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【映画】「ジェニイの肖像(1948)」 不思議な運命に取りつかれた男の、素晴らしくロマンティックな物語。


おすすめ度 ★★★★

題名 ジェニイの肖像(Portrait of Jennie)
監督 ウィリアム・ディターレ
制作 デヴィッド・O・セルズニック
原作 ロバート・ネイサン「ジェニイの肖像」1939年
出演 ジョゼフ・コットン、ジェニファー・ジョーンズ
音楽 ディミトリ・ティオムキン
上映時間 86分
制作年 1948年 
制作国 アメリカ
ジャンル ラブストーリー、ファンタジー、SF、モノクロ
 
 
これは不思議な運命に取りつかれた男の、素晴らしくロマンティックな物語。ちょっとSF風で、映画『ある日どこかで(1980)』を思い出す。あれが好きなら、これも好きに違いない、そんな映画。

監督は『ノートルダムの傴僂男(1939)』を撮影したウィリアム・ディターレ。主役のイーベンを演じたのはジョゼフ・コットン。彼は夢の中に生きているような、現実味のないロマンティックな役が良く似合う。
 
 

あらすじ

売れない画家のイーベンは偶然ある少女と出会う。彼女は不思議な魅力を備えており、時代遅れの服装で1910年の新聞を持っていた。会うたびに大人になっていく彼女。主人公は少女の持つ魅力と謎に取りつかれ、すぐにお互いなくては生きられない存在になるのだが、実は彼女は過去の少女だった。彼女を待ち続ける主人公は、その愛を現実のものとすべく奮闘する。
 
 

主な登場人物

イーベン・アダムス(ジョゼフ・コットン)・・・売れない画家
ジェニイ・アップルトン(ジェニファー・ジョーンズ)・・・時空を超えて現れる不思議な少女

少女の名前の表記や、それに伴う邦題が「ジェニー」「ジェニイ」「ジェニィ」などで揺れがあるが、私は「ジェニイ」で覚えてしまったので「ジェニイ」で行きます。
 
 

ジェニイを演じたジェニファー・ジョーンズのこと

ジェニイを演じたジェニファー・ジョーンズは1919年生まれで本作の出演時は29歳くらい。しかし今作で彼女は幼い少女から大人の女性までを演じている。
 
👇 ジェニファー・ジョーンズ

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By Studio Publicity - [1], Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=84522346


ジェニイの年齢は定かではないが、映画登場時は小学生高学年くらいかな、12歳くらいかなという印象。しかしまったく違和感はない。

次に登場する時に少し大きくなっていて、その次は高校生くらいと、現れるごとにどんどん成長していくが、実に自然に見える。背までもが伸びているようにみえる。見た目だけでなく、しぐさや喋る内容も大人びていき、後半では母性まで感じさせるあたりはさすがだった。

そして映画だから見た目も重要なわけだが、不思議な謎の美少女役ということだけれど、彼女の美しさも申し分ない。イーベンが彼女のことで頭がいっぱいになるのもうなずける。

だからそのイーベンが描いたジェニイの肖像画も、やはり静かに美しいのだった。

 

 

ジェニイのこと

ジェニイはすごく不思議な少女だった。自分が時間を飛び越えてイーベンに会いに来ていることや、それがイーベンから見ればすごく不思議なことで、イーベンの目には自分が急速に大人になっていくように見えることなどをきちんと自覚しているのだ。

それだけでなく、ジェニイは二人に起こる出来事のすべてを知っているようで、まるですでに経験済みのようにすら見える。

ジェニイのその「あなたは分かっていないけど、私は分かっているの」という態度が、10代も後半の年齢になるとまるでイーベンを見守る大きな愛のように作用して、母性すら感じさせるのだった。

ジェニイがなぜイーベンを愛するようになったのかは分からない。時間を越えて行ったり来たりしているその方法も分からない。自分たちの運命を知っていながらなぜイーベンに会いに来るのか、会っていったいどうしようというのか。ジェニイはその運命を力づくで変えようとしているのだろうか。

でもそういう風にも見えず、ただただ何度も繰り返しているように見える。

結局、何もかもが分からないのだった。
 
 

イーベンとそれを演じたジョゼフ・コットンのこと

謎の少女の魅力に取りつかれてしまった売れない画家イーベン。彼はもちろんお金がなくて、家賃すら払えない定番の貧乏ぶり。才能はあるのに・・・と言ってあげたいけれど、彼が描く絵は個性がなく、静かな風景画なんかを描いている。

ただ例外的に、ジェニイを描いた絵だけが、愛の力で永遠の魅力を放つ。

金も目立った才能もないとはいえ、彼を演じているのはジョゼフ・コットンだから、悲壮感とか貧乏っぽさとか苦悩とか、そういうのは全然ない。軽く軽やかに、ふわっと体重がないかのように、風のように演じている。

ふわっ、さらっ、まるでなにかこう、、、自分の人生が他人事のような。

そこがジョゼフ・コットンの魅力。

私はそういう在り方に憧れてる。私もそんな風に、他人事のように自分の人生を生きていきたい。
 
👇 ジョゼフ・コットン

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By Photoplay Publishing Company; no photographer credited - Photoplay, December 1942 (page 53), Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=68466927
 

原作について

原作は1939年に出版された、ロバート・ネイサンの中編小説「ジェニイの肖像」。映画が気に入ったので、本も手に入れて読んでいる。

映画は時間的制約があるので、原作だとより詳しく説明されているのではないかと期待したが、残念ながら映画以上の情報があるわけでもなかった。多少の設定の違いがあるだけで、映画とほとんど一緒だと思った。

例えばイーベンの行きつけの食堂兼飲み屋みたいなところがあって、イーベンは壁に装飾の絵を描く代わりに、絵が出来上がるまでの期間の食事を手に入れるのだが、原作も同じ。ただし描かれる絵が違うといった具合で、違いと言えばそういう感じの違いでしかない。

肝心のジェニイの詳細なプロフィールとか、謎が解けるとか、そういうことはない。それが良かった。

ジェニイの謎は、謎のままでいい。


 
 
私が手に入れたこの文庫本にはもう一篇、『それゆえに愛は戻る』という題の中編小説も収録されていて、これを読むと作者のロバート・ネイサンの個性が良く分かる。

『それゆえに愛は戻る』・・・題名からしていかにもなこの小説は、やっぱり極めてロマンティックな愛の物語だった。

妻を亡くした二人の子持ちの童話作家が主人公で、彼の元に海から若い女性が現れる。彼女が何者で、どこから来たのか、何が目的なのか、何も分からない。一体彼女はどうして彼と子供たちの前に登場したのか・・・。ジェニイ同様、やはり謎めいた女性なのだった。

まるで人魚姫みたいだなと思って、私はこちらも気に入ったのだけれど、人魚姫の様に「激痛に耐えてでも愛した男と添い遂げる」みたいな強い意志は感じられない。やっぱりなにかふわっと、もやっとした、さらっと元の世界に帰ってしまうような、淡々とした感じ。

そこが好き嫌いが分かれるかもしれない。


そしてどちらの主人公も相手の彼女が現れるのをただひたすら待っている、そんな受け身の男性として描かれているのも共通していて、私はこちらも良かった。やっぱりジョゼフ・コットンは適役だと思う。

読む人、この映画を観る人は、そこが好きになれれば好きな作品になり、「淡々としていてドラマの無い抑揚のない作品だな」と思う人はつまらない作品に感じるかもしれない。

私は映画も小説も、どちらもかなり気に入って、「この映画と出会えてよかった」と静かに思った。
 



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👇原作本

 

 

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