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【映画まとめ】人喰い植物が大暴れ。映画「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ」1960年版、1986年版 新旧比較

 



mです。今回は映画『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』の新旧作品比較記事となります。

わりと昔の映画ですが、みなさん☟この植物キャラを見たことがあるのではないでしょうか。


👇 これです。怖ええよおお。


 
この映画は、題名に「ホラー」とあるのでホラーなのかなと思いきや、ホラーというよりはブラック・コメディです。ホラーと聞いて思い浮かべる「ああいうの」とは全然違って、「ちょっとグロくて、ユーモアセンスがかなりブラックで、結構笑える」という感じ。

わたし両方見ているのですが、新旧それぞれ違いがあってどちらも面白いのでどっちもオススメです。シンプルなオリジナルをとるか、ド派手なリメイクか、、、どっちが面白いか、ぜひ見比べてみてください。
 
 
比較の為にまずは簡単なあらすじなどの基本情報を、そして旧作、新作の順にレビューしようと思います。
 

 

 

映画の基本情報

共通する主な登場人物
シーモア 花屋の店員。だいぶおつむが弱い。
オードリー 花屋の店員。ちょっとおつむが弱い。
マシュニクさん 花屋の店長。シーモアがめちゃくちゃ世話になっている。
サドの医者
マゾの患者
オードリー 吸血食人植物(旧作ではオードリー・ジュニア、新作ではオードリーⅡ)

 

共通する全体のあらすじ
花屋で働くシーモアは、花を愛する心優しい青年。でもだいぶおつむが弱くて、まったく冴えない無能ぶりを毎日発揮している。店長のマシュニクさんはそんなシーモアにイライラしっぱなし。「たまには店の役に立て!」と言われたシーモアが、珍しい植物の鉢植えを店に飾るとお客が殺到して店は大繁盛。ところがその鉢植えは、生血を吸いたがる吸血植物だった。お金大好きマシュニクさんに「ぜったいに枯らすな」と厳命を受けていたシーモアは、指を切って自分の血を飲ませてあげる。すると血を飲ませるたびにグングン育って、その程度ではお腹が一杯にならなくなり「腹減った腹減った」と騒ぎはじめる。鉢植えに脅されたシーモアは、鉢植えの”エサ” を調達しに毎晩出かけていくはめになる。
 
 
簡単な解説
とほほのほ。シーモアは吸血植物に、好きな女の子と同じ名前をつけて大切に可愛がっています。なのにねえ、、、という話。

 

1986年にリメイク版が公開された時すでに私はフツーに生きていたので、公開時にかなり話題になっていたことを記憶しています。実際大ヒットだったと言っていいと思いますし、主役のリック・モラニスはコメディアンで人気者、そしてあの食人植物怪獣オードリーのキャラクターもインパクトがあるのでかなりの有名作となりました。
 
実はこの1986年にヒットした『リトルショップオブホラーズ』は、1960年に公開された同名映画のリメイクです。その後1982年にNYでミュージカル化され、1986年にリメイク映画として制作・公開されました。1982年のミュージカルも評価が高くて、トニー賞やローレンス・オリヴィエ賞にノミネートされるなどしていますし、日本でも日本人キャストで何度も舞台化されているので、音楽で知っている方も多いかもしれません。


突然ですが実はわたし、「ちょっとおつむが弱い男主人公」が好きなんです(映画内に限る)。「善良」って感じがするし、かわいいと思ってほっこりする。だからこのシーモアも好きです。ちなみに「おつむが弱い女主人公」は好きではありません(深堀りはしません)。

ではまず、元となったオリジナル作品の方からご紹介します。
 
 
 
 

オリジナル版『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ(1960)』(原題:The Little Shop of Horrors)



おすすめ度 ★★★★ ラストが衝撃。


監督は ”あの” ロジャー・コーマン。出演がジョナサン・ヘイズ(シーモア)、ジャッキー・ジョーゼフ(オードリー)、メル・ウェルズ(マシュニクさん)、ジャック・ニコルソン(患者)。上映時間72分、1960年公開のモノクロ、アメリカ映画です。
 
