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古い映画感想ブログです。驚くほど忘れてしまうので備忘録として。

【映画】「會議は踊る(1931)」 ~されど進まず~ ドイツが誇る喜劇映画~

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題名 會議は踊る 
監督 エリック・シャレル
出演 ヴィリ・フリッチュ、リリアン・ハーヴェイ、コンラート・ファイト
上映時間 95分
制作年 1931年
制作会社 ウーファ
制作国 ドイツ
ジャンル モノクロ、オペレッタ、喜劇、映画音楽、30's 
 

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映画音楽も有名なオペレッタ映画。1814年「ウィーン会議」中のロシア皇帝と手袋店の売り子の恋物語。
 
ウィーン会議というのは、ナポレオン・ボナパルト失脚後にヨーロッパ中の代表が集まって開かれた会議で、何ヶ月経ってもなんの進展もなく「会議は踊る、されど進まず」と揶揄されたことで知られる。物語は、その会議のためにウィーンを訪れたロシア皇帝アレクサンドル1世と、パレード中に自分に花束を投げつけてきたウィーン娘と恋に落ちる、という話。
 
すごく面白かった。古い映画にはハズレがないなー(厳選されて生き残ってる作品だから当たり前)。有名な作品で名作として名高いから、もっと格調高い文学的な作品なのかと思いきや、一転喜劇なのだった。楽しい、可笑しい、ウキウキワクワク、終始笑顔でいられる、そんな映画だった。
なにかとお堅いイメージのつきまとうドイツおよびドイツ映画ですが(冗談を言わない説ある)、その先入観を吹き飛ばすこと請け合い。
ヒトラー大躍進中の頃の映画でもある(2年後くらいに首相就任)。
 
***************** あらすじ ******************
時は1814年、ウィーン会議真っただ中。会議に集まる国賓たちは遅々として進まない会議に嫌気がさしていたし、議長のメッテルニヒ宰相はわざと会議を遅らせようとベッドの中で遅い朝食を取りながら、来賓や使用人の会話を盗聴して喜んでいた。いよいよ明日はロシア皇帝が到着するという大事な時だが、メッテルニヒには気がかりがひとつあった。街の手袋店の売り子が、国賓が到着するたびに店の宣伝文句入りの花束を投げつけて、店の営業活動に余念がないのだ。
 
「ウィーンで最高の手袋は羊飼いの娘のマークの当店で!」
 
メッテルニヒは何度も自分の秘書ぺピを送り込んで忠告していたが、ぺピは当の売り子クリステルに惚れていて全く効果がない。今度はロシア皇帝が来ると知ったクリステルは、今回も店の宣伝文句入りの花束を投げつけようとやる気満々。
いよいよロシア皇帝が到着。クリステルが満を持して花束を投げつけると花束は皇帝を直撃。全然気にしないロシア皇帝だったが、なんとこれが爆弾騒ぎとなってクリステルは投獄されてしまう。
 
クリステルは「むき出しのお尻にムチ打ち25回の刑」に処せられることになるが、ペピの働きが効を奏して、皇帝自らがクリステルを救いに現れる。皇帝は自分のために催されるバレエには影武者を行かせ、自分はクリステルと街の酒場にしけこむ。ロシアのコインに描かれた皇帝の肖像を見て、目の前にいる男が皇帝自身であることに気づいたクリステルは驚いて帰ろうとするが、皇帝はクリステルを離さないのだった。
 
ロシア皇帝が恋敵となってしまったぺピ、一夜にしてシンデレラとなり王女気分のクリステル、皇帝に会議に参加して欲しくないメッテルニヒ。ぺピの言う通り皇帝はプレイボーイなのか確認しようとクリステルは舞踏会に出席し、皇帝(の影武者)はメッテルニヒの差し金で希望者(すごい長蛇の列)とキスをするチャリティーをするはめになる。思惑通りナポレオンの永久追放を宣言したメッテルニヒは、その直後ナポレオンがエルバ島を脱出しフランスに上陸したとの知らせが入り、舞踏会は終了。みなが去る中、メッテルニヒはひとり立ち尽くす。
 
