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【映画まとめ】『宝島』 原作と、映画 1934年版と1950年版まとめ【アニメ以外】


 


mです。今回はあの有名なジョージ・スティーブンスの小説『宝島』と、映画『宝島』新旧作品の比較記事です。原題はすべて「Treasure Island」。
 
実際の海賊ではなく、フィクションに出てくる海賊と聞いて「片足が義足で、肩にオウムを乗せているイメージ」を思い浮かべる方って、結構多いんじゃないかと思います。
 
それ、これに出てくる海賊ジョン・シルバーが元ネタですよ。
 
ちなみに片手がはてなマークみたいなフック状の義手になっている海賊は『ピーターパン』に出てくるフック船長で別物です。
 
映画化に関しては1934年と1950年に実写映画があります。1934年版はモノクロでMGM制作、1950年版はカラーでウォルト・ディズニー制作です。その後、日本やアメリカで何度もアニメ化もされています。特にディズニーは『マペットの宝島(1996)』とか『トレジャープラネット(2002)』とかも制作していますが、私はディズニー映画が嫌いなので見ることはないでしょう。
 
なのでここでは実写バージョンしか取り上げません。ご了承ください。

 

 

原作について

原作者はロバート・ルイス・スティーブンソンです。あの傑作『ジキル博士とハイド氏』(1886年出版)も書いたイギリスの有名作家です。

 
👇 ロバート・ルイス・スティーブンソン

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By Lloyd Osbourne - Project Gutenberg, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=7406279
 
 
彼はずっとエッセイを書くタイプの作家でしたが、ずっと連載していた小説『宝島』を一冊にまとめて1883年に出版し、これが彼の長編小説デビュー作となりました。そして大ヒットして流行作家の地位を獲得します。
 
『宝島』は元々子供向け小説で、さらに幼い子向けの本になっていたり、さらに幼い子向けには絵本になったり、アニメになったり、二次創作も枚挙にいとまがありません。
 
でも実は原作は大人が読んでも十分楽しめる作品になっています。登場人物たちがイキイキしていて、みんなを好きになれること請け合いです。まるで登場人物たちと一緒に冒険しているような、そして読み終わると登場人物たちが愛おしくて昔懐かしい仲間のように思えてくるような、そんな人間味あふれる登場人物ばかりが出てくる小説で、世紀の傑作名作の名に違わない作品です。

子供向けだし、お金出してまで読むのはどうかな、、、と思われる方は、Kindleで青空文庫版が出ているのでそちらをどうぞ(無料なので)。版が古いので、漢字が旧字体だったり表現も古かったりしてやや読みにくいかもしれませんが、ダタです笑 旧字体に慣れているとか、むしろその古い感じを楽しみたい方(そもそも古い小説ですし)は、無料の青空文庫版で十分だと思います。
 
たくさんの出版社や訳者で出版されていますが、私が読んだのは以下の二冊。
『宝島02 宝島』(青空文庫、佐々木直次郎/訳)
『宝島』(光文社古典新訳文庫 村上博基/訳)

 

 

 

 
違いを簡単に紹介すると、
旧字体でやや読みにくいけれども、海賊たちの無教養で乱暴な ”粗野さ” がふんだんに感じられる青空文庫版か、
新字体で現代人には易しく読みやすいけれど、海賊たちもやや上品になってしまっている光文社版か、
という感じでした。
※お求めになる時はAmazonレビューも参考にどうぞ。
 
脇役の水夫たちも、とにかく酒ばっか飲んで文句ばっか言って、そのくせ簡単にジョン・シルバーに丸め込まれたりなんかもして、「しょうがないなあ」「まったくしょうがない奴らだなあ」と思いながらも愛さずにいられない、そんな作品です。
 
 

おもな登場人物

ジム・ホーキンス・・・主人公の少年。自分が手に入れた宝の地図をもとに、大人たちと帆船に乗って宝探しにいくことになる。
リブシー先生・・・町の医者でインテリ。冷静沈着で、尊敬されている。
トリローニさん・・・町の名士でイスパニオーラ号の持ち主。きわめて口が軽い上に人を見る目が無いが、本人はまったく自覚が無い。
スモレット船長・・・船長。優秀で厳格な性格。美学もある。
ジョン・シルバー・・・ペットのオウムを肩にとまらせ、片足が義足でいつも松葉杖をついている。残忍で狡猾だが、不思議と憎めない。
ベン・ガン・・・フリント船長の宝島に取り残された唯一の生き残り。チーズが食べたくって仕方がない。
 