オリジナル版のあらすじ
花屋の店員シーモアは、花を切りそろえることも出来ない無能ぶり。お金大好きな店主に毎日イヤミを言われるが、花を愛する心は誰にも負けない。花屋をクビになりそうになったシーモアは、好きな女の子の名前をつけて自宅で育てていた変種の植物オードリー・ジュニアを「客寄せ」として店に置くことにする。その晩、他の植物で指を切ったシーモアの血が偶然ジュニアにかかるとジュニアは大喜び。そこで自分の指をピンで刺してジュニアにあげる。すると翌日、ジュニアは一晩で大きく成長。その上さらに「腹へった」とうるさく喋り始める。散歩しながら考えようと店を出たシーモアだが、驚くほどあっけなく「死体」を手に入れることに成功。しかしシーモアの食欲は収まらず、また死体を調達する羽目に。歯医者のファーブ先生、店に押し入った強盗、娼婦、そして最後はとうとうシーモア自身が犠牲になって、映画は終わる。
 
オリジナル版の解説
作品の見どころは、まずオープニングが素晴らしくて期待が高まります。「映画は最初の5分で決まる」と思っている私にとってはかなり良いレベル。イラストレーションがおしゃれで、ソール・バスとか、『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン(2002)』のオープニングとかが好きな方は気に入ると思います。ナレーションが「スキッド・ロー わが街」って言うところも格好いい。
 
メイン・ストーリーだけでなく出てくる脇役たちがふるっていて、親戚の誰かが毎日死んでいる婆さんとか、病気が大好きで「すごく元気な病人」のシーモアのママとか、花に塩を振って食べる男とか、超サディストの歯医者、超マゾヒストの患者、まるで「鎌田行進曲」の銀ちゃんみたいにどこへでもついてくる娼婦など、個性的な脇役も超楽しい。
 
オリジナル版の俳優たち
主役のジョナサン・ヘイズは加藤茶似です。すごーくちいちゃいジャン・ポール・ベルモンドに見えたアングルもありました。よーく見ると、真顔なんかはそこそこ男前です。私は好きですね。かわいいと思います。

👇 ジョナサン・ヘイズ

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By Roger Corman - Restored DVD edition, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=2140100

 

海外の俳優は、「黙っていれば男前」がコメディアンになるケースは昔から多いのです。日本の場合はそういった価値観が導入されるのはかなり遅くて、80年代はまだ男女ともに、笑いを取るのはブサイクと決まっていて、男前はただただ男前を演じていた気がします。二枚目はひたすら二枚目をやる。田宮次郎はそれで自殺したと噂されているくらいで、当時はそれくらい男前側にプレッシャーがありました。

80年代までの草刈正雄なんてどこまでも二枚目で、「二枚目過ぎて逆に滑稽で笑える」という境地にまで行っています(これはこれで面白いです)。

90年代くらいになるとようやく「かっこいいのに馬鹿もできる(でも格好いい)」という手の込んだ在り方をする俳優が出てきます。草刈正雄もこの頃、TVドラマ『世にも奇妙な物語』での「ズンドコベロンチョ」でコメディがやれる二枚目であることを証明しました。あれはインパクトがありました。「こんなことが出来る人だったの?」という感じ。その後はスランプもなく大活躍で、軽い飄々とした、良い俳優になったなと思います(上から目線が過ぎる)。
 
男前が好んでおバカを演じるようになり、それを大衆がちゃんと「すげえ」「いいね」と理解するようになれたのはとてもいいことだったと思います。その方が本人も楽で楽しいと思うし。田宮次郎の犠牲も無駄ではなかった。


・・・といきなり蛇足に走ってしまいましたが、そのジョナサン・ヘイズの過去の出演作品リストを見ていたら、なんとあの「エデンの東」にノー・クレジットでだけど出てるとあってびっくり。その他の作品の題名を見た限りでは、いかにもB級なタイトルがズラズラと。興味を惹かれるラインナップだなあ。そのうちまたお会いしたいなあ。

 
そして超マゾヒストの患者役は若かりし頃のジャック・ニコルソンです。この頃24歳くらい。俳優デビュー後かなり初期の出演作。若い時からニカッ!と笑っています。

👇 リトル・ショップ・オブ・ホラーズのジャック・ニコルソン

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By Roger Corman - Restored DVD edition, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=769562

 

映画終盤は、シーモアと刑事たちの追いかけっこが続いて、急にスラップスティック・コメディの要素が強くなっていきます。ここは好みの分かれどころ。

最後は・・・ぎゃー!!

