〇島尾敏夫『死の棘』読む
久しぶりの晴天。青空が気持ちいい。
BRILは12円台に突入。IEO時の開始値からほぼ半分になった。私はもちろん、初期に20円台前半で買っているのでだいたい半分の価値になった。これは10円割れがあるかも。ブリクリもいよいよ過疎化が激しい。スカラー不足で誰も掘ってくれなくなった。まだしばらくは止める気はないから、運営の手腕を観察したい。
『死の棘』まだ読み始めだけれど面白い。冒頭の数行から引き込まれる。
私たちはその晩からかやをつるのをやめた。どうしてか蚊がいなくなった。妻もぼくも三晩も眠っていない。そんなことが可能かどうかわからない。少しは気がつかずに眠ったのかもしれないが眠った記憶はない。十一月には家を出て十二月には自殺する。それがあなたの運命だったと妻はへんな確信を持っている。「あなたは必ずそうなりました」と妻は言う。でもそれよりいくらか早く、審きは夏の日の終わりにやってきた。
この出だし、夏目漱石の『吾輩は猫である』の出だしを思い出した。あちらは短短と始まってだんだんセンテンスが長くなるから、こちらとは少し違うのだけれど、短いセンテンスで畳みかけるようにテンポよく運ぶから、読んでいて気持ちがいい。
これは作者の島尾敏夫の実体験をもとに書かれた私小説で、妻と結婚して10年間のあいだ複数の女性と浮気を重ねた主人公と、それを10年間耐えてきた妻の物語。
耐え続けてきた妻がとうとう限界に達し、執拗に主人公を責め続ける。そのしつこさ。
私の母がこうだった。生きてるけど。父の方が先に死んだ(20年前)。とはいえ母はさすがにこの小説ほどはひどくない(と思う)。
小説の方の妻は、自殺をほのめかしたり心中をほのめかしたり、頭がおかしくなって「水をかけてください」とか「頭を殴って」とお願いし、主人公はその都度バケツで水を何度もかけたり、往来で妻の頭を殴り続けたりしなくてはならなくなる。
今ならあっと言う間にDVで捕まりそうだが、このケースはどうなんだろう。私はこの二人は(まだ読み始めたばかりだけど)こういう状況になっても、離れがたい関係なのだと思うけど。人間は複雑だ。
うちの母は自殺とか心中とか殴れとか、そういうことは言わず、ただただ言葉で執拗に父を責め続けて飽きることがなかった。それでも二人は離婚を望まず、ずっと揉め続けていた。人間の心は複雑だ。
でもこれが形を変えた愛だとは全く思わない。ただ人生の一部になってしまっただけだと思う。
父が死んで20年経つけれど、母は今でも同じことを何度も繰り返し話し続けて40年間ずっと父を責め続けている。それもつい昨日のことのように。
父に問題があることは明白なのだけど、それにしてもしつこい。ダメ男とはいえ父もしんどかっただろうし、私もしんどい。もう解放されたい。
ドル円は値動きがイマイチ。149円台に乗せたけど利確するほどではない。ペソとランドを少しだけ取れて、今のところ10,000円くらい。上出来。