ビリー・ボーンズ・・・顔に傷がある男で、大きな箱を持ってジムの宿屋に現れる。彼はフリント船長の宝の地図を持っていて、それが物語の発端になる。
フリント船長・・・孤島に莫大な財宝を隠し、地図に残した伝説の海賊。今でも海賊たちに恐れられている。
ジムの母・・・女手ひとつで「ベンボー提督亭」を切り盛りして、息子ジムを育てている。
オウム・・・ジョン・シルバーが飼っているオウム

 
他にもブラック・ドッグとか、いいキャラがたくさん出てきますがとりあえずこれで大丈夫。この作品の登場人物たちはみな、個性的で魅力的な人物ばかり。みんなをみんなを好きになれるはずです。
 
 

原作のあらすじ

 
👇 フリント船長の宝島の地図

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By Robert Louis Stevenson - Original source: Beidecke LibraryTransferred from cs.wikipedia to Commons by Sevela.p using CommonsHelper., Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=31671838


宿屋の少年ジム・ホーキンスが、頬に傷のある泊客ビリー・ボーンズが持つ伝説の海賊フリント船長の宝の地図を手に入れます。その地図を狙う不気味な男たちの攻撃を母と共にかわしながら、医師のリブシーと大地主のトゥリローニさんに見せたところ意気投合し、宝探しに行くことになります。スポンサーのトリローニさんが船の手配と船員の手配を請け負うこととなり、三人はこの計画を秘密にすることを誓いました。

ところがトリローニさんは大変なおしゃべりで、宝探しの件があっという間に船乗りたちの間で噂になってしまいます。その上トリローニさんは人を見る目がなく、片足でオウムを肩に載せた海賊ジョン・シルバーを筆頭に荒くれ者ばかりを雇ってしまい、まともなのは船長のスモレットほか数人くらいでした。

案の定、密かに宝を独り占めしようとしていたジョン・シルバーが途中で反乱をおこして、ジムやスモレット船長派とジョン・シルバー派に分かれて対立。ジムら一行は窮地に立たされてしまいます。

問題を抱えながらも目指す宝島に到着。上陸後もスモレット船長派と、ジョン・シルバー率いる反乱側が闘争を繰り返しますが、ジムは自分で事態を打開しようと単独行動をとり島をさまよっていると、島で3年(5年?)も一人で暮らしている元海賊のベン・ガンと出会いました。

ジムはベン・ガンの小舟でひとり船に戻って残っていた船員どもと乱闘となり命の危険にさらされますが、危機を乗り越え仲間の元へ戻ります。すると仲間たちはジョン・シルバーの攻撃でボロボロでした。

一方、トリローニからまんまと地図を手に入れたジョン・シルバーは、手下と共に意気揚々と宝の隠し場所へ向かいますが、すでに穴は空っぽでした。ジョン・シルバーらが仲間割れを起こしているあいだにジムらも追いつき、宝の真相が発覚します。

その後島を出た一行は、それぞれの人生を歩み始めます。
 
 

特に重要キャラ、ジョン・シルバーについて

👇 NCワイスによるジョン・シルバーとホーキンス少年のイラスト

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By N. C. Wyeth - Transferred from en.wikisource to Commons by Billinghurst using CommonsHelper., Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=23076502


映画はどう転んでもスティーブンソンの『宝島』なので、多少カットされていたり、そのカットされている部分が違うくらいで物語自体はどちらも『宝島』です。

なので、新旧を問わず映画版の見所は、なんといってもキャラが立った登場人物たち。漫画みたいに個性的なキャラクターを、俳優たちが生き生きと楽しそうに演じているのを見るのが楽しいです。両方ともそういう映画になっています。


中でも『宝島』といえばこのお方、ジョン・シルバーが重要です。なので特にこのジョン・シルバーに関してはひと項目割きたいと思います。

総じてこのジョン・シルバーという男は多面性があって、大変興味深い人物に描かれています。

自分の目的のためには手段を選ばず、プライドも美学もそっちのけ、あっちについた方が得だと思えばあっちにつき、こっちについた方が得ならこっちにつく。

愛想が良くて、人付き合いがよくて、おしゃべりで、口がうまくて、人を使うのが抜群にうまいです。目的のためにはおべんちゃらも平気で言って、少年のジム相手にすらおべっか使って自分の味方につけようとします。子供相手だからといって甘くみたりせず、しっかり心をつかんで、自分のいいように動かそうとする。

そんなことして大丈夫? 社会的信用を失わない? 結局みんなに嫌われて、最後は損をするんじゃないの?

