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【映画】「金星ロケット発射す(1960)」~東ドイツ制作の超レア物SF作品~


おすすめ度 ★★


題名 金星ロケット発進す(Der schweigende Stern)
監督 クルト・メーツィヒ
出演 谷洋子、オルドリッチ・ルークス、イグナーチ・マホフスキ、ミハイル・N・ポストニコフ、ルチーナ・ウィンニッカ
上映時間 78分
制作年 1960年
制作国 東ドイツ/ポーランド 合作
ジャンル SF、東側もの


 


映画の特徴

「もしや行かなければよかったのでは」というオチが光る東ドイツとポーランドが合作した珍品SF。火星ではなく、金星に行くというのもレア。ハリウッド制作の古いSFに飽きたマニア向け作品だと思う。

60年頃のSF映画であればセットや特撮はまあ、こんなもん。でも役者陣は華がなくて、映像も8mm映画みたいで、まるで80年代の自主製作映画のようでもある。ハリウッド的なエンターテインメントにかなり寄っていて、映画黎明期には『カリガリ博士(1919)』『M(1931)』といった映画史に残る傑作を次々と世に送り出してきたドイツ映画が持っていた、クールなセンスやインテリジェントはどこにいったの、と思わなくもない。

とはいえテーマは「平和」で至って真面目。

第二次世界大戦後、西と東に分かれたドイツ。60年といえばまだベルリンの壁は建設されていない頃。社会主義を選択した東ドイツから西ドイツへ脱出する人々が毎年20万人にもおよんで後を絶たず、やばいからそろそろなんとかしなくっちゃ、くらいの時期。この映画が公開された翌年に、あのベルリンの壁が建設される。

そういう殺伐とした混乱と緊迫した情勢下で、このような平和プロパガンダ映画が、それもSF方式かつエンターテインメントとして作られたのかと思うと感慨深い。

本来この映画は、東ドイツ/ポーランド合作映画なのだが、タイトルバックが英語なうえに、登場人物が全員英語を喋っているのが残念。どうやらアメリカ公開時に全編吹き替えしたものが日本に入ってきているらしい。これは残念。ドイツ語版で観たかった。

 

👇東ドイツ製映画です

 

あらすじ

時は1985年。工場建設中のゴビ砂漠で奇妙な ”かけら” が発見された。世界中から天才科学者が集結し研究したところ、その ”かけら” の内部にはコイル状のものが見られ、地球に存在しない物質が混じっていたことから、地球外からやってきたものと断定された。科学者たちによると、1908年にシベリアでツングースカ大爆発を起こした隕石は、実は他の惑星からやってきた宇宙船であり、墜落寸前に「彼らにとって最も大切なもの」を窓から放り出したのではないか、それがこの ”かけら” なのではないかというのだ。調査の結果、”かけら” は磁気記録装置であり、中には見知らぬ言語と思われる情報が入っていた。調査団はその惑星は金星であると断定。さっそく通信を試みるが金星からの応答はない。調査のために集められた7人は、元々火星へ向かう予定であったコスモストレイター号で金星へと向かう。

金星へ向かうコスモストレイター号は流星群との接触などもあって地球との通信が不能になるが、”かけら”の解読に成功。その内容は金星人が地球を侵略しようとしているという、驚くべきものであった。地球への連絡が出来ない中、クルーはそのまま金星へと向かう。

順調には行かなかった宇宙飛行だが、まずは無事に金星に到着し探査船を送り込む。しかしそこは生命の気配のない、無人の惑星だった。地球よりも高度な文明の痕跡を見つけた調査団は、さらに奥深く調査を継続する。その結果、金星は地球へ核を打ち込もうと計画していたが失敗し、全滅したことを知る。

ところが残された機械はいまだ活動しており、幾度となくクルーは命を脅かされる中、クルーの一人が撃った中性子銃が核発射装置のスイッチを入れてしまい、全ての機械が動き始める。このままでは地球が危ない。なんとか危機を阻止するが、二人のクルーが命を落とす。生き残ったクルーは地球へ帰還。全人類に平和の尊さを訴える。

 

👇 コスモストレイター号

 

 

主演の谷洋子とは何者か、そして今回の役柄について

まず、日本人がこの映画を見れば必ず「おや」と思うのは、登場人物の中でヒロインを演じているのが日本人女性であるということでしょう。谷洋子という日本人らしく、本作ではオギムラスミコという内科医で、金星に向かうコスモストレイター号の紅一点という、非常に名誉な役柄を与えられている。

