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古い映画感想ブログです。驚くほど忘れてしまうので備忘録として。

【映画】「ランブルフィッシュ(1983)」 映像がひたすら格好いい、マット・ディロンの代表的青春映画

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題名 ランブルフィッシュ
監督 フランシス・フォード・コッポラ
製作総指揮 フランシス・フォード・コッポラ
脚本 S・E・ヒントン、フランシス・フォード・コッポラ
原作 S・E・ヒントン「ランブルフィッシュ」1975年
出演 マット・ディロン、ミッキー・ローク、ダイアン・レイン、デニス・ホッパー、ニコラス・ケイジ、ローレンス・フィッシュバーン、トム・ウェイツ
音楽 スチュワート・コープランド(ポリス)
上映時間 94分
制作年 1983年
制作会社 アメリカン・ゾエトロープ
制作国 アメリカ
ジャンル 青春、不良、モノクロ

 

コッポラ監督、マット・ディロン主演ものとしては『アウトサイダー(1983)』に続く作品だけど、こちらの方が遥かに大人の鑑賞に堪える。『アウトサイダー』より2段くらいは上を行っている。

『アウトサイダー』の、なにかこうダサい、という古臭さを考えると、『ランブルフィッシュ』の方はモノクロ映像も効果的でスタイリッシュだし、ローアングルを多用したりとカットとか演出も工夫されているし、同じ監督と同じ原作者で同じ主人公(マット・ディロンね)とは思えないくらい出来が違う。

この『ランブルフィッシュ』は今見ても格好いい。映画は90分くらいだけど、どのシーンどのカットを切り取ってもPCの壁紙とかにできそうなくらい洗練されてる。


それに登場人物が違う。

『アウトサイダー』には大人はほとんど出てこず、出演者たちはこの映画を足掛かりにスターになっていったことからも明らかなように、10代で無名の若手俳優を大勢配して制作されている。要は ”ガキばかりが出ている” と言い換えてもいい。

それに対してこちらの『ランブルフィッシュ』は、兄貴役にミッキー・ローク、父親役にデニス・ホッパーという強力布陣。これは個性的。

 

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****** あらすじ ******
高校生のラスティ・ジェームズは粋がって肩を揺らして街を歩く不良少年。いつも仲間とつるんで喧嘩ばかりしている。別の学校のイカシた女の子パティがラスティの彼女だ。

ラスティにはモーターサイクル・ボーイとあだ名される兄貴がいて、ラスティは兄貴を尊敬している。いや尊敬なんてもんじゃない。崇拝している。ラスティは兄貴みたいな最高の男になりたいといつも思っていて、喧嘩ばかりしてるのもそのためだ。兄貴みたいに強い男になりたい。みんなを従えるリーダーになりたい。ところが兄貴は数か月前に姿をくらまし、戻ってこない。兄貴の行方を知る奴はひとりもいない。

ある日ラスティはいつものようにパティをほっぽって喧嘩に向かう。すると卑怯にも相手がナイフを持ち出してきた。それでも優勢に戦っていたら、ふいに行方が分からなかった兄貴がバイクにまたがって現れた。気を取られたラスティは腹を刺されてしまうけど、ラスティにとっては兄貴の帰還の方が大事だ。どこに行っていたのかを聞くと、兄貴はカリフォルニアへ行っていたという。子供の頃、自分たちを捨てて消えた母親に会いに行ったらしい。

兄貴が戻ってきたのは嬉しいけど、自分を捨てた母親の事、アル中の父親のこと、ここ数か月の兄貴の行動のことなどが気になって、気晴らしに出たパーティで知らない女の子と遊んでしまう。それで今度はそれがパティにバレて、パティとまで上手くいかなくなって踏んだり蹴ったりだ。

でもラスティにとって一番気がかりなのは、自分が崇拝していた兄貴とはまるで別の、別人のように変わってしまった兄貴の事だった。
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この映画の魅力はいくつもある。

まず、映画『アウトサイダー』が3月に公開され、この『ランブルフィッシュ』が10月に公開されるけど、主要な制作陣がかなりかぶっているうえに、しかもどちらも不良少年の映画とくれば、「なんかシリーズみたいな、似たようなティーン映画なのかな」と思ってもおかしくない。でもこの二つの映画は似ても似つかない。

『アウトサイダー』は黄金色のノスタルジック感満載でスタートして、黄金色のラストで終わり、その黄金と黄金の間にはさまれた本編もあまり練られた作りではなくて、ただただ感傷的な終わり方をする雰囲気だけの映画という印象で、ティーン向け、子供向け映画という感じだったけど、