そんな心配はノー・プロブレム! だって最終的に宝は独り占めするからね! とりあえず船を操縦しなくちゃいけないから生かしておくけど、必要なくなった時点で ”全員さよなら” しちゃえばいいし!

そんなシルバーの心の声が聞こえてくるよう。だから利用できるものならなんでも利用し、自分の身を守るためなら昨日までの敵に頭を下げることも全然平気。脳みそをフル回転して、くるくるくるくる態度を変える。

なのにどういうわけか、ちっとも憎めない。邪魔なやつは殺しちゃうのに、ふとしたときにジムを見つめる表情は慈悲深かったりして、良い人なのか悪い人なのか分かりづらい。

最後は「シルバーがんばれ。いいぞ。好き勝手やって、宝も独り占めして、どこか誰も知らないところに逃げちゃえ! いけー!」って応援したい気持ちになってきます。

彼には「自由」であってほしい。どこまでもどこまでも自由で。


物語のラストでそんな風に思いました。そんな魅力がジョン・シルバーにはあるのです。

映画ではそんなジョン・シルバーを筆頭に、魅力的な登場人物たちがどのように描かれているかがポイントになってくると思います。
 
 

MGM制作『宝島(1934)』(原題:Treasure Island)

おすすめ度 ★★☆
『宝島(1934)』の監督とか演出とか
1934年版の監督は『オズの魔法使(1939)』とか『風と共に去りぬ(1939)』なども監督した名匠ヴィクター・フレミング。MGM制作、上映時間103分のモノクロ映画です。
 
原作にかなり忠実で、後述するディズニー制作版の『宝島』よりずっと原作通りでした。後述するディズニー版では大胆にカットされていてびっくりしたジムのお母さんが最初からちゃんと出てくるし、リブジー先生がボーンズに「そんなに飲んでると死ぬぞ」と警告したり、ボーンズがジムに「片足の男を見つけたら、こづかいやるから教えろよ」とジムを雇ったり、そういう原作でも前半の印象的なシーンをきちんと押さえてる感じ。上映時間はそれほど変わらないのにこちらの方が丁寧です。

 
個人的にはカット割りがすごく良かったです。特にエスパニオーラ号が航海に出てからの船員たちの動きを追ったカットが最高でした。
 
マストによじ登った船員たちを映すシーンが映画半ばに多く挿入されているんですけど、私は基本的にローアングルが好きなのですが、こちらは『市民ケーン(1941)』のような足元からの超ローアングルではなく、帆船のマストの高−−−−い所で作業している船員を撮影した結果、自然と物凄い仰望のカットになる。それを意図的に多く挿入している、という感じです。
 
もう首を直角に真上を見るかのようなアングルにやられました。これはかなり意図的に入れていると思われて、凄く私の気を引きましたね。大成功だと思います。
 
 
実はこのシーンまで誰が監督なのかを知らずに見ていたのですが、このエスパニオーラ号の仰望のカットを見て「は!!これは! 監督誰?」と思ってスタッフを見てみたらヴィクター・フレミングだったので、「くわー、才能ってやつぁ、やっぱ他のヤツたあ違うんだな」と凄く感じ入りました。
 
是非見てほしい演出です。


『宝島(1934)』ウォーレス・ビアリーのジョン・シルバー

👇 ウォーレス・ビアリー
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By MGM studio photographer - eBay, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=19887421


1934年版でジョン・シルバーを演じたのはウォーレス・ビアリーという俳優で、私が知る限りでは『ロスト・ワールド(1925)』でチャレンジャー教授を演じた人です。
 
さらにボクシング映画『チャンプ(1931)』ではアカデミー主演男優賞を受賞しています(ちなみにこの映画は1979年にリメイクされ、泣ける映画として大ヒットした『チャンプ(1979)』の元映画です)。
 
 
彼が演ずるジョン・シルバーは、あっちを見たりこっちを見たり、目をぎょろぎょろさせて顔中を動かして喋っています。表情が豊かで分かりやすいです。大きくて恰幅が良くて、”おじさん” っていう感じ。
 
