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名作から駄作まで、見た映画の感想を正直に片っ端から記事にする、古い映画感想ブログです。驚くほど忘れてしまうので備忘録として。

【映画】「レベルポイント(1979)」 10代の青春映画というよりも、ディストピア映画として見たよ

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題名 レベルポイント
監督 ジョナサン・カプラン
出演 マイケル・クレイマー、マット・ディロン、ヴィンセント・スパーノ、トム・ファーガス、パメラ・ルドウィッヒ、ハリー・ノーサップ、アンディ・ロマーノ、エレン・ガー
上映時間 95分
制作年 1979年
制作国 アメリカ
ジャンル 青春、10代、ディストピア、サントラ

 

私はこの映画は、青春映画というよりディストピア映画なのだなあと思った。

 

この映画は1973年に実際に起こった事件をモチーフに作られている。

1973年、カリフォルニア州の中産階級向けに作られた計画都市で10代の子供たちが暴れて破壊行為を行うという事件があった。当時はここだけでなくアメリカ中の計画都市で少年犯罪が多発して社会問題化していたらしい。そしておそらくその後もこういった事件が続いたのだろう、映画の冒頭に出ていた字幕によると、アメリカでは1978年だけで全米の計画都市で11万人の少年少女が逮捕されたのだとか。

そういった時代背景があって、監督のジョナサン・カプランらが少年らに取材を行い本作が出来上がった。カプランは当時まだ20代だから、ティーンの抱える問題や悩みに共感できたのだろうと思われる。


題名の「over the edge」は、”境界を超える” みたいな意味だし、邦題の「レベルポイント」は ”落下点” という意味らしい。


どちらもなんとなく言いたいことは分かる。子供たちが一線を越えたんだな、と。

73年と言えば日本だと「暴走族元年」と言われる年だから、ティーンエイジャーが暴れる時代という点では日米で共通している。

どうやら日米の若者たちは、この時代盛んに境界を越えたがってたらしい。


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ジーンズ率がめっちゃ高い



****** あらすじ ******
1973年、コロラド州デンバーにある計画都市ニューグラナダでは、10代の少年少女が遊ぶ場所は町のはずれに申し訳程度に作られたレクリエーション・センターしか用意されていなかった。そこでは先生のひも付きで、せいぜいビリヤード台と卓球台、テーブルサッカーのゲーム台が置かれる程度。子供たちは毎日学校へ行き、学校が終わるとレクリエーション・センターへ行き、センターが6時に閉まれば家へ帰るしかやることがない。町には映画館やボーリング場ができる予定だったがいつまでも出来ず、退屈を持て余した子供たちは飲酒や大麻、喧嘩などで憂さを晴らしていた。

ある日町で一番の不良少年マークがパトカーのフロント・ガラスに空気銃を打ち込み、そのとばっちりでカールとリッチーが警察に捕まってしまう。そして非行行為が徐々にエスカレートしていく子供たちに対し、大人たちは9時半の門限を課す。

そして荒れた子供たちが大勢たむろしているせいで景観も治安も悪くなり、町の価値が下がることを懸念していた大人たちは、町に大きな工業団地を誘致すべく工業経営者を見学に招く際、レクリエーション・センターを一日閉鎖し子供たちの姿を隠そうと試みる。しかし指示に従わなかった女教師の機転でセンターは閉鎖されず、大人たちが自分たちを隠そうと画策したことを知った子供たちの不満が限界に近づいていく。

そしてとうとう、空の拳銃を振り回していたリッチーが警官に射殺されたことが決定打となり、子供たちは大人達への反撃を開始する。
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ジーンズの氾濫



率直かつ真面目な感想としては、これは暴れるのが健全なのでは、と思った (暴れすぎとも思ったが)。

中高生の子供たちが遊ぶ場所が、まるで市役所あたりが運営している市民センターみたいな施設で、大人の見守りの中で、大人の許容範囲のいたって健全な遊びしか準備されていいないのだから、これはいかん、つまらん、そりゃグレるわなあ、と思った。

もし私だったら、「くだらない」「つまんない」と思って、ただ寄り付かなくなって家に引きこもり、本を読んだりゲームをしたりして自分の世界に閉じこもるだけだと思うのだが、暴れる選択をとる子供たちも多くいるだろうというのは想像に難くない。

