか手の甲とかで、ひげの先端をちょんちょん、ちょんちょんってちょっとだけ触って、たぶん「ふわっ」とさせようとしてるんだと思うんだけど、まじめな顔して鏡を見ながら、ちょんちょん、ちょんちょん、って。


そこに「私は女優としてどんなもんですかあ! ベテランの意見を聞かせてください!」って、未来の嫁になるメアリー18歳が入ってきて、「おや、可愛いな」と思ったコーハンが「いっちょからかってやるか」ってなって、おじいちゃんとは思えないキレッキレの機敏なダンスを披露すると、老人だと思い込んでいるメアリーが「きゃー! 無理しないで!」ってなるというねw


おまけに汗を拭いてあげればドーランが落ちてシワがなくなっちゃうし、眉毛はなくなるし、ひげも外れるし、白髪頭までとれちゃって、メアリー「きゃーきゃー」って怖がって大騒ぎ。

 

 

 

 

 

・・・・・・ (゜-゜) カマトトデスカ?

やりよるのお。女はこれが出来ればねえ、女として一人前になれるってなもん。ちょっと気に入らなかったね。(-"-)


でもこのメアリーは、シーンを追うごとに魅力的に見えてきて、どんどんすばらしい女性になっていく(さっきちょっとディスっちゃったけど)。

歌ってる表情がチャーミングだし、コーハンとの相性抜群って感じで、「ああ、表情が豊かであることは魅力的なことなのだなあ」って思った(私、無表情なもんでうらやましい)。


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そしてメアリーはチャーミングなだけじゃなくて、母性のある、優しくて賢い、実にすばらしい女性なのだった。

一番良かったのは、なんと言ってもコーハンがメアリーのために作った『メアリー』という楽曲を、スター女優を主役に添えたい相棒のハリスが彼女の気を引くために贈呈してしまう、その後のくだり。

「やばいなあ、メアリーがっかりするだろうなあ、なんて言おうかなあ」と自己嫌悪と共に帰宅したコーハンは、いつもはそんなことしないのに、大きな花束とキャンディーか何かの大きな包み紙を持って「ただいま」って帰るのね。

するとメアリーはその花束を見ただけで「察し! なんかあったな(言いにくいことが)」って気づいたらしく、その言いにくいことを言いやすいようにコーハンを誘導してあげるのよ・・・

話の流れで「たぶん曲をあげちゃったんだな」って気づいたメアリーは、「彼女は出演を快諾してくれた?」って水を向けて、するとコーハンが「いやまだなんとも言えない」みたいに口を濁すと、「彼女に出演してもらうためには何でもしなくちゃだめよ」って、言うんだよね。

するとコーハンが「なんでも?」ってなって、メアリーが「そうよ、なんでも」って。

それでコーハンが「実は君のために書いた曲をね」ってなって、メアリーそれを「あらそうお?」って軽く聞き流すの。コーハンはメアリーの反応が予想と違うから「聞いてる? 分かってる? 君の曲をあげちゃったんだよ!」って言うと、「あなたが花束を持ってる姿を見て気づいてたわ」って。


おいおいおいおいおい、できねー。すごいなあ。感心した。優しいって、愛情って、思いやりって、こういうのを言うんだなって心から感心した。相手のことを心から考えていないと出来ないよ。こういうのほんと感心する。

できないんだナー、私は。


というわけで、前半でコーハンの描き方はちょっと善人過ぎるなんてケチをつけておきながら、メアリーの良妻ぶりはまるっと受け入れてしまう、矛盾した私なのだった。


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他にもユーモアあふれるシーンはいっぱいあって、コーハンとハリスが出会って意気投合するくだりも機転がきいててテンポよくて良かった。頭がいいって見てて気持ちいいんだね。

あと、NYで上手くいっていない時期のコーハン一家が下宿している下宿屋のシーンも、下宿屋のおかみがエッジが効いてるし、おかみと女中との掛け合いもくすっと笑えて面白い。

それから後半のライバル俳優と憎まれ口を叩きあうくだり。向かい合った劇場でそれぞれが主役を張っていて、お互いの舞台の悪口を言い合うんだけど、「君はこの舞台の関係者かい?」なんて言って、それぞれ相手がその張本人とは知らずに悪口を言っているように見せかけて、実はちゃんと知ってて言ってるっていうシーン。二人とも目が笑ってて、悪口を楽しんでるっていう風情。実はお互いを認め合ってるからできる芸当で、最後は自己紹介をしつつがっちり握手してた。

レベルが高い人同士の信頼関係って、いいよね。うらやましい。

テンポがよくて、いい脚本の映画だったから見ていて気持ちがよかった。

 
全体的に見れば、かなり楽しめると映画なので、いっちょ映画の予告編のリンクを張っておきます。見てね ☟


予告編リンク 


Yankee Doodle Dandy Official Trailer #1 - James Cagney Movie (1942) HD

 

あー、やっぱりサントラが欲しいなあ。でも売ってない (T_T)グスン
 
じゃねー。


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