とっくに舞踏会を抜け出していた皇帝とクリステルは、最初に訪れた酒場でイチャイチャしていたが、そこへナポレオン脱出の知らせが届き、皇帝も帰国していく。酒場の楽隊が歌う『唯一度だけ』がクリステルを慰めるのだった。 
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 主人公の手袋売りの娘をやったリリアン・ハーヴェイがとってもチャーミングで可愛い。なんかシンディ・ローパー似で(っていうかそのもの)、くるくる表情が変わって仕草や動作が愛らしく、とてもコメディエンヌなのだった。メッテルニヒの秘書ぺピとの掛け合いは可愛くて可笑しくて微笑ましい。さっさとぺピから皇帝に乗り換えようとするところも、お調子者って感じでまるで憎めない。
まわりのモブキャラの売り子のなかには彼女より顔立ちはきれいな子も混じってそうだが、やはりこういったチャームには勝てないのだった。
 

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やたらとノリが軽いロシア皇帝と、教養もなければ髪の毛もないお馬鹿な影武者。ちゃらい皇帝なんだ、これが。重みゼロ(悪口ではない)。
 
盗聴だけでなく、手紙の盗み読み(封筒ごと光に透かして読むらしい)まで自らするメッテルニヒ宰相。まあ必要なことなのかもしれないが、自らやる上にどっちかっていうとゴシップ大好きな感じが笑える。
 
そのメッテルニヒ役がコンラート・ファイトだった ( ゚Д゚)オドロキ。
このブログの第一回目に取り上げた『カリガリ博士』のチェザーレ役の人だよ。チェザーレはメイクばりばりだったから分からなかった。
 

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「カリガリ博士」のチェザーレ

 

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ロシア皇帝の側近役のでぶっちょさんも、なんか憎めないチャーミングな俳優さんだった。ほんとかわいいの。で、ほんとでぶっちょなの。あんなお腹の出方ってある?ってくらい、マンガのような体型。ダニー・デビートみたいな位置付けなのかなあ? 似てはいないけど。 

 

そして白眉は映画中盤、クリステルが皇帝の差し向けた馬車に乗って別荘へ向かう長回しのシーンが素晴らしい。ここでクリステルはかの有名な『唯一度だけ』を歌いながら迎えに来た馬車で行くのだが、ウキウキと無邪気に嬉しそうに歌うクリステル、祝福する街の人々、市場の活気、橋の下で語らう恋人たち、ボートで川遊びをする人々、釣りをする人、川辺でピクニックをする人々、川で洗濯をする女たち、フォークダンス?に興じる子供たちが次々とパノラマのように通りすぎて行く。若々しくて幸福感に溢れ、ウキウキ、キラキラ、場面が輝く。
 
別荘に着いてもクリステルの幸福感はまだ終わらない。別荘の豪華さに目を奪われ、くるくる、ころころ動き回る。使用人たちにちょっかいをかけ、噴水にもちょっかいをだし、ペットの猿に挨拶して、クローゼットの衣装に喜び、ベッドで跳び跳ね、多幸感で一杯。幸せが溢れる溢れるという感じ。
 
その間流れる『唯一度だけ』は、ああ、やっぱり名曲で、無条件で楽しい気分になる。7分くらいあるのかな、長いシーンだけど、クリステルが嬉しいのが私も嬉しいから、一気に入り込んで一緒に楽しくなれる。すばらしかったー。また映画音楽CDでも買おっかなー。
 

まだあるぞ。終盤の舞踏会とキスのチャリティーの裏で、会議中のメッテルニヒらが舞踏会の音楽(『唯一度だけ』)に合わせて椅子をゆりかごみたい揺らして遊んでる、そして最後は椅子だけがゆらゆらと踊っているという、かなりシュールななかなかのシーンがあるけど、これはやはり「会議は踊る、されど進まず」と揶揄された件をパロってるんだろうか。面白いなー。
 

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最後に酒場の楽団が歌う『唯一度だけ』が哀愁があって、日が落ちて楽しかった一日が終わっていく、子供の頃の夕焼けみたいな感じ。悪い気持ちじゃあない。今ここにいるのにノスタルジーを感じた、夏の日の思い出、って感じ。
 
『この世に生まれて ただ一度 このすばらしさ まさに夢 
ほんの束の間 この世に 天から降りそそぐ まばゆい黄金の光 
この世に生まれて ただ一度 きっと これは夢 まぼろし
そう 人の一生に ただ一度 二度とかえらぬ 美しい思い出
そう 人の一生に ただ一度 春のつぼみ ほころび 花ひらくとき』  
挿入歌『唯一度だけ』より
 
クリステンと皇帝は束の間の恋に終わるけど、でも大丈夫。ペピとすごくお似合いだもの。可愛くって最高のカップルだと思った。
 

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