一体何者!?と思って軽くウィキってみたら、日本初の国際女優らしい。時代は違えど、早川雪舟の女版ってとこかしら。

 

👇 谷洋子さん

投稿者によるスキャン - 『装苑』1956年10月号, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=97280666による

 


50年代から60年代にかけてヨーロッパ映画を中心に出演。結構主演クラスで出演していたようで、1960年には『理由なき反抗(1955)』などで知られるニック・レイ監督の映画『バレン(1960)』という映画にヒロイン格で出演。なんとアンソニー・クインと共演している。

他にもダーク・ボガード、シャーリー・マクレーン、ディーン・マーティンなんかが主演している映画にも出ているし、日本映画でも(ノンクレジットかもしれないが、)黒沢明、溝口健二、谷口千吉といった錚々たる映画監督と絡んでるっぽい。なかなか華やかな顔ぶれに驚いた。個人的にはニック・レイの『バレン』は見てみたい。


しかし本作のヒロインの谷洋子さん、私にはあんま美人には見えなかった。白人から見るとこういうのがアジア系美人なんでしょうか。もちろんヒロインが美人である必要はないし、映画でも「美人」とは言われていない。でもやっぱりヒロインだったら美人を期待するなあ。こういうこと言うとフェミニスト様たちに怒られちゃうのかしら。

 

👇 英語版Wikipediaの谷洋子さん

By 株式会社東京タイムズ社 - 東京タイムズ読物特集(昭和31年7月号) issued before 31 Dec 1956 published by 株式会社東京タイムズ社., Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=114734560

 


その役どころであるオギムラスミコさんだけど、さすがヒロインなのでめちゃくちゃ「イイ女」という立ち位置だった笑

「人類で初めて月面に降り立った」という、まるでアームストロング船長のような高級男性のブリンクマンさんに長年想いを寄せられていて、それを「宇宙に必要ないものは持ち込むべきじゃないわ」なんてもの凄くいい女なセリフを言ってたしなめていた。

それにスミコさんは夫を月面で亡くしたらしく、その亡くなった現場であるクレーターがモニターに映った途端、悲しげに顔を背けて立ち去ったりと、彼女だけやけにドラマチックなの。

他のクルーなんて私生活のことはまるっきり触れられていないのに、スミコだけが特別扱い。スミコだけに「愛が集中」している感じ。

なんか納得いかなかったよ。笑えたけど(谷さん、ごめんなさいね)。

 

👇 スミコとブリンクマンさん

Авторство: неизвестно. http://www.najgorszefilmyswiata.pl/img/film_s2_thumb.jpg, Добросовестное использование, https://ru.wikipedia.org/w/index.php?curid=5352441

 

高性能ロボット「オメガ」

次に、高性能ロボット「オメガ」の存在。


キャプチャとか貼れないので言葉で形容するしかないのだが、戦車みたいなキャタピラがついたボディに大きめの頭が「どどん」と乗っかっている。その頭は角が丸い三角形で、レトロなアンテナがついていて、並んだスイッチが「ニカッ」と笑っているみたいな愛嬌のあるお顔立ち。大きさは高さが1mくらいに見える。

オメガは「超高性能」と謳われていたが、映画の中では「天気予報が出来ること」「放射能を測定できるらしいこと」「チェスがやたらと強いこと」くらいしかその高性能ぶりは分からなかった。金星到着後は上陸したブリンクマンと一緒に行動を共にして、放射能を察知して「キケン、キケン」ってブリンクマンに教えてあげてたから、役に立ったのでしょう。

 

👇 プロフェッショナルマスク オメガ



おっと間違えた、これはマスクだった。オメガのいい画像がないんですよ。

オメガはすごくフザケタ顔してるのです。底辺の長い三角形の顔立ちで、おめめぱっちりで「ニカッ」と笑っているように見える顔。

画像をブログに貼ってくれている方もいるので、ここを 👈をポチっとすると画像が見られるかもしれません。

このオメガが後にあの『スター・ウォーズ・シリーズ』のR2-D2に影響を与えた・・・かどうかは分からない。


ところで、このオメガはあまりにもチェスが強くてクルーを負かしてばかりいたら、それを知ったスミコがオメガを開発した博士に「うまく負けてあげるよう」提言して改造してもらってた。で、その時の台詞がこちら。

 

引用:「愛をあげて」

 

びっくり仰天。「愛をあげて」( *´艸`)プププ 「思いやり」とかでよくないですか?

