おすすめ度 ★★★
題名 ショック集団(Shock Corridor)
監督 サミュエル・フラー
制作 サミュエル・フラー
脚本 サミュエル・フラー
出演 ピーター・ブレック、コンスタンス・タワーズ、ジェームズ・ベスト、ハリー・ローデス、ジーン・エヴァンス、ラリー・タッカー
上映時間 101分
制作年 1963年
制作国 アメリカ
ジャンル サイコ、ホラー、心理学/精神分析、モノクロ
題名 ショック集団(Shock Corridor)
監督 サミュエル・フラー
制作 サミュエル・フラー
脚本 サミュエル・フラー
出演 ピーター・ブレック、コンスタンス・タワーズ、ジェームズ・ベスト、ハリー・ローデス、ジーン・エヴァンス、ラリー・タッカー
上映時間 101分
制作年 1963年
制作国 アメリカ
ジャンル サイコ、ホラー、心理学/精神分析、モノクロ
とある精神病院に入所している男が、突然立ち上がってこう叫ぶ。
引用:「私はアメリカ主義者、白人至上主義だ! 聞け、同胞よ! アメリカは白人のものだ! 石を投げ、爆弾を投げつけるのだ! 黒人の外国人どもを吹き飛ばせ!(中略)白人市民会議とKKKを出動せよ!アフリカ人を追い払え! 黒人の母親や子供を葬り去れ! アメリカは白人のもの! 学校を守れ! 旧教徒め! ユダヤめ! 黒人め! 黒人を殺せ!いたぞ! 娘に手を出す前に捕まえろ! ハレルヤ!」
・・・あなた黒人ですよ。
舞台は精神が崩壊した人たちが入所する精神病棟。
殺人事件の取材のため精神病院へ潜入した男が、いつのまにやら自分もじわじわと狂っていく・・・という、サイコホラー。
おおまかなプロット
この映画は、精神病院で起こった殺人事件の真相を暴くべく、記者が潜入取材をしてピューリッツア賞をものにしようと目論む話。
精神病院でスローンという男が殺されるが犯人は不明で、入所者のなかに目撃者が3人いる。3人とも狂人だが、記者は彼らに接触して記事にしようというわけ。
それで病院の精神科医をだますために、主人公は1年かけて狂人のふりをする訓練を受ける。精神病院に潜入した主人公は狂人たちと生活を共にし、犯人の名前を聞き出すことに成功するが、その頃には主人公の精神も蝕まれ、最後は廃人になってしまう。
精神病院でスローンという男が殺されるが犯人は不明で、入所者のなかに目撃者が3人いる。3人とも狂人だが、記者は彼らに接触して記事にしようというわけ。
それで病院の精神科医をだますために、主人公は1年かけて狂人のふりをする訓練を受ける。精神病院に潜入した主人公は狂人たちと生活を共にし、犯人の名前を聞き出すことに成功するが、その頃には主人公の精神も蝕まれ、最後は廃人になってしまう。
出てくる ”狂人たち” のヴァリエーション
今作で出てくる主な精神病患者たちは3人。
自分を南北戦争の英雄だと信じているステュアート、
自分も黒人なのに黒人に強い憎しみをたぎらせる南部黒人学生トレント、
精神年齢が6歳に後退したノーベル賞物理学者ボーデン。
そしてそれ以外にも脇役として華を添えてくれる狂人たちが多数でてくる。
夜になるとオペラのアリアを大声で歌う男、壁に向かってずっと立っている男、常に右腕を水平にして硬直している男、いつも楽しそうにひとりで笑っている男ほか多数。
「壁に向かって立つ男」と言えば、むかーし昔、30年くらい前に新宿で働いていたとき、西口の地下道でそういう男性をよく見かけた。
あそこの壁って今はどうだか分からないけど、人一人分くらいの幅の窪みが一定間隔であって、その男性は壁がわを向いてその窪みにスポッと嵌まって、じっーと立っていた。
あの頃私は、壁の向こう側を向いてじーーっと立ち続けている彼の姿を見て、「人間って、いつ心を病むかわからないなあ」と思っていた。
あの頃はまさか自分が7年も引き籠ったり、その後いっちょ前に社会人になれた後も一時期メンタルを病んで、ある日限界で耐え切れず出勤途中で心療内科に駆け込んだら「予約制なので」とけんもほろろに断られ、外に出て号泣する未来がくるだなんて・・・ぜんぜん思ってなかったなあ。
