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割と自己流で生きています

【AI化で無くなる仕事】え、医療事務ってなくなるの? いーや医者の方がヤバイと思う件


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mです。

ここ数年、AIの発達で無くなる職業がでてくるというのが話題だけれど、それに関してひとつ言っておきたいことがある(なんだかさだまさしみたいな出だしになった)。

そのAIに奪われる可能性が高い職業というのが様々予測されているのだが、そのリストの中には私が日ごろから「これはなくなるのでは」と思っていて、「まじでヤバいのでは」と思っている職業が入っていないのでぜひ書いておきたいと思った(少なくとも私が知る限りはこれを上げているのを見たことが無いので)。

10年20年後とかに「私ずっと思ってたんですよ〜」とか「あの時書けばよかった、、、」とか思うの、嫌なので。


 



AIに仕事を奪われる可能性が高い仕事とは

 

例えば野村総研は「AIで奪われる可能性が高い仕事100」というものをネット上に掲載している。

https://www.nri.com/-/media/Corporate/jp/Files/PDF/news/newsrelease/cc/2015/151202_1.pdf
(参考:こちらのサイトの方が見やすいかも
「AI drops」https://www.bigdata-navi.com/aidrops/681/ )


これによると2030年前後を目安に、単純作業は無くなる可能性大、極めて要注意とのことで、資料整理、文字入力、機械類操作のような仕事をしている人は赤信号らしい。

そしてAIに仕事を奪われる可能性が高い人の割合が、英国の35%というのに対して、米国と日本はそれぞれ47%、49%と約半数の人がAIに仕事を奪われてしまうと予想されていた。

1/3でも十分なのに、半数というのは結構インパクトが大きい。二人にひとり。1/2の確率。

算数レベルをしつこく繰り返してしまったけど、これが2030年時点の予測だから、この予想を信じるとすればあと10年切っている。今のところ私の近くでは感じられないけれど、これからジワジワとヒタヒタと迫ってくるのかしら(キャー)。


その、AIに奪われる可能性が高い職業100の一部を転載すると、

 

引用:AIに奪われる可能性が高い職業100
IC生産オペレーター
一般事務員
鋳物工
医療事務員
受付係
AV・通信機器組立・修理工
駅務員
NC研削盤工
NC旋盤工
会計監査係員
加工紙製造工
貸付係事務員
学校事務員
カメラ組立工
機械木工
寄宿舎・寮・マンション管理人
CADオペレーター
給食調理人
教育・研修事務員
行政事務員(国)
行政事務員(県市町村)
銀行窓口係
金属加工・金属製品検査工
金属研磨工
金属材料製造検査工
金属熱処理工
金属プレス工
クリーニング取次店員
計器組立工
警備員
経理事務員
検収・検品係員
検針員
建設作業員
ゴム製品成形工(タイヤ成形を除く)
こん包工
サッシ工
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 ・
 ・
引用元:野村総研 

https://www.nri.com/-/media/Corporate/jp/Files/PDF/news/newsrelease/cc/2015/151202_1.pdf

 

 と、やたらと具体的な職業名が延々と続く(水産ねり製品製造工というのもあった)。
ちなみにこれはあくまでも50音順らしくて、職をAIに奪われる可能性の高い職業順ではない、と書いてある。

ヤバい順ではないとのことだけれど、私は現在「一般事務」であり、少し前まで「医療事務」だったし、医療事務は「受付係」でもあるので、偶然とはいえこれらが上から5つ目までに3つとも入っているのは気分がいいものではない。えーって感じ。異論ある。


AIに奪われにくい仕事とは


そしてAIに奪われにくい職業100というのも併せて発表されている。

 

引用:AIに奪われにくい職業100
アートディレクター
アウトドアインストラクター
アナウンサー
アロマセラピスト
犬訓練士
医療ソーシャルワーカー
インテリアコーディネーター
インテリアデザイナー
映画カメラマン
映画監督
エコノミスト
音楽教室講師
学芸員
学校カウンセラー
観光バスガイド
教育カウンセラー
クラシック演奏家
グラフィックデザイナー
ケアマネージャー
経営コンサルタント
芸能マネージャー
ゲームクリエーター
外科医
言語聴覚士
工業デザイナー
広告ディレクター
 ・
 ・
 ・
引用元:野村総研 

https://www.nri.com/-/media/Corporate/jp/Files/PDF/news/newsrelease/cc/2015/151202_1.pdf

