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【映画】「大空港 (1970)」~忘れられがちだけど傑作~ パニック映画のはしり

おすすめ度 ★★★★ 

題名 大空港(Airport
監督 ジョージ・シートン
原作 アーサー・ヘイリー「大空港」
出演 バート・ランカスター、ディーン・マーティン、ジーン・セバーグ、ジャクリーン・ビセット、ジョージ・ケネディ、ヘレン・ヘイズ 
上映時間 131分
制作年 1970年
制作国 アメリカ
ジャンル パニック、アカデミー賞

 

 

『ポセイドン・アドベンチャー(1972)』『タワーリング・インフェルノ(1974)』へと続く、70年代パニック映画ブームのはしりの作品。

でも災害や大事件、未曽有の大惨事などに巻き込まれて大騒ぎしてドカーン、ワー!キャー!阿鼻叫喚! CG、特撮、てんこ盛り! みたいなアトラクション・ムービーではなく、映画のほとんどの時間をドラマ部分に費やしている。

大惨事を最小限の被害で納めようとする人間たちの奮闘と、その人間模様を描くドラマになっている所が大変好ましい。

アカデミー賞にたくさんノミネートされているけど、こういうちゃんとした群像劇を、軽めにコーティングして見やすくしました、みたいな作品が評価されるのは嬉しい。

 

 

あらすじ

映画の舞台は題名通り「空港」。リンカーン空港では大雪の為、飛行機の離着陸ができず、乗客や職員のストレスが高まっていた。

その上、騒音反対デモは起こるし、密航者は出るし、密輸しようとする客もいるし、職員のプライベートの問題まで抱えて空港はてんてこ舞い。おまけに大雪の中離陸した飛行機には、爆弾を抱えた乗客が乗っていた。

その爆弾が機内で爆発。クルーや管制塔スタッフが、被害を最小限に抑えようと奮闘する。

 

 

配役について

70年代のパニック映画らしく、大スターがたくさん出ている。バート・ランカスター、ディーン・マーチン、ジョージ・ケネディ、ジャクリーン・ビセット、ジーン・セバーグという豪華な面々。

 


By Impawards, Fair use, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=18729753

 

 

バート・ランカスター


By Hal Wallis Productions - eBay, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=19360628

 

今回のバート・ランカスターの役どころはリンカーン空港の空港長。

バート・ランカスターは、ライオンというより獅子の風格。私はタフガイ好きではないけれど、バート・ランカスターは好き。

「肉体を持っている」とか「骨格がしっかりしている」という感じ。肉体がリッチだなと思う。

日本で言うと丹波哲郎的な感じかなあ。竜雷太とか。押し出しが強くて、見栄えがいい。痩せていると年取ってから貧相になりやすいけど、彼らはそうはならない。


そしていかにも「頑張って笑っています」みたいに、すごくしっかり口角を広げて上げて「ニカッ」って笑うところがランカスターらしい。わざとらしいともいえるけど、ランカスターに関してだけは悪い気がしない。頑張ってる感じ、なんかいいよ。


今回の役どころである空港長は、仕事人間で昼夜を問わず仕事に打ち込んでいる。妻との関係は冷え切っているけれど、同じ空港で働くスタッフに愛人がちゃんといる。

彼のように責任感があって、仕事に人生を賭けているこの空港長のような男には、同じ仕事で目的や価値観が共有出来て、いつも一緒に立ち向かっていけるような女が必要、というのが良く分かる。

妻はまったくそういうタイプじゃなかったもんね。

 

ディーン・マーチン


By NBC Photo by Elmer Holloway - frontback, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=61543865

 

続いては、機長役のディーン・マーチン。

なんか・・・優秀なパイロットなんだろうけど、「頭の中は女の事だけ」みたいな、人生ずっとプレイボーイでやってきて、初老なのにまだプレイボーイをやっていて・・・っていう馬鹿っぽい役。

しかも、そこそこ初老なのに、いい年してようやく、「急に責任感に目覚める」というイノセントぶりを発揮していて、ものすごくおばかちゃんぽかった。

今まで何しとったんかと。恥ずかしいよ、そういうとこ。


私にとってはディーン・マーチンって歌手としての印象の方が強くて、俳優としては他の映画を見たことが無いから、この人の素なのか演技力なのか分からない。

でもたぶん、地でいける役なんだろうと予想(よく知らない)。ちょっとジローラモぽいし(同じイタリア系なだけか)。

 

ジョージ・ケネディ


By NBC Television - eBay itemphoto frontphoto back, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=27963583