自分を南北戦争の英雄だと信じているステュアート、
自分も黒人なのに黒人に強い憎しみをたぎらせる南部黒人学生トレント、
精神年齢が6歳に後退したノーベル賞物理学者ボーデン。
そしてそれ以外にも脇役として華を添えてくれる狂人たちが多数でてくる。
夜になるとオペラのアリアを大声で歌う男、壁に向かってずっと立っている男、常に右腕を水平にして硬直している男、いつも楽しそうにひとりで笑っている男ほか多数。
「壁に向かって立つ男」と言えば、むかーし昔、30年くらい前に新宿で働いていたとき、西口の地下道でそういう男性をよく見かけた。
あそこの壁って今はどうだか分からないけど、人一人分くらいの幅の窪みが一定間隔であって、その男性は壁がわを向いてその窪みにスポッと嵌まって、じっーと立っていた。
あの頃私は、壁の向こう側を向いてじーーっと立ち続けている彼の姿を見て、「人間って、いつ心を病むかわからないなあ」と思っていた。
あの頃はまさか自分が7年も引き籠ったり、その後いっちょ前に社会人になれた後も一時期メンタルを病んで、ある日限界で耐え切れず出勤途中で心療内科に駆け込んだら「予約制なので」とけんもほろろに断られ、外に出て号泣する未来がくるだなんて・・・ぜんぜん思ってなかったなあ。
25年ぶりに見た感想(若干違和感あり)
この映画を初めて見たのは25年くらい前、TVの深夜枠だった。偶然チャンネルを合わせ、映画の途中から見て衝撃を受けた。あの頃はまだこういう攻めた映画がフツーに地上波で放送されていた。
その後DVDを探し当てて再見した結果、うろ覚えだったところが明らかに(あたりまえ)。
まず精神病院に潜入取材する主人公が「狂人のふり」をするのだけれど、その設定が「妹を抱きたい欲望にかられて妹を襲いかけた」というものだったのがちょっと違和感。
その程度で精神病認定もらえるかなあ。もちろん最低最悪の行為ではあるけれど、それほど酷い暴行をしている設定でもなかったし、前科はついても精神病棟に入る感じなのかしらん。
そして全体的にかなり激しく大げさで感情的な演技なうえ、
追い打ちをかけるように「ジャジャーン!」って大袈裟な音楽を当ててくるし、
アングルもあおりで撮って不安感や狂気を強調する、という演出。
すべてが過剰でバタバタと騒々しく、その煽りに煽りまくる演出がB級感満載で・・・
おまけに妻役の女優も安い感じだし、主人公の夢の中に出てくる裸女(?)の特撮映像も安っぽい。主人公がやたらモテモテ?で色情狂の女集団に襲われたりするのも安っぽくて、とにかく全体的に演出が安っぽい。
はっきり言って、この映画は妻はいなくても成立する映画だと思うからいらない。色情狂女集団もいらない。
もっと言えば女が出てくる部分はことごとくいらなかったと思う。女たちがいなければもう少しクールで格好いい、格調もある映画になったんじゃないかな。
その後DVDを探し当てて再見した結果、うろ覚えだったところが明らかに(あたりまえ)。
まず精神病院に潜入取材する主人公が「狂人のふり」をするのだけれど、その設定が「妹を抱きたい欲望にかられて妹を襲いかけた」というものだったのがちょっと違和感。
その程度で精神病認定もらえるかなあ。もちろん最低最悪の行為ではあるけれど、それほど酷い暴行をしている設定でもなかったし、前科はついても精神病棟に入る感じなのかしらん。
そして全体的にかなり激しく大げさで感情的な演技なうえ、
追い打ちをかけるように「ジャジャーン!」って大袈裟な音楽を当ててくるし、
アングルもあおりで撮って不安感や狂気を強調する、という演出。
すべてが過剰でバタバタと騒々しく、その煽りに煽りまくる演出がB級感満載で・・・
おまけに妻役の女優も安い感じだし、主人公の夢の中に出てくる裸女(?)の特撮映像も安っぽい。主人公がやたらモテモテ?で色情狂の女集団に襲われたりするのも安っぽくて、とにかく全体的に演出が安っぽい。
はっきり言って、この映画は妻はいなくても成立する映画だと思うからいらない。色情狂女集団もいらない。
