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古い映画感想ブログです。驚くほど忘れてしまうので備忘録として。

【映画】「ハロルドとモード(1971)」 どうも好きになれないカルト映画の傑作

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題名 ハロルドとモード 少年は虹を渡る
監督 ハル・アシュビー
制作 コリン・ヒギンズ
脚本 コリン・ヒギンズ
出演 ルース・ゴードン、バッド・コート、ビビアン・ピックレス
上映時間 92分
制作年 1971年
制作国 アメリカ
ジャンル 青春、カルト



この映画は自立の物語。ずっと「自分vs母親」だけで19歳まで生きてきたハロルドが、外の世界を知って、外へ関心が向いていく。そのきっかけとなった老女モードとの交流物語。

カルトの中でも、公開当時はほとんど話題にならず、あとになってからジワジワと人気が出て名作と言われるタイプのカルト映画で、傑作、名作と名高い作品。

刺さる人にはめちゃくちゃ刺さる、刺さらない人には全く刺さらず途中で見るのをやめたくなる作品だと思う。

テーマと展開が結構エグいし、バッド・コートの個性を好きになれるかどうか、ルース・ゴードン演ずるモードに共感できるかどうか、ハードルはいくつかありそう。


実際どうも私には刺さらない。ユーモアもあるし、テーマも深遠だし、登場人物のキャラも立ってるし、全体的に良い映画だと思うんだけど、でもやっぱり刺さってはこないんだなあ。

大体この手の映画は好きなことが多いのに、この映画はなぜ私に刺さらないんだろう。


まずはあらすじだけど・・・今回はちょっと工夫して、ハロルド目線の一人称で作成してみた。映画はもちろん三人称映画です。長いので読みたくない方は次の次の写真まで飛ばしてね。


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****** ハロルド目線のあらすじ ******
僕はハロルド。母さんと二人暮らしの19歳。母さんは大金持ちで、僕のことなのになんでも勝手に決めてしまう無関心な独裁者。父さんはいない。でもその代わりってわけじゃないけど、戦争大好き軍隊大好きの軍人の叔父さんがいて、僕のことを何かと気にかけてくれる。でも僕はママみたいにも叔父さんみたいにもなりたくない。時には殺意を感じるくらいさ。

中学生くらいの時、学校で薬品をいたずらしていて爆発事故を起こしたことがあるんだ。僕は学校を追い出されるのが嫌で慌てて家に帰って部屋に引き籠っていると、家に警察がやってきて母さんにこう言った。「お宅の息子さんは死にました」 そうしたら母さんが頭に手を当てて、言葉もなく警察官に倒れ掛かって、僕はそれを見たとき「死んでるって楽しい」って思ったんだ。

それがきっかけかなあ。僕は ”自殺ごっこ”をするのが趣味になって、今までにたぶん15回くらい死んでる。それに全然知らない人の葬式を見るのも好きで、独りで良く出かけていく。

最近母さんが車を買ってくれたんだけど、僕好みの霊柩車にしたんだ。母さんは騒いでいたけど、僕はそういうのが好きなんだから。僕の精神科医は「母親への当てつけかい」って聞くけど、そんなんじゃないんだ。でも・・・まあ、毎日楽しいかって聞かれると、よくわからない。生きてるけど死んでる感じ。あんまり笑うこともないしね。なんていうかこう・・・
燃えないんだ。

だいたい僕はいつもこんな感じ。それでその日もいつものように霊柩車に乗って知らない人の葬式に行った。その時モードに出会ったんだ。モードは79歳の老人。モードもその葬式の故人を知らない人だって言ってた。それに他にもなんか言ってたな。この死んだ人の年齢が80歳だって知って、「ちょうどいい年齢だ」とかなんとか。「75歳じゃ早すぎるし、85歳は時間稼ぎしてるだけ」とか、なんかそんなことを言ってたと思う。

この婆さんが変な婆さんでさ、他人の車を勝手に乗り回すし(盗みだよね)、街路樹を可哀想って言って森に埋めなおしてあげようとするし、電車に住んでて、その電車の中はサイコーで、時々近所の芸術家気取りの爺さんのヌードモデルをしたりなんかもしてる。自分でも絵を描くし、ピアノを弾いたり歌ったり踊ったり、とにかくやたら元気なんだ。街路樹を植え替えに行った時なんて、白バイ警官をおちょくって、白バイを奪っちゃったんだぜ。

モードは僕を決めつけたりしない。みんなとおんなじじゃなくても大丈夫なんだって思わせてくれる。だいたいモード自体が普通じゃないしね。それにモードは僕に色んなことを教えてくれる。今まで僕に色々指図してきた大人たちとは全然違うことを教えてくれるんだ。

幸せって、小さなことにも宿ってるんだってこと、自分で発見することなんだってこと、何もしないよりやってみた方がいいんだってこと、時には闘わなくっちゃならない時もあるってこと、自分を信じてやりたいことをやるべきなんだってこと、音楽は生命そのもので、世界は昼も夜も美しいっていうこと。