 

 と、50音順にやはり延々とつづく。

このように、それが軒並みクリエイティブ系となると、なんだか私は「け!」とか思ってひがみたい気持ちが出てくるのだけれど、「まあそうだろうな」とも思うので仕方がない。

それでは実際に事務員をやっていて「危機」を感じているかといえば、私はそうでもない。そうでもないというか、全く感じていない。

まあわたし馬鹿だし、半分もの人が職を奪われるのなら「なーんだ、ふたりに一人ならみんなじゃん。よかったー、安心した」と思ってしまうような感じの楽観的馬鹿だから、それでリアリティがないのだとは思う。

でもそれだけじゃなくて、そんなふうに「すぐに」その仕事が「なくなる」なんてことにはならないんじゃないか、とも思っているからだと思う(”私の仕事” はなくなるかもしれないが)。



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わろてんのか



医療事務に関していえば、そんなに簡単になくならないと思う


”仕事を奪う” と言われて ”その職種がなくなる” みたいなニュアンスで語られていることも多いAI化だけれど、そんな簡単に一つの職種が ”なくなる” なんてことはあるんだろうか。

AIに奪われる仕事の特徴は、人よりもAIの方が正確にできる、作業効率が上がる、の2点を満たしている職種らしく、これを聞けば妥当な線だと言える。確かに、お弁当工場で毎日8時間ひたすら梅干をご飯の上に乗せ続ける作業、みたいな仕事があるとしたらそれは機械がやった方がいいと思う。きっとミリ単位で正確に置いてくれるだろうし、人間側もストレスが無くていい。


でも、例えば私が今まで携わってきて、今後AIに速攻で奪われることになっているらしい医療事務の仕事は、意外と多岐にわたっているし結構複雑で、しかも年々その役割は拡大していくばかり。そんなに単純な仕事ではないと思うのである。

確かに昔と比べれば、当院にも「自動受付機」はあるし、「自動精算機」もあるし、「電子カルテ」もとっくに導入済みだし、診療報酬を計算する「レセコン」は電子カルテよりも前から使っている(キーボードが「あいうえお順」だった)。それにレントゲン画像をフィルム化しなくなったから、それらを片付ける作業もなくなった(これが重くて大変なのですよ)。

でもそれで仕事がなくなったり、仕事が減って楽になったかといえば、そんなことはぜんぜんなかった。

うちの病院に限って言えば、10年前と比べて患者数はせいぜい1.5倍になったにすぎないのに、医療事務に携わる職員数は3倍になった。

軽く考えれば、自動受付機を導入すれば機械で受付してもらえるのだから受付職員を減らせると考えるのは自然だし、精算機を使ってもらえれば会計窓口に殺到する患者が減り、会計窓口がいらなくなると考えるのは自然だと思う。

でも相手が人間である限り「窓口に誰もいない」などということにはならないし、より丁寧に贅沢に人員を配置して接遇力を上げようとするので、結局受付の人数は増えているのである。うちの病院だと、窓口に立つ人数が以前の3人前後から、今は5~6人立つようになった。


受付だけでなく会計を計算する人員も、患者1000人の会計を4人で出していたのが、患者1500人を10人で出すようになった。おかげで丁寧にカルテを確認しながら会計を出せるようになり、算定ミスが減って増収にもつながっていると思う。


このように仕事のあらゆる局面で、より良く、より早く、より正確に役割を果たそうとするので、多岐にわたる医療事務の役割すべての作業に、より手厚い人員配置をするようになり、すると職員数は増えていく一方なのである(うちの病院に限って言えば)。

 

 

 

医療事務のAI化には、さほどの期待を持てない現実。


ではAI化に期待できるかというと、今のレベルでは人間の代わりを担うレベルには達していないと思う。

例えば今現在、病院受付に対応していると謳って販売されているらしい某受付ロボットの機能などを見てみると、受付機としては今現在どこにでもある据え置き型の受付機とそう機能的にはあまり変わらなさそうだ(ロボットの方は歌ったり踊ったりできるらしいが)。