この『ランブルフィッシュ』はモノクロのクールな映像に、クールな演出で、比較すると物語も手が込んでいて、やや高めの年齢層にもアピールする作品になってる。


上手いな、と思ったのは「ミステリーがある」ところ。

たぶん観客は「また喧嘩に明け暮れる不良少年の映画か」と思って見始めるし、実際そうなんだけど、そこに「主人公ラスティの兄貴が2~3か月留守にして戻ってきたら、まるで別人のように変わっていた。なぜか」という謎が物語のアクセントとなって興味をつないでくれる。

これはラスティが「兄貴は以前とは別人のよう」と言っているのだが、変わる前が映画ではまったく描かれないのでラスティが崇拝した兄貴がどのような男だったかは推察するしかない。ラスティが「喧嘩大好き不良少年」で、そのラスティが憧れているわけだから、おそらく「めちゃくちゃ喧嘩が強くて、みんなをまとめるリーダーシップを持った、カリスマ的な兄貴」だったらしいと推測することになる。仲間たちも口々に絶賛し、「王者の風格がある」とまで言わしめていたし。

ところが実際に出てくるモーターサイクル・ボーイは、まるで悟りを開いた宗教家のような、「争いは虚しい」と諭った仏教徒のような、詩を口ずさむ詩人のようなたたずまい。穏やかに、口元に微笑をたたえて小さな声でぼそぼそと喋って、夢の中を歩いているみたい。もう別の事を考えていそう。

なにがモーターサイクル・ボーイを変えたんだろう。


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スペクター参上! 的な



このモーターサイクル・ボーイを演じているのがミッキー・ローク。

この『ランブルフィッシュ』出演時はすでにそこそこ人気ある俳優だったんじゃないかしら。これより前には、ヒット作の『白いドレスの女(1981)』に出ているし、『ダイナー(1982)』もある。マイケル・チミノ監督の大失敗作『天国の門(1980)』にも出ているし、かなり話題になった映画に立て続けに出てる。『ダイナー』は持ってるから、近いうちに記事にするつもり。


そのミッキー・ロークが演ずるモーターサイクル・ボーイは色盲で、世の中が灰色に見えるらしい。色がない、灰色の世界。調べてみると「一色型色覚」というらしく、極めてまれではあるけれど、実際にある病気とのこと。

映画はそのモーターサイクル・ボーイの目から見た世界のように、モノクロで描かれていく。ただひとつの例外を残して。

モーターサイクル・ボーイがいたく感化されているらしい闘魚 ”ランブルフィッシュ” だけはカラフルに彩色されて水槽で浮かび上がってくる。カラーというより着色されてるっていう感じの、人工的な色だった。


元々は喧嘩が好きなワルだったのに、突然別人のようにおとなしくなった男。色盲で世界が灰色に見えている男。”仲間同士で殺しあう魚” に同情する男。21歳なのに、25歳に、いやもっとそれ以上の年齢に見える男。若者なのにすごく老けて見える男。現実離れして、白昼夢の中を歩いているような男。

なんだかすごく不思議な佇まいの人物なのだ。


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次にあげたいのはやっぱり、アル中の父親役をやったデニス・ホッパー。言わずと知れた怪優。今回も出の瞬間から「デニス・ホッパー来たー」という感じで異様な雰囲気を体に纏って出てくる。映った瞬間存在感。

日本で言うとショーケンかなあ。萩原健一、格好良いいよね。不良で。


デニス・ホッパーは、演技力がどうとか存在感がどうとか、褒め言葉が雪崩で押し寄せてくるほど評価されてるから、私なんかがどうこういうあれじゃないんだけど、好きです(笑) 

演技力がどうとかいうより、まず見た目が好き。顔の輪郭も好きだし、くりっとした子供みたいなきらきら光る目もいい。ワルでダメ男が定番で、そのダメっぶりも ”人間のクズ” レベルでダメなことが多いけど、どういうわけか憎めないし、むしろ魅力的な気さえしてくる。

ハンサムというタイプではないし、今回もよれよれの帽子をかぶって、よれよれの背広を着、片手には酒、口元にはちびた葉巻、髪も汗で濡れてるのかペタッと額に張り付いていたりなんかして、一般に格好いいとされる要素はまるでなし。なのにオシャレだな、センス良いな、格好いいなと思う。

妻に去られた後でアル中になり、出番中ずーーーーーっとウイスキーのボトルを手放さない有様。ラスティは親父の酒癖が嫌いらしいけど、それでも男家族3人はなんだか仲良さそう。

