エムログ

名作から駄作まで、見た映画の感想を正直に片っ端から記事にする、古い映画感想ブログです。驚くほど忘れてしまうので備忘録として。

【映画】「宝島(1950)」 これを見るなら原作を読め!

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※ タイトルバックがDVDになくて・・・仕方なく「ベンボー提督亭」の看板で我慢することにしました。



題名 宝島
監督 バイロン・ハスキン
脚本 ローレンス・E・ワトキン
原作 ロバート・ルイス・スティーヴンソン『宝島』1883年
出演 ボビー・ドリスコール、ロバート・ニュートン、ウォルター・フィッツジェラルド、デニス・オディア、ベイジル・シドニー、ジェフリー・ウィルキンソン
上映時間 96分
制作年 1950年
制作会社 ウォルト・ ディズニー・プロダクション
制作国 イギリス、アメリカ
ジャンル 冒険、古典、海洋


 


原作は最高。映画はどうかな? 作品の概要と簡単なあらすじ


かの有名なロバート・ルイス・スティーヴンソン原作『宝島』を、ウォルト・ディズニーが実写化したのがこの映画。ディズニーが実写映画を製作するのはこれが初。

「海賊といえば片足で、肩にオウムを乗せている」という典型的な海賊のイメージの元祖が、この『宝島』に出てくる海賊ジョン・シルバーで、ディズニー・ランドのアトラクション「カリブの海賊」にも、よーーーく探すとジョン・シルバー ”らしき” 人物がいるという情報もある。

原作は、まるで登場人物たちと一緒に冒険しているような、そして読み終わると登場人物たちが愛おしくて昔懐かしい仲間のように思えてくるような、そんな人間味あふれる登場人物ばかりが出てくる魅力的な小説で、世紀の傑作名作と言える。

脇役の水夫たちも、とにかく酒ばっか飲んで文句ばっか言って、そのくせ簡単にジョン・シルバーに丸め込まれたりなんかもして、「しょうがないなあ」「まったくしょうがない奴らだなあ」と思いながらも愛さずにいられない、そんな原作。

映画はいかに。


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物語は、少年ジム・ホーキンスが海賊フリント船長が残した”宝を埋めた島の地図” を、偶然にというか必然にというか手に入れて、それを大地主のトリローニさんや医者のリブシー先生と一緒に探しに行くという話。トリローニさんが雇ったスモレット船長や、片足のジョン・シルバーなどと共に、イスパニオーラ号で宝島を目指す。

トリローニさんとスモレット船長があんまりうまくいっていなかったり、スモレット船長の右腕的なアローがジョン・シルバーの策略にはまって死亡したり、ジョン・シルバーをすっかり信頼していた少年ジムがジョンの本心を知って傷ついたり、色々なことがありながらも一行は宝島に到着して、宝を巡ってトリローニさん側とジョン・シルバー側が敵対して殺しあったり、たった一人で5年間も島で生き延びていたベン・ガンと出会ったり、ジムはジムで孤軍奮闘してジョンのたくらみを阻止しようと冒険したりもして、最後は宝をすべて手に入れ帰国する、といった話。

監督は『宇宙戦争(1953)』を撮ったバイロン・ハスキンが担当。彼にとってはこの2作が代表作になりそう。この『宝島』がそこそこヒットしてからの『宇宙戦争』の流れ。


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原作を読んだ人ならわかるやつ



ぶっちゃけた話、小説の方が10倍は面白かった。

でも配役に関しては原作の良さを損なわないし、おおむねいい配役だったと思う。ストーリーも母親の存在がだいぶ省略されていたり、宝の地図のやり取りとか、ラストシーンとか、「テンポよく端折ってるな」というぐらいで、「大幅改変! これじゃない感!!」 みたいなことにはなっていなかった。



ちょっとポンコツなトリローニさんのこと

 

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言うでしょ


まず私の好きなトリローニさんは、お腹が出ている恰幅のよさの ”まあるい” シルエットはイメージに合っていた。

トリローニさんは「ものすごく口が軽いけど、その自覚がないキャラ設定」になっていて、原作でも映画でも、医者のリブシー先生に「私が恐れるのはただひとつ あなたの口が軽いことだ」とかなんとか、だいぶ手厳しく言われても、トリローニさんは「私はそんな人間ではなーい」みたいに自信満々で「自分は口が軽くない」と断言しているから自覚はまったくない。

でも実際は、船を操縦してくれる水夫を募集するのに宝の地図の事をべらべら喋り、ジムやリブシー先生が合流したときには町中に知れ渡っていて、「喋っている!」「あんなに釘を刺されていたのに喋っている!!」と、読者である私がびっくりするほど。

航海に出る直前もスモレット船長に「船長である私がこの航海の目的を知らされていないのに、町中の人間が宝探しの話題で持ちきりです。私はそのようなことを好みません」とはっきり言われてしまうのに、ここでもトリローニさんは「私はしゃべっておらん」ときっぱり断言していた。そんなに喋ってたら、そりゃあ横取りしようと反乱も起こりますがな。しょうがないお方だ。