ジョン・シルバーといえば、片足が義足で松葉杖をついているにも関わらずたいへんエネルギッシュで、松葉杖をものともせずに船の上を動き回り(帆船時代ですよ)、上陸してからもガシガシ活動し、闘ったり喧嘩したり山に登ったりと、ハンデを感じさせないフットワークの軽さが自慢です。
 
でもビアリーのジョン・シルバーは、そういう感じがあまりしなかった。ちょっと体が重そうでした。
 
言い方を変えればややおとなしい印象で、常識的な感じ。粗野さが控えめでインテリっぽい印象すら持ちました。もう少し破天荒さ、スケール感が欲しかったです。
 
 
でも子供との相性は良さそうで、ジムとの絡みは感動的。帆船の上で夕日をバックに泣かせるセリフを言い合ったりなんかして、感傷的な感じも悪くないです(後述します)。
 
そういえばこのウォーレス・ビアリー&ジム役のジャッキー・クーパーくんのコンビは、先述の『チャンプ(1979)』でのコンビでもあるのでした。
 
 
『宝島(1934)』ジャッキー・クーパーのジム・ホーキンス
👇 右側がジャッキー・クーパーくん(左はウォーレス・ビアリー)

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By MGM - Original text : eBaycard), Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=57771498


それにしてもジャッキー・クーパー演ずるジム・ホーキンスくんったら。
 
なんだかお尻がおっきくて、小さなおばちゃんみたいよ。外国にこんなお尻のおばちゃんいるよね、という。日本だとあんまり見かけないお尻。
 
このお尻のジャッキー・クーパーくんがジム・ホーキンスでいいんでしょうか。なんか原作とはイメージが違うような。原作はもう少し賢そうで、行動力もありそうで、キビキビしたイメージでしたが、このジムくんには肉体的にも頭脳的にも機敏そうな感じがしませんでした。なんか不満たれの甘ったれみたい。
 
 
でも、先ほどジョン・シルバーの項目のところでも少し触れたのですが、良いシーンがあるのです。
 
ジムはジョン・シルバーと出会ってすっかりシルバーが好きになっちゃって、シルバーの方は腹に一物持ってるんだけど、そうとも知らずに「航海が終わったら僕と一緒に住もうよ。ママと二人だし、潮風が吹き抜ける場所にあるよ」なんて言って、健気で子供らしくてかわいい。
 
ジョン・シルバーの方も、ジムを利用することは利用しているんだけど、それでもジムを可愛いと思ってることにウソはなくて、騙したり騙されたりするシビアな関係にもかかわらず、二人の間には何やら信頼関係のようなものがしっかりとあるみたいでした。
 
男の人たち、って感じがしてよかったです。見ていて気持ちがいい。
 
ジョン・シルバーからすれば、利害は利害。でも俺はお前の事好きだぜ、みたいな。困ったことがあったら飛んでくるぜ(嘘だけど)って。
 
そういうの嫌いじゃないです。
 
 
ところで話は一件それるようだけど、ちょっと前に『スーパーマン』の映画化の話がまた出ていて、今度はスーパーマンが黒人になるらしいです。ちょっとモヤっとしました。
 
黒人の人はこんな風にヒーローになってうれしいんだろうか。白人のヒーローを乗っ取るんじゃなくて自分でヒーローを生み出すべきだと思うけどね。まあカル=エルじゃない別のスーパーマンなのかもしれませんけど、だとしてもちょっとね。所詮、白人のおさがりじゃん。最近スーパーマンはゲイになったり、なかなか忙しいです。
 
なぜこんな話をしたかと言うと、実はジム・ホーキンスを演じた少年ジャッキー・クーパーくんは、なんと『スーパーマン・シリーズ Ⅰ~Ⅳ』に出てくるデイリー・プラネット社の編集長だったのでした!!
 
