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【映画】「殺したいほど愛されて(1984)」 リメイクが大成功してる傑作コメディ

おすすめ度 ★★★★ 

題名 殺したいほど愛されて(Unfaithfully Yours)
監督 ハワード・ジーフ
脚本 ヴァレリー・カーティン、バリー・レヴィンソン、 ロバート・クレイン
原案 プレストン・スタージェス 
出演 ダドリー・ムーア、ナスターシャ・キンスキー、アーマンド・アサンテ、リチャード・リバティーニ
上映時間 97分
制作年 1984年
制作国 アメリカ
ジャンル コメディ、リメイク、オーケストラ
 
 
 
「若く美しい妻を持った名指揮者が妻の浮気を疑って、殺害しようと完全犯罪を目論むが、あまりにも都合よく計画しすぎてまるで上手くいかず、グズグズになるのになんとか貫徹しようとする」というコメディ。

プレストン・スタージェス監督『殺人幻想曲(1948)』のリメイク。リメイク作品を見ると「オリジナルの方が良かった」と思うことが多いけど、今作はスタージェス監督へのリスペクトが感じられる甲乙つけがたい良作。個人的にはこっちの方が好き。
 
スタージェス監督のオリジナルをリアルタイムで観た人はだいぶ死んじゃっただろうし、リアルタイムでなくてもオリジナルを見ている人がどのくらいいるか甚だ疑問ではあるけれど、オリジナルが好きな人でもこのリメイクは十分楽しめると思う。

どっちを見ても、OKな作品。
 
 

やはり指揮をしながら楽しそうに練る殺害計画とは

プロットは基本的にはオリジナルとほぼ一緒。

若い妻を持ったばかりに若い男と浮気してるんじゃないかと勘繰ったあげく、妻を殺害しようとノリノリで計画を練るが、驚くほど都合の良い計画を立てたがために、何一つうまくいかない、という話。

 
ただし、主人公が指揮をしながら妄想するくだりが、オリジナルは3曲分の妄想があったけど、リメイクは1曲に凝縮されていた。
 

やはり注目すべきは、クロードがコンサート中に完全犯罪を夢想しながらオケを振っている一連のシーン。
 
ご都合主義にご都合主義を重ねて馬鹿に緻密な計画になってしまい、被害者までが秒単位で的確に動いてくんないと成功しないザル中のザル計画。でも頭の中では超上手くいくからクロードは指揮棒を振りながらもう高笑い(笑)めちゃくちゃ楽しそう。クロード、あほだなあ。
 
それでもう成功した気になって「完全犯罪だああ!」と盛り上がり、早速実行しようとオケの演奏が終わってすぐマックスを食事に誘ったら、のっけから断られて狼狽。 
 
で、なんとか来てくれることになるけど、ボイスレコーダーは引出しにないし、やっと見つけても使い方は分からないし、老眼でどれが録音ボタンかよく見えないし・・・
 
という具合に、やっぱりぜーんぜん上手くいかない(笑) いや無理でしょ。計画からして無理だもん。予行練習しよ。
 
この、計画がグズグズになっていくのに、もう無理なのに、それでもなんとか貫徹しようとあがくクロードの姿を鑑賞するのが面白い。
 
 

主演のダドリー・ムーアほか、出演陣がさすがの出来

登場人物の設定をオリジナルと比較すると、それぞれのキャラクターがこちらのリメイクの方が立っていたと思う。
 
主人公の有名指揮者は、アルフレッドからクロードへと名前が変わるくらいで大きな変更なし。ハンサムじゃなくなってるくらい。
 
妻役は、オリジナルのダフネは良妻賢母的な、わりと優等生っぽい妻だったけど、リメイクのダニエラは若い女優で、結構きゃっきゃきゃっきゃとしている現代っ子。ダフネは大人だけどダニエラは子供っぽくて、いかにも浮気しそうな危うい感じ。ちょっと心配。
 
浮気相手と疑われるオリジナルのトニーは、これといった特徴のない若くてハンサムな ”だけ” の若者だったけど、リメイクのマックスはハンサムで女たらしで才能もあるヴァイオリニストだから、速攻でダニエラに手を出しそうな設定になってる。だいぶ心配。



クロード役のダドリー・ムーアはもともとミュージシャンだし、クラシックの勉強をずっとしていた人だから、指揮棒を振る様は実に極めて様になってる。オリジナルのレックス・ハリソンは棒だった。のだめの玉木宏かと思ったもん。
 
マックス役のアーマンド・アサンテも、もともとヴァイオリンが弾けるらしく、その演奏シーンはしっかりしてる。音自体はあきらかに吹き替えだけど、子供の頃からしっかり弾いてきたんだろうなと思うほど様になっていて違和感ゼロ。
 
この2人がヴァイオリン演奏で対決するシーンがあるけれど、ふたりとも本物だから迫力ある。使用している曲がチャルダッシュだったけど、本当の決闘シーンみたいな演出だったし、実際にちゃんと弾けているように思った(音は吹き替えだけど)。
 
このあたりはオリジナルよりもリメイクの方が圧倒的に説得力があった。
 
 
リメイク版は脇役も強化されていた。

特にクロードの使用人ジュゼッペが良かった。イタリア系なのかな(適当)、英語ができない役なんだけど、その英語が出来ないところが面白い。
 
クロードがダニエラの浮気をジュゼッペに相談するシーンで、ジュゼッペはキッチンで野菜を切りながら「それでも愛していれば許さなければ」と言って、茄子を女性に見立てて優しく茄子にキスをしていたと思ったら、なぜか急に怒りがこみ上げてきちゃったみたいで、突如何語か分からない言語でまくしたてながらナイフで茄子をメッタ切りにしてた。豹変。
 
 
ただ、ダニエラ役のナスターシャ・キンスキーは彼女の個性に合ってなかったような気がした。別に悪くはないけど、彼女の魅力が出ている作品はほかにあるように思う。なので今回はスルー。
 
 

総評

というわけで、このリメイクはコメディとしてはかなり出来がいい。オリジナルは「俳優がコメディをやっている」っていう感じだったけど、リメイクは「コメディアンが俳優をやっている」っていう感じ。その分コメディとしてはリメイクに分があったと思う。
 
でも、オリジナルを見てからあらためてリメイクを見ると「スタージェス監督の設定がすべてなんだなあ」と思ったのも事実。そもそもの設定が素晴らしいのよ。

そんな感じで、いずれも超優秀なコメディでした。

 

 

 

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