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名作から駄作まで、見た映画の感想を正直に片っ端から記事にする、古い映画感想ブログです。驚くほど忘れてしまうので備忘録として。

【映画】「エンドレス・サマー(1966)」 永遠の夏は見つかった? サーフィン映画の原点にして頂点。すべてはここから始まった。

 

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題名 エンドレス・サマー 
監督 ブルース・ブラウン
制作 ブルース・ブラウン
出演 マイク・ハインソン、ロバート・オーガスト
ナレーション ブルース・ブラウン
音楽 ザ・サンダルズ
上映時間 95分
制作年 1966年
制作国 アメリカ
ジャンル ドキュメンタリー、サーフィン、海、夏



エンドレス・サマーを直訳すれば ”終わらない夏”。

でもこの映画は "終わらない夏" を描いた映画ではなくて、夏は当然終わってしまうから、夏を追いかけて世界中を旅する二人のサーファーの話。

フィクションではなく、実話とかいうのでもなく、これはドキュメンタリー映画。


映画を見ていても分かるのだが、実はこの映画はたった三人で撮影されている。

監督、制作、編集、ナレーションのブルース・ブラウンと、出演しているサーファーの二人であるマイク・ハンソン、ロバート・オーガストの三人。

監督をしたブルース・ブラウンは、映画の撮影手法をちゃんとは勉強していなくて、本を読んでの独学と、実際に撮影してみるという実践を経て本作の撮影に挑んだらしい。

出来上がった本作はハリウッドに見向きもされず、田舎の映画館で上映に漕ぎつけたところ評判となって、結果的には制作費がたったの5万ドルのところ、なんと興行収入は2000万ドル以上となり、21世紀になっても伝説のサーフィン映画として語り続けられる名作になった。


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作風はかなりリラックスした雰囲気で、堅苦しいところは全くない。軽いタッチで、ちょっとふざけてんのかなと思うくらい。屈託なくて、女の子スキダナー、とか。

大勢が集まる飲み会などで、モニターにさりげなく映しているだけで絵になるオシャレな映画でもある。


私は二人がカジュアルな ”サーフィン旅行” をしようとしているのに、飛行機に乗る姿は「スーツ姿」というところが「ああ、懐かしいなあ」と、この頃まだ生まれてもいないのに思った。

そうなんだよね。海外旅行って、かしこまってジャケットを羽織ってするものだったんだよね。男性ならジャケット、女性も一張羅の晴れ着を来て。日常に対する非日常、ハレとケですな。


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1960年代初頭の秋。終わってしまう夏を惜しんで夏を追いかけ、ロバートとマイクの二人はカリフォルニアからアフリカのダカール、アッコラ、ラゴス、南ア・ケープタウン、ダーバンと波を乗り継ぎながら、ゆく先々で様々なサーファーとも出会って、東へ東へ進んでいく。

世界中を旅してサーフィンをするから画面はサーフィンのシーンが続く。

二人や数々のサーファーたちが披露する技と迫力のサーフィン映像の素晴らしさは言うまでもなく、アフリカの大自然も記録される。サバンナの野生動物たち、砂漠、そして海と波。


だけど私が感動して涙さえ出るのは、それら ”野生の王国” 的な映像ではなくて、二人が出会ったアフリカの人々の姿だった。


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今と違ってインターネットなどはない。しかも1960年頃となるとネットサーフィンはおろか、本当のサーフィンですら世界的スポーツでもない時代。庶民がサーフィンで遊ぶほど、まだ世界は豊かではなかった。

外国の情報を得る手段は新聞、本、雑誌、TV、それから映画くらい。今と比べたら”即時性”なんて言葉はないに等しい。

たぶん音楽とか映画とかスポーツのような娯楽に関して、最も詳しくて、いち早く時代を反映していたのは、毎月出る雑誌が一番だったのではないかな。新聞だとマニア向けの情報は手に入らないし、TVは余程の人気が無ければ取り上げてくれない。ジャンルごとの各専門雑誌、総合雑誌、それから映画が、海外の流行を知る一番の手段だったと思う。

そしてそういう状況は、インターネットが普及する前の90年代くらいまでは続いていたと思う。


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だからこの映画に出てくるアフリカの人達は、サーフィンなんて見たことも聞いたこともなかったと思われるし、実際映画でもそのように描かれていた。

漁や農業をして、まだその日暮しに近い生活を送っていたアフリカの人たちは、ある日突然、今まで見たこともない白人がやってきて、見たこともないやり方で波に乗るのを見て大騒ぎ。彼らだって漁をしたりして波に乗るのは得意だけど、あんな板切れ一枚で華麗に波に乗る姿は見たことが無い。

それであっという間に関心の的に。子供たちは自分でその辺から板切れを持ってきてサーフィンのまねごとを始めるし、大人たちも負けじと一緒になって波に乗ろうとし始める。

運動神経の発達した彼らの中には、早速乗りこなしつつある者も出てくる。その辺はさすがとしか言いようがない。


なんか・・・、そういうアフリカの人たちの姿を見ていたら、少し涙が出てきた。

私も彼らのように、知らないことがいっぱいあった時代を思い出して、海外のことがいつも新鮮だった時代を思い出して、それで懐かしかったのかもしれない。


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流行ったかなあ



そのあと二人は南ア・ケープタウンを回って、ダーバンを経由する。このあたりは白人がたくさん住んでいるから、まあまあサーフィンをしている人もいる。

ダーバンあたりのパーフェクト・ウェイブはひとつの波が延々と続くから、ひとつの波に45秒も乗っていられる。長い長いライド。

アパルトヘイトが正気とは思えないほど加速していく、ちょっと前なのかな。その辺は特に触れられていなかったので、よく分からない。


その後二人はオーストラリア・パースに到着。なんと言っても大自然のオーストラリア。良い波を期待して。

だけどそこは意外にも大した波はなく、しかもサメに波乗りを阻まれてしまう。そしてメルボルンでもシドニーでも、彼らはいい波に全然会えなくて、とうとうニュージーランドまでやってくる。でもやっぱり期待通りの波には出会えなかった。


二人は今度は逆に ”波はない” と言われるタヒチへやってくる。珊瑚礁で波が阻まれてしまうので、波が陸まで届かないのだ。

本当かどうかを調べた二人は、パペーテで ”イン・アンド・アウト” と呼ばれる両方向から乗れる波に出会う。いつもの、沖から陸に向かってくる波だけでなく、陸から沖に向かう方にも波が立つのだ。

行きも帰りも乗れる波。

すごく楽しそう。


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沖に向かって乗れる波



最後はいよいよ期待に胸を膨らませてハワイに到着。最高の波と永遠の夏がそこにはある。

ベトナム戦争が本格化するのは、まだ少し先のこと。

そんな若きアメリカの、古き良き青春時代。


映像も、流れるサーフミュージックも、すべてが美しい。



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☟ こちらはCD。かなりいい。

 



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