もちろん近い将来、患者が次にどこに行ったらいいかわからないとか、場所が分からないとか、「面会に来たんですけど」とか、そういった案内は十分にこなせるようになりそうだ。受付ロボットの能力を超えたら人間を呼んでもらえばいい。それくらいになると多少は役に立つような気がする。話題性もあるし、出来ることも増えていくだろうから一台導入してロボットの発展に寄与してもいいかもしれない。


受付ロボット以外でも、例えば診断書の作成など、テンプレート通りに書けるものはボタン一つで印刷できるようになれば大変ありがたい。今も診断書作成支援ソフトはあるのだがまだまだ煩雑で、ある作業が減っても別の作業が増える感じだったので導入を見送った経験がある。

ほかにも紙書類のスキャンとかデータ入力なんかも、スキャンさえすれば内容を自動的に読み取ってExcelに落としてくれたりする、なんてことがあるといいな。うちでも現在OCRを導入しようとしているが、どの程度使えるのか興味深い。ついでに学会などへのビッグデータ構築のためのデータ収集&報告も自動的にやってもらいたい。

外来などの電話予約もWebだけでなく電話でもやってもらいたい。外来予約に複数の検査予約もセットになっていたりすると、すべての予約が空いていなければならずパズル化してすごく大変だ。だからそれもAIさんにやってもらいたい。一瞬で候補日を複数用意することができるだろうから、極めてAI向きと言える。

なんなら算定もAIにやってもらいたい。診療報酬請求って、意外と難しいんですよ。ただレントゲン撮ったらいくら、採血したらいくら、というわけではない。複雑怪奇な算定本を丸暗記してもらって、こういう時はこう、ああいう時はああ、これは2か月おきでないと算定できないとか、これを算定したらあれは算定できないとか、そういうイレギュラーもうまいこと会計を出してもらいたい。そんでちゃんと請求が通るようにしてね。でも弱気はダメよ。最大限攻めて請求してね。

で、人間は請求が戻ってきた場合だけ担当するっていうのはどうかしら。

これくらいのレベルになれば、人間の人数を減らしてもやっていけそうだ。


でもやっぱり ”医療事務がなくなる” なんてとても思えない。AIさんがこれをやってくれるなら、「じゃあその分、いままでやりたくてもできなかったことをやろう」となるだけで、人数は減らないと思う。



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いやだからその顔w



コメディカルの中でも、看護師と理学療法士は絶対に大丈夫


病院には医療事務以外の職種もたくさんあるが、いずれ半減する可能性がある職種は実際あるとは思う。

うちの病院だと薬剤師とかちょっとヤバい気がする。訳の分からない薬の名前とかジェネリックの名前とかを覚え、飲み合わせとか、副作用とかを覚えるなんて人間業じゃないと思うくらい凄いけど、ああいう暗記系はAIには絶対に勝てないと思う。

でもうちの病院だと外来で処方する処方箋なんて、昔は薬剤師が全部チェックしていたのに数年前から全く関与しなくなったから、「なんだ必要ない仕事だったのか」ということが明らかになった。

でも入院患者への説明は必要かな。基本は一方的に必要なことを伝えるだけだから、それこそAIロボットさんがやればよさそうだが、患者が ”ちゃんと理解していそうかどうか” とか ”指示通りにちゃんと飲めそうかどうか” とか、そういうのはAIさんに確認できるのかしら。


でも私が見たところ、看護師と理学療法士は、AIに変えるのはまず無理だと思う。可能だとしても相当先の未来のことではないかと予測している。

看護師は、患者が看護師に何を求めているかといえば、癒しとか安心感なので、かなり高度でAIにはまだ難しいと思う。ゲームの『Detroit: Become Human』に出てくるアンドロイドくらいのレベルになれば、むしろアンドロイドの方がずっと安心できるかもしれないが。せめてアシモフの『われはロボット』くらいのレベルは欲しい(ロビーは別)。


理学療法士の方は、あれは患者の肉体に具体的にアプローチして根治治療をしようとしている人達、あるいは患者に自分で根治治療させようとする職種だから、これはAIには出来ないと思う。

