mです。
今回は私が突発性難聴(両側いっぺんでした)になった時のことを書いてみようと思います。
ある日突然、なんの前触れもなく、いきなり発症するのが突発性難難聴です。突発性と言うだけあって、「なんか最近聞こえにくいな」といった前兆や、徐々に聞こえなくなるというようなことは全くありませんでした。いつもと変わらず普通に朝起きたら耳が聞こえない(正確には聞こえにくい)のです。
突発性難聴というと結構有名人にも多いので、聞いたことがある方も多いと思います。ミュージシャンに多い印象があるので、日常で大きな音にさらされていなければ自分はならないだろうと思う方もいると思いますし、そもそも考えたことない人の方が多いと思います(私はそうでした)。
ですが突発性難聴とは、音楽とか騒音とかと全く関係がなく、誰にでも起こる可能性があります。
しかも、いつ、なんとき発症するかまるで分かりません。原因が分からないので予防するという考えにもなりにくい系統の病気だと思います。
ですので、万一なってしまった場合、みんながほったらかしにしないように、経験談を書いてみようかなと思いました。
- 発症したときの話
- 入院か、通院か
- 治療開始(入院)
- ところで電話だけははっきり聞こえた話
- 原因の憶測
- 聴力を失わずに済んで「本当に良かった」と思うこと
- 多少残る不安(再発の恐れのこと)
- とにかく発症したらすぐに受診しよう
発症したときの話
43歳、夏のある日曜日、目が覚めるとなにやらおかしい。なんだか耳が聞こえない。
正確に言うと聞こえないのではなくて聞こえづらい。世の中の音が「ぼあーっ」としているというか、まるでずっと水に潜っているかのよう。耳がずっと詰まっている感じ。
変だなあ、変だなあ。なんだろう・・・今まで経験したことがない感じ。
母と二人暮らしなのですが、母が喋っているのもよく聞こえない。え?え?って。頭が真っ白になる感じ。
でも言えなかったです。
一時的なもので、明日になれば治っているかもしれないし、と思って。
ネットで一生懸命検索しました。
「耳が聞こえない」とかで。
それで症状などから言って、これはどうやら「突発性難聴」とか「感音性難聴」というやつらしいと当たりをつけました。
すると「一日も早く病院へいくべき」「一日の治療の遅れが治癒率を下げる」「3割が元に戻って、3割がやや改善、3割が聞こえないまま症状固定」などと書いてある。
書いてあるけど、母には言えなかった。
日曜日だから病院はやっていないし、それに明日になればよくなってるかもしれないんだしって思って。
でも月曜日に目が覚めても全く良くなっていなかったです。
その月曜日は祝日で、仕事が休みな代わりに病院も休みだったので、自分の部屋でまんじりもせずじっとしていました。どうしよう・・・と思って。
「一日も早く受診するべきである」と書いてあるけど、もう二日目です。明日病院に行っても三日目。あああどうしよう。
仕事は忙しくて休めないし、かといってこんなに聞こえないんじゃ仕事に行っても役に立たない。
これは仕事を続けられないかもしれないな、と思いました。治らなければ、続けることは不可能な仕事でした。
そして火曜日、仕事に行くために家を出ました。元々母とは仲が良くなくて、日ごろから最低限の会話しかしないので気が付かれていませんでした。
それで職場側の駅に着いた時、ここでようやく「いや、これは病院に行くべきなのだ。一生後悔することになる」と思うことができて、意を決して職場に電話をかけ、自宅に電話し、そして自宅近くの評判がいいと言われている耳鼻科に行きました。
耳鼻科では「明日朝一番で○○大学病院に行ってください」と紹介状を渡され、「たぶん入院になる」と言われました。
「まじで」と。
なんかすごく「でんじゃあ」な感じがしましたね。でんじゃあ、でんじゃあ、でんじゃあ、でんじゃあ、でんじゃあ。
耳が聞こえないから頭がぼーっとしているのか、ショックで不安だからぼーっとしているのか、分からなった。
両耳だったせいもあって、耳鼻科にいても受付の人や看護師さんが言っていることがよく聞こえないんです(涙) もう何言ってんのかぜんぜん分かんない(T_T)
家に帰って、翌日朝一番で大学病院を受診し、次の日から一週間ほど入院することになりました。
入院か、通院か
突発性難聴はたいてい片側の耳に発症するものらしいのですが、私は両側いっぺんに発症するまれなケースでした。
大学病院では、① 入院せず、ステロイドの飲み薬で治療する ② 入院して、毎日ステロイド点滴を受ける の二択を提示されました。ステロイド治療しかすることがないというのは要するに、症状の原因は分からないし、これといった治療法もないことを意味しています。