クラーク・ケントの上司ですよ。いやー、世間は狭い。言われてみれば面影があります。大人になって痩せたんですね。それにしても活躍していてよかったです。
 


👇 『宝島(1934)』はこのDVD-BOXに収録されています。




 

ディズニー制作『宝島(1950)』(原題:Treasure Island)


おすすめ度 ★★★
『宝島(1950)』の監督とか演出とか
監督は『宇宙戦争(1953)』を撮ったバイロン・ハスキンが担当しています。彼にとってはこの2作が代表作になりそう。この『宝島』がそこそこヒットしてからの『宇宙戦争』の流れです。ウォルト・ディズニー制作、上映時間96分、カラーです。
 
それまでアニメばかりを制作してきたディズニー社の実写映画初作品としても知られていて、ディズニー・ランドのアトラクション「カリブの海賊」をよーーーく探すとジョン・シルバー ”らしき” 人物がいることでも有名です(私も確認済みです)。
 
こちらディズニー制作版の方は、映画が始まるとすぐにブラック・ドッグが現れるという状態で、「お母さんの姿がない」という端折りっぷり。孤児並みというか、まるでジムがひとりで経営しているかのようなお母さんの抹殺ぶりがすごいです。
 
カラー作品になったのですが、そのカラフルさは目に痛いほどで、「とにかくカラーだったなあ」という感想。登場人物たちの描き方も濃かったし、カラフルさも濃い、ということで1950年版の方がインパクトがすごいです。
 
 
『宝島(1950)』ロバート・ニュートンのジョン・シルバー
👆 右側がロバート・ニュートンです



1950年版でジョン・シルバーを演じたのはロバート・ニュートンという俳優です。

私はこの俳優を知らなかったのですが、どうやら私は彼を最低2度は見ているらしかったです。まず、脇役として出演していたらしい『ガス燈(1940)』。そしてなんと『八十日間世界一周(1956)』でインスペクター・フィックスを演じていたらしかったのでした。
 
えー、フィックス刑事だったの!! ・・・と分かっても、まるでピンとこなかったです。『ガス燈』では脇役だったらしいのでピンと来なくても平気ですが、『八十日間世界一周』のフィックス刑事といえば主役級じゃないですか。私は『八十日間世界一周』が原作も映画も大好きで記事もあげてるのに気が付かなかった(しょぼん)。結構出ずっぱりの役なのに・・・私がフォッグとパスパルトゥのファンなので、二人ばっかり見ていたからかもしれません。

 
しかし! 今回のロバート・ニュートンは物凄く印象に残ります。見たら絶対に忘れないインパクト。
 
船乗りらしく日に焼けた褐色の肌、重そうな恰幅の良い体格。海賊帽をかぶって、肩には緑色のオウムをとまらせ、片足で松葉杖のハンデをものともせずにエネルギッシュに動き回る。ガシガシ!ガシガシ!という感じで、体力が有り余っているかのように信じられないほど精力的。
 
体形は1934年版のビアリー同様、どっしりした感じなのにこちらの方は機敏な印象。
 
表情も相当エネルギッシュ。おでこに皴を寄せ、目を大きく見開いたり、片側だけ眉をひそめたり、顔中の筋肉をこれでもかこれでもかと動かして大げさにしゃべる。人懐っこそうに見せておいて、何かを画策しているような表情。分かりやすいといえば分かりやすい、わざとらしいと言えばわざとらしい演技です。
 
もちろんニュートンはビアリーの演技を参考にしているのかもしれないのですが、ニュートンの方がハマっていたと思います。「ああジョン・シルバーって、実際いたらこんなんだったのかもな」と思いました。
 
 
『宝島(1950)』ボビー・ドリスコールのジム・ホーキンス

こちらでジムを演じたのはボビー・ドリスコールくん。
 
👇 ボビー・ドリスコールくん

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By NBC Television Network - eBay item photo front photo back, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=21421461

 

ドリスコールくんは、ジョン・シルバーを演じたロバート・ニュートンに負けじと芝居が臭いです笑
 
びっくりした顔とか、もう漫画並み。鼻とか眉間とかにシワをくっきり寄せて、見てるとギザギザの吹き出しで「ガアアアアン!!」とか「バアアン!!」とか効果音を入れたくなる。
 
でもその暑苦しさが二人そろってなのでバランスが取れていてあまり気にならないです。個人的にはジム・ホーキンスも1950年版の方がイメージだったかなあああ(ジャッキー・クーパーくんはお尻が重そうで・・・)。
 
 
 
ところでこのジムを演じた1937年3月3日生まれのボビー・ドリスコールくん。初期のディズニー映画の顔だったようで、子役として常連だったみたい。ところが大人になって人生が転落していくという、まさに「子役あるある」な展開に。
 
