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割と自己流で生きています

自覚がない人 〜出世しない男の出世しない理由〜 

 

mです。
 
仕事している社会人にとって、仕事ができるとかできないとか、出世するとかしないとかって、とても大きな関心事だと思います。お金を稼ぐのはシビアなことなので、「私って駄目だなあ」とか「俺ってうだつがあがらないなあ」とか、痛切に感じている方も多いのではないでしょうか。
 
でも、自分で自分を「私って駄目だなあ」と思えている人は救いがあるかもしれません。自分の欠点や弱点が分かっていれば、改善の余地もあるというものです。
 
本当にダメな人は「自覚すらない」ということは大いに考えられます。「自分は評価されていない」とか「なんであいつが課長で俺はうんぬん」とか「あいつは上に気に入られてる」とか、人のせい何かのせい、そんなことばっかり言っていて、周りからは「そうじゃないんだよな。こいつなんも分かってないな。」と思われる人って、いますよね。
 
今回はそんな男が主人公の映画を見つけたのでご紹介したいと思います。

映画『喰いついたら放すな(1960)』の紹介


この『喰いついたら放すな(1960)』という映画は、一言で言うと「虚仮の一念岩をも通す」ということわざがぴったりな作品です。

原題は「Never Let Go」、上映時間は88分のイギリス映画で、監督はジョン・ギラーミン。彼はあのパニック災害映画の金字塔『タワーリング・インフェルノ(1974)』を監督した方です。出演は、リチャード・トッド、ピーター・セラーズ、エリザベス・セラーズ、ジョン・ベイリー、キャロル・ホワイト、アダム・フェイスなどです。

 
化粧品の営業をしているジョニーはなかなか成績があがらないセールスマンです。売り上げを伸ばすために無理して車を購入しますが、なんとわずか一週間足らずで盗まれてしまいます。車が無ければ成果をあげられないと思うジョニーは、妻の反対も押し切って執拗に車の行方を探し続けます。危険な目にあってもなんのその。その一念が、車を盗んだ街のチンピラや、車泥棒の親玉の愛人、果ては親玉のメドウズをじわじわと追い詰めていく、という話です。

ハラハラドキドキ系の犯罪映画で、サスペンスです(はずです)。


主人公ジョニーを演じたリチャード・トッドはスタートレックのカーク船長似、嫁のキャロル・ホワイトは整形したマイケル・ジャクソン似です。そしてピンク・パンサー・シリーズで有名なピーター・セラーズが車泥棒の親玉をやっています。

でもコメディ要素は微塵もありません。超シリアスな映画です。

 
 

映画『喰いついたら放すな(1960)』の感想


ストーリーから言って、もっと娯楽性の高い作品にすることもできるのに、そうしないあたりがイギリス流。ハリウッド映画なら主人公ジョニーがもっとヒーロー化して、超人的な推理力や運動能力を発揮し、車を盗んだ黒幕を暴力的に追い詰めて、最後は悪人をとっちめて車をとり返して大団円みたいな、えらくポジティブな作品になる気がします。

でもこの映画は全然そうならず、結構現実的な苦い映画です。

 
まずジョニーはいたって普通の、ごく身近にいそうな平凡な男で、正直言ってかなりの負け犬です。

彼は大して売り上げを上げられないうだつの上がらないセールスマンで、隣の机の同僚からは、かなりバカにされています。でもジョニーは全く意に介しません(気が付かないのかもしれません)。

ジョニーを馬鹿にしているその同僚は、統計学とかマーケティングみたいなことを勉強していて、成績も優秀です。地に足の着いた努力家なのです。

そんな同僚から「君も勉強してみたら?」みたいなことをジョニーは言われますが、「僕には必要ない」とか言って、全然興味を示さない。


なぜならば、「僕は車を買ったから」です。

車を買えば一発解決!! 自分の無能を棚に上げて、車を持てば、車さえあればもっと効率よく顧客を回れて、そうすれば成績が上がると思っています。

だけどその希望の車が盗まれちゃって計画が狂ってしまう。それで執拗に車にこだわって、パラノイアみたいなしつこさで車を盗んだ黒幕を追っていきます。


ジョニーが「ダメ男」な訳


ジョニーは結構いい歳をしていそうなのに自分のことがまるで分っていなくて、まだ自分が成功者になれると思っているんですよね・・・ 


いやジョニーさん、私が見たところ、車の有無はぜんぜん関係ありませんぜ。

あなたはまるで車が無いからセールスが上手くいかないように思い込んでいるけどそうじゃなくて、根本的な仕事のやり方や考え方が全くなっていないから、仕事が上手くいかないんですぜ。

たとえ車が盗まれたとしても、顧客とのアポイントメントに遅刻しちゃあいけません。ついこの前まで車はなかったんだから、車がなくてもちゃんと行けるでしょ。車がないならないなりに間に合うように行かなきゃいけません。

盗まれた車を自分で探すのもいいけれど、仕事に差し支えないように捜査をしなくちゃいけません。

なのに約束に一時間も遅刻して現れて、「時間に来なかったでしょ」と秘書的な中年女性にむげに断られたからと言ってキレる立場じゃありません。

断られて当たり前なのですよ。それが責任ある社会人というものです。


それに、保険にはケチらず入っておきましょう。


それから、賢そうに見せようとして伊達メガネなんかかけても賢くはなれませんよ。


結果が出せずに社長に怒られていましたが、社長が言っている「迅速」の意味は、移動速度のことではありませんよ。
 ※ ちなみにこの時のジョニーの「社長の言っている意味が1mmも分かっていない男の顔」と、社長の「ダメだなこいつ」みたいな表情が見ものです。



でもジョニーを応援したくなった理由


そんなダメなジョニーですけど、奥さんはジョニーの器を見抜いています。

で、ダメ男だけど愛してもいるから、これ以上危険なことをしてほしくなくて「あなたは、あなたがかけている伊達メガネみたいな男なのよ」と厳しいことを言って目を覚まさせようとします。

奥さんは「あなたがこれ以上車にこだわるんなら、家族に危険が及ぶ前に家を出ていくわ」と最後通牒のようなことを告げるんですけど、ジョニーはそれを振り切って命がけで車をとり返しに行きます。

ジョニーにしては出来すぎの、いい奥さんなんですよね・・・


でも、映画を見ていると、なんかジョニーは、自分がダメだって分かっていて、自分の今までのダメさ加減に自分で嫌気がさして、そんな自分を変えるきっかけとして、今回の車盗難事件にこだわっている感じもしてきます。

「これにこだわらないとオレはダメなんだ! もう俺にはこれしかないんだ!」みたいな。すがりつく感じ。

落ちていく人間の典型ですね。転落へのスパイラルが始まっている。



なのにどういうわけか私は、「行け!ジョニー! 男なんだから、たとえ命をなくすかもしれなくても、家族を不幸にするかもしれなくても、一度始めたんだから最後までやり通せ!」とか思っちゃいました。


ラストシーンを見る限りでは、たぶんジョニーはあんまり変わらなさそう。車もとり返せたけど、スカッと「よかったね!」みたいな終わり方じゃあない。

奥さんの、傷だらけになって帰ってきた旦那を見る目は悲しそう。「ダメな人ね・・・しょうがない、見捨てずに見守っていくか・・・(ため息)」そして抱きしめる、みたいに見える。

この奥さんは幸せになれるのでしょうか。己を知ってね、ジョニー。
 

 

 


☟車売るならカーネクスト