先生が言うには、実は①と②の間で効果にそれほどの違いはないとのことでした。点滴をしたからといって、劇的に治癒率が高まるというようなエビデンスはないらしい。でも、「やるだけやってみることをお勧めします」と。
私も先生の言うとおり、ここで①の「飲み薬&通院治療」を選ぶと、完治しなかった場合に「あああの時やっぱり入院して点滴にしておけばよかったのではないか」などとくよくよすることになるような気がして、②の「入院して、点滴でステロイドをふんだんに打って、それでダメならあきらめもつくし」と思って入院を決めました。一週間の予定です。
仕事のことは気になりましたが、やはり後悔したくないので、ここは自分を優先することにしました。
そして一日かけて入院前検査や手続きをして、もうくたくたでした。でも、おかしなことですが、生まれて初めての入院だったのでちょっと楽しみでもありました。命には関係がなかったからだと思います。
私は友人が人っ子一人いないのですが、母の友人が保証人になってくれて、しかも当日は病院まで車で送ってもらえたりしました。
治療開始(入院)
そして治療が始まるのですが、ステロイド点滴を毎日午前中に打つだけで、あとは検査以外はやることがないので、自宅から持ってきたDVDを見たり本を読んだりして過ごしました。入院生活自体は静かで落ち着いていて、食事もおいしかったし、看護師さんも優しくて、快適でした。夏だったので、病室から花火も見られました。
一週間の予定で、最初の4日間ほど点滴をしましたが、4日目で点滴が漏れてしまって腕がパンパンになってしまったのと、針が刺せなくなってしまったのもあって点滴は中止になり、残りの日数は内服薬のみになりました。さらに採血結果でカリウム値が少し高めに出たので一日退院を延期して、結局8日間入院しました。
入院費は8万円代くらいだったと思います。9万円弱くらい(入院時の補償金が10万円で、退院時に差額が戻ってきた感じです)。
退院時には、だいぶ聴力が戻っていて、あとしばらく内服薬を飲めばもう少し改善が期待できるとのことでした。仕事もすぐに通常業務に復帰することができました。
そして退院後も月に一回通院して、毎日錠剤のステロイドや漢方を飲み、ほどなく症状固定(治癒)となりました。
最終的に、数値的には100%ではないにしてもほぼ発症前と同等くらいには聴覚が戻りました。実感としては完治だと言っていいと思います。
改善して耳がちゃんと聞こえるようになると、聞こえなかった時がいかに聞こえなかったかが分かります。
治療前は、病院の待合室で診察を待つ間、自分がいつ呼ばれるか分からないし、一生懸命モニターを見て順番を確認しているわけですけど、実際に呼ばれても聞こえないから反応できませんでした。呼ばれても気が付けないんです。
耳鼻科なんだし、私は耳が聞こえないから受診しているんだから、受付の人とかもっと大きな声で呼んでくれればいいのに・・・肩とか叩いてくれてもいいのに・・・(._.)・・・と思っていました。
それに入院中、一回だけ外出をさせてもらって母と本屋さんに行ったのですが、店員さんが何を言っているのかが皆目分からない。レジでの会話なんてパターンが決まってるのに、全然聞き取れなかったです。
でも、退院後の通院で待合室にいると、呼び出しがちゃんと聞こえたんです。「ああ、こんなにクリアに聞こえてたんだな」って思ったし、聞こえるって嬉しいと思いました。
ところで電話だけははっきり聞こえた話
ただひとつ、今でも不思議に思っていることがあります。
当然のことですが、「このままだと今の仕事はできなくなるな」と思って、すごく残念に思いました。当時やっていた仕事を継続することは絶対に無理でしたが、その仕事にはとてもやりがいを感じていたので本当に悲しかった。
でもいきなりクビになることはないだろうと思って、雑用係でもなんでもいいから雇用は継続してくれるんじゃないかと思っていたので「お先真っ暗」というほどではなかったのは救いでした。
クビにならないんじゃないかと思った理由は、「電話の声は、くっきりはっきり聞こえた」からです。すごく不思議です。
入院中、経過報告のために何度か職場に電話をしているのですが、どういうわけか分からないけれど電話の声だと「はっきり聞こえる」んです。
「耳が聞こえなくなってしまって、、、」とかなんとか言って入院しているというのに、まるで仮病を使っているよう。
仮病じゃないんです。本当に水に潜っているような日々を過ごしているというのに、電話だけははっきりと聞こえる。きれいに聞こえる。
なんで?
