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【映画】「メトロポリス(1927)」今の方がずっとマッド ~ フリッツ・ラングの代表作~


おすすめ度 ★★★★★

題名 メトロポリス
監督 フリッツ・ラング
脚本 テア・フォン・ハルボウ
出演 ブリギッテ・ヘルム、アルフレート・アーベル、グスタフ・フレーリッヒ、ルドルフ・クライン
上映時間 119分
制作年 1927年
制作会社 ウーファ
制作国 ドイツ
ジャンル SF、ディストピア、モノクロ、サイレント
 
 
引用:「脳(支配階級)と手(労働者)を繋ぐ者が必要なのです。それは両者に血を通わせる心臓、つまり心でなければならないのです。そしてその者はいつか必ず現れるでしょう」 マリアの台詞
 

すばらしかった。テーマもストーリーも美術も演出も、アンドロイドの造形も。そして今の私達の話でもあると思った。名作の名に恥じぬ、普遍的な作品。

近未来ディストピアSFの代表作であり、名匠フリッツ・ラング監督の代表作でもあり、『スター・ウォーズ』のC-3POのデザインは今作のアンドロイド・マリアをリスペクトしたものであるのはつとに有名。

アンドロイド・マリアを見ればそれも納得。女型アンドロイドで、ちょっとなまめかしく色っぽくすらある。

労働者アンドロイドなんだから、おっぱいはいらないような気もするが。
 
 

あらすじ

未来のある架空の都市メトロポリス。そこでは上流階級の人間が地上で豊かに暮らし、地下で暮らす労働者階級が奴隷のように働くことで上の人間の富を支えていた。支配者フレーダーセンの息子フレーダーは、ある日美しい労働者階級の娘マリアと出会い、地下労働者の過酷な労働環境を知って衝撃を受ける。父親にその過酷さを訴えるが相手にされず、自ら地下で労働者として働き始める。

一方、発明家ロートバンク博士は、ミスなく休みなく働くアンドロイドを開発し、人間の労働者を一掃しようとしていた。支配者フレーダーセンはマリアが地下労働者たちの精神的支えであることを知り、彼女に似せたアンドロイドをロートバンク博士に作らせ、地下に送り込み、労働者を思いのままに操ろうと企む。ところがロートバンク博士はアンドロイド・マリアに、地下の破壊行為を命ずるのだった。

アンドロイド・マリアに扇動された労働者たちは、メトロポリスの中核である発電所を破壊する。その結果彼らの居住区は水没してしまい、子供たちの命が脅かされる。マリアとフレーダーの活躍で子供たちは救出されるが、労働者たちは自分たちを操り地下を水没させたアンドロイド・マリアを魔女として火あぶりにする。

すると彼女の姿はアンドロイドの姿に戻る。マリアは自分が予言していた、支配階級と労働者階級の両方を繋ぐ者がフレーダーであると悟り、彼にその仲介役を申し出る。敵対していた労働者代表の工場長とフレーダーセンが、フレーダーの仲介により握手をし、映画は終わる。
 

By Unknown author - Link, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=70036978
 

映画の解説

全体主義的な映画だが、全体主義というと社会主義というイメージが強いが、この映画は資本主義的全体主義だと思う。

映画で描かれる地下労働者の姿は、全員同じ黒づくめの服を着て、黒い帽子をかぶり、時計のように正確なタイムスケジュールが決められていて、機械仕掛けのように大勢が全く同じ動きをし、猫背で肩をガックリ落とし地面を見つめ、次のシフトの出勤者とすれ違う。時間が来ればまた現れ、単純作業をこなし、それが毎日永遠に続く。

そしてその仕事というのが、ただボタンを押しているだけだったり、大きな時計の針を光るところに合わせているだけだったりと、なんだかよくわからない作業なのは現代社会のカリカチュアなんだろう。

映画制作当時の工場労働といえば、フォードなどによる生産効率を最大限に追求した流れ作業の時代。簡単に言えば、弁当工場で働いていたとして、毎日8時間ずーーーーっとひたすら「梅干しをご飯の真ん中に置く担当」をやっているみたいなもの。これを365日ずーーーーーっと延々と「梅干しをご飯の真ん中に置き続ける」。そしてそれが生涯続く。

