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【本】 林眞須美はやってないな(和歌山カレー事件)『「毒婦」和歌山カレー事件 20年目の真実』感想

 

 

 

 『「毒婦」和歌山カレー事件 20年目の真実』田中ひかる/著 を読んだ。


先月まで、あの有名な和歌山カレー事件の犯人と目される死刑囚、林眞須美に冤罪説があることを知らなかった。ネットの記事で、この本の冒頭にも書かれている「状況証拠のみで直接証拠なし、自白なし、動機も不明」でありながら有罪になっていたこと、旦那の林健治の「あいつはやってない、金にもならないことをやるような女ではない」と証言しているらしいことを知って、妙な説得力を感じ、俄然興味がわいたので本を買ってみた。私は他の本を読んでいたため母に先に読ませていたのだけど、ちょうど「少子高齢化&人口減少後の日本の未来」系の2冊を読み終わって切りが良かったので今日読んでみた。

読んでみてあまりにも無茶苦茶な有罪判決ぶりに驚いた。こんなことが許されたら、私だって何かの有罪にされかねない。アンラッキーが三つくらいあって、私が嫌われてたら有罪じゃん。

おかしなことが沢山ありすぎてどれを書くか迷うほどだけど、事件後最初に発見されたという青酸化合物はどこいっちゃったの。それからやたらとメディアで証言した16歳の少年目撃者はどこにいっちゃったの。彼が犯人だとは思わないけど、彼の証言を真に受けたのは幼稚すぎるんじゃないの。

とにかく眞須美は日ごろの行いが悪かったせいで、近所の平凡かつ善良な住民たちと、マスコミと、日本中の視聴者に犯人にされたとしか言いようがない。失態続きの和歌山警察からすれば打ってつけの人材が目の前にいたってなもんだろう。眞須美があまりにも犯人役にぴったりだったもんだから日本中の人たちを敵に回してしまったし、これじゃあ誰だって太刀打ちできない。

しかしこの頃の和歌山ってどうなってるの。事件多すぎ。


ところでうちの母は、私の目にはあまりにも普通の人すぎて悲しくなる時があるのだが、同じこの本を読んだ感想も私とはだいぶ違うようだった。

母曰く、
①保険金詐欺はやっているから眞須美は真っ白ではない。
②結婚した長女に獄中から手紙を書いて、長女の旦那の親の逆鱗に触れ関係が一層こじれてしまったことについて、こんなことをすべきではないし、してしまうような女なのだ。
この2点を感想として真っ先に述べて、「だから捕まっても仕方がない(誤解されても仕方がない)」というような趣旨のことを言外に漂わせていたのだが、

私に言わせれば、
①保険金詐欺をやっていても、それとカレー事件はまったく関係がないのだから、カレーはカレーで考えなくてはいけない
②たとえ若干(だいぶだとしても)非常識な人間であったとしても、やってないのであれば事件だけを切り離して考えなくてはいけない
と思う。正直言って母が言っていることは私にとってはどうでもいいことばかりだ。

保険金詐欺だって、他人にヒ素を盛って殺しかけたりしているわけじゃなくて、仲間内でヒ素を飲んだり飲ませたりして何度も何度も保険金をだまし取るという、いわば自作自演ばかり。引く方も引かれる方も仲間でやってる当たり屋みたいなもんだ。仲間でグルになってるだけだから、誰にも迷惑をかけていない(保険会社は別)。

それにしても日本の保険会社はどうなってるの。こんなに同じ人物が何度も何度も保険金を請求してきたら、いくらなんでも怪しいでしょう。でも彼らは合計8億円をだまし取っているのだった(健治によれば)。


この本は情に流されすぎない程度に、眞須美や健治の人間としての情の深さやユーモラスさ、親としての子供たちへの愛情の深さを描いていたが、繰り返しになるけど作者はそれほどウェットには書いていない。

そして私もウェットな人間ではないから、たとえ眞須美や健治が世の中を舐め切ったカップルだとしても人間的な魅力があるよね、などという事実に流されて同情したり共感したりする方でもない。二人が意外と魅力ある人間であるのか、クソなのかはどうでもいいことで、カレーに毒を入れたのか入れてないのかだけをちゃんと明らかにしてほしいと思うだけだ。

うちの母は感情移入しすぎ。作者は別にそれで読者に同情させようとしているわけではないぞ。

とはいえ二人はやっぱり遠くから見る分にはたいへん興味深い、ダメ人間だけど人間的魅力を感じたことは事実だけど。


まあとにかく「動機がない」林眞須美に対して、和歌山県警には無理くり眞須美を有罪にする「動機がある」。和歌山県警、やったな。こんなこと許されないので、弁護団や支援する会の人たちはぜひ頑張ってもらいたい。思念だけ送ります。

  

 

 

 

 

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