もっと言えば女が出てくる部分はことごとくいらなかったと思う。女たちがいなければもう少しクールで格好いい、格調もある映画になったんじゃないかな。
私ったら、スマートな作品としてかなり脳内で上位変換してたみたい(B級映画自体は好きなんだけども・・・)。
まあ、そもそも監督のサミュエル・フラーは低予算映画で有名な、いわゆるB級映画監督として知られる監督だし、今作もかなり限定されたセットで撮影された、超低予算映画とお見受けした。
するとB級だからこそ、お約束的に扇情的なお色気シーンも必要だった・・・テーマに必要ないのは重々承知の上で、でも興行的には必要だった、ということなのかもしれない。
するとB級だからこそ、お約束的に扇情的なお色気シーンも必要だった・・・テーマに必要ないのは重々承知の上で、でも興行的には必要だった、ということなのかもしれない。
似た主題のおすすめ映画
映画の主題は、「正常な人間が、徐々に自分を見失い、精神を蝕まれていく恐怖」ということになるのだろうと思うが、設定が非日常的だからか、いまひとつわが身に迫ってくるほどの恐怖を感じなかった。自分の身に置き換えるとか、主人公に感情移入するとか、私にはそういうことが出来なかった。
これなら「正常な人間が、徐々に自分を見失い、精神を蝕まれていきそうになる恐怖」という似た主題で、しかも日常と地続きだった『バニーレークは行方不明(1965)』の方が怖いと思う。あと『ガス燈(1944)』とか。
例えば『バニーレーク』は、正確に言えば自分ではなく娘の存在が疑われるのだが、自分がさっきまで一緒にいた娘の事を、自分以外の全員が「そんな子はいなかった」と口をそろえて言いだして、みなから頭のおかしな人のような目で見つめられる。
2005年に公開されたジョディ・フォスター主演『フライト・プラン』はこの『バニー・レーク』の派生作品だと思う。
『ガス燈』も似ていて、自分は全く正常なのに、愛する夫が自分を狂人扱いしてくる。それも毎日毎日、あの手この手を弄して、しつこく執拗に徹底的に。そして妻は自分の頭が変なのかしらと、やはり自分で自分を疑い始める。
このように日常と地続きのシチュエーションで、「自分の実存やアイデンティティが疑われた場合、はたして私は自分の存在(あるいは正気)を証明できるだろうか」という、実存が疑われる系の方が「精神が崩壊するだろうな」とリアルに思う。
でも今作は「精神病棟が舞台で」「取材での潜入で」「お仕事で」「狂人のふりをする訓練をして」みたいな設定なので、残念ながら「我がことのように恐怖する」という感じまでは至れなかった。
これなら「正常な人間が、徐々に自分を見失い、精神を蝕まれていきそうになる恐怖」という似た主題で、しかも日常と地続きだった『バニーレークは行方不明(1965)』の方が怖いと思う。あと『ガス燈(1944)』とか。
例えば『バニーレーク』は、正確に言えば自分ではなく娘の存在が疑われるのだが、自分がさっきまで一緒にいた娘の事を、自分以外の全員が「そんな子はいなかった」と口をそろえて言いだして、みなから頭のおかしな人のような目で見つめられる。
2005年に公開されたジョディ・フォスター主演『フライト・プラン』はこの『バニー・レーク』の派生作品だと思う。
『ガス燈』も似ていて、自分は全く正常なのに、愛する夫が自分を狂人扱いしてくる。それも毎日毎日、あの手この手を弄して、しつこく執拗に徹底的に。そして妻は自分の頭が変なのかしらと、やはり自分で自分を疑い始める。
このように日常と地続きのシチュエーションで、「自分の実存やアイデンティティが疑われた場合、はたして私は自分の存在(あるいは正気)を証明できるだろうか」という、実存が疑われる系の方が「精神が崩壊するだろうな」とリアルに思う。
でも今作は「精神病棟が舞台で」「取材での潜入で」「お仕事で」「狂人のふりをする訓練をして」みたいな設定なので、残念ながら「我がことのように恐怖する」という感じまでは至れなかった。
というわけで、本作はDVDが絶版らしくて値段がお高いこともあって、この手の恐怖を味わいたかったら『バニー・レーク』や『ガス燈』をおすすめします。