親父はダメなやつと分かった上で愛してるっていう感じがして、この3人いい。好きだなあ。3人でじゃれあってるシーンはとてもチャーミングだった。


私はジェームズ・ディーンが好きだから、デニス・ホッパーは若い時の映画も見てる(ジェームズ・ディーンの映画でデビューしてるから)。

彼は若い時より、年齢がいってからの方が断然魅力的。

デニス・ホッパーは若い頃ジェームズ・ディーンを崇拝していたわけだけど、しっかり超えたと、私は思ってる。ディーンもあの世で「お前やるな」って思ってると思う。


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サイコ映画みたい



そしてマット・ディロンが演じたラスティ・ジェームズ。このラスティがすごく魅力的な男の子で、マット・ディロンがやった役の中でも結構いい役だったんじゃないかと思う。

一言で言って「いいヤツ」なのね。人がいい。

ワルの兄貴に憧れてるから、イキがって大股で肩で風切って歩いて喧嘩ばかりしてるような男の子だけど、その連れて歩いてる友達の中にどう考えても仲間としてはそぐわないような、ガリ勉真面目ちゃん風の黒縁メガネのひょろっとした背の高い男の子を連れてるのね。スティーヴっていうんだけど、喧嘩の役には全然たたないのに、ラスティは「幼馴染だから」と言っていっつも一緒にいる。

喧嘩は弱いけど、じゃあ舎弟にしているのかといえばそうではなくて、ちゃんと対等の関係。スティーヴもさすがに最後は「喧嘩やめろよ!! いい加減にしろよ!」ってキレてた。

ラスティはスティーヴのことを「オレが面倒見てる」って思ってたかもしれないけど、スティーヴも喧嘩ばかりしているラスティのことが心配で、スティーヴなりに「見守っていた」のかもね。美しい。


それにパティっていう、ダイアン・レイン演ずる彼女がいるんだけど、喧嘩ばかり優先してしまってもラスティは「パティひと筋」っていう感じですごく大事にしているのが伝わってくる。途中で仲間にハメられてつまらないパーティに出て、つまらん女を抱いてしまってパティを怒らせるけど、本当はパティに心から惚れてるんだよね。

パティも、ラスティには喧嘩を辞めてもらいたいって願ってるけど、何度「やめてね」って言っても「これが最後」と言っては喧嘩に出掛けてしまうラスティの事を、結局大好きみたいだった。

お似合いなの。

それに、学校ではダサいセーラー服で、髪も結んで、「ちゃんと校則守ってます」っていう感じなのに、放課後は髪もほどいて化粧もバッチリして服も胸元を強調したりしてて、いい女に変身するような女の子なの。男にとっては理想的な女の子なんじゃないかな。

お似合いなんだけどな。



ラスティは仲間の一人のスモーキーに、「お前は人が良すぎる。リーダーには向かない。頭がキレてない。誰もついていかない」みたいにキビシク言われちゃってたけど、実際そういう感じ。さみしがり屋だから仲間とつるんでないといられないし、いいやつなんだけど、狡さがなくて、作戦立てる前に殴っちゃうみたいな、そういう単純タイプ。

いいやつなんだけどね。スモーキーの言う通り、足洗って、まともになった方が向いてるかも。面倒見は良さそうだから、いずれは田舎で地道な暮らしが向いていそう。


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ところで他にも登場人物は面白い人が出てる。

まず、そのスモーキーをやったのが若かりしニコラス・ケイジ!! 髪の毛ふっさふさ!! 髪だけは別人ですよ。でも顔はニコラス・ケイジです(当たり前)。あと胸毛もニコラス・ケイジに間違いないと思った(笑)


つぎにミュージシャンのトム・ウェイツが、悪ガキどもが集まる「ベニーの店」のマスター、ベニー役で出てる。なのに映画の音楽担当はポリスのスチュワート・コープランドなの。ふうん。


あと今回見直して驚いたのが、『マトリックス(1999)』のモーフィアス役でおなじみのローレンス・フィッシュバーンが出てたこと。当然若いし、痩せてるけど、「モーーーフィアスじゃああん」ってすぐわかる。冒頭から出てきて、ちょいちょい出て、最後も出てくるという、重要というわけではないけど(あら?)ずっと出ていて、ラスティの仲間みたいな役をやっていた。でもこの頃から顔はぶつぶつニキビの跡が見て取れた。


そして前作『アウトサイダー』にも出ていたコッポラの娘、ソフィア・コッポラがまた出てるww 『アウトサイダー』では名もなき通りすがりの女の子役だったけど、今回はダイアン・レインの妹役だから出番も多くて、しかも空気が読めないというか、読んでるんだけどわざと気づかないふりしてラスティとのいちゃいちゃを邪魔する役ということで、結構笑わせてくれる。ソフィア、おいしかったね。よかったよ。



ま、映画のラストはやっぱりちょっと詰めが甘くて、『アウトサイダー』と同じく、やっぱりなんで死んだのか全然分からないという、感傷的な終わり方。

ま、原作自体が日本でいうところのライトノベルだから仕方ないかな。

でも映像がかっこいいから許す!

というわけで、欠点もあるけどわりとおススメです。