でもそういうとこも憎めないし、実は射撃の名手だし、後半は度量の大きなところも随所で見せて、おしゃべりの自覚がないことも含めて「やはりお育ちのおよろしい方は違うなあ」と思わせる、世間知らずのいいとこの子出身な感じが漂っているのだった。

 

 

いぶし銀のスモレット船長のこと

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美学の人、スモレット船長



最初はトリローニと意見が合わなかったスモレット船長も私の贔屓のひとり。

個人的にスモレット船長はもっと痩せてるイメージだったけど、映画では結構がっしり系だった。四角い感じ。でも決して悪くなかった。

ジョン・シルバーが超個性を発揮するのでやや地味な印象を受けるけど、彼は偉大な人物ですよ。リーダーの鏡みたいな。

船乗りとしての美学や哲学、志を持っていて、責任感が強く、目的を達し船員たちの命を守る責任を全うするためには雇い主に対して厳しく意見を言い、要求を突きつけることも厭わないという、そんな男で格好いい。

教養もなければ知性もない、字も書けないような大勢の水夫たちが愚かな振る舞いをしつづける中、船乗りの中ではひとりインテリ感を漂わせ、いろいろと不満が多くて我慢しつつも、使命を全うしようと最後まで振る舞い続ける。

上陸後もテキパキと指示して、仲間を適材適所に配置して、自分が負傷しても強い心を保ち、仲間への指示を続けるスモレット船長は◎! 

シロウト感丸出しのトリローニさんに対して、プロフェッショナルのスモレット船長。どっちも必要なキャラクターなのだった。



はいきた、海賊の中の海賊 ロング・ジョン・シルバーのこと


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 そしてW主人公の一角、ロング・ジョン・シルバー。演じるのはロバート・ニュートンという俳優。

私は寡聞にもこの俳優を知らなかったのだが、どうやら私はロバート・ニュートンを最低2度は見ているらしい。まず、脇役として出演していたらしい『ガス燈(1940)』。そしてなんと『八十日間世界一周(1956)』でインスペクター・フィックス役を演じていたらしいのだ(!)

フィックス刑事だったのお!! まるでピンとこない。『ガス燈』では脇役だったらしいからピンと来なくても平気だが、『八十日間世界一周』のフィックス刑事といえば主役級じゃないですか。しかも私は記事もあげているというのに・・・しかも記事を読み直してみたらフィックス刑事にはまるで触れておらず、だからもちろんキャプチャ画像もない(だからクリックしなくていいです)。

【映画】「80日間世界一周(1956)」 ~見どころはフォッグとパスパルトゥとエンディング~ - エムログ


うーん。結構出ずっぱりの役なのに、あんまり顔を覚えていなかったなあ。フォッグとパスパルトゥばっかり見ていたからかもしれんなあ。いかんなあ。


しかし! 今回のロバート・ニュートンは物凄く印象に残ることは間違いない。

船乗りらしく日に焼けた褐色の肌、重そうな恰幅の良い体格。海賊帽をかぶって、肩には緑色のオウムをとまらせ、片足で松葉杖のハンデをものともせずにエネルギッシュに動き回る。ガシガシ!ガシガシ!という感じで、体力が有り余っているかのように信じられないほど精力的。

エネルギーに満ち溢れているのはそれだけじゃない。表情も相当エネルギッシュ。おでこに皴を寄せ、目を大きく見開いたり、片側だけ眉をひそめたり、顔中の筋肉をこれでもかこれでもかと動かして大げさにしゃべる。

人懐っこそうに見せておいて、たびたび眉毛をおでこごと動かして右上を見て何かを画策しているよう。分かりやすいといえば分かりやすい演技w


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このジョン・シルバーという男は大変興味深い人物に描かれていて、とにかく多面性がある。

自分の目的のためには手段を選ばないタイプで、プライドも美学もそっちのけ、あっちについた方が得だと思えばあっちにつき、こっちについた方が得ならこっちにつく。

愛想が良くて、人付き合いがよくて、おしゃべりで、口がうまくて、人を使うのが抜群にうまい。目的のためにはおべんちゃらも平気で言って、少年のジム相手にすらおべっか使って自分の味方につけようとする。子供相手だからといって甘くみたりせず、しっかり心をつかんで、いいように動かそうとするのだ。

そんなことして大丈夫? 社会的信用を失わない? 結局みんなに嫌われて、最後は損をするんじゃないの?

そんな心配はノー・プロブレム! だって最終的に宝は独り占めするからさ! とりあえず船を操縦しなくちゃいけないから生かしておくけど、必要なくなった時点で ”全員さよなら” しちゃえばいいし!

