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【映画】「宇宙戦争(1953)」 話せば分かる・・・わけがない。SF古典小説の映画化で映画も古典。


おすすめ度 ★★

題名 宇宙戦争(The War of the Worlds)
監督 バイロン・ハスキン
制作 ジョージ・パル
脚本 バリー・リンドン
原作 H・G・ウェルズ 「宇宙戦争」1898年
出演 ジーン・バリー、アン・ロビンソン
上映時間 85分
制作年 1953年 
制作会社 パラマウント
制作国 アメリカ
ジャンル SF、モノクロ
 



「火星人=タコ型」のイメージを私たち人類に植え付けたことでも有名な、あまりにも有名な名作SF古典小説である H・G・ウェルズ原作『宇宙戦争』の映画化作品。

原作は結構しんどい作品でメンタルにくる。宇宙人に根絶やしにされそうな危機を迎えて極限状態に追い込まれた人間が、クズな行動を恥ずかしげもなく取っていて、人間の品格なども考えさせられる(自分はどうだろう)。

そしてラストのあまりにも現実的な終わり方。SF小説だと思って侮るなかれ。名作です。

果たして映画はその原作に迫れるかどうかが焦点。


 

簡単なあらすじ

地球人よりもずっとずっと進んだ文明を持つ火星人が、地球人を滅ぼしにやってくる。それもなんの予告もなしに、隕石のふりして地球に激突してくる。人々はその落下物を遠巻きに眺めて最初は楽しんでいたが、徐々にその意味を思い知ることになる。

落下物の中から出てきた、醜悪な姿の火星人たちが着々と何かを建設しはじめ、人類を凌駕する高度な科学力を惜しげもなく披露して人類に攻撃を開始する。

火星人たちを前に人々は逃げ惑い、なすすべがない。果たして人類は火星人たちに滅ぼされ、地球を奪われてしまうのか。
 
 
👇 この映画での火星人はこれです。タコでは・・・ない。
 
 

原作との比較

原作で火星人が乗る乗り物は、「トライポッド」と呼ばれる長い三本足の巨大な乗り物だけれど、映画では緑色の空飛ぶ円盤っていう感じ。

そして時代も変わっていた。原作で主人公が乗って逃げるのは「馬車」。映画は「車」。

それから、原作は主人公はたったひとり、馬車や徒歩で火星人の攻撃から逃げてロンドンへ向かうというかなり孤独な逃避行だけれど、映画では女連れ。

やっぱり映画だから、それなりの ”華” が必要だと判断されたかな。男一人だと、娯楽作品としては絵的に物足りないのでしょう。ちなみに2005年公開のリメイク、スピルバーグ&トム・クルーズ版では子供連れだった(子供はダコタ・ファニング)。


原作の長さと比較すると映画はたった85分なのに、原作から大きくは外れずよくやっていたと思う。

思うけど、原作と比べるとかなり落ちる。

映画は情報量が多いはずなのに、H・G・ウェルズによる活字だけの描写力に負けてしまっている。

小説は文体もリアルだし、冒頭の、火星人が暗い情熱を持って虎視眈々と長い時間をかけて地球を観測していたらしい描写なんて、本当の出来事みたいに思えてくる。静かに、息をひそめるように、人類最大の危機が始まっていたんだな、私たちの知らないうちに知らないところで、もう始まっていたんだな、と頭にしみこんでくる名文。

19世紀末という時代設定も良かったし、主人公「私」の手記のような一人称の小説だから、自然に主人公の目線で物語を追体験できてグイグイ引き込まれる。

小説はいま読んでも傑作。小説が名作過ぎて、映画はだいぶ超えられなかった。

目で見えることが不利益に働いてしまったかな。
 
 

Di Killb94 - screenshot catturato da me, Copyrighted, https://it.wikipedia.org/w/index.php?curid=3791709
 

火星人たちの残酷さについて

原作とたがわず、映画の火星人の横暴さもかなりのものだった。白旗振りながら近寄っただけで、いきなりビームで殺されてた(灰になってた)。

交渉の余地なし。取りつく島なし。問答無用。話し合う気ゼロ。即攻撃。

この映画のちょっと前に公開された『地球の制止する日(1951)』の宇宙人クレトゥなんて、ご親切にも遠い宇宙をはるばる地球までやってきて「このままだと僕たちに滅ぼされちゃうよ。だから考えを改めてね」って優しく忠告してくれたのに。「言うこと聞かなかったら地球を丸ごと破壊するよ」とも言ってたけど。


・・・まあ・・・弁護するわけじゃないけど、今作の火星人が必死なのも無理はない。だって故郷の火星はもう生物が住めない環境になってしまったのだもの。悠長なことは言っていられない。

だから彼らが地球にやってくる時に乗っていた宇宙船は、帰りを想定していない作りになっていて、「そっと着陸」という感じではなく地球に「激突」してくる。帰る気がゼロ。

もちろん「一緒に住まわせてほしい」などと人類と交渉する気はない。「捕まえて奴隷にしてこき使おう」というわけでもない。皆殺しして乗っ取る計画。

人類なんて虫けらですよ。

でも人類も相当なことをやっているからなあ・・・。

私は映画を見ていて、「今日は○匹やった!」とか言ってスポーツとして人間を狩っていたオーストラリアのアボリジニ狩りとか、タスマニア人虐殺とかを思い出した。白人たちが大勢で並んでお手手つないで、たったひとりのタスマニア人も見逃さないよう追い詰めていったと読んだことがある。

今回の火星人もそういう感じかな? 案外、あの緑色の乗り物の中で「くそおもしれえ」って言っていたかもしれないけど、私たち人類も文句は言えないのだ。

謎にキリスト教色が強い終わり方

ところで映画版はかなりキリスト教色が強めになってると感じた。意表をつく終わり方は原作通りだけれど、「神様ありがとう」みたいになってた。

えー、そう? あんまりそういう奇跡的な要素感じなかったよ。至極当然、納得の、科学的な結末だったと思うけどなあ。

序盤に神父様が人類救出に失敗して「やっぱ神様なんていないんじゃん」みたいな感じになっちゃったから、どうしても「そうじゃないよ!ちゃんと神様は見守ってくれているよ!」と終わらせたかったということなのだろうか。

無理じゃね。この結末を見て「あー、やっぱり神様はいるね、よかった、ありがとう」みたいになるぅ? 私にはやっぱり神はいない結果が示されただけのように思えるけど。

だいたい神父様が「話せばわかる」とかなんとか言って世間知らずぶりを露呈していたけど、相当滑稽だった。それもたった今3人が灰になったばかりなのに、「神様がついてるからきっと大丈夫」って言ってた。

ばかだなあ。

原作みたいに神さまは出さずに科学的なアプローチだけにすれば、もっとクールで良かったんじゃないかなあ。

原作もこんなだったかなあ。細かいところは忘れちゃったから、久しぶりに読み返してみようかな。


補足:というわけで久しぶりに『宇宙戦争』を軽く読み返したら、本編の中でいきなりアボリジニのくだりが出てきていました。むかーし読んだ時の記憶が残っていて、それで連想したのかもしれない。



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