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【映画】「アトミック・カフェ(1982)」伝説的ドキュメンタリー映画 ~1mmも撮影していない異色作~

 
おすすめ度 ★★★★★

題名 アトミック・カフェ(The Atomic Cafe)
監督 ケヴィン・ラファティ、ジェーン・ローダー、ピアース・ラファティ
上映時間 87分
制作年 1982年
制作国 アメリカ
ジャンル ドキュメンタリー、戦争、プロパガンダ
 
 

第二次世界大戦時における原爆や戦争に関する事実を、いたってクールな視点で発信した、ブラック・ユーモア炸裂の反戦映画。

この映画のために撮影されたフィルムは1mmもなく、過去の既出のニュース映像とかプロパガンダ映像とかラジオ音声などの記録映像を集めに集めて編集しただけ。映像だけでなく、流れる音楽も既出の商業音楽。すでに世の中に発表されていた映像や音声を時系列に淡々と並べただけという、異色の映画。

そしてナレーションが一切ないのも特徴的。

この映画がマイケル・ムーアに物凄く影響を与えて、自分がドキュメンタリー映画を作る際の参考にした、というのは有名な話。
 
 

プロパガンダとは

「プロパガンダ映像ってなんだ」ということになれば、日本で言えば「ダメ。ゼッタイ。」とか「覚せい剤やめますか?それとも人間やめますか?」系もそうだし、教習所や免許の更新の時に見させられる教育フィルムもそうだし、自衛隊の自衛官募集ポスターなんかもそう。

TVのニュース番組とか情報番組だってそう。健康ブームだって、あれは健康プロパガンダだ。

要は、大きな組織(政府とか企業とか宗教団体とか)が、ある思想や目的に大衆を導こうとして制作された宣伝物は全部プロパガンダ。影響力のある人や組織って、日々私達を、その組織にとって都合のいい方へ導こうとしているわけだ。

なにか情報に触れる際は、「プロパガンダ(宣伝)なのだ」という意識を少しは頭に置いて見たり接した方がいいかもしれない。


そしてそれはドキュメンタリーだって例外ではない。「記録映画」などと言いながら、「これを伝えたい!」という強い意志を持って取捨選択された「創作物」になることが圧倒的に多く、ややもすると押し付けがましく、説教臭くなりがち。

結局みんな、「意見に賛同して欲しい!」あるいは「都合よく言うことを聞かせたい!」ってやっているわけだ。
 

By Libra Films, Designed by Carol Clement - Movie Poster Shop, Fair use, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=30955204
 

本作の姿勢

でもこの映画はその熱さが上手く隠されている。

もちろん、沢山ある映像のなかからどの映像を使用するかという選択、選択されたフィルムのどの部分を使用するかという選択、音声と映像の組み合わせ、選択された映像をどういう順番で並べるかという選択を、この映画の監督はしているわけだから、そこにこの監督のメッセージが込められている。だからこの作品だってプロパガンダ映画だ。だけど、制作者の思想が前面に出すぎてこないところが好感が持てる。

誘導はしているのだけれど、淡々と並べて、ぽんって私達に放り投げて、「どう?」くらいな感じ。

大声で主張してこないあたりがクールで格好いい。
 
 

内容について

映画が始まってしばらくは、トリニティ核実験からエノラゲイ、リトルボーイとファットマン、原爆投下が上手くいってほくほく顔のトルーマン大統領、そして戦勝パレードへと続くが、そういうのはまあいい。

戦争したんだから勝ったら嬉しいのは当たり前。日本が勝っていたら日本だって戦勝パレードをしたに決まってるわけだから。問題はここから。


👇 クロスロード作戦 ベーカー実験

原作: United States Department of Defense (either the U.S. Army or the U.S. Navy)二次著作物: Victorrocha (talk) - Operation_Crossroads_Baker_(wide).jpg, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=6931019による
 
引用:「(原爆は)安全に距離をとってながめると、この爆発は人類史上最高に美しいものだ。諸君もきっとこう言うだろう。
『なんて美しい・・・どこが危険なんだ?』 
注意してほしいのは3つだけだ。爆発、熱、放射能。
放射能、これだけが目新しいもので、核兵器の使用で生じる。だがじつは3つの中では一番どうでもいいものだ」
 映画『アトミック・カフェ』より

 