だから利用できるものならなんでも利用し、自分の身を守るためなら昨日までの敵に頭を下げることも全然平気。脳みそをフル回転し、表情までも目まぐるしく変えて、くるくるくるくる態度も変える。邪魔なやつは殺しちゃうのに、ふとしたときにジムを見つめる表情は慈悲深かったりして、良い人なのか悪い人なのか分かりづらい。

なのにどういうわけか、ちっとも憎めない。途中で「シルバーがんばれ。いいぞ。好き勝手やって、宝も独り占めして、どこか誰も知らないところに逃げちゃえ! いけー!」って応援したい気持ちになってくる。

彼には「自由」であってほしい。どこまでもどこまでも自由で。

そんな風に思わせる魅力が、「海賊といえばジョン・シルバー」「フィクションに出てくるあらゆる海賊の基礎」になった所以なんだろうなあ。


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主人公ジム少年を演じたボビー・ドルスコールくんのこと


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そして主人公の少年、ジム・ホーキンスについて。

原作だと年齢設定がされていない(いなかったと思う)けど、映画では12~13歳くらいに見えるし、演じているボビー・ドリスコールが当時実際13歳くらいだからまさにそういう年齢の設定なのだと思う。

原作はもともと子供向けに連載されていた小説のようだから、もし自分が小学生くらいでこの小説を読んでいたら、主人公のジムは頭もいいし、相当勇敢だし、現代の小6とか中1では絶対に無理と思えるような冒険や決断をして、大人顔負けの大活躍するので、ものすごく憧れただろうなと思う(しかも最後は大金持ちになるんだし)。

原作は大人になったジムが昔を回想しながら書く手記の体裁で、しかも私が最初に読んだ版だと「私は・・・なのだった」「私は・・・なのだ」みたいになっていたので、ちょっと表現が大人びすぎると感じてた。翻訳の問題で、私が読んだ版が古いだけかもしれないが。


・・・ところでこのジムを演じた1937年3月3日生まれのボビー・ドリスコールくん。初期のディズニー映画の顔だったようで、子役として常連だったみたい。ところが大人になって人生が転落していくという、まさに「子役あるある」な展開に。

ドラッグ(ヘロイン)が原因で31歳で死んだらしいけど、ホームレスとなっていたので身元不明の遺体として取り扱われていたんだとか。行方が分からないボビーを探していた両親が、”ウォルト・ディズニー”という最強のコネを使ってFBIに働きかけて調べてもらい、数か月後にようやくその身元不明の遺体がボビーであると分かったらしい。

どうやら成長して子役として使い物にならなくなったあと、普通の公立高校に通い始めたけど、そこでは ”ディズニーの子役だった” ことで馬鹿にされ、それがきっかけで17歳の時に手に入りやすかった(!)ヘロインに手を出し、成績はみるみる低下。

そして時は移って1968年。31歳になっていた彼は、遺体となっていたところをふたりの少年に発見される。そばには空のビール瓶と宗教パンフレットが散らばっていたらしい。薬が元で、心不全で死亡したとのこと。彼は身分証明書を持っていなかったらしく、誰も身元が分からなかった。それでNY市になる乞食用の墓に埋葬されたらしい。その翌年、先にも書いたが、母親がディズニースタジオの力を借りて探した結果、ようやく身元が判明したんだとか。


お金があったとはいえ、いきなりのヘロイン。なんて典型的な転落人生。遺体のそばに宗教パンフレットが散らばっていたというのが、いかにも救いを探していたようで悲しみを深める(たまたまあっただけかもしれないけれど)。

ああん、とても他人事とは思えない(私はもちろんクスリはやってないけど、酒ならありうるかもしれないし、孤独死はもうガチだし)。


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哀しみの人、ベン・ガンの取り扱いのこと

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この顔


他にもベン・ガンが個人的にぜんぜんイメージじゃなかったのに驚いた。ものすごい白髪の爺さんなの。ザンバラ髪の、落ち武者みたいな髪型で。

しかもなぜかこのベン・ガンが動く時だけ「ぴょーん」とか「ビヨーン」とか、なんとも言えないフザケタ効果音が入って、やたらとコミカル担当みたいにされてしまっていた。そんな役柄でしたっけね。私は原作は割とシリアスに読んだんだけど・・・

ベン・ガンは、フリント船長にたったひとり島に置き去りにされて、5年もの歳月を誰と口を利くこともなく、孤独の暗闇の中で、もう二度と故郷に帰ることもないのだろうなあと不安にさいなまれながら、ヤギを捕まえて食いつないできた孤高の人なのである。言葉だって忘れちゃうつうの。

それなのに動く時に「ぴろろ~ん」「びろろーん」と、まるで歩き始めの幼児が履く「きゅっ、きゅっ」と音が鳴るサンダルみたいな音を立てながら軽やかに動き回るベン・ガンに、私は悲哀を感じた。かなちい。


うっかりすると日本にいながらにして無人島生活をしているような気分になる私。休みの日は誰とも口をきかないし、最近は職場でもひとり黙々とデータをまとめたりなんかしてばっかりいるからか、喋りが下手になってきた。思ってることが上手に喋れなくなった。ていうか、なんも考えてない説すらある。

そんな私はほんのちょっぴりだけベン・ガンの気持ちが分かるような気がして、「その演出はないんでないの」と、ちょろっと不愉快になったのだった。

 


映画を見た結論


ということで、映画を観た結論は、一言で言えば

「原作を読め!」( `ー´)ノ


以上。




 


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