 
監督のロジャー・コーマンはこの作品を、たった2日間で撮影したらしい。ちゃちゃっと撮ってぱっと公開するスタイル。いやはやなんとも。さすがですな。



👇 オリジナルのDVDはこちら

 




リメイク版『リトルショップオブホラーズ(1986)』(原題:Little Shop of Horrors)



おすすめ度 ★★★ ミュージカルになりました。
 
監督はフランク・オズ、出演はリック・モラニス(シーモア)、エレン・グリーン(オードリー)、スティーヴ・マーティン(歯医者)、ヴィンセント・ガーデニア(ムシュニクさん)、ビル・マーレイ(患者)、上映時間94分、1986年制作のアメリカ映画です。

日本版の題名は中黒(・)がなくて一連。なぜ? しかも原題だとTheがない。なぜ!
 
リメイク版のあらすじ
花屋で働くシーモアはまったく冴えないダメ男。みなしごだったシーモアは花屋のムシュニクさんに拾われて、彼の花屋で働いている。ある日空が怪しく光りぴかっと光ると、突然小さな鉢植えが現れる。植物大好きシーモアが買って帰って育てるが、そいつは宇宙から来た人食い宇宙植物だった。冴えないシーモアとおバカな彼女、食虫植物オードリーⅡ。彼らを取り巻く人々と騒動を描くブラック・コメディ。
 
リメイク版の解説
あらすじをものすごく簡単に端折ってしまいましたが、基本的なストーリー展開はオリジナルと同じです。

リメイク版は全編がキャッチーでいかにも80年代ポップスなミュージカル映画になっています。1960年のオリジナル映画から1982年のミュージカル化を経て、1986年にリメイクされたこのリメイク版は、1960年の映画のリメイクというよりもミュージカルの映画化なのでしょう。黒人3人娘のコーラスで始まって、曲は「いかにもブロードウェイ・ミュージカルっぽい定番」って感じで、文句なく楽しいです。

舞台となる街スキッド・ロウは貧民街(スラム)という設定。だから歌の内容も貧しさを嘆くような内容になっていたりします。

今作ではシーモアやオードリーだけでなく、オードリーⅡも歌いまくるぜえ!
 
リメイク版の役者たち
シーモア役にはリック・モラニス。リック・モラニスって可愛いんですよ。今回は思いっきり歌っていて、相変わらず可愛かったです。彼に関しては『スペースボール(1987)』も可愛くてお気に入りです(←これ超バカで好きな映画)。
👇 リック・モラニス

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Par photo by Alan Light, CC BY 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=90814251
 
ミュージカルシーンが多めでちょっとダレてきたかなー、というところでスティーブ・マーティン投入。俄然盛り上がるところ。オードリーの恋人で歯医者のオリン役で超サディスト。スティーブ・マーティン、イキイキ。もうやりたい放題やらかしてます。彼に関してはよくこんな馬鹿ができるなーといつも感心してますが、人を笑わせるのが好きなんだなあとも思います。彼を見るだけでもこの映画を観る価値があると思う。
👇 スティーブ・マーティン

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By Towpilot - Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1308308
 

そしてマゾの患者役には、ビル・マーレイ。ビル・マーレイも・・・うん、いつものビル・マーレイでしたね。

ほかにも途中、ラジオのパーソナリティ役でジョン・キャンディが出てます。短い時間で彼らしい芸達者ぶりを発揮。ノリノリ(笑)。ちょろっと出るんですよ、ちょろーっと。ジョン・キャンディってそういうの好きそう。
 