母さんは例によって勝手に僕を結婚させようと色々な女の子を連れてくるけど、僕は全然興味ない。あんな女の子たちなんかより、ずっとモードの方がイケてるし、一緒にいて楽しいんだ。

でもモードと出会えて一番良かったのは、僕がモードに恋をしたってことなんだ。僕はモードに恋をした。モードと一緒にいると楽しいけどそれだけじゃない。僕はモードといると素直になれるし、泣くことだってできる。それにこの世でモードが一番美しいって思ったんだ。モードは美しい。だから僕はモードと結婚することにした。

母さんも叔父さんも、まわりの大人たちはみんな動揺しちゃって、色々なことをしどろもどろに言って僕を説得するけど、僕の決意は変わらない。僕はモードの80歳の誕生日を祝うために彼女の電車に出掛けていった。飾り付けもしたし、最高のムードでモードも喜んでいたのに、モードは楽しげな雰囲気のままこう言った。

「最高の誕生日よ。でもあと1時間でお別れ。さっき1時間後に効く薬を飲んだの」

なんだって! 僕は大慌てで救急車を呼んでモードを病院に運んだけど、モードはいなくなってしまった。僕は呆然として、これからどう生きていったらいいか考えた。それでまず愛車の霊柩車をがけ下に落として捨てたんだ。さようなら、今までの僕。モードがくれたバンジョーを弾いてたら、少しは明るい気持ちになってきた。僕はきっと、今までよりマシになれそうな気がするんだ。
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これがハロルド目線で振り返ったあらすじ。もちろん書いていない大事な部分もたくさんあるし、私の意訳もある。


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この映画は登場人物たちのキャラが立ちまくってる。たぶん一番自然だったのはモードで、あとは全員かなり大げさで芝居がかっている。

この映画の前評判を知っていれば(映画雑誌とか、感想ブログとか、DVDのあらすじとか)、一番キャラが強いのはモードだと思うだろう。だっていきなり車泥棒なんだもの。そして「自由で何にも縛られないモード(変わり者) vs ママ、叔父さん、精神科医に代表される凡庸な人々(常識の人)」 だと思うだろう。

でも違う。私の眼には、モードが一番自然体で(犯罪者だけど)、他の登場人物の方がヤバくて不自然に見えた。どういう意図で演出してるのか知らないが、監督は当然わざとやってると思う。


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まずハロルドだけど、まあハロルドはかなり芝居がかってる。

だって自殺ごっこが趣味で、映画開始早々から「首つりごっこ」「リストカットごっこ」「溺死ごっこ」「焼死ごっこ」「ハラキリごっこ」。他にも自分の手首をなたで切り落としてた。それも初対面の女の子の前で突然www

「リストカットごっこ」の時は、慣れっこのママもさすがにワナワナしちゃって「これはやりすぎだわ!」って叫んでた。

でも自殺未遂をするんじゃなくて、自殺ごっこをしているだけ。こっちを向いてもらいたい、かまってちゃんみたい。

かまってほしいけど、彼らのようになりたいわけではない、というジレンマが、未来への希望を失わせてああいう行動になってしまっている気がする。お手本となる大人がいない。


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結婚相談所のアンケートにも勝手に答えるママの図



そんな風にハロルドを追い詰めてしまっているとはいえ、ママに関しては「私は結構好きだな」って思った。

やり手で有能そうだし、美人だし、自分磨きに余念がなくて、欲しい物はキチンと手に入れていくタイプ。そういう、自分の事は自分で決めて、しっかり実行していくタイプの人間からすると、自己主張と言えば自殺未遂ごっこしかしない息子は、いかに息子とはいえ全然理解できないのではないかな。上流階級でお金持ちということは、社会では有能な人間として認識されるわけだから、ママが自分のあり方に疑問を持つと思えない。

「この子は一体、どうしちゃったのかしら。何考えてるのかしら。なんか全然わかんないわ、もうお手上げよ」って感じなんだろうと思う。

数年はこんな状態なんだろうし、ハロルドの話によると最初の時は「ハロルドが死んだと聞かされて、頭に手を当てて卒倒していた」わけだから、愛情はあるんだろうと思う。実際、映画で描かれる二人を見ていると、彼女は彼女なりにちゃんとハロルドの事好きそうに見えるし。

私はこのママ、嫌いじゃない。


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でもハロルドの叔父さんビクターは、ガチでイカレテル。

米軍の将校で、戦争と軍隊大好き。アメリカを愛し、アメリカの正義を信じてるから、戦争に対して疑いなんて微塵も持っていない。だって壁に飾られたニクソン大統領の写真と、アメリカの英雄ネイサン・ヘイルの肖像をバックに、ハロルドに向かって「戦闘、予期せぬ経験、指導、すばらしい人生だよ。じかに戦争が見られる。」と熱く語るその目がもうイっちゃってる。

