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割と自己流で生きています

【本】ビュルガー編「ほらふき男爵の冒険」 暇つぶしに古典をどうぞ【笑えます】



題名 ほらふき男爵の冒険
作者 ビュルガー
出版社 岩波文庫ほか
種別 本
媒体 紙
ジャンル ファンタジー、冒険、古典、文学、英国、ドイツ

 



① どんな本か簡単に紹介しますゾ

古典というと、「古典かあ。興味はあるけど時代性がよく分からないし、文体とかも馴染みがないし、分かりにくくて難しく感じるからなあ。めんどくさい」と思うもの。大学でレポートを書くとかいう特別な目的があるとか、よほどの本好きとかでないと、とても読もうなんて気にはならない。敷居が高い!

でも! これは大丈夫!!

言わずと知れた超有名なミュンヒハウゼン男爵が、ほらに次ぐほらを吹かしまくる。途中で男爵の「極めて真面目な父親」というのも出てくるがこれがまたとんだほら吹きだし、男爵の従者の話も差し込まれてるけどこの従者までもがほらを吹くという有様で、とにかく最初から最後までほら話がこれでもか。

翻訳も振るっていて、男爵の話しぶりは「ワガハイ、~であります」「~ですナ」「~でありまずゾ」といった具合でまあ軽いこと、軽いこと。

ほら話というものは軽いに決まってると思うかもしれないが、重たいほら話というのも実はある(怪談とか)。あるけれどもやはり「ほら話」と聞けば「あはははは」と笑える話を想像するわけで、重たいほら話では笑えない。ほら話は笑えなければならない、というわけで、ほら話は軽めのタッチであるに決まってるのでありますゾ(おっと、うつった)。

あとがきによると原題は『ミュンヒハウゼン男爵の奇想天外な水路陸路の旅と遠征、愉快な冒険』というものらしいが、本の内容はまさしくその通り。題名に偽りはない。


とはいえ、古典の名作だけあってもの凄くたくさんの出版社から出ている。私が持っているのは岩波文庫版(上記写真の表紙)。出版社ごとに翻訳者が違うので、この記事はお持ちの本によっては趣が違うかも。この記事はあくまでも岩波文庫版をベースにしていることをご了承いただきたい。



② 中のエピソードの一部はこんな感じですゾ

本書の構成は、小さな小さな小話が延々と続くのだが、ミュンヒハウゼン男爵の話しぶりが旨いせいか、物語としてそれなりにつながっているからか、割と読みやすいし世界に入りやすい。

有名な挿話も多いから、知ってるものもたくさんあると思うけど、


ミュンヒハウゼン男爵曰く、

雪の中で、尖った木の先に馬を繋いで一晩寝たら、雪が溶けてはるか頭上高く、教会の塔の尖端に馬がぶら下がっていた、とか、

馬橇(そり)で走っていたら狼に襲われて、「ウマがウマくやってくんないかな」とか思っていたら、狼が自分を飛び越えてウマの尻から食べはじめて、それでもウマが走り続けていたら、そのうち狼がウマを食べ終わってウマい具合に馬具が狼にスッポリはまって、そのまま狼橇(そり)として走り続けただとか、

野ガモ猟に行った時、銃の発火装置がうまく作動しなかったので、自分の目を拳でガツンとぶん殴って、目から出た火花でうまく着火させて野ガモをたくさん仕留めた、とか、

ベーコンの塊を糸で結んで野ガモに食わせたら、お尻からベーコンがつるんと出てきて、そのベーコンを別の野ガモが食べ、またお尻からつるんと・・・で結局野ガモが数珠繋ぎになったのでぐるぐるお腹に巻いていたら、野ガモが飛んじゃったのでうまくカモを操縦して家に帰っただとか、

鹿の眉間にさくらんぼの種を撃ち込んだら、1年後に再会したその鹿の眉間に木が生えてさくらんぼが実ってた、とか

熊退治の時、火打石しか持ってなくて、口と尻にめがけて投げたらうまく入って、お腹の中でカチンとぶつかって火花が出て熊が爆死した、とか

背中にも四本脚が生えているウサギがいて、逃げ疲れるとくるっと回転して背中の方の脚を使い、また疲れるとくるっと回ってお腹の方の足を使い、つかれたらまたくるっとなって、延々と逃げ続けるウサギの話とか、

馬に股がり水を飲ませていたら、その馬がまあ飲むこと飲むこと、あんまり飲むので後ろを振り返ったら馬の胴体の後ろ半分がなくって、飲む先から水がドバドバ流れていた、と。で、後ろ半分をさがしたら、なんと雌馬と ”いいこと” をしていた。そりゃあ、頭はいらないよね、とか。