理由はともあれとにかく電話は聞こえるので、最悪の時はコールセンターに入れてもらおう、って思ってました。電話が怖くて、大嫌いなんですけど、背に腹は代えられません。
この「異動先に当てがある」というのは大きくて、お先真っ暗な気分にならずに済み、経済的な心配がなかったという点ではかなりお気楽だったような気がします。
原因の憶測
なぜ突発性難聴になるのかは原因が不明らしいのですが、私の場合はもう絶対にストレスが原因だと思っています。
私は当時、仕事で非常に頭の痛い部下を数名抱えていて、たいへんストレスフルな日々を送っていました。1年くらい経って、そのうちの一人は発達障害と軽いナルコレプシーがあることが分かるのですが、診断などくだらなくても明らかに発達障害を持っているような部下は初めての経験でどう導いてよいか分からず、とても悩んでいました。
発達障害やナルコレプシーであってもなくても、現代では部下の扱いはとてもデリケートな問題で、部下は真綿でくるむように扱わないとすぐに「パワハラ」とか言われてこっちが責められるし、発達障害を抱えていれば尚のことデリケートです。「差別」とか言われかねない。実際自分でも「度量が狭いのではないか、こういったスタッフを適材適所に配置して能力を伸ばしてやるのが私の仕事なのではないか、それができなくて辛いのは自分の能力のなさが原因なのだろう」と、とても悩んでいました。
頭と心が「きゅーっ」となる程辛かったです。ADHDやアスペルガー系の本を何冊も買って読みました。
だけど本心では「こっちが鬱になるわ!!」と思っていました。
「なぜ、なぜ、なぜ私が鬱にならないといけないの?! なんでなんでなんで? おかしくない?!」と叫びだしたかったです。(T_T)
正直、被害者の気分でした。
私は過去にいい感じにメンタルをやられて心療内科に通っていた経験があって、心を病むのがいかに辛いことかを知っているので、あの状態にもう二度と戻りたくない。もうあんな経験は絶対にしたくない。
あれがまた始まったらどうしようと思って怖くて、本当に苦しかったです。脳が、眉間が、きゅーっとなる。
その心労が頂点に達したというか、ストレスがキャパ越えしたんだろうと、感じています。
聴力を失わずに済んで「本当に良かった」と思うこと
もちろん仕事を辞めずに済んだことも良かったんですけど、心から「良くなって本当によかった」「嬉しいなあ」と思っていることは意外と単純なことで、それは「音楽が聴けること」です。
突発性難聴になった時、両側だったし、このまま症状が改善しなかったら「音楽が聴けなくなっちゃうのかなあ」と思って、とても悲しかった。もちろん音がまったく聞こえなくなったわけではないので、音楽だって聴けることは聴けると思うのですが、ちゃんと聴こえなくなるのは悲しいなと。
映画であれば、字幕があれば多少は楽しめますが、音楽だけはいかんともしがたい。
音痴で音楽的才能に欠け、音楽なんて大して分からない私ですが、それでも自分の日常から音楽がなくなると考えたら、悲しかった。
幸いなことに回復したので、今は普通にウォークマンで音楽を聴きながら出勤しています。
ほんとうに良かったなと思ってる (T_T)ヨカッタヨー
多少残る不安(再発の恐れのこと)
外来通院の最終日に、先生に「一旦なると、再発しやすくなります」と言われました。
あれから6年以上が経つのですが、今のところ再発してません。
でも時々「ヴヴヴヴヴ」と鼓膜が振るえたりすると、緊張してドキドキします。突発性難聴とは関係ないと思いますけど、「あああやだな」と思う。しょぼんという気分。
かといって突発性難聴自体、原因がよく分からないので何をどう気を付けるべきなのかが分からないのですが、私は自分の場合は絶対にストレスが原因だと思っているので、「できるだけ思いつめないようにしよう」と思っています。
考えすぎない事。心配しすぎない事。気楽に、気楽に、深く悩まないことです。
自分の力では解決できないことで悩むなんてもってのほかです。解決できないことはね、解決できないんですよ。
耳の事も普段はしっかり忘れて、気にしすぎない。
気にしても仕方がないし、もしまたなっちゃったら速やかに病院に行って、速やかに入院します。あとはなるようになれ、です。
とにかく発症したらすぐに受診しよう
私は病院事務(耳鼻科ではありません)なので、身近に60歳くらいで左側の突発性難聴になって病院に行くのを怠ったDrがいて、彼は「僕もすぐに病院行けばよかった」と後悔しています。
そもそも医者は忙しいし、特に手術をしない外来診療中心のDrは「外来を休むわけにいかない」って思うみたいで、病院に行かなかったみたいなんですよね・・・行けなかったといいますか。
それで補聴器を使ってます。医者だからかなり高級そうな補聴器を使っていますけど・・・。茄子紺のすごくいい色のやつ。
これは命にかかわらない症状なので、そんな風に、そのまま放置してしまう人も多いと聞きます。
私はほんとに日常生活に支障が出るほど聞こえなかったから、「これは医者に行かなければ」と思えましたけど、症状が軽めなら私も放置してしまったかもしれません。
でも、すぐに耳鼻科に行ってください。仕事なんか休んで、病院へ行ってほしい。2週間放置すると治癒率がすごく下がるそうです。3人にひとりしか完治しないんですよ!
もしこの記事を読んでくださった方で、突然耳が聞こえにくくなった方がいらっしゃったら、必ず「すぐに」病院へ行ってください。
幸運を祈ります。