そして「戦争、軍隊、サイコー!」と言うビクター叔父さんには右腕がない、というのが笑わせる。右腕なくしてるんかーい。そしてその必要のない右側の袖が板状に畳まれてて、左胸にあるひもを引っ張るとその右袖がパタパタンと広がって ”敬礼” するというね・・・ハロルドもう絶望。そりゃあ水に浮かびたくもなるよ。

監督はこのビクター叔父さんを相当 小馬鹿にしてると思うけど、実際映画内でハロルドとモードに小馬鹿にされてた。

後半、モードによって覚醒しつつあるハロルドが、いよいよ軍隊に入れられそうになってそれを阻止するため、「戦争、サイコーですよね!人を殺せるんでしょ! どうやって殺すんですか? やっぱりナイフで喉を掻っ切るんですか?!楽しみだなあ。キラキラ☆」って感じに、一芝居打つんだけど、そんなハロルドを見てさすがのビクター叔父さんもうろたえてタジタジ。

さすがの叔父さんも、そうサイコに喜ばれると困るらしいw


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ネイサン・ヘイルに敬礼する叔父さん



そしてモード。

一見自由に生きてる芸術家肌の婆さんだけど、途中で自ら語るところによると、自由のために命がけで戦った経験を持っているぽいし、そのくせ「皇帝」との晩餐会の思い出を語るなど、相当劇的かつ複雑な過去を持っている様子。

そして映画の途中で一瞬ちらりと映る「腕に数字の入れ墨」。それを見てはっとするハロルド。

ほんとうに一瞬しか映らないし、古い入れ墨なのか少しぼやけているけれど、それを見た瞬間に「そうか、ユダヤ人だったのか」とモードの過去が少しわかる仕組み。

ホロコースト体験者だったのか。

若い時は皇帝と会ったりしてるくらいだから、いいとこの子だったのかなあ。皇帝って言ってるからプロイセン王のことなのかしら。その後ヒトラーとナチスドイツの台頭によってユダヤ人差別が先鋭化して、自由のために戦ったのかしら。そしてアウシュビッツに収容された。

そして生き抜いたモードは、自分の残りの人生をアメリカで、可能な限り自由に正直に悔いのないように生きてきた、そのためには世間の常識と戦わなくてはいけないこともある。でもその生き方こそが魅力的ということなんだろう。


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こうして映画を見た感想を振り返ってみると、深いテーマがいくつも描かれているし、登場人物も個性的で面白いし、ユーモアもあるし、申し分ない作品に思う。いい映画なんじゃないかな。

思うけど、好きかと言われると、やっぱりどうも好きになれない。


ではなにがそんなに嫌なのかというと、私はこのモードがキライなのだった。大嫌いと言ってもいいかも。

車を盗む常習みたいだから、ハロルドがキビシイ表情で「駄目だよ。みんな怒ってたよ」みたいなことを言うと、「怒るのは自分の物だと思ってるからよ」と言って、「今あるものが明日もあるとは限らない。執着しちゃダメよ」とか言うんだけど、なんなん。屁理屈か。

すごく自分勝手だと思う。


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だいたい登場シーンからしてキライだった。ハロルドが行った他人の葬儀にモードも来ていて、遠くの木の下で葬儀の様子を眺めているんだけど、木の下に座って、オレンジか何かを口にくわえて、鼻をすすって、手で鼻をゴシゴシして、ほんとうにあざといと思った。トム・ソーヤかよ。いきなりの第一印象からして悪印象。

そしてハロルドの気を引こうして、「シッ!」というか「ツッ!」というか、歯の間から息を強く噴き出して変な音を立てるんだけど、それが嫌。もう生理的に嫌。するか??普通。下品すぎる。

そして教会でハロルドに話しかけるとき、なんかウインクしたり科(しな)作ったりして、媚が強いというか、来週80歳になろうという婆さんなのに色気出してくるのが嫌。

なまめかしいというか、エロを見せてくるのが嫌。生理的に嫌。婆さんなのにギラギラとしてて、セックスしてそうな感じが嫌なんだなあ。



するかね、普通、19歳のハロルドとセックス。

爺さんのヌードモデルをしているのも引くんだけど、それは年寄り同士、勝手にやればいいけど、ハロルドとするかねええ。

そしてハロルドもハロルドで、初体験だったみたいで恍惚としてたけど、まあ・・・よかったんならいいか。



でも私は嫌。セックスはやりすぎ。

この映画からそういったエロというか、セクシャリティを全部抜かして、「変わった婆さんとのプラトニックな人間関係」だったらずっと良かったのに。

私は、人間は年と共に徐々に枯れていって、ちゃんと枯れて死んでほしい。

ご老体に鞭打って「いつまでも現役じゃなくっちゃダメよ」みたいな、「いつまでも女でいなくちゃ」みたいなの見たくない。すごく不自然だと思う。


もうただただその一点。



というわけで、頭で見るといい映画、心で見るとキライ、という結果になるのでありました。おわり。



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