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古い映画を中心に、本、仕事・・・etc. 驚くほど忘れてしまうので備忘録として。

【映画】「ソイレント・グリーン(1973)」~特撮のない傑作SF~

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題名 ソイレント・グリーン
監督 リチャード・フライシャー
制作 ウォルター・セルツァー
原作 ハリイ・ハリスン『人間がいっぱい』1966
出演 チャールトン・ヘストン、エドワード・G・ロビンソン
上映時間 97分
制作年 1973年
制作会社 MGM
制作国 アメリカ
ジャンル SF、70's
 
 「俺がガキの頃は味があった」
映画『ソイレント・グリーン』より 
 
*********** あらすじ ***********
 人類の環境汚染による地球温暖化と人口爆発によって、4000万人がひしめき合う2020年のNY。ほとんどの人間が住む部屋もなくアパートの階段や外で生活している。食料や水も圧倒的に不足し、政府が配給するクラッカー状の合成食品「ソイレント・レッド」と「ソイレント・イエロー」に頼って暮らしていた。そして新たに、海底プランクトンで作った動物性の合成食品「ソイレント・グリーン」が配給されはじめる。殺人課の刑事ソーンは、「ブック(本)」と呼ばれる老人ソルの協力を得て凶悪犯を追う日々。ある日、高級マンションに暮らす弁護士サイモンソンが殺される。プロの殺しだと見抜いたソーンはソルと共に捜査に乗り出す。捜査の結果辿り着いた真相は、全人類の存続を脅かす、驚愕の真実だった。 
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特撮のないSF映画の大傑作。
 
チャールトン・ヘストンは『猿の惑星』に続き、また人類の真実を知ってしまったのか。さすがスターは知る秘密の重さ、大きさが違う。
 
・・・なんかチャールトン・ヘストンって、風呂に入ってない感じがする。もちろんこの作品の役は風呂に入っていない役だと思うけど、ヘストンっていっつも風呂に入っていない感じがする。ベン・ハーでしょ、猿の惑星でしょ、数日とかじゃない、ずーっと風呂に入っていない感じ。この映画もそういうところがはまり役。
 
それにしてもヘストンは、年とともに貧相になっていくタイプだったなあ。若いころは「ミケランジェロのように美しい」と言われたほどのルックスと肉体美だったのに・・・。

年を重ねるごとに豊かに魅力的になっていく人と、逆に貧相になっていく人といるけど、その違いはなんなんだろう。「自信」や「人生の充実」みたいなことがよく言われるけど、必ずしもそうとはいえない気がするんだなあ。有名人とかみても、あんなに活躍したあの野球選手とか、あの超人気俳優さんとか、どんどん貧相になっていく。「自信」とか「充実」が秘訣が本当なら、彼らは私達には見えないところでひどく自信がなく、充実していないってことになるんだが。
 
人生は複雑だなあ。 
 

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この映画は始まりから終わりまで私好みの、超お気に入りの映画なんだけど、特に好きなのがソルの存在。この世界ではもはや本は作られておらず、大衆の間ではほとんど知性が崩壊している様子。本が読めるのは一部の人間のみ。ソルはその中の一人。本を読み、理解できる数少ない一人だ。
 
十分知的だと思うが、知性が野生のソーンにとって、ソルはアカデミズム的な知性を担当するかけがえのない存在なのだ。
 
残された人々は、過去に出版された本を一か所に集めているようなのだが、そこに陣取っている知性の門番みたいな人たちが、軒並み80歳くらいの老人ばかり。彼らが大衆の中にある最後の知性なのであれば、もう人類の未来は「一部のエリートの言いなり」決定でしょう。
 
ソーンが出先から持ち帰った本を、「昔は本がたくさんあった」と言いながら、わが子をいつくしむようになでるソルが印象的。
 

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失ったものはもちろん本だけじゃない。本物の食べ物もだ。あらゆる天然の食材は、エリートでもめったにお目にかかれない超高級品。

 
いい感じに職権を乱用するソーンが、サイモンソンのところから持ち帰った本物のレタス、本物のリンゴ、本物のセロリ、本物の牛肉を見て小躍りせんばかりに感激ひとしおのソル。ソルはソーンのために腕を降るって、本物の料理を振る舞う。その時、いつも使っているプラスチックのナイフとフォークではなく、引き出しにしまってあった本物のナイフとフォークを出してきてソーンに使わせるあたり、深い愛情を感じる。慈しむ「息子」であり、育てたい「未来」なんだろうな。 
 

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 お気に入りをもう一つ。
「面白いなあ」と思って好きなのが、この作品内での「女の取り扱い」。
 
なんと女は「家具」として扱われているこの発想。個人用と建物用があるらしくて、ヒロイン的な女は殺される富豪サイモンソンの部屋に付属する家具なの。だからサイモンソンが死んでも何も関係がない。彼女の所有者は建物の所有者だし、部屋つきの家具だから当然そのままその部屋にいつづける。まだ新しめ(若い方)だし、次の入居者が気に入ってくれたし。もう少し年を取るか、気に入られなくなるまでは大丈夫かな。
 
こういうの、怒る女性っていっぱいいるんだろうけど、私は好きだな。すごく面白いと思った。だって別によくない? フィクションだし。フィクションは自由な方がいいよ。
 

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そしてラストへの導入、ソルの決断。

哀しく美しいシーン。映像もすごく美しいと思う。

映画が始まってからずっと、あえて色彩を抑えているのか全体的に色味が乏しくて、いうなれば「煮物の色」。別の言い方をすれば「競馬場にいるおじさんの色」。煮しめたような、薄汚れた、人生の色。

それが一転、色彩豊かに、目の前に美しい地球が広がる。

70年代のフィルムだから画質は荒い。4Kとか8Kとか言っている今だけど、そういう画素数とかとは全然関係ない。そういうのとは違うんだ、この美しさは。フィルム映画には、というよりフィルムそのものに「文学」がある。
 

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この映画のテーマを藤子・F・不二雄の『定年退食』(1973)との類似を指摘して、藤子がパクったみたいに言う向きがあるみたい(映画の原作「人間がいっぱい」が1966年作品だからかな)。

私は子供の頃から藤子・F・不二雄のファンだから、どっちも別々に観て、読んで、知ってる。盗作だなんて全く思わなかったから、そういう意見があるって知って、ちょっと意外だった。

まあ、人口爆発と食糧不足がテーマだからかもしれないけど、別に「似ている」とは思わなかった。こういう社会的テーマはみんながトライしていいと思う。別に誰かの専売特許じゃあないでしょ。

それより私は、同じ藤子・F・不二雄の、『モジャ公』(1969-70)に出てくる、「ジュゲム三番星フェニックス」のエピソードと類似していると思った(もちろんパクリとかそういう意味ではなく)。不死身の惑星に生きる人々の、最後の決断が似ている。

どちらも10代の私にいろいろと考えさせてくれた、名作なのだった。
 
 
 ⤵ 藤子・F・不二雄の『定年退食』はこちらに収録されています。
 

子供向けと侮るなかれ。
この『モジャ公』もおすすめ。
藤子・F・不二雄作品の中では地味な扱いを受けているけど、実に深いテーマがちりばめられていて傑作です。