ドラッグ(ヘロイン)が原因で31歳で死んだらしいけど、ホームレスとなっていたので身元不明の遺体として取り扱われていたんだとか。
 
行方が分からないボビーを探していた両親が、”ウォルト・ディズニー”という最強のコネを使ってFBIに働きかけて調べてもらい、数か月後にようやくその身元不明の遺体がボビーであると分かったらしいです。
 
どうやら成長して子役として使い物にならなくなったあと、普通の公立高校に通い始めたけど、そこでは ”ディズニーの子役だった” ことで馬鹿にされ、それがきっかけで17歳の時に、手に入りやすかった(!)ヘロインに手を出し、成績はみるみる低下。
 
そして時は移って1968年。31歳になっていた彼は、遺体となっていたところをふたりの少年に発見されたそう。そばには空のビール瓶と宗教パンフレットが散らばっていたらしく、薬が元で心不全で死亡したとのこと。
 
彼は身分証明書を持っていなかったらしく、誰も身元が分からず、それでNY市にある乞食用の墓に埋葬されたらしい。その翌年、母親がディズニースタジオの力を借りて探した結果、ようやく身元が判明したんだとか。
 
お金があったとはいえ、いきなりのヘロイン。しかも ”手に入りやすかった” ときたもんだ。なんて典型的な転落人生。遺体のそばに宗教パンフレットが散らばっていたというのが、いかにも救いを探していたようで悲しみを深めます(たまたまあっただけかもしれないけれど)。

 
悲しい話だ。


片や身元不明の遺体のボビー・ドリスコールくん。片やデイリー・プラネットの編集長になったお尻のジャッキー・クーパーくん。お尻で判断しちゃダメですね。


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新旧 共通:そのほかの登場人物について

その他の登場人物もいい味だしてますが、分けるほどではないのでまとめてご紹介。
 
ベン・ガンのこと
まずは島にひとりで取り残されていたベン・ガン。
 
どちらも白髪が長髪化してて歯は抜けてるし、やせっぽっちで落ち武者みたいな、実際5年も無人島でひとり生活していたらそりゃあそうなるよね、という風貌です。それはいいんですけど、結構漫画チックなキャラクターにされちゃってて、教養はなさそうだし、人は良さそうだけど間抜けな感じが強調されていました。

1934年版のベン・ガンは、念願のチーズを手に入れて、ひとり甲板でしゃがんで、まるでスイカをかじるかのように巨大チーズにかぶりついていました笑 ちょっとかわいかったです。

 
しかし1950年版に至っては、ベン・ガンが動く時 ”だけ” 「ぴょーん」とか「ビヨーン」とか、なんとも言えないフザケタ効果音が入って、やたらとコミカル担当みたいにされてしまっていました。ディズニー節なんでしょうか。しかも目があっちゃこっちゃ見ちゃってて、イッっちゃってるヤバい人みたいな感じにされてました。
 
原作もそんな役柄でしたっけねえ。私は原作は割とシリアスに読んだ気がするんですけど。

 
ベン・ガンは、フリント船長にたったひとり島に置き去りにされて、5年もの歳月を誰と口を利くこともなく、孤独の暗闇の中で、もう二度と故郷に帰ることもないのだろうなあと不安にさいなまれながら、ヤギを捕まえて食いつないできた孤高の人なのである。言葉だって忘れちゃうつうの。
 
それなのに動く時に「ぴろろ〜ん」「びろろーん」と、まるで歩き始めの幼児が履く「きゅっ、きゅっ」と音が鳴るサンダルみたいな音を立てながら軽やかに動き回るベン・ガンに、私は悲哀を感じずにいられませんでしたよ。

かなしい。
 
うっかりすると日本にいながらにして無人島生活をしているような気分になる私。休みの日は誰とも口をきかないし、最近は職場でもひとり黙々とデータをまとめたりなんかしてばっかりいるからか、喋りが下手になってきた。思ってることが上手に喋れなくなってきた。ていうか、なんも考えてない説すらある。

そんな私はほんのちょっぴりだけベン・ガンの気持ちが分かるような気がして、「その演出はないんでないの」と、ちょっと不愉快になったのでした。
 
監督、わたし悲しかったです。
 
 
 