おいおい。花火上げてんじゃないんだぞ。

広島、長崎の被害をアメリカ国民には何も知らせず、ビキニ諸島の住民にはちゃんとした説明をせずに彼らの島を吹っ飛ばし、キャッスル・ブラボー実験では風に乗った放射能がいくつもの小さな島に住む人たちと第五福竜丸の乗組員を被爆させ、「ノープロブレムね、一か月もすれば症状は消える」と言ってのける。

この映画を観ると、原爆の被害者はヒロシマ・ナガサキの日本人だけではなく、世界中に大勢いることが分かる。

アメリカの核実験で上手いこと言われて騙されて実験台にさせられている米兵や、各諸島の住民などの姿は、ヒロシマ・ナガサキの悲劇とは別種の悲しさがある。

政府は、自国の利益のためには自国の国民すらも欺き、犠牲にするのだ。それもジョークやユーモアを交えながら。

戦争で敵に落とされた爆弾で死んだり被ばくするのと、自分の政府に騙されて死んだり被ばくするのと、どっちがマシかな。 

この二者択一なら、私は敵の攻撃で死んだ方がいいかな。


👇 キャッスル作戦

United States Department of Energy - This image is available from the National Nuclear Security Administration Nevada Site Office Photo Library under number XX-33.This tag does not indicate the copyright status of the attached work. A normal copyright tag is still required., パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=443729による
 
 

アメリカ人の国民性、ヤンキー気質について

引用:「せっせと稼いでも 全部 税金と請求書に消える
おれの悩みの解決法を見つけたんだってな 
やった やった 水素爆弾だ えーい 落としちまえ 
やった やった 水素爆弾だ 神さま おれだけは助けて」
 映画『アトミック・カフェ』より

 

この映画を観ると、原爆や戦争という、人の尊厳を根こそぎ奪い去り、人生や生き死にを決定付ける重大かつ異常事態なのに、アメリカ人たちの軽さ明るさは全開で、その対比が両極端で興味深い。

深刻さがまるでなし。使用されている大衆ソングの歌詞の内容と曲のキャッチーさのギャップも凄い。こういう感性を「ポップ」と言うんだろう。

奴らの「POPさ」は徹底している。

原子爆弾にあだ名をつける的な。戦争に使う戦闘機にバーガ・ガールを描いちゃう的な。撃墜マークを書いちゃう的な。日本に落とす原子爆弾リトルボーイやファットマンに「ヒロヒト天皇に愛を込めて」って書いちゃう的な。クリスマスには戦争もお休みしちゃう的な、およそ日本人の感覚にはないスポーツ感覚。

楽しそうだなあ。


👇

gigazine.net



日本人なんて、兵器は天皇からお預かりしたものだから粗末に扱うなんてもってのほか、落書きなんてあり得ませんでしたよ。そんなことしたら営倉行きですよ。ていうか、その発想自体がないよ。

まあ、日本人のすぐ深刻になってしまう真面目さは、そのまま余裕のなさですからね。アメリカのユーモア感覚から学ぶところもたくさんあります。ちょっとは参考にして、もっと余裕を持った方がいいと思う。思うけど、本家のアメリカ人のポップさは・・・見ててムカつきますね(こっちはやられる側ですからね)。
 
 

雑談

監督のケヴィン・ラファティはこの映画の完成版を、”あの” 絶好調期のフランシス・フォード・コッポラに見せて相談したところ、「分かりづらいからナレーションを入れた方がいい」とアドバイスされたので無視した、という経緯があるというのを何かで読んだ(ソース不明)。笑。

これは入れなくて正解。説明とか解説はいらない。そういう意図的なミスリードがあからさまでないところが、この映画の価値を上げていると思う。監督、正解です。

それにフィルムを収集するのに空軍基地などに赴いてフィルムをもらっていたようなのだけど、実際に公開されると騒ぎになり、確か国会でも問題になって、その後アメリカ政府は情報の流出に慎重になった、という経緯があったはず。大昔に雑誌のインタビューで読んだと思うのだけど、やはりソースは不明。


そしてそのやたらポップなサントラCDが欲しいんだけれど、どうしても見つけられない。import も全滅。



おまけにDVDのリンクを貼ろうとしたら、もう中古でしか取り扱いがない。( ゚Д゚)キョウガク

なぜだ!

なぜ私が紹介したい作品はすぐに絶版になるんだ! こういう作品は販売し続けてほしいのに・・・(T_T) 


👇 DVD(たぶん中古。でも2~3000円で買える)