 

 

配役が国際色豊かで、しかも「偏見なし」だった

コスモストレイター号に搭乗するクルーは7人。

その中で、

唯一の女性クルーでヒロイン格のオギムラスミコ役に日本人女優を、

7人の中ではかなり活躍する天才言語学者で、ラストは地球を救うために命を落とすという美味しい(?)役、チェン・ユーには中国人俳優を、

あまり活躍しないが、最後はチェンと同様に地球を救う通信士タルアにはアフリカ系黒人俳優を、

という国際色豊かな配役。


欧米の映画はオール白人キャストも全然珍しくない。特に昔になればなるほど白人しか出てこない。例えばこのブログでも取り上げた『2300年未来への旅(1976)』なんて70年代のアメリカ映画だけど、あーーーんなに大勢のエキストラが出ていたのに、ぜーーーーんいん白人だった。

そんな映画も多い中、今作はかなりグローバル。


でも最後に命を落とすのが中国人と黒人だと、解釈次第では人種差別的にも捉える方もいるかもしれない。だけど私は見ていて「おっ、美味しい役だな」と思った。

だって二人は全人類を救うのだし、ヒロインのスミコは生き残る。

だというわけで、人種差別的な印象は全くない作品だった。ヨーロッパ映画だからなのかな。

 

 

この映画の突っ込みどころ

もしや行かなければよかったのでは、と思わなくもない

一番の突っ込みどころは、「金星人が地球を侵略しようとしているらしい!人類の危機!!」→「金星まで行ってみたら自滅&全滅していた」→「おっとうっかり地球に向かう核爆弾のスイッチを入れちゃった」→「人類の危機」→「なんとか解除」→「人類を救ったヒーロー誕生」→「やっぱり核は怖いし、平和が一番だね」という流れ。

行かなけりゃこのまま何もなかったかもしれないのに、自分からわざわざ出かけて行って自分でスイッチを押して自分で解除して戻ってくるという・・・これじゃ「何しに行ったの」と思わなくもない。お前はマッチポンプ野郎ケネディか!

1908年に宇宙船が地球に来て、80年間も何事もなかったのだから、もうちっと慎重に計画したり探査したりしてから上陸すればよかったのに。

まあ、ああいう物は残しておくと、いつの日か誤作動で地球に向けて発射されそうになるのが定番だから、未然に防いだということでこれは良しとするか。

 

金星から植物を持ち帰ってた

スミコは、死んだチェン・ユーが金星で発見した植物の種を地球に持って帰ってきてたけど、それ地球に持って帰って大丈夫? 

映画のラストで「芽が出たのよ!」って、「あなたは金星に生命がいた証拠を見つけたのよ! あなたの命は無駄じゃなかったわ!」って、感動的ないい話にして終わらせようとしてたけど、 高度な文明の痕跡はいっぱいあったから、その植物がなくても生命がいた証拠は十分そろってたと思ったけど。

このあと『リトルショップオブホラーズ(1986)』みたいにならない? なんだか人類が心配になったよ。

 

オペしてたのが医者ではなくて数学者だった

船長が怪我をして緊急手術をするはめになっていたけど、その手術を内科医とはいえ医者であるスミコさんを差し置いて、アインシュタイン並みの頭脳を持つ設定とはいえ数学者の博士がしていたように見えたけどそれでいいんでしょうか。まあ船長はラストにコスモストレイター号から降りてきた時はピンピンしていたから、手術は上手くいったみたいで良かったけど。

でもそもそもなぜ内科医を連れて行ったのでしょうか。私なら手術できる外科医を連れて行くけどなあ(内科ももちろん大事だけど)。



そんな感じに、全編突っ込みどころ満載だったけど、それもそのはず。本作は日本公開時『大怪獣バラン』との同時上映だったらしい草

ははあ、なるほど、この時代、SFってそういう扱いだったのね。無理もないか。

👇 大怪獣バラン

Toho Company Ltd. (東宝株式会社, Tōhō Kabushiki-kaisha) © 1958 - movie poster made by Toho Company Ltd. (東宝株式会社, Tōhō Kabushiki-kaisha), パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=107667184による



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👇 コスモストレイター号 プラモデル

 

👇 英語版字幕なし ならYoutubeでも見られる

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