患者に触らず患者の目も見ず、問診と検査結果とレントゲンばかりを見て診断する医者は結構いるが、理学療法士はそういうわけにはいかない。患者の肉体をさわって、機能を確かめて、どこが機能不全を起こしているのか突き止めて、その原因にアプローチしていき、患者自らそれを正すように指導していくという職種なので、これは人間でないと出来ないと思う。


看護師と理学療法士の歴史は詳しく知らないが、私の見てきた経験で思うのは、この二つの職種は(たぶん)医者とは成り立ちがまったく違うのだと思う。



むしろ医者が一番ヤバイと思う件


さてようやく本題なのだが、私はこの15年間病院で働いてきて、内緒だが内心では医療事務よりもAIに仕事を奪われる確率が高いのは実は ”医者” なんじゃないかと思ってる。


医療事務的な仕事のひとつに医師事務作業補助者というのがあって、医者の代わりにカルテを書いたり検査オーダーを出したりする職種があるのだが、

数年にわたって診察室にべったり張り付き、医者の代わりにカルテを書いてきた経験から分かったことのひとつは、西洋医学系の医者の仕事というのは基本的に暗記と統計学(確率論)だということだ。

医者ごとに、こうだったらああ、ああだったらこう、こうだったらこの薬、ああだったらあの薬、という具合に「黄金のパターン」があって、毎日毎日診察室でカルテを書いていると、医者の指示より早くカルテを書き終えることができたり、医者の指示より先に次の準備ができるようになる(それも割とすぐに)。

次の展開が予測できるようになるので、医者が振り向いた時はもう準備できてますよ、みたいなことが可能になる。

レントゲンやMRIを見ただけで手術になるか分かるし、処方で終わるのか処置をするのか、だいたい分かるようになってくる。もちろん手術や処置、注射などの手技は技術が無いので行えないが、検査の要不要といった判断や、その結果から下す診断や、どういった処置をするかなどに関してはある一定レベルで出来るようになってしまうのだ。


当然医師免許を持っていない者が医療行為をすることは犯罪だし、「犯罪だよ」などと言われなくても責任を負えないから、誰かを診断したりすることは決してない(声を大にして言っておく)。

でも、特に大した勉強をしなくても、毎日毎日やっていると、それくらいにはなれてしまうのは事実だし、それくらいでないとこちらも務まらないのである。毎日やるということは、それくらいのパワーがあるのである。


とはいえこちらはパターンをまねているだけなので、その師匠となる医者のレベルに応じた判断ができるようになるだけだから、師匠のレベルが高いとこちらも自然と高度なまねができ、師匠のレベルが低いと自動的にこちらのレベルも低くなる。


するってえと、レベルの高い医者の治療パターンを先ほどの某受付ロボットのようなAI端末に入力すれば、患者が自分の症状をポチポチボタンを押して入力していくと高いレベルの診断結果が出てくる、処方箋も出てくる、みたいなことが結構可能だと思う(ロボコンのガンツ先生みたい)。


☆ガンツ先生! 懐かしいなー



それでパターンから外れた患者や重症患者の場合は人間の医者に会ってね、みたいな。

あるいは看護師にAI端末を持たせて問診すれば顔色とかも見てくれるし、なお安心だ。看護師なら医者一人の給料で2〜3人は雇えると思う。

手術だってSF映画などで見るように、典型的な症例だったらプログラミングでなんとかなってしまう時代が来るだろう。


だから私は思う。

前向きだろうと後ろ向きだろうと自ら研究して学会で発表したりもせず、学会誌に論文を掲載したりもせず、ブラッシュアップを怠って学会参加を怠ったり、最新医療の論文を読んだりすることもなく、昔からやっている自分のパターン通りの医療を行っている医者はたぶん大勢いると思う(他の病院に通っていた患者の話を聞いているとそう思う。いつの話してんだ、と。その医者時間止まってんなと)。

そういう医者は駆逐されていくと思う。


もちろん医師会が猛烈に反発するだろうから大事大事に守ってはもらえると思うけど、研鑽を怠ってパターン化している医者と傲慢な医者はAIにとって代わられていいと思う。

もし業界(医師会)の反発とかいう理由で医者がAI化から守られるのであれば、なんだかんだ言って医者の尻ぬぐいと面倒を見てあげている医療事務などの事務方だって、割と生き残るような気がする。


というのが現場からは以上です。

 

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