知能を持った生物として、いたって健全な行為だと思う。

去勢された街に、去勢を強いる大人達。誰も暴れなかったら、その文明は滅びたも同然だ。



よくある他の非行少年映画や不良映画とだいぶ違うと思ったのが、「計画都市であること」が強く強調されているところ(←意味の重複だなあ)。他にこういう青春映画はぱっと思いつかない。

察するにこれは一種のディストピア映画で、SF小説などにはよくある管理社会ものなのだと思う(ディストピア映画大好きw)。

世に多く出回っているディストピア映画は、たいていがSFの体裁をとっているし、そこで描かれる管理ぶりそれはもう徹底したもので、自分たちが置かれている状況に気づきもせず、不満を持つこともないことが多い。しかし次第に自分を取り巻く社会が異常であると気が付いた一部の住民(主人公たち)が、自由を求めて支配者と闘うという仕組み。近未来など、SFの体裁だから「もしも・・・だったら」という感じで、結構非現実的な作りになっていることが多い。

でもこの『レベルポイント』は現実社会、実話を基にした、まさに今現在を舞台にしている ”現実” だから、支配者はお父さんやお母さんなどの普通の大人で、SFディストピア映画のようなフィクショナルなインパクトや恐怖感はない。

舞台もストーリーも登場人物も大変身近で、大人たちは無自覚に、ゆるく、当たり前の顔をして子供たちを管理している。

でも子供たちにとっては退屈な地獄、ディストピアに変わりはない。


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遊び場は町のはずれのこのプレハブだけ



子供たちの非行の原因は、「田舎の計画都市は子供たちへの配慮がまったく足りず、彼らが遊べる場所が全然なかったことからフラストレーションが爆発して暴力行為に走る」というもので、要は「計画都市での遊び場は、大人が考える子供向けの遊び場だから健全すぎてつまんないし、ということはこの町を作った大人達は俺たちを無視しているのだ」ということだ。

いつまでも積み木で遊んでらんないよ、というわけ。

これは至って健全な欲求で、人間みんなが飼いならされた家畜じゃないのだから、やっぱり悪場所は必要で、心置きなく不健康に遊ぶとか、グレた気持ちになった時にはそれにふさわしい場所があるとか、そういうのが社会には必要だってことだ。

それは映画館でもいいし、ゲームセンターでもいいし、ライブハウスでもいいし、ディスコでもいいし、子供がそこへ行けば大人たちが眉をしかめてくれるのであればどこだっていいんだと思う。

計画都市ではなく、自然に発展した都市であれば、そこには大人の悪場所であるソープランドもあるし、キャバクラもある、ホストクラブだってあって、子供向けにはディスコとかゲーセンとかがある。そこへ行けば煙草を吸ってる子たちも、酒を飲んでる子供たちもいて、ちょっとした不健康とか退廃がある。

そういう場所が、人間には必要な時があると思う(あるいは必要な人間はいると思う)。

だけど新しい街を人為的に作る際、「女郎小屋は必要だから、町のはずれにソープランドのための土地を確保しておきましょう」なんて言ったら、良識派から猛反発が来るに決まってる。

そして人間は善悪を併せ呑む生き物なのであるということが分からない、本音の部分を理解できない良識なる理屈に押されて計画都市は作られてしまう。きれいに区画された家々、広くて真っ直ぐの車道。人目を避ける路地もなければ、すべてに光が当たって影もできない。

愛を感ずることができずにグレた気持ちになった子供たちや、競争に負けてやさぐれた大人たちのために、ほんのひと時現実を忘れる悪場所を、最初っから用意するほど人間は賢くないんだろう。

きらいだ、計画都市。私は戦後から残るごちゃごちゃした未開発の街並みが好きだ。

そんな計画都市に引っ越してきてしまった子供たちの、不幸な、そして正当な要求が繰り広げられる物語なのだ。


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飲みっぷりが子供ではない



・・・とはいえ、かなり暴れすぎではあった(笑)  (´▽`*)ヤリスギテタ


というかそもそものデフォルトの子供たちが、すでに酒は飲むわ煙草は吸うわ大麻はやるわ、中には薬の売買をやってるやつはいるは、セックスはするわ、大人と全然変わりなくてえげつない。

