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古い映画を中心に、本、仕事・・・etc. 驚くほど忘れてしまうので備忘録として。

【映画】「バニー・レークは行方不明(1965)」 ~「いる」ことを証明できますか~

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題名 バニー・レークは行方不明
監督 オットー・プレミンジャー
タイトル・デザイン ソール・バス 
原作 イヴリン・パイパー「バニー・レークは行方不明」(1957)
出演 ローレンス・オリヴィエ、キャロル・リンレー、ケア・デュリア、ノエル・カワード
上映時間 107分
制作年 1965年
制作国 イギリス
ジャンル 60's、サスペンス、オープニング

 

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************** あらすじ ****************
アメリカから若き女性とその娘が英国に引っ越してくる。新聞記者の兄がいて、妹の面倒をとても見ている感じの優等生的な兄で、兄妹仲がとてもいい。妹は到着して即、娘のバニーを幼稚園へ送り届ける。先生とあいさつをしようとするが先生に会えず、仕方なく給食のおばさんにバニーのことをお願いして、自分は引っ越しの片付けの続きをしに家に帰る。家にはすぐ隣に住む大家がいて、こいつが「自称モテモテの詩人」で、その実とてもモテそうにない汚めのオッサンだ。犬かなんか飼ってるくせに、他の住民は飼っちゃいけないとか言う身勝手な男で、しかも酒飲みでいやらしく、なかなか家から出て行ってくれようとしない。なんとか買い物に行くのにかこつけて大家と別れ、バニーのお菓子なんかも購入して帰宅し、昼過ぎバニーを迎えに幼稚園へ行く。ところが他の子どもたちは続々と帰っていくのに、バニーだけが見当たらない。幼稚園の先生に聞いても、バニーを見た人は誰もいない。捜査に当たる警察は、徐々にバニーの存在自体を疑い始める。バニーはどこへいったのか、そもそもバニーは本当に実在するのか、というサスペンス映画。
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ミステリー界では有名な、1965年の英国映画「バニー・レークは行方不明」を見た。原作も映画も評判を取っていながら、日本公開時には大してヒットもせず、ビデオやDVDにもなかなかならず、ようやく円盤化されたと思ったらすぐに絶版となり(企画ものだったのかな)、今では中古やレンタル落ちでしか手に入らない。原作本も全然日本語訳されず、ゼロ年代に入ってからようやく翻訳されるという、不遇の扱いを受けている作品。邦訳版も早川さんのところのポケミス・シリーズという渋さ。


この映画の肝は、バニーが登場しないところにある。映画の後半になるまで画面にバニーが現れず、母親の発言の中でのみバニーの存在が語られる。ぬいぐるみが出てきたり、歯ブラシも2つあったり、服なんかも映るし、母親がお菓子を買ったりなんかはしているのだが、本人が出てこないのだ。しかも英国についてからバニーを「見た」人が誰一人いない。大家さんも見ていないし、幼稚園の給食のおばさんも見ていないし、学校の先生も見ていない。バニーの実在を証言してくれる他人が誰一人いない状況。しまいには兄までが「妹には空想癖があって、子供のころにバニーと名付けた空想の友達がいた」などと言い出す始末。バニー捜索を担当する刑事もバニーの存在自体を疑いはじめ、母親は四面楚歌だ。これは怖い。実存が疑われ、証明するすべがない中で「いる」ということを証明する困難さ。今までにもこういう映画は時々あって、そのたびに「ああこわい」と思う。哲学的な恐怖。結論を言えば、四面楚歌の中で唯一ひとりだけ、幼稚園の屋根裏みたいなところに住む元経営者の婆さんが、「お兄さんは変わっている」と言い出して、徐々に兄のサイコぶりが明らかになっていくのだった。

 

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でも結論から言えば、映画自体は評判ほどではないと感じた。幻の作品っていう感じだから、期待値が高かったかもしれない。

オープニングから中盤にかけては十分期待して楽しめる。私は「映画は開始の5分で決まる」と思っているのだが(実際は~10分くらいかもしれないけど)、今作はまずオープニングが私好みで素晴らしい。真っ黒いバックで始まって、男性の手が伸びてきて黒バックを破るとクレジットが現れる仕組み。スタイリッシュで印象に残る出だし。やっぱりタイトルバックとかオープニング・クレジットがいいと俄然期待が高まる。そして物語が始まって、英国らしい澄んだ映像と清潔感あふれるセットや街並み、ファッションなど、終始お洒落な感じでいい。バニーの実在がミステリーになるアイディアも面白い。 

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・・・だけど・・・肝心のクライマックスになったとたん、興味が薄れてしまった。お兄ちゃん、急に豹変しすぎ。唐突すぎて説得力がない。演技力と言うより演出がややご都合主義っぽかったかな。前半であまりにも怪しさを出すと「ええ!この人が!」みたいな驚きがなくなるからか、そういう演出を控えたせいでちょっと急すぎた。「兄ちゃん、どした、急に」って思って、ちょっと滑稽ささえ感じてしまった。

かといって面白くない映画なわけではない。やや控えめながら、まあ普通に楽しめる作品だと思う。


あとは、特筆すべきは俳優陣かな。刑事役にローレンス・オリビエ! そして兄役にキア・デューリア!! 

キア・デューリアといえば「2001年宇宙の旅」のボーマン船長ですよ。今作のキア・デューリアはすごく若くて「青年」という感じ。実際20代後半ぽい。さわやか優等生系、チャーミングでなかなかのハンサム。一方ボーマン船長ってもっと寡黙クールで大人なイメージだから、さぞかし数年たっているのかと思いきや、3年?くらい? 「2001年宇宙の旅」の方が後なのだが、もっと時間が経っていそうな、そんな印象。ま、ボーマン船長は最後のしわくちゃ爺さんの印象も強いから、それに引きずられているのかなあ。寡黙な役だった気がするし。

ローレンス・オリビエは・・・なんつうのかな、これといった演技をしているようにすら見えない、貫録の存在。いるだけで説得力&存在感。渋い。たぶん軽い感じで引き受けて、さらっと流して終わらせたんでしょう。オリビエ程の俳優が気合を入れて役作りをするような作品ではない。

 

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⤵ Amazon Prime Video でも見られます。