おすすめ度 ★★★★
題名 夢のチョコレート工場(Willy Wonka & the Chocolate Factory)
監督 メル・スチュアート
制作 デヴィッド・P・ウォルパー、スタン・マーガリーズ
脚本 ロアルド・ダール、デヴィッド・セルツァー
原作 ロアルド・ダール「チョコレート工場の秘密」1964年
出演 ジーン・ワイルダー
音楽 ウォルター・シャーフ、アンソニー・ニューリー、レスリー・ブリッカス
上映時間 100分
制作年 1971年
制作国 アメリカ
ジャンル ファンタジー、ミュージカル
主人公チャーリーの健気な優しさが心に響く、コメディタッチでミュージカル仕立てのファンタジー。良くも悪くもいかにも70年代的セットで、けばけばしくも摩訶不思議な世界を表現しています。
原作は児童文学『チョコレート工場の秘密』、本作をリメイクした映画が、2005年に大ヒットしたティム・バートン監督 ジョニー・デップ主演の『チャーリーとチョコレート工場(2005)』です。
おはなし
ひどく貧しい、そして心優しい少年チャーリー。学校帰り、ほかの子たちは駄菓子屋で無邪気にお菓子を選んでいても、チャーリーはお金がないから窓の外から店の中を眺めている。新聞配達をしながら家に帰るけど、待っているのはママと4人の寝たきりのおじいちゃん、おばあちゃんだ。
近所には、誰も入ったことがないウォンカのチョコレート工場がある。誰も入っていかないから、だれが働いているのか誰も知らない不思議な謎のチョコレート工場。だけどこの工場で作られるお菓子は世界中で大人気だ。
ある日そのチョコレート工場が、世界中でたった5人だけに工場内を見せると発表した。工場が作っているチョコレート「ウォンカ・バー」に、黄金の当たり券が入っていれば工場に行ける。それで世界中が大騒ぎ。子供だけでなく、大人たちも一緒になっての大騒動になる。
チャーリーも行きたいけど、自分にはチョコレートを買うお金がない。年にたった一回だけチョコレートをもらえるのが自分の誕生日。だけどもらったチョコレートに黄金の当たり券は入っていなかったし、おじいちゃんが買ってくれたチョコレートにも入っていなかった。
TVでは次々と当選していく子供たちを放送している。とうとう最後の1枚も見つかってしまった。チャーリーはがっかりだ。
ところが拾ったお金でチョコレートを買うと、なんと中には黄金色に輝くチケットが! 実は最後の5枚目は偽物だったのだ!
するとどこからともなく怪しい男が現れた。彼はウォンカのライバル会社の社長で、工場見学に行ったとき、ウォンカが最近発明した「永遠に溶けないキャンディー」の秘密を探ってきてほしいと、チャーリーにスパイになるよう持ちかけてくる。お礼にお金をたくさんくれるというのだ。
チョコレート工場へ行けるのは明日。チャーリーは寝たきりのおじいちゃんのひとり、ジョーおじいちゃんに「一緒に行って」とお願いする。するとおじいちゃんは喜びと使命感で「すっく」と立ち上がり、歩けるようになれた!