一応、映画の中で一番本格的な不良として登場するのがヴィンセント・スパーノ演ずるマークなのだが、一番の不良が空気銃でBB弾を撃って、停学になってすねてるだけだから、むしろこいつが一番普通じゃないかと思うほど(パトカーに撃ちこんでいたのはいただけないけど)。

そしてこのマークなど目じゃない暴動を、”普通の” 少年少女たちがやってのける(マークも参加してるけども)。

大人たちを学校に閉じ込め、校舎を破壊し、車を破壊し、もうやりたい放題。センターも崩壊するし、警官のドーバーマンなんて死んじゃってましたけど・・・勝ち誇ってていいんでしょうか。


こうまで暴れる少年たちの心境に、私はそこまで寄り添うことができなくて、ただただ「いくらなんでもやりすぎ」と思った。

だけど、「これは一種の革命なのかもしれない」とも思った。

フランス革命みたいに歴史の要所で繰り返される本当の革命は、権力者の圧政に対して、声なき、力なき民衆が「いよいよ我慢の限界」となって「自らの生命と尊厳を賭けて」命がけで立ち上がり、あらゆる暴力行為を肯定して権力者を倒すことだと思うけど、この『レベルポイント』の子供たちもそうといえばそうなのだった。


そうかあ。これは革命なのかあ。

この子供たちにさほど共感しきれず、この場にいてもたぶんいくらも仲間に入らず、ぽかんと一人で部屋で妄想の世界に入っていそうな私は、たぶん永遠に、”革命” というものに参加することはないのだろうなあと、この映画もちょっと冷めた目で、遠巻きに眺めてしまったのであった。


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ちなみにこの空気銃&オフロード・バイク少年マークを演じたヴィンセント・スパーノは、『ランブルフィッシュ(1983)』でマット・ディロンとずーっと一緒にいる、メガネでガリ勉タイプで弱そうな幼馴染スティーヴを演じてる。

『レベルポイント』では結構強そうで頼りがいもありそうな格好いい系の不良少年なのに、『ランブルフィッシュ』では真逆の真面目ちゃんを演じてて、どちらもキチンと様になってて良かった。

ちょっと中東っぽくも見えるイタリア系の俳優で、ファッションもワイルド系で似合ってて、個人的に「カッコいいな」って思って好きな感じの男の子だった(ちょっと出っ歯だけど)。


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そして今作がデビュー作となるマット・ディロン。マット・ディロンは14歳の時に授業をさぼって学校の廊下を歩いていたところをスカウトされたと聞いている。

マット・ディロンは元々すごい不良というタイプではなくて、まあちょっと授業をさぼったりはするけどー、くらいの普通の少年だった模様。

『レベルポイント』では主役ではないけど、でも出ずっぱりのいいポジション。主人公と仲が良くて、主人公よりはちょっとワルで、短絡的な無鉄砲タイプ。


そして特筆すべきは、まだ15歳くらいだから幼くてかわいらしいことは勿論なのだが、それよりも

① 映画冒頭で着ていたTシャツの丈の短さ! 見たことないよあんなのwww
② チャリンコに旗を立ててるんだけど、「チャーリー」って自分の名前が書いてあんの(笑) 自分の名前の旗を立てるって何!! 格好いいのか?!

・・・まあ、それらは ”ダサい” ということで笑って済ませるとして、

③ そしてマット・ディロンの出世作である『アイトサイダー(1983)』同様、ここでも空の拳銃を振り回して警察に射殺されていた。

正確に言えば、『レベルポイント』で空の拳銃を振り回して警官に射殺されたマット・ディロンは、4年後の『アウトサイダー』でまた空の拳銃を振り回して射殺されていた。

自殺願望ありすぎか。アメリカ社会を甘く見てはいかん。


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このTシャツに意表を突かれた



蛇足ながら、この記事を書くのにいろいろやっていたら、すでにDVDは絶版になっていることに気が付いた。今ではimportものでしか手に入らないっぽい。

それにしても日本未発売あるいはVHS発売止まりでも良さそうなこの映画が、なぜにそこそこカルト的に人気があるのか。

それにはまず、あのニルヴァーナのカート・コバーンのおもひでの作品だったというのも手伝っているのだろう。

カート・コバーンは1967年生まれ。

実はこの映画は日本でこそ1979年に公開されているが、制作国であるアメリカでは1981年に限定公開、続けて1982年に本格的に公開されたという経緯がある。

理由は、当時『ウォリアーズ(1979)』という映画が公開され、それに触発された若者たちによる暴動が社会問題化していて、「この映画(レベルポイント)にも同様の力がある」と判断されて公開が見送られていたらしい(光栄なことだ)。

