おすすめ度 ★★★
題名 白い恐怖(Spellbound)
監督 アルフレッド・ヒッチコック
制作 デヴィッド・O・セルズニック
出演 イングリット・バーグマン、グレゴリー・ペック、レオ・G・キャロル、ジョン・エメリー
上映時間 111分
制作年 1945年
制作国 アメリカ
ジャンル サイコスリラー、ラブロマンス、モノクロ
ヒッチコックのアメリカ進出後、第10作目。イングリッド・バーグマン、グレゴリー・ペック主演。前半はラブロマンス、後半に行くにしたがってだんだんサイコスリラーになっていく。
そして割と突っ込みどころ満載の、実に興味深い、というか「40年代のトレンディドラマ」な作品。
- あらすじ
- 結構突っ込める(笑)
- イングリッド・バーグマンは大根だと思う(私は)
- グレゴリー・ペックの美しさは神
- 映画はやはり微妙
- バーグマンが大根なのではなく、劇伴が失敗している ”のかもしれない”(邪推)
あらすじ
恋愛が理解できない堅物精神分析医コンスタンスが、新任の若き院長エドワーズ博士に一目惚れするが、彼には極めて深刻な問題があった。エドワーズ博士は記憶喪失症であり、そのうえ本物のエドワーズ博士を殺害して彼に成りすましているふしがある。周囲は彼を疑うが、彼を愛してしまったコンスタンスは彼を信じ、得意の精神分析を使って彼の無実を証明しようとする。
結構突っ込める(笑)
イングリッド・バーグマン演ずる主人公のコンスタンスは美人だから男にモテモテ。だけど本人はやたらと堅物というか理屈っぽくて、恋とか愛とかを全く信じていない。精神分析医だから余計に自分の感情を冷静に分析しちゃって、理屈で片付けようとする。
分かるわー(唐突)。私もそうだから (美人の方ではなくて) 。
「恋ってそんなに石ころみたいに落ちてた? あれって一生に一度経験出来るかどうかも稀という、超レアケースなんじゃないの? 」って、思ってる。
「恋ってそんなに石ころみたいに落ちてた? あれって一生に一度経験出来るかどうかも稀という、超レアケースなんじゃないの? 」って、思ってる。
私のことなぞどうでもいいが、そんな彼女が若きエドワーズ博士と出会って一瞬で恋に落ちる。
その途端、ものすごく積極的になって展開が早い。ええー、あなた堅物だったんじゃないのおお。
その途端、ものすごく積極的になって展開が早い。ええー、あなた堅物だったんじゃないのおお。
彼が着任早々恋に落ちて、早速ピクニックに行き、その晩には自ら夜這い・・・ではないけれど、真夜中に彼の部屋を訪ねて行って、少しためらいながらも上がり込み、恋心を告白し、キスまで済ませるという突然の肉食系女子化。
豹変じゃないすか。美人は攻めるなあ。自分が男性から見て魅力的なのを知っていて、絶対に断られない自信がないと出来ないよ。相手も超イケメンなんですよ。「私なんて恋愛経験ないし・・・」とかいうためらいは微塵もない。
まあ・・・愛とか恋とかいう心理現象を認めない理性的すぎる女が、初めて男性を魅力的だと思ってしまい、「これは恋なのかしら。そんなはずないわ」「やっぱり好きかも。ああ、今までの私のアイデンティティがあああ」とかって迷いながら、自分の中に芽生えた愛とか恋とかを徐々に受け入れていく葛藤の心理ドラマ、、、
・・・では全くなく、あくまでもサイコスリラーですからね、そういうふうにはならない。
別にならなくていいけど(メンドクサイから)。
別にならなくていいけど(メンドクサイから)。
Par Selznick International Pictures — eBay, Domaine public, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=68523126
イングリッド・バーグマンは大根だと思う(私は)
ところでこのイングリッド・バーグマンという往年の大スターの映画を、私は今までどのくらい見たのかな?と思って色々思い出してみたが、なんとほとんど見ていないのだった。
有名すぎるのかなあ。有名だと雑誌とかでめちゃくちゃ見ちゃって、すっかり見た気分になったりするから。
バーグマンって私の勝手なイメージだと、白人の吉永小百合なのだ。
要は「やたらと認められている大根役者」。”もたもた” と体が重そうで善良そうで奇麗ごとを並べそうでメンドクサソウな女だなあ、うっとうしいなあ、近くにいたら絶対に仲良くならないなあ、という感じ。
要は「やたらと認められている大根役者」。”もたもた” と体が重そうで善良そうで奇麗ごとを並べそうでメンドクサソウな女だなあ、うっとうしいなあ、近くにいたら絶対に仲良くならないなあ、という感じ。
誰だったか作家が、ヒッチコックの好みの女性のタイプを「学校の先生みたいな、セックスの匂いのしない、端正で聡明な美人」と評していたがまさにその通り、ど真ん中のタイプ。
なんていうか、 隙が無くて、ちゃんとしすぎてて、エロスがないのね。この映画の頃はたぶん30才手前くらいでスターとしても全盛期、実際たいへん美しい。美しいけれども面白味がないのだった。
なんていうか、 隙が無くて、ちゃんとしすぎてて、エロスがないのね。この映画の頃はたぶん30才手前くらいでスターとしても全盛期、実際たいへん美しい。美しいけれども面白味がないのだった。
ま、それはさておき、私はバーグマンは大根だと思っている訳なんだが、今作でのあの顔は恋には落ちてるね。だって見ていて恥ずかしいもん。だから見るべき作品を見れば、バーグマンも世間の評判通り名女優なのかもしれない。
それにしても「あなたが好きよ」みたいな顔を、人前で、お仕事とはいえ他人に見せるためにしなくちゃいけないなんて、俳優って大変。きゃー、はずかしい。やっぱり並じゃないわ。
グレゴリー・ペックの美しさは神
グレゴリー・ペックも同様、こちらもやはり30才手前で(バーグマンより1つ年下)、映画が始まってすぐは「美しい男だなあ、もっと若いペックも見て見たい」と思わせるのだが、やはり優等生的すぎてイマイチ面白味がない。
美しすぎて個性がないのだよ、個性が。
まあ「美と個性」というものは水と油の関係なので、なかなか両立は難しいものなので仕方がない。
とはいえ「美」というものは鑑賞に値するのは間違いないので、 やっぱりもうちょい若い、25歳くらいの時も見てみたいなあと思った。
ちなみにペックはこれが俳優デビュー2作目とかで、残念だけどこれより若いペックは拝めそうにない。
とはいえ「美」というものは鑑賞に値するのは間違いないので、 やっぱりもうちょい若い、25歳くらいの時も見てみたいなあと思った。
ちなみにペックはこれが俳優デビュー2作目とかで、残念だけどこれより若いペックは拝めそうにない。
Metro-Goldwyn-Mayer - [1], パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=66942064による
この頃のペックがどれほど美しいかは、以下のトレーラーも併せて参照されたい。2分程度の動画で、白眉は58秒くらいのところ。すごくないですか? この美貌。
映画はやはり微妙
映画そのものは、ヒッチコックの映画にありがちなユーモアはなく、ハラハラドキドキという程でもなくて、ヒッチコック映画としてはイマイチな出来だと思う。
基本的に私は精神分析とか心理学を「胡散臭い」って思っているし、
おまけに二人がほとんど出ずっぱりで、イチャイチャしているところをずーっと見せつけられているだけのような気がしなくもない。
基本的に私は精神分析とか心理学を「胡散臭い」って思っているし、
おまけに二人がほとんど出ずっぱりで、イチャイチャしているところをずーっと見せつけられているだけのような気がしなくもない。
序盤の二人がキスする場面の、ドアが次々開いていく演出なんて、「なんて陳腐な演出だろう」って思って、こっぱずかしかったし、
ペックが投獄されてからの、真実を訴えるバーグマンの演出とかもさすがに古い。当時としても古いと思う。「おや。『裁かるるジャンヌ』かな」って思ったもの(1928年の映画)。
ペックが投獄されてからの、真実を訴えるバーグマンの演出とかもさすがに古い。当時としても古いと思う。「おや。『裁かるるジャンヌ』かな」って思ったもの(1928年の映画)。
バーグマンが大根なのではなく、劇伴が失敗している ”のかもしれない”(邪推)
ところで序盤、コンスタンスが夜中に図書室に行ったあと、彼の部屋に返事もないのに勝手に入り込み、彼の本をダシにキスをゲット、そして彼には平行線恐怖症とも言うべき症状があることを知るまでの、一連のくだりについてちょっと思うことがある。
このシーンは、普通に考えれば、
「コンスタンスは彼に恋していて、彼の事を想うと夜も眠れない。彼が書いた本を見たくて図書室にいくが、彼の部屋から漏れている明かりを見ただけでも彼のことを意識してしまう。図書室で彼の本を手にして中を見ると、サインの筆跡が全く違っていることに気づく。自室に戻る途中、彼の部屋を訪ねようとするが勇気が出ず、一旦は立ち去ろうとするが思い直して部屋に入る」
という、恋する乙女心的なシーンなんだろうと思う。ついている劇伴って、そういう音楽だよね。
「コンスタンスは彼に恋していて、彼の事を想うと夜も眠れない。彼が書いた本を見たくて図書室にいくが、彼の部屋から漏れている明かりを見ただけでも彼のことを意識してしまう。図書室で彼の本を手にして中を見ると、サインの筆跡が全く違っていることに気づく。自室に戻る途中、彼の部屋を訪ねようとするが勇気が出ず、一旦は立ち去ろうとするが思い直して部屋に入る」
という、恋する乙女心的なシーンなんだろうと思う。ついている劇伴って、そういう音楽だよね。
最初は「音楽が邪魔だなあ」と思った。「音楽でドキドキさせようとしているだけで、バーグマンの演技力が全然分からないなあ」と思って、音を消してリピートして見てみた。でもやっぱりバーグマンの演技からは、恋する乙女のドキドキは全然伝わってこない。
むしろコンスタンスは最初っから彼が本物のエドワーズ博士ではないと疑っていて、サインの筆跡が違うことを確認しに図書室に探偵行為をしに行く演技をしているように見える。
コンスタンスはもともと彼の本を読んでいるわけだから、そこにサインがあることを知っていただろう。で、今回彼の筆跡を見て「おや」と思い、「そういえば本にサインがあったわ」と思って出かけていくが、途中で彼の部屋から明かりが漏れているのを見て「起きてるんだわ。そっと行かなきゃ」って、そういう顔に見える。
コンスタンスはもともと彼の本を読んでいるわけだから、そこにサインがあることを知っていただろう。で、今回彼の筆跡を見て「おや」と思い、「そういえば本にサインがあったわ」と思って出かけていくが、途中で彼の部屋から明かりが漏れているのを見て「起きてるんだわ。そっと行かなきゃ」って、そういう顔に見える。
すると、「図書室に入って真っ直ぐ彼の本に直行し、真っ先に彼のサインのあるページを開いて筆跡を確認する。筆跡のアップ!あ!さっきと違う!」的な演出は、もともと筆跡確認に行ったとすれば、速攻確認するのはむしろ当然の行為だ。
おや。この線だとバーグマンの演技がしっくりくる。
劇伴の「恋する音楽」は間違っているんじゃないかなあ。ここはサスペンスな音楽にして、そのあと彼の部屋に入り込んでから「恋する音楽」にすれば矛盾もなくてよかったのに。
劇伴の「恋する音楽」は間違っているんじゃないかなあ。ここはサスペンスな音楽にして、そのあと彼の部屋に入り込んでから「恋する音楽」にすれば矛盾もなくてよかったのに。
そうすれば私も少しはバーグマンを見直せたかもしれないのに。
・・・いずれにしてもこの後、延々とラブラブいちゃいちゃシーンが続いてしまうのであった。
・・・いずれにしてもこの後、延々とラブラブいちゃいちゃシーンが続いてしまうのであった。
以上です。
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