これはキツイ。(´Д⊂ヽ

だけど100年経った今だって、だいぶマシにはなったとは思うけど、勤め人の仕事なんてかなり抽象的だし、分業が進んでいるせいもあって、そこだけを見れば何をしてるのか分かんない。キーボード叩いてるだけ、みたいな。そんな人も多いんじゃないかな。

わたし毎日なにしてんすかね、と。


By Boris Konstantinowitsch Bilinski - Internet, 퍼블릭 도메인, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=77921035
 
 

主人公のフレーダーとマリアのこと

主人公のフレーダー。

一見ナイーブな温室育ちのお坊ちゃんかと思いきや、かなりの先見の明があったり、地下労働者の実態を知るやいなや「僕に教えて」と言って彼らの仕事を知ろうと早速体験してみたり、必要とあらば命を懸けて戦ったりと、実に骨のある人物だった。その上、ピュアで思いやりもあるときたもんだ。

最初は「なんか間抜けな感じだな、おい」と思って見ていたが、途中から男前に見えてきたもん。

彼はヒーローです。


そしてマリア。彼女を演じた女優さんはブリギッテ・ヘルムという方らしいが、マリアとアンドロイド・マリアの演じ分けが見事で、古いフィルムのあんなに荒れた映像にも関わらず、遠目に見ても姿勢とか表情で「アンドロイドだな」「本物のマリアだな」とすぐに分かるほど。

かなりやり甲斐のある役だったんじゃないかな。


サイレント映画はだいたい大げさな演技になっているものだけど、割と今まで「まあそれまで映画俳優という職業が無く、みんな舞台俳優から引っ張ってきているのだから、芝居がクサいのは致し方ない」くらいにしか思っていなかったのだが、今作の台詞がない中で二役を演じ分ける彼女を見ていて、「セリフが無く、動きでしか表現できない制約の中だからこそ、大げさになるのはしごく当然の事なんだな」と今さらながら思った。
 
 

ロートバンク博士のマッドぶりなんて、今と比べたら大したことない

それにしてもロートバンク博士のマッドぶりは結構キテル。何がマッドって、顔がマッド(笑)ものすごいヤバイ目をしている。

でも、彼がやろうとしていることは、今の私達からすればマッドでもなんでもない。

アンドロイドが人間から労働を奪うなんて、こっちはもう間近に迫ってるんですけど。「わーい。インターネット便利、楽しい、バンザーイ」って遊んでいるうちに、気がついたらAIが我々を脅かしてましたけど(笑)

AIだけじゃないですよ。ムーンショットだの、ベーシックインカムだのと、私たちから労働を奪ってベッドに寝かせておこうとしてるっぽい。まさに『マトリックス(1999)』の世界が目前に。

そしてそれが実現した場合に想定されるインパクトは産業革命時の比じゃなさそうなのに、それを実現していく偉い人達を「マッド(狂人)」だなんていう人は誰もいない。

現実の方がロートバンク博士よりもずっとマッドなのだった。


資本主義というのは恐ろしい。人間の命とか尊厳よりも、目の前の利益が簡単に優先されてしまう。かといって利益を優先しなければ、多くの人が路頭に迷ってしまうという背反するジレンマ。

とはいえ中世に戻る気は誰にもないし、もう行けるとこまで行くしかないヤケクソの自転車操業。

ロック・アンド・ロールですよ。角が取れて丸くなる前に、どこかに激突して木端微塵になるかもしれない。


ラングさん、あなたの描いた不安が、より強化されて現実になろうとしています。

私達にもマリアやフレーダーは現れますか? いまどこかで戦ってくれてるんですよね? (私ではないことは確かなので)


By Illustration by Heinz Schulz-Neudamm. Distributed by UFA. - MoMA.org, Fair use, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=63350586
 

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👇 でも別にDVDでいいと思うの

 

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