そして、ベテラン整備士役にはジョージ・ケネディ。

私はこのジョージ・ケネディって好きだな。断然、魅力的。粗野だけど頼りがいがある感じで、男前じゃないけど格好いい。いい俳優だなあ。

今回は(も?)、タフでパワフル、腕っ節の強そうな「俺に任せとけ」的なガテン系の役。本気を出せば自力でジャンボ・ジェットも動かせそう。葉巻をずっとくわえていて、最後の見せ場では、力が入るあまり葉巻を一本ぐちゃぐちゃにしちゃったりして。

出番は多くないし、奥さんとの絡みなんてほんのちょっとだけど、古女房をめちゃくちゃ大事にしている感じがすごくいい。こんな男が本当の「良い男」なんだと思う。こういう旦那だったらどんなに幸せだろう。安心だろうなあ。

 

ジャクリーン・ビセット


わたし、ジャクリーン・ビセットが好きで、世界一美しい女性のひとりだと思ってる(世界一って言っても何人かいるから)。

本当に美しいと思っていて、映画も結構見てるんだけど、ほとんどが「くっそつまらない映画」なの(笑)。心底つまらないの。

「選んでる?」って聞いてみたい(笑)。私はたぶん選んでないと思う。おそらく「太っ腹」な女性で、なんでも引き受けちゃうんだと思う。

「裸?いいわよ」って(今作では脱ぎません)。


そんな中でこの映画は、ジャクリーン・ビセットが出ている映画の中ではちゃんと面白いという、珍しくてありがたい映画です。

まあ後半は寝てるだけだけど(寝てるわけじゃないんだけど)、きちんと見せ場もあって、美しいだけじゃなく賢さも漂わせることが出来ていて○。

 

ヘレン・ヘイズ

そして密航を繰り返す婆さんに、ヘレン・ヘイズ(いい写真がなかった)。

齢70にして(といっても今と比べればすごく婆さん。80歳くらいには見える)、悪びれもなく無賃搭乗を繰り返すという、かなりの強者。まるで反省の色が無い。

昔観た時は、「なんて憎めなくてチャーミングな婆さんだろう。こんな婆さんになってみたいものだ」と思ったけど、今回は憎めた(笑)。

くったくなさすぎだし、かわい子ぶってるし、世間をナメてる。自分が婆さんであることに胡坐かいてるよー。駄目だよ、そういうの。今回は憎たらしく見えたよ。

ちなみに彼女はこの役で、アカデミー助演女優賞を取っている。

 

 

その他の登場人物たち

そしてゲレロ夫妻。この夫妻が良い。

職が長続きしないダメな男ゲレロと、そんな夫を励ますゲレロ夫人。これが愛情深い、いい女なんだなあー。慈悲深くて、ダメな男を捨てられない。うーん、なりたくはないけども。

ゲレロ、他の方法はなかったのかね。ダメな方ダメな方を選んじゃう人って、いるんだよねえ。バカなゲレロ。ゲレロ夫人の最後のシーンなんて、ほんと胸に迫ってくる。



ところで、今まで何回か観たけど、バート・ランカスターの愛人役・・・ではないか、有能な空港職員で愛人役が、ジーン・セバーグ(「勝手にしやがれ」)だったとは今まで気が付かなかった。



いやー、あ、そう、と思った(なにが「あ、そう」なんだ)。

あー、へー、結構女優してたんだな、と。なんとなく、デビュー作が鮮烈!でもあとは続かず! ってタイプかと勝手に思ってたもんで。

えらく地味な感じで、いい役柄だったと思いました。

 

 

感想

映画全体で言えば、冒頭の騒音反対デモから乗客の生意気なガキまで、チラッとしか描かれないちょっとしたシーンが、ちょこちょこと丁寧に、あとからあとから効いてくる伏線になって映画を盛り上げ、説得力を持たせていていいです。

そして何といっても、困難な状況下で、プロフェッショナルな人たちが、みなそれぞれの持ち場で全力をつくしている姿というのは見ていてとても気持ちがいい。

有能であるっていうのは、清々しいものだなあ。こんな仕事をしてみたかったなあ(私なりの)。



がしかし・・・ディーン・マーチン(当時52くらい)とジャクリーン・ビセット(当時25くらい)のカップルって・・・。昔のハリウッド映画の黄金のパターン、熟年男に若い女の組み合わせ・・・男のファンタジーですな。

やはり私は古女房らしき女性を愛している役柄の、ジョージ・ケネディが好きだなあ(役だけど)。

 

 

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