ということで、80年代コメディアンの代表格が続々登場。みんなそれぞれ持ち味を生かしていて「ぽい」感じです。リック・モラニスはリック・モラニスっぽいし、ジョン・キャンディはジョン・キャンディっぽく、スティーブ・マーチンはスティーブ・マーチンっぽく、ビル・マーレイはビル・マーレイっぽい。定番なのがいい感じです。



👇 リメイク版のBlu-rayはこちら(DVDもあります)

 

👇 Amazon Prime Video でも取り扱いあります。

 

 

オリジナルとリメイクの違い

オリジナルとリメイクの違いは細かい部分で多々ありますが、最も違うのは、オードリーⅡが皆既日食の日に、地球を征服しに宇宙から来た異星人の設定になっていること。かなりSFテイストになっています。


そして時代がだいぶ違うから当り前ですが、オリジナル版ジュニアの「ハリボテ」感に対して、リメイク版オードリーⅡの80年代らしい特撮&クリーチャーのリアルさはパンパないです。

なんというか、オリジナルの方は「いい意味で」適当なのですが、リメイクの方はいろいろとちゃんとしちゃってて、めちゃくちゃエグいです。

例えば歯医者を食べさせるところとか、オリジナル版はただジュニアに歯医者を放り込むだけだったけど、リメイク版の方は「ちゃんと」切り刻んで食べさせたりしてて、このきちんとした感じがすごくエグい。

オリジナルを見ているせいか、私は「そこ、描かなくてよくない?やりすぎじゃない?」って思うところが多かったです。

技術力が上がった分、リアルでエグい。グロい。スプラッタ系が苦手な私にはオリジナル版の、死体を「ぽいっ」ってオードリーに放り込むだけのテキトーさがちょうどよかった。


あと心理面に関してですが、どちらのシーモアもオードリーのためにエサとして人間を調達してくるわけですが、その印象が微妙に違う。

オリジナルのシーモアは消極的な感じで、なんか知んないけど誰かが簡単に死んじゃったから持って帰ってジュニアのエサにしようっていう感じ。コメディだから、都合よく次々とシーモアの目の前で人が死んでいくので、「は! ラッキー。なんかよくわかんないけど持って帰ろう」みたいな。歯医者の時も、オードリーと関係なく、ただ歯が痛くて歯医者に行ったらなんか知んないけど決闘みたいになっちゃって、そしたら死んじゃったから持って帰ろうと。成り行き任せの受け身な印象です。

でもリメイク版のシーモアは歯医者の死体を調達する際、「オードリーにひどいことをするから」という明らかな動機を持って殺しにいってました(結果的には勝手に死んじゃうんだけど)。

リメイク版の方が積極的。うまく説明できている気がしないけど、鑑賞後の印象がだいぶ違います。


それにリメイク版で語られるシーモアとかオードリーの生い立ちなどのバックストーリーとか、生きるのがつらいとか、そういうのも生々しくってエグかったです。オリジナル版はそういう ”人生” みたいなのがなくてあっさりしている。
 
そして・・・リメイク版のオードリーⅡは可愛げが全くないのが不快でしたね。全く全く可愛くない。

オリジナルのオードリー・ジュニアも別に可愛くはないですよ。でも少なくとも憎たらしくはなかったです(「食わせろ」以外喋らなかったので)。

でもリメイクのオードリーⅡはサイテー男がサイテーをフルに発揮している感じで、ぜんぜん笑えなかったです。クソ男がクソぶりを発揮しているところを延々と見せられている感じで不愉快この上ない。リメイクのあいつは手が付けられない。火炎放射器で焼き払いたい。嫌いだ。


というわけで私はどちらが好きかと言えば、もちろんオリジナルの方ということになります。リメイク版は見どころも多いけど、不愉快なところも多い。そういう面倒なことは一切ないオリジナルの方が私は好きでした。
 
おしまい。


あ、あと、もうひとつ。リメイク版はエンドロールが長い!! 3曲分、6分たっぷりある。この頃からなんだろうか、エンドロールが長くなり始めたのは。昔の映画のエンドロールは良い。一瞬で終わるもん。そういうところも最近の映画から足が遠のく一因なのでした。



👇 オリジナル版DVD

 

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