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【映画】「殺人幻想曲(1948)」 ご都合主義のミルフィーユや! プレストン・スタージェス監督のドタバタ・コメディ~



おすすめ度 ★★★★ 
題名 殺人幻想曲(Unfaithfully Yours)
監督 プレストン・スタージェス
脚本 プレストン・スタージェス
出演 レックス・ハリソン、リンダ・ダーネル
上映時間 105分
制作年 1948年
制作会社 20世紀フォックス
制作国 アメリカ
ジャンル コメディ、モノクロ
 
 
 
この作品をリメイクした『殺したいほど愛されて(1984)』がもの凄く面白い映画なので、そのオリジナルの方を見てみた。このオリジナルは当時そこそこコケたらしい。

主人公のアルフレッドは世界的に有名な指揮者。若くて美しい妻ダフネをもらってラブラブ絶好調。ところが自分が出張しているあいだに、自分の秘書であるトニーと浮気しているのではないかと疑い、彼女の殺害計画を練る。

それも完全犯罪をもくろむのだが、あまりにも自分に都合よく考えすぎていて全然うまくいかず、グダグダになっていくのに無理やり貫徹しようとするところがミソ。
 
 
 

アルフレッドのグダグダな妻殺害計画

面白いのが、指揮者であるアルフレッドが、オーケストラの演奏中に指揮棒を振りつつ妻殺害の計画を妄想するくだり。


アルフレッドの恐るべき、ご都合主義の塊とも言うべき計画というのは3パターンあって、


一曲目の ロッシーニ『セミラーミデ』を指揮しながら考える計画は、妻のダフネを自分で殺害して(!)その罪をトニーになすりつける完全犯罪バージョン。

そのトリックというのが、アナログ・レコードに(そういう時代だから)自分の声で「助けて!助けて!トニー、やめて!」と普通に33 1/3回転で録音して、それを78回転に回転数を上げて甲高い声で再生し、妻ダフネの叫び声として使おうという ”雑” なやつ。

気付くって。絶対ダフネの声にはならないって。

それだけじゃなくて他にも数々の仕掛けを仕込むもんだから、やたらと緻密になっちゃって、ほんの少しタイミングが狂うだけで計画のすべてが崩壊するレベル。

成功させるにはトニーにも協力してもらわないと。協力してくれるかなあ(絶対ないけど)。



続いて二曲目、ワーグナーの『タンホイザー』では別バージョンを妄想。

こっちの妄想では、妻の浮気を知っても落ち着き払って「若者は若者同士がふさわしい」なんて格好いいことを言って二人の関係を許したうえに、10万ドルの小切手まで二人に渡すという、寛大な大人の余裕の男バージョン。

アルフレッドは「かっこいい俺」「俺って大人。シビレるー」的に妄想しながら、やたらめったら指揮棒を振っていたら、今度も「感無量」みたいなえらくドラマチックな演奏になってこちらも大喝采。客席のダフネも感激して惚れ直すほど。
 
 

そしてラストの三曲目は、チャイコフスキーの『フランチェスカ・ダ・リミニ』

こちらでは、彼女をめぐって恋敵トニーとロシアン・ルーレットで対決するという決闘バージョン。

だけどこれは失敗して自分が死んでしまうという結果になるが、「戦いに敗れたオレ」ってなって、「ああなんてドラマチック」って、自分にめちゃくちゃ感情移入して指揮棒を振っていたら、やっぱり大喝采の大成功。


妄想だから、頭の中ではあまりにも上手く行って嬉しくなって、指揮棒を振りながら「うひゃひゃ」と喜びが抑えられないの。

おまけにどういう訳か、今振っている楽曲に見事にはまってお客さんはもう大喝采。なぜか名演奏になってしまう。

私はクラシックの知識が全くないのだけど、もしかすると曲の主題と関係があるのかな。曲のテーマに妄想の方が引きずられて影響を受けている感じなのかも。

 
 

それをアルフレッドは実行する

で、演奏が大喝采なのにもかかわらず、妻殺しの完ぺきな計画で頭がいっぱいのアルフレッドは、アンコールもせずに「さあ、さっそく殺しの準備するぞ!わくわく」と意気揚々、さっさと帰宅して実行にうつそうとする。

ところが完ぺきなはずの計画は、あまりにもご都合主義すぎて何一つうまくいかない。

最初の手袋選びで早速つまづき、録音機材もどこにしまったか分からないし、ようやく見つけても使い方が分からないし、トリセツ見ながら挑むがトリセツが分かりにくい(あるある)。

カミソリは見つからないわ、インクが出ないわ、ロシアン・ルーレットも銃の弾が見つからない。

なのに何が何でも計画を貫徹しようと強引に突進するアルフレッドが、この映画の見どころ。


ほんとはいい奥さんなんですよ。アルフレッドにめちゃくちゃ楽しそうに刺されてましたけど(映らないからグロくは全くない)。

 

 
 

アルフレッド役のレックス・ハリソンについて

主演のレックス・ハリソンがやたらと軽い。この頃40歳くらい。

アルフレッドがどのように軽い男かと言うと、自宅のクローゼットとかバスルームのドアを「本棚模様」にしているという、そんな軽さです。

たくさんの本棚に囲まれて・・じゃないんですよ。本棚の絵の壁紙なんですよ。軽薄じゃありませんか。

それに痩せすぎてて、なんだかおじいちゃんみたい。中年ならばもう少し肉がついて、貫禄が欲しいところ。

でも言い換えれば、現代的には「若々しい」ってことなのかもしれない。
 

👇 レックス・ハリスン 男前でしょう。

 
 
レックス・ハリソンと言えば『マイ・フェア・レディ(1964)』のヒギンズ教授が有名。

もちろん二枚目スターなんだけど、でもよーく見るとハンサムなのかよく分からない顔だと思う(上の写真ではなく、映画を見て確認してほしい)。
 
 

一番興味深かったのはテクノロジー

でも個人的にはレックス・ハリスンのことなぞはどうでもいい(ひどい)。私が一番関心を持ったのは、使用される録音機材。

確かリメイク版ではソニー製のボイス・レコーダーだったと思うけど、こちらの録音機材はポータブルのレコード・プレーヤーで、なんとレコード盤に音声を直接録音出来る。

再生する時も5枚くらいのレコードを連続再生出来て、すごいハイテク。家庭用ですよ。しかも戦後すぐ。

私は「スイッチが一杯な機械」が大好きなので、俄然注目してしまった。戦後まもなくにあんなのもうあったんだ。ていうかレコードに録音できる機械があったんだー、という驚き。

ということは「生レコード盤」も売っていたってことでしょう。凄いなあ。



👇 参考

www.denon.jp

keiai1515.blog51.fc2.com

 
 
 

ちょっと不満な演出

映画は面白かったんだけど、スタージェス監督の演出がちょっと過剰。

財布のファスナーを開ける時とか、サンドイッチをつつく時とか、動きに合わせて「ギーッ」とか「ビョーン」とか、一々効果音が鳴るのがウザい。
 
それに前半の火事の騒動や、その他全体的にドリフのコントっぽくて演出が安っぽい。

それに後半の犯行実行シーンでは、音楽が行動に合わせてついてくるというか、ギャグの部分を「ここ面白いとこですよ」みたいに音楽が強調してくれて、監督ちょっとやりすぎ。


 今度リメイクもみなおして駄文化しようと思います。ではまた。
 
 

 

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👇 リメイク版はこちら。ナスターシャ・キンスキーが美人。