そういう話が延々とw いやあイマジネーションですナ。



もちろん有名な家来五人衆もでてくる。

1.あまりに足が速すぎて、スピードをコントロールしようと両足に鉛の玉をつけている韋駄天男。
2.草が生える音まで聴こえる地獄耳男。
3.遠すぎて見えない雀を撃ち落とすほど恐ろしく目がいい、射撃の名人の鉄砲男。
4.森全体の木を一度に引き抜く怪力男。
5.鼻息で7基の風車をぐるぐる回すカゼ吹き男。

の五人。

でも・・・そんなに言うほど活躍していたわけではなかったですナ。思ったほど出てこない。

特に射撃名人とか風吹き男とかは地味に感じましたゾ。もっとこの五人にフィーチャーして、「ミュンヒハウゼン男爵と五人の家来」みたいな感じでたくさん外伝をつくってもいいかもしれませんナ。



③ ミュンヒハウゼン男爵は実在の人なのでありますゾ

実在なだけでなく、注目を集めるために病気を装ったり、自分を傷つけたりする行為を「ミュンヒハウゼン症候群」というけれど、これもこのミュンヒハウゼン男爵からとられておりますゾ。


このほら男爵であらせられるミュンヒハウゼン男爵は実在の人物で、1700年代に生きたプロイセンの貴族だった。とは言っても男爵クラスで、しかも5番目の子ということで、もっと偉い貴族のロシア帝国の大元帥ブラウンシュヴァイク公子アントン・ウルリヒに15歳で仕えはじめる。下級貴族はそうやって、見聞を広めたりしていたらしい。羨ましい話だ。

それでそのままロシア軍の騎兵少尉に就任して、30歳で大尉になって、その後妻と共にプロイセンに帰ってそのままロシアには戻らなかったそう。なので34歳くらいの時にロシア軍からは除籍されている。

その後は77歳で死ぬまで地元で生活していたが、話し好きでお客を呼んでは自分で創作した話を聞かせるという優雅な生活で、話もすごく面白かったらしい。

で、その話を聞いた人の一人がミュンヒハウゼン男爵に内緒で話をまとめて、こっそり出版してしまった。それを知ったミュンヒハウゼン男爵は、怒りのあまり憤死したんだとか。

その後、大幅に加筆された英語版がイギリスで出版されて有名になり、あらためてドイツに逆輸入されるという経緯だったらしい。


以上、主にWikipediaによる ☟参照

ja.wikipedia.org




私は「憤死した」は信じないけど、実際怒ったんだろうね。でもまさか自分がこのような形で有名になるとは思わなかっただろうし、有名になり方も「ほら吹き人類代表」っていうのは、実際どういう気持ちになるもんかしら。

でもまあ、悪くはないな。みんなを面白がらせて楽しませて笑わせて、その嘘も罪のないものばかり。愛されてるんだから悪くない悪くない。



④ 映画化もたくさんされておりますゾ

というわけで世界中に愛されたミュンヒハウゼン男爵の物語は、あちらこちらに引用されているだけでなく、子供向けも含めてたくさんの版が出ている。

映画にも何度かされていて、なんとあのカレル・ゼマンも映画化していた。知らなかったー。私、ゼマンのファンなので・・・今度買っちゃうかも(ボーナスとかで)。

おまけにあの『飛ぶ教室』のエーリッヒ・ケストナーが脚本で参加した版もあるらしい。これが「ほら男爵」映画化の初映画化作品なのだとか。見たいなあ。しかしこれに関してはどうやら手に入りそうにない。AmazonではDVDは売ってないし、VHS版も入荷見込みなし。くうう。残念。

でも、80年代にあのテリー・ギリアムが映画化した版の『バロン(1988)』は持ってるので、近日記事にする予定。


ま、映画はともかくとして、本の方は終始軽く読めるし、エピソードの羅列だから、「なんだったっけ、忘れちゃった」などとストーリーや登場人物を忘れちゃって前に戻って読み直す、いう必要もないので、通勤や通学の電車の中とかで読むのにうってつけ。

おススメです。


 

 

☝ この私が持っている岩波文庫版は、版が重ねられていないみたいで古本扱いのよう。

 

☟ ほかの出版社の方が手に入りやすそうだけど、訳者が違うのでご注意を。この記事とは雰囲気が違うかもしれません。

 

 



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