私の好きなトリローニさん
原作でのトリローニさんは「ものすごく口が軽いけど、その自覚がないキャラ設定」で、医者のリブシー先生に「私が恐れるのはただひとつ あなたの口が軽いことだ」とかなんとか、だいぶ手厳しく言われても、トリローニさんは「私はそんな人間ではなーい」みたいに自信満々で「自分は口が軽くない」と断言するようなお方です。

で、やっぱり映画でも自覚はまったくありませんでした。
 
実際、船を操縦してくれる水夫を募集するのに宝の地図の事をべらべら喋り、ジムやリブシー先生が合流したときには町中に知れ渡っていて、「喋っている!」「あんなに釘を刺されていたのに喋っている!!」と、読者(観客)である私がびっくりするほど。
 
航海に出る直前もスモレット船長に「船長である私がこの航海の目的を知らされていないのに、町中の人間が宝探しの話題で持ちきりです。私はそのようなことを好みません」とはっきり言われてしまうのに、ここでもトリローニさんは「私はしゃべっておらん」ときっぱり断言していました。しょうがないお方だ。
 
でもそういうとこも憎めないし、実は射撃の名手だし、後半は度量の大きなところも随所で見せて、おしゃべりの自覚がないことも含めて「やはりお育ちのおよろしい方は違うなあ」と思わせる、世間知らずのいいとこの子出身な感じが漂っていて好きなキャラクターです。
 
映画版でもその魅力を損なうことなく、イメージ通りの配役になっていて、どちらのトリローニさんも「ああトリローニさんだなあ」という感想で良かったです。
 
 
 
スモレット船長のこと
最初はトリローニさんと意見が合わなかったスモレット船長も私の贔屓のひとりです。
 
見た目で言うと、原作のイメージに近かったのは1934年版の方でした。それほど特徴的ではなくて、経験豊富なベテランの船乗りっていう感じ。1950年版は結構がっしり系で四角い感じです。そういうイメージは持っていなかったので驚きましたが、でも悪くなかった。

 
原作でも映画でも、ジョン・シルバーが超個性を発揮するのでスモレット船長はやや地味な印象を受けるけど、彼は偉大な人物ですよ。リーダーの鏡みたい。
 
船乗りとしての美学や哲学、志を持っていて、責任感が強く、目的は必ず遂げ、船員たちの命を守るためなら雇い主に厳しく意見を言い、要求を突きつけることも厭わないという、そんな男で格好いい。
 
教養もなければ知性もない、字も書けないような大勢の水夫たちが愚かな振る舞いをしつづける中、船乗りの中ではひとりインテリ感を漂わせ、多くの事に耐えつつ、使命を全うしようと最後まで振る舞い続ける。
 
上陸後もテキパキと指示して、仲間を適材適所に配置して、自分が負傷しても強い心を保ち、仲間への指示を続けるスモレット船長は◎! 
 
シロウト感丸出しのトリローニさんに対して、プロフェッショナルのスモレット船長。どっちも必要なキャラクターなのです。
 
 
 

映画的にはどちらが面白いか

原作に近くて丁寧、演出がスタイリッシュかつクレバーな1934年版か、めちゃくちゃエネルギッシュな1950年版か、という感じでどちらも楽しめました。

でも、登場人物たちのキャラが立っているのは1950年版なので、どちらを見るべきかと言われれば、断然1950年版がおすすめです。

個人的にはロバート・ニュートンのジョン・シルバーの方が好きですし・・・。こっちの方が女にモテそうなんですよね・・・。ウォーレス・ビアリーの方は、子供の心は捕えられても、女の心を捕えられる感じでは・・・ないなと思いました・・・(ビアリーごめん!!)。
 
別に女にモテるかは関係ないんですけどね。
 
でも昔の小説の挿絵にあるシルバーを見ると、また二人とも全然違う感じなんですよね笑 若い感じがするし、男前な感じで、恰幅よくもなくて、インテリそう。
 
👇 こんな感じ

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ウォルター・パジェット - Unknown later Swedish edition, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1345429による
 
 
でもぶっちゃけた話、小説の方が10倍は面白いです。映画の紹介記事なんですけど、原作の方が面白いんだからこればっかりはしょうがない。
原作が★★★★★5 で、
1934年版が★★☆2.5
1950年版が★★★3
というところ。★3は結構おすすめな方ですよ。
 
というわけで、映画もいいけれど、個人的には 原作推し!という結果です。

 


今回はこれで終わります。じゃ✋



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