すると『レベルポイント』が公開された頃、カート・コバーンは14~15歳くらい。こういうティーン向け不良青春映画にはまさしくドンピシャの世代なわけだ。

そんなカート・コバーンが、あのニルヴァーナの1991年の大ヒット曲にして代表曲「Smells Like Teen Spirit」のPVは、この「レベルポイント」にインスパイアされて作ったと言っていることから、再注目されたに違いない。



参考:ニルヴァーナ Smells Like Teen Spirit のPV 


Nirvana - Smells Like Teen Spirit (Official Music Video)




このPVが『レベルポイント』ぽいかは私には分からないけど、まあ高校生っぽくはある。


そして実際この映画はすごくロックな映画で、サントラが妙に充実している。

主人公のカールがヘッドフォンで盛んにロックを聴いているし、車でかける音楽も当然ロック。

まあ、70年代はまだロックが王様だったから当たり前なのだが、このサントラに使われているメンツがすごいし、懐かしい。チープ・トリックでしょう、カーズでしょう、ヴァン・ヘイレンにジミヘン、ラモーンズって、すごいな、錚々たるラインナップ。

今回ついでだからサントラ欲しいなと思ったけど見つけられなかったので断念するが、たぶん買う価値があるサントラになってると思う。

80年代になると、『フットルース(1984)』とか『フラッシュダンス(1983)』とか『ゴーストバスターズ(1984)』とか『トップ・ガン(1986)』とか、「映画のヒット=サントラのヒット」なのか「売れるサントラ制作=映画もヒット」なのか分からないほど、やたらとサントラの時代になってた。

それはもうケニー・ロギンスのような、サントラでしか曲が売れないロック歌手が生まれてしまうほど。実際ケニー・ロギンスはキャッチーな曲をつくるのが上手かった。

そんな「若者向け映画=ロックの挿入曲たくさん」の時代へ入りつつあった、最初のころの映画でもあるのだなあ、と思う。



※ そのサントラの収録曲がこちら ☟

Side one
1."Surrender" – Cheap Trick
2."My Best Friend's Girl" – The Cars
3."You Really Got Me" – Van Halen
4."Speak Now or Forever Hold Your Peace" – Cheap Trick
5."Come On (Part 1)" – Jimi Hendrix

Side two
1."Just What I Needed" – The Cars
2."Hello There" – Cheap Trick
3."Teenage Lobotomy" – Ramones
4."Downed" – Cheap Trick
5."All That You Dream" – Little Feat
6."Ooh Child" – Valerie Carter



音楽も映画の魅力のひとつだよね。欲しいなあサントラ。『トップガン』はいらないけど『レベルポイント』は欲しいなあ。

一曲だけ貼っておきますね。



参考:"You Really Got Me" – Van Halen


Van Halen - You Really Got Me


ハードロック界のヨッちゃんこと、エディ・ヴァン・ヘイレン。
ご冥福をお祈りします (._.)



ところでラストの方のカールが捕まって護送車で運ばれていく直前の父親とのシーンを見て、ジェームズ・ディーンの『理由なき反抗(1955)』みたいだなと思った。

何にも解決していないのにさ、諸悪の根源でもある父親の方だけが、勝手に理解のあるいい人みたいな顔しちゃってさ、満足しちゃっててさ、当の本人は「お前なんもわかってねーな」みたいな、そういう終わり方がそっくりだった。

じゃ✋ 




私が持っていて、今ではくそ高くなっちゃったDVDはこちら ☟
2万円てなんなん。

 

 


import版でよければこちらから ☟ 英語とかフランス語とか。

 



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