いよいよウォンカの工場見学の日。当選者である5人の子供たちと保護者たちは、「中で何があってもウォンカは責任をとりません」という書類にサインして、いざ、工場内へ入っていくのだった。
Di screenshot realizzato da RanZag - DVD, Copyrighted, https://it.wikipedia.org/w/index.php?curid=2401298
チャーリーの境遇、またはチャーリーの人間性のこと
4人のおじいちゃんとおばあちゃんが、「4人そろって寝たきり」は笑った。しかも大きなひとつのベッドに、あっちからとこっちから二人ずつ入って、それぞれおじいちゃんとおばあちゃんがペアになって寝てるの。かわいい。
左側のおじいちゃんとおばあちゃんは元気なんだけど、右側のおじいちゃんとおばあちゃんは少しだけ元気がない。チャーリーは右側のおじいちゃん、ジョーおじいちゃんが大好きみたい。
設定を見るとチャーリーの貧しさは本格的。祖父母たちは寝たきりで、父親がいないから母親が働いて家族の面倒を一手に引き受けてる。
でも母親がしている仕事と言えば、昔風の「洗濯屋」。クリーニング店じゃあないよ。「洗濯屋」。とてもお金になるような仕事じゃあない。
それでチャーリーは新聞配達をしてる。これは生活費を稼いでるのかな。おこづかいなのかな。
生活費と考えるのが自然だけど、チャーリーは自分の判断でパンを買ってきてみんなの夕飯にして、残りの一部を母親に「これ使って」って渡して、さらに残りをジョーおじいちゃんに「これで煙草買って」って渡してる。その様子をお母さんは特に何を言うでもなく見守っている。
つまり自分で稼いだお金は、使い道も自分で決めてるの。こういうのいいね。
もちろんチャーリーは賢いし、誕生日に年に一度しかもらえない、それもとっても小さなチョコなのに(エンゼルパイみたいな)、みんなに分けようとしたりするような優しい子だから、自分で稼いだお金とはいえ自分だけのものにしたりはしないのだ。
👇 チャーリーが住む街の街並み
Por Vid Pogacnik - Obra do próprio, CC BY 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=3788308
くそわがままな他の子どもたち(クソガキども)
そしてチャーリーのいい子っぷりとは対象的な、他の4人の子供たちの傍若無人ぶり。ちょっと見ないレベルのわがままさ。ハッキリ言って憎めるレベル。
オーガスタスはすごく食い意地が張っていて、チョコレートが流れる川にかぶりついて川に落ちる意地汚さだし、
金持ちの娘のベルーカは、父親の財力をつかってチョコレートを買いあさり、父親の工場のラインをすべて止め、全従業員にチョコの包装紙をチケットが出るまでむかせていたし、
今噛んでいるガムは3ヶ月噛みっぱなしという強者、ガム大好きバイオレットは、ウォンカが開発した「フルコースの味がするガム」を、ウォンカが「だめだ」と言っているのに言うことを聞かずに口にして、紫色の風船のようにふくらんで飛んで行ってたし、
TVで暴力的な映画ばかり見ているマイクは、カウボーイの格好をしておもちゃの銃を手放さず、早く本物の銃がほしくて仕方ない。ウォンカが開発した、チョコレートを遠くに転送できる装置に、ダメだというのに乗っかって手のひらに乗るほど小さくなっていた。
みんな大人の言うことを全く聞かない、舐めた悪ガキたちばかり。憎たらしいったらありゃしない。
チャーリーもジョーおじいちゃんにそそのかされて、ちょっとだけ羽目を外していたけども、チャーリーにはちゃんと「いいこと」が起こります。
👇 手前が子供たち(右からチャーリー、マイク、ベルーカ、バイオレット、一番左の半ズボンがオーガスタス)。
By Mel Stuart - Willy Wonka and the Chocolate Factory, Fair use, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=52288422
感想(ジョニデ版との比較も軽めに)
というわけで今作は、大人が子供に話して聞かせたい、たいへん道徳的かつ教育的な映画に仕上がっています。
しかも演出がコメディタッチだから説教臭さが抑えられていて自然に楽しめるし、チャーリーのかなり可哀想な境遇も、悲壮感がなくてむしろ微笑ましくすら感じられる描かれ方。
重く悲しく悲観的に、極端に教育的な説教映画にしても、誰も救われませんもんね。
チャーリーの健気さが物語を引っ張っていく、心温まる素晴らしい映画でした。
ということで、個人的には2005年のティム・バートン監督&ジョニー・デップ主演の『チャーリーとチョコレート工場(2005)』よりこっちが好きです。
ジョニデ版はそりゃあもう映像とか特撮的には雲泥の差ですし、ウォンカとかウンパ・ルンパたちの秘密にも迫っていて良かったんですけど、チャーリーよりもウォンカが主役みたいになっていて、チャーリーの健気さがオリジナルと比べると弱かったと思います。
両方のいいところが合わさるとよかったんですけど・・・上手くいきませんね。
👇Amazon Prime Video で取